インフルエンザワクチン「フルミスト」は劇薬だから危険? ワクチンは劇薬指定が原則【ファクトチェック】
「ミトコンドリア脳筋症症状悪化」は?
拡散した投稿が主張する通り、フルミストの添付文書の副反応欄には「ミトコンドリア脳筋症の症状悪化」と記載がある。 ミトコンドリア脳筋症とは、全身の細胞の中にありエネルギーを作るミトコンドリアの働きが低下することでおこる病気「ミトコンドリア病」の一種だ(難病情報センター”ミトコンドリア病(指定難病21)”)。 てんかん、頭痛や嘔吐などの症状があり、脳卒中に似た症状を伴う発作が起き、運動能力や精神機能が損なわれる(Salvatore DiMauro, MD and Michio Hirano, MD.日本語訳者: 和泉 賢一”MELAS”)。 医薬品・医療機器等の安全性を審査する独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)のフルミストの審査報告書によると、2021年8月31日までに、海外製造販売後に32例の脳炎が認められ、そのうち31例が重篤で、このうち1例がミトコンドリア脳筋症だ(医薬・生活衛生局医薬品審査管理課”審議結果報告書 フルミスト点鼻液”p25-26)。 日本小児科学会は、次の条件に当てはまる人には、フルミストではなく不活化インフルエンザHAワクチンのみの使用を推奨している。 「生後6か月〜2歳未満、19歳以上、免疫不全患者、無脾症患者、妊婦、ミトコンドリア脳筋症患者、ゼラチンアレルギーを有する患者、中枢神経系の解剖学的バリアー破綻がある患者」(公益社団法人日本小児科学会”経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方~医療機関の皆様へ~”) 中野特任教授は「臨床試験で少ない例であっても副反応と考えられる症状が出た者や、理論的にインフルエンザが重症化する宿主に対しては、他にも不活化ワクチンという予防手段もあるので、フルミストを選択することは推奨しないという注意喚起を発信している」と説明する。
「脳に近い鼻から劇薬噴霧は危険」?
拡散した投稿には、脳に近い鼻から劇薬を入れることに対する懸念の声もある(例3,4)。中野特任教授は「臨床試験で安全性が確認されている」と明確に否定したうえで、次のように指摘した。 「インフルエンザの鼻から噴霧する海外のワクチン(生ワクチンではなくアジュバントを含有した不活化ワクチン)で、顔面神経麻痺のリスクが増大したという例が過去にあった。アジュバントが、鼻粘膜と近いところにある顔面神経に影響を与えた可能性が考察されている。この事例と混同しているのではないか」