ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

46 / 155
第43話:動乱

 ※※※

 

 

 

「──どういう、事……!?」

「同士討ちOKって正気!?」

「……正気みたいね……」

 

 

 

 固まって動いていたサンダー寮推薦組は、突如として発表されたルールに驚愕する。

 全員は壊れた建物の陰に集まり、一度作戦会議を開くことにした。

 周囲は現在、バジルとゼラの二人が警戒している。そして3人の会話を通信機で聞いているという状態だ。

 これまで、オーデータ・ロワイヤルは陣営対抗であるが故に同士討ちは禁止というルールが定められていたが、それがひっくり返されてしまった。

 極論、今此処に居る全員で潰し合いをすることも出来てしまう状況だ。

 

「更に、中間発表で各寮の人数状況も出たわね。勝ってるのは一応ファイヤー寮だわ」

「うちは2位ですね」

 

 サンダー寮が13人、ファイヤー寮が14人、フリーザー寮が12人──と各陣営の人数が発表される。数に大差はない。

 

「改めて、今回のバトルロワイヤルのルールについて考えてみましょう。何故、ポケモンの奪い合いを可としたのか。その割には、奪ったポケモンを使える機会が少なすぎるわ」

「……フィールドに落ちている”げんきのかけら”が無いと、復活できませんからね、ポケモンは」

「今の所”きずぐすり”しか見つかってないし……”げんきのかけら”って相当レアアイテムなんじゃないの?」

「そうね。言わば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ってことよ。つまり、運営はポケモンの奪い合いそのものに重きを置いてる」

 

 ルールの文面と、実際のゲームの実情が異なる──という好例だ。

 事前の説明から、イクサ達は相手のポケモンを倒せばすぐにそれを使うことが出来るものだと考えていた。 

 しかし実際には使うポケモンを回復させるためのアイテムが少なく、また瀕死から復活させる”げんきのかけら”はもっと少ない。

 未だにイクサ達は”げんきのかけら”を入手できていないのだ。

 

(有用アイテムが実装されたけど、それが手に入る機会が少なすぎて大炎上する……ソシャゲーでよく見る流れだ)

 

「じゃあ、何で倒した相手のポケモンが渡るようにしたんでしょう? 予選はポケモンのやり取り無しのバトルロワイヤルだったのに」

「……もしかして、最初っからオーデータポケモンが寮長以外の誰かに渡るように仕向けるルールだったってことですか?」

「ええ。だって、オーデータポケモンは最後に持っていた所有者に譲渡される決まりになっているわ」

「でもそれと同士討ちを解禁する事の何の関係が……同士討ちに何のメリットもないじゃん。自分のチームの負けが近付くだけなんですよ?」

「……いや、ボク分かっちゃったかも」

 

 デジーが半ば蒼白な顔で言った。

 

「ボク、すっごく性格が悪いから、性格の悪い奴の考えてること分かるんだけどさ……()()()()()()()()()()()()オーデータポケモンを奪わせるのが目的なんじゃないの……!?」

「お、おいおい待てよ。そんなバカな」

『そんなバカなデース!?』

「バジル。貴女見張りなんだから驚いても叫ばないの」

『Sorry……』

「もしかして……同士討ちを解禁して、寮生に……自分の所の寮長からオーデータポケモンを奪わせるのが生徒会の狙い……!?」

「ええ。寮長からしたら。例えば、今此処に居る私からすれば、貴方達全員が敵になるようなものだから」

「……じゃあまさか、オーデータポケモンを餌に裏切りを誘発するのが、この追加ルールの目的?」

「で、でも! 幾ら何でも自分の所の寮長ですよ!?」

「自分の所の寮長をよく思ってないヤツなんて幾らでもいるでしょう」

「それに、オーデータポケモンだけが餌じゃないと思う……!」

 

 わなわなと震えながらデジーは言った。

 

「このゲームの仕様が……ルール説明には無かったものも含めて、裏切り、もっと言えば”謀反”を誘発するものになってる!」

「例えば……残り人数が少なくなって、勝ちの目が薄くなってきたら、どうなるか。()()()()()()()()()()()()()()()って考えるのが人間の心理なんじゃないかしら。団結したら打ち倒せそうな相手が居るとしたらどうするかしら」

「でも、寮長のポケモンが強いことくらい、分かってますよね? 皆……」

「それだけじゃないっ! このゲーム、回復アイテムが少ないよね。しかも動き回らなきゃ手に入らない」

「……それって」

 

 言い換えれば、既に動き回った生徒によって回復アイテムが回収されてしまった後であることが示されていた。このゲームは、必然的に防衛に回らざるを得ない推薦組に回復アイテムが渡りにくくなっているのである。

 

「逆にゲーム序盤からフィールドに放り出される一般生徒は回復薬を手に入れられるよね」

「そんな所に同士討ちOKルール。……謀反には、この上ないチャンスを言えるんじゃないかしら」

「でも、やりますかねえ、そんな大それたことをするヤツ……」

「うーん、ボクは内定貰ってるから今更裏切る旨味ないけど、普通の奴はオーデータポケモン欲しいと思うよ」

 

 デジーが言うには、スカッシュ・アカデミアの中には中小企業の経営者の娘や息子も居るのだという。

 また、三大企業の幹部の子息だけではなく、それに対抗する企業の経営者も居る。

 もしも彼らがオーデータポケモンを手に入れれば、一気に”武力”と”権威”、その2つを合法的に手にすることが出来るのだ。

 

「もしかしてレモンさん、この事を最初から予期して、信頼できるメンバーで固めたんですか?」

「どうだか。でも推薦枠に信用できる面々を入れたのは確かよ。ゼラは利害では絶対に動かない。バジルは親友だしね。仮に襲ってきても叩きのめせる自信があるわ」

『あれっ!? もしかして微妙に信用されてないデース!?』

 

(ジュリアス・シーザーは親友に裏切られたんだよな……言いたかないけど……)

 

「デジーは……前も話したわよね?」

「うん、裏切られるのは嫌だし……裏切るのももう勘弁、かな」

「そして、イクサ君。貴方は私の騎士(ナイト)だもの」

 

 悪戯っ子のような笑みを携えたレモンは、イクサの顎に手を寄せた。

 

「──守ってくれるのよね? 仮にこの戦場にいる全員が敵になっても」

 

 滅茶苦茶な事言わないでください! と返してくれるんだろう、と流石にレモンは考える。しかし──

 

「勿論です。約束したじゃないですか! レモンさんとは決闘で勝つって決めてるんです。レモンさんに恥ずかしくない僕で居たい」

「っ……」

 

 レモンは赤面する。想像以上に力強い答えが返ってきたからであった。

 その答えは揺るがない。確かにいつかは刃を向けると約束したが、その時までは彼女を守ると決めたのだ。

 今更反旗を翻すなどイクサには考えられない。

 だが、それを目の前で見せつけられたデジーは面白くないと、憤慨した。

 

「転校生はボクの事もちゃんと見なきゃダメ!! ボクの事も守ってよーッ!」

「君はどっちかと言えばライバルだろ!?」

「そーだけどさっ! それとこれとは話が別ーっ!」

 

 抱き着くデジー。むにむに、と膨らみかけを二の腕に押し付ける。

 

「……ねえ。ボクの騎士(ナイト)になってくれるって言ったら、毎日ボクとミミロップでもふもふしてあげるよ──」

 

 

 

             げ ん こ つ

 

 

 

 鉄拳制裁。

 レモンが恐ろしい形相でデジーを睨んでいた。

 

「──あのねぇ、分かってるの? この状況、団結したうちの寮生が襲い掛かってもおかしくはない状態なのよ」

「そうだよ、流石にふざけてる場合じゃないよ、デジー」

「もう既に襲われてるよ……痛いぃ……しかも、レモン先輩にだけは言われたくないーッ!!」

「露骨な色仕掛けをするなと言っているの」

「乙女の武器を使っただけだもんっ!」

「あの二人とも、色々聞き捨てならない事が聞こえたけどその辺で……」

『今のところはまだ何にもデスけど、敵が3倍に増えたも同然なのデス!』

『此処に居るのは4人。ざっと30人以上が敵と見做して良い』

「……手を打たなきゃいけないわね」

「他の寮の情報も気になりますね」

「ええ……上手く切り抜けられれば良いけど」

 

 彼女は、敵であるとはいえ旧知の仲であるラズとシャインを案じる。彼らを倒すのは自分であって、不意の裏切りであってはならない、と考えているのだ。

 

「でも……この学園のバカ共は……きっと相手が自分の寮長でも襲い掛かるでしょうね。アトムは……()()()()()、この学園の生徒を心の底から信じてるのよ」

 

 無論、餌さえ与えれば容易に裏切るだろうという意味での信頼である。

 

「……加えて、()()()()()()とは思えない。同士討ちの先に裏があるはずよ。もうあの生徒会長(バカ)は真っ当なゲームマスターとして見ない事にしたわ」

 

 無論、最初っからそんな風に見ていなかったのは言うまでもない。

 

「あのレモンさん。もしかして、未だに姿を見せていないバンデット陣営の目的って……」

「すっごくえげつないっていうか、性根が腐ってるっていうか……ボク、ドン引き」

「もう全員察してるようね。……これは非常にまずい事になるわよ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「この学園には二種類の駒が居る」

 

 

 

 

「……()()()()()()()()()()()()()()()()()()と、()()()()()()()()()()()()です」

 

 

 

 

 

「もっと……貴方達が絶望する顔で、私の欲望を満たしてください……!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──で、これはどういう了見かな」

 

 

 

 推薦組も、そして近くにいた一般生徒達もシャインを揃って取り囲む。

 矢面に立ったのは、いつも彼の傍で秘書官をしていた女子生徒だった。

 結論から言えば()()()()()、としか言いようがない。

 来たる寮長級との戦いに向けて、シャインは一般生徒達をかき集め、自分達の下に集めていたのだが──先のルール変更があってほどなくして、どよめきはうねりに変わり、そして津波となって彼を飲み込みに牙を剥いた。

 

「……貴方のような恥ずかしい寮長は要りません。()()()()()()()

「うーん参った。このシャイン・マスカット、そう言われてしまうと何にも反論が出来ないっ!」

 

 今までの所業を考えれば当然と言えば当然なんだけどね、と彼は返す。

 人前ではすぐに脱ぐ。ドライブの度に追突事故を起こす。

 数々の問題行為を起こして来たのは外ならぬ自分なのだから。

 

「でも委員長としては仕事真面目にやってたと思うんだがね、私」

「──()()()()()()()。貴方の席が。貴方の持つオーデータポケモンが」

「えーでも、君の親、うちの役員だよね?」

「……だからです」

 

 彼女は淡々と言った。

 

「──私の父がイテツムクロを手に入れれば、マスカット社でクーデターが起こせる。私の家がトップに座れるんです」

「うーん分かった。正直、君達の言っていることは至極真っ当だし、当然だと思う!」

 

 ポケモン達を向ける寮生達に、シャインは爽やかな笑みを浮かべた。

 

「むしろ、こうなった事を喜ばしく思っている。団結……良い事だ! 光り輝いてるよ君達」

「では、大人しくオーデータポケモンを渡してください。出来れば乱暴な真似はしたくないので」

「……あーごめん。言い方が悪かった」

 

 久々に──愉しそうに笑みを浮かべると、傍らに浮かぶ相棒に向かって呼びかけた。

 無言の肯定が返ってくると「ありがとう」とシャインは言った。

 水晶の髑髏が口を開けると死の霧が辺りに満ちる。

 

「皆が知っている通り、私は生憎、そこまで()()()()()()()()()

「ッ……掛かりなさいッ!! 全員で掛かれば、この愚か者を潰せる!! この男の所為で何度私が頭を下げる羽目になったかッ!!」

「ああ、迷惑をかけたね」

 

 生徒達は皆、シャインに刃を向ける。

 その中で彼は一人、不敵に笑みを浮かべていた。

 

 

 

「だが……それでも私達だけは好き勝手にやらせてもらおう。人生は楽しく! ……そうだろう、イテツムクロ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──数十分程経っただろうか。

 激しい攻防の末、シャイン・マスカットとイテツムクロは陥落した。

 意外にも最初に声を上げた女子生徒は、イテツムクロによって氷漬けにされて早々に脱落。

 

「寮長……ごめん、なさ……──」

 

 裏切者、敵対者にはあくまでも非情。それがシャインという男だった。

 しかし、続く生徒達の猛攻には耐えられない。

 彼らの中には特記戦力──特にサンダー寮で言えばバジルと同格──の生徒が何人も居るからである。

 皆、自分達の寮長のポケモンの弱点はよく知っているからだ。

 こちらはオーライズして有利なタイプに変え、シャインがオーライズしたタイミングで誰かがオーラジャミングを放てばいい。

 元より勝ち目などあるはずがなかった。甚大な被害を出し、残ったのは3名ほどの生徒だけだったが──イテツムクロは討ち果たされたのである。

 

「は、ははっ……参ったね。私としたことが此処までか……」

 

 力無くシャインは横たわる。

 体力の限界だった。後に残るのは、イテツムクロの入ったボールだけだ。

 

「……好きにしたまえ、ボールは君達のうちの誰かのものだ」

「──よ、よしっ、倒したぞ寮長を……!」

「待てよ。誰がイテツムクロを手にするんだよ」

「……決めるしかないようだな、今此処で」

 

 

 

「確かに……ルールにより、そのボールをゲーム終了時まで手にしていた者にはオーデータポケモンが与えられますわ」

 

 

 

 少女の声が突如響き渡る。

 3人の視線の先には、黒い装束に身を包んだ生徒の姿があった。

 事前ルールで明記されていた第四の陣営・バンデットの服装と同じだ。

 優雅に舞う彼女は、上品な口調のまま恭しく礼をした。

 

 

 

「尤もそれは……バンデットの役割を与えられている私による、死の舞踏から逃れられれば……の話ですわ。Shall We Dance(よろしくってよ)?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「……とんでもねえルール改定してきやがったな」

 

 

 

 アマツツバサを降ろし、ラズは追加ルールに対し上等だと笑い飛ばす。

 彼の周囲には、推薦枠の生徒、そして彼を見つけてやってきた一般生徒達が集まっていた。

 最初は彼に与するためにやってきた彼らもどよめいていた。

 

「ハッ、だが関係ねえ。ここらで俺達の結束って奴を──見せてやろうじゃねえか!!」

 

 一般生徒達からも様々な声が上がる。だが、そんな中──誰かが言った。

 

 

 

 

「なあ俺さ」

 

 全員がその生徒に視線を向けた。彼は所謂特記戦力の1人に数えられていた。

 

「……前からラズ先輩の事嫌いだったんだよな。威張り散らしてるし、レモン先輩の事ばっかで俺達委員の事なんて見てくれねえよな」

「ちょっと、滅多な事言うもんじゃないわよ!」

「しかも、転校生に敗けて……それで偉そうにまだ寮長の座にふんぞり返ってる」

 

 今度は別の誰かが言った。

 

「……感じ悪いよね、私達を貧乏人って見下してるし」

「生徒会長にも負けたしさ」

「……何でこんなやつが寮長やってんだ?」

「んなもん、クランベリ家のボンボンだからだぜ」

 

 声は、大きくなっていく。徐々に、徐々に。ラズが止める間もなく、水に落とした波紋の如く大きくなっていく。

 

「あの人、相応しくないんじゃないかあ!? 寮長にッ!!」

「なあ、今結束したら寮長を倒せるんじゃねえか!?」

 

 誰かが叫んだのを契機に、一般生徒達は掌を返したようにラズに向かった。

 

「おい、待てよお前ら……!!」

「”おにび”」

 

 轟!! 音を立ててラズの身体が燃え上がる。

 そこに立っていたのは、彼の副官たる生徒。他でもなくラズが推薦した生徒だった。

 下手人はヘルガーだ。ラズの身体は青い炎に焼かれ、一気に力が奪われ、彼は膝を突く。

 

「あっ、がっ……!? テ、テメェ……!!」

「生徒会には感謝してるよ。まさか、負け犬寮長を追い出すチャンスがこんなに早く来るなんてな」

「ッ……!」

「なあラズ。お前には感謝してる。すっごく感謝してる」

 

 にこやかに言った彼は──次の瞬間には激昂して彼の胸倉を掴んでいた。

 

()()()()()()()僕達皆負け犬扱いだッ!!」

「っ……」

「お前のような負け犬が座ってる所為で、僕達が他の寮からどういわれてるか知ってるか!?」

 

 負け犬。負け犬。負け犬のお付き。それがどれほど屈辱的だったか、と彼は語る。

 

「負けてないだなんて思ってるのは、頭ァ花畑のお前だけだよラズ。熱血ぶるな、身の毛がよだつ」

「違う、俺は……ッ」

「……弱い寮長は要らないんだ。分かるな? 何が()()()()()()だ笑わせるな、お前じゃあいつまで経ってもレモンには勝てやしないさ」

 

 ラズは──力無く周りを見回す。

 既に推薦組達も、ポケモンを彼に向かって差し向けていた。

 四面楚歌。もう彼に味方は居なかった。

 

「皆表に出してなかっただけさ。腹の中じゃあ、引きずり下ろせるもんならお前をどうやって引きずりおろすか考えてた」

「悪いねラズ。お前の見せた数々の失態を考えれば、これが最善だ。安心しろよ、アマツツバサはきっちりこっちで回収してやるよ」

「ごめんねー♪ ラズ先輩っ。強いから好きだったけど……もう()()だしさ」

「ゲームだからな、ゲーム。仕方がない。謀反が出来るなら……やるしかないよ」

「こんなチャンス、二度と無いもんね。レモン先輩の事ばっかで、周りが何にも見えない寮長なんて要らない」

「テ、テメェら……ッ!!」

 

 全員を見回すラズ。

 その場に居る全員が「囲めばラズを斃せる」と判断し、結束したのである。

 

「弱い寮長は要らないんだ。負ける姿を無様に何度も晒すような寮長は。ならば、僕達の手で葬ってやるよ、ラズ」

 

 当然、憤慨したのはラズの手持ちであるアマツツバサだった。

 一瞬で反旗を翻したファイヤー寮の生徒達に向かって炎を吹きかけ、怒りの咆哮を上げる。

 どよめきが生徒達に上がった。反旗の炎は、より強く、そしてドス黒く燃え上がる。

 

「こっちに炎を向けたぞ!!」

「攻撃したぞ!! 攻撃した!!」

「これは裏切りじゃない!! 革命だ!!」

「革命の炎を挙げろ!! 俺達はファイヤー寮!! 革命の炎が赤く燃え上がるんだ!!」

 

 その声で全員は結束し、ラズに迫っていく。

 

「たまたまたまっ!!」

「アマツツバサ。攻撃するな──」

「たまッ!?」

「……裏切られようが……可愛い俺の寮生だ。攻撃なんて、出来る訳がねえ」

「た、たまぁ……」

「この数じゃあ勝てねえよ……こうなったのは俺自身の不徳が為すところ。大人しく受け入れるしかねえみてえだ」

 

 レモンなら何とかしたかもだがな、とラズは自嘲した後に──否、と否定した。

 彼女は皆から慕われている。「こう」なるはずがない、と。

 

(俺なりに慕われてると思ってたんだがなあ……思い違いだったみてえだ)

 

 

 

「反撃しないぞ!! やれぇぇぇぇーっっっ!!」

「今ならアマツツバサを倒せるッ!!」

「全員で協力してラズを斃すんだ!!」

 

 

 

 寮長の最後の気遣いはすげなく踏み潰される。

 集中砲火が始まった。火炎放射が、大文字が、岩雪崩が、容赦なくラズを──そしてアマツツバサを狙う。

 

「た、たまたまたまッ!!」

 

 周囲を焦土に変えんとばかりに飛び上がるアマツツバサ。

 しかし、この数に勝てるはずが無かった。

 炎/飛行タイプのアマツツバサの弱点が”岩”であることなど、その場に居る全員が分かり切っていた。

 

 

 

「た、たまっ……」

 

 

 

 黄金のグライダー、堕つ。そして、技に巻き込まれ、全身に傷を負ったまま倒れるラズ。

 瀕死になったアマツツバサは勝手にラズのボールへと吸い込まれていく。

 それを最初に獲ったのは副官の男だった。

 

「……これで……クランベリグループは僕の父の物だ」

「ボールがあいつに渡ったぞ!! 奪えッ!!」

「!?」

 

 だが、次に一般生徒達が狙ったのは──副官の少年だった。

 間もなく、ポケモンが暴動が巻き起こる。

 最早誰がアマツツバサのボールを持っているかなど分かるはずが無かった。

 何故なら、その場に居る全員を斃した者が勝者となるのだから。

 

「おい、アマツツバサは俺のモンだぞ!!」

「きゃあ!!」

「こいつ──直接狙いやがった!!」

「嫌!! 嫌!! 炎が!! 炎が消えない!!」

「俺だ!!」

「俺が手に入れるんだ!!」

「コイツッ……!! ア、アアあっ、骨が……!!」

「寄越せ!!」

「推薦組も潰せ!! こいつらラズの側近だっただろうが!!」

「何!? ふざけるな!! 新しい寮長は僕だぞ!? ぎゃああああ!?」

 

 間もなく。

 血で血を洗う争奪戦が始まった。

 たった1つのモンスターボールを巡り、ファイヤー寮の全員がポケモン同士で攻撃を始めたのである。

 ある者は炎に焼かれ、ある者は岩を受け、次々に寮生たちは倒れていく。

 

「ふぁあ眠い眠い、ありゃあフラストレーション溜まってたんだろうなあ。救護ロボ呼んでおいてよかったよ。今ならまだ、バトルロイヤルがちょっと盛り上がっちゃいました☆ で済むかなあ」

 

 それを見据えるのは──黒い装束に身を包んだ少年。

 第四の陣営・バンデットに選ばれた生徒だった。

 

「チルタリス、彼らを深い深い夢の中に誘ってあげよう。()()()()()()()……ッ!!」

 

 オージュエルが異様な光を放つ。

 それと同時に少年は誘うように告げる。

 

 

 

「発動しちゃってぇ……微睡みの”オオワザ”……!!」




「最初から言ってるでしょう? このゲームの名は”オーデータ・ロワイヤル”……ってね」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。