ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第41話:修行の成果

「始末するだぁぁぁ!? この俺をかぁぁぁぁ!! だーはっはっはっはは!! おもしれぇ、全員まとめて俺様が凍らせてやるぜ!!」

 

 

 

 周囲を巻き込む勢いで冷気を放つマンムー。

 見るとブローディアは既に”こうこうのしっぽ”を物理的に外しに掛かっており、マンムーの拘束が解けるのは時間の問題だった。

 

「ぴょんぴょーん、っと。ナメて貰っちゃ困るかなあ、元・生徒会をさぁ!!」

「だっははははは!! 転校生に敗けて、惨めったらしく這いつくばってたヤツが何か言ってらァ!!」

 

 こうこうのしっぽが地面に投げ捨てられた途端、氷柱が地面から突き上がる。 

 それを華麗なムーンサルトで躱すミミロップだが、そこに”つららばり”が襲い掛かった。

 

「打ち返して!!」

 

 その全てを硬化させた大きな耳で跳ね返すミミロップ。

 華奢な体つきをしているものの、並大抵の個体を上回る巨体を持つ彼女は、決してブローディアのマンムーにも引けを取らない膂力を発揮する。

 そして、合宿で鍛え上げられた彼女の太ましい脚部は、爆発的な瞬発力と貫通力を手にしていた。

 着地するなり、バネのような勢いでミミロップはマンムーに潜り込む。確かに近付けば”10まんばりき”が襲い掛かる──それならば封じてしまえば良い。

 

「先ずは懐に潜り込んで──”アンコール”!!」

 

 一気に飛び込んだミミロップは特殊な音波を放ち、マンムーの精神に干渉。

 これでマンムーはもう飛び道具の”つららばり”しか放つことができない。

 そして、次の瞬間彼女は既にオーライズの準備をしていた。

 

「オーライズ”レパルダス”!! 悪タイプで反撃だ!! ”あくのはどう”!!」

 

 太腿に纏うは紫色の鎧。その目には薄っすらと赤いラインが浮かび上がる。

 セクシーに笑みを携えたミミロップは、マンムーの踏み付けをあっさりと躱すと宙返りしながら”あくのはどう”を放つ。

 

「クソッ、負けねえ!! 冷気を爆発させろ! 最大出力”つららばり”!!」

「にしし、もう当たらないよ!」

 

 猫のようにしなやかな動きでミミロップは、”つららばり”を躱していく。

 近付いても”10まんばりき”が飛んでこないことが分かっているので、張りついていれば当たらない。

 それどころか、引きつけられた”つららばり”がマンムーにぶつかる始末だった。

 

「パオムゥゥゥーッ!?」

「クソッ! 小賢しい!!」

「ミミロップは、可愛くって、ズル賢い生き物なんだよ? それに、もふもふの毛皮のおかげで、寒冷地にもバッチリ対応! 幾ら冷気を出してもムダなんだからねっ!」

「ッ……敗けて堪るかァ!!」

 

 氷柱はもう当たらなかった。

 既にマンムーは先のパモットの攻撃で疲弊していたのに加え、周囲に張りつかれている所為でストレスを溜め込んでいるのだ。

 

(合宿で鍛えたのは、純粋な身体能力! 搦め手だけじゃない、ファイト能力! レモン先輩に徹底的に叩きのめされたのが報われた!)

 

 そして、ミミロップの放つ至近距離での”あくのはどう”を何度か受けた時、遂に堪えたように動きが止まった。

 ──”あくのはどう”の持つ追加効果、相手を怯ませるというものだ。

 

「おしまいだよ」

「しまった、動け! 動けマンムー!!」

 

 間もなくマンムーのオーライズは解除される。

 ”オーラジャミング”が至近距離で放たれたのだ。

 霊気の鎧は失われ、完全にマンムーは無防備となる。

 ”つららばり”がぶつかるよりも先に、ミミロップが肉薄。そして脚を槍に見立てて何度も突く、突く、突く。

 

踊れ狂え突き貫け(”インファイト”)!!」

 

 ぐらり、と巨体が揺れた。そして、完全に限界を迎えたのか、マンムーはどしんと膝を突く。

 そして周囲からも冷気が消え去っていくのだった。

 

「俺様の氷、砕かれた……」

「ふっふーん、レモン先輩の特訓のおかげで大勝利♪ ぶいっ!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「確かに君はサンダー寮の中では強いんだろうが……この学園全体だとそうではない! 君と同格の奴はウチには幾らでも居るし、中でも優れているのが神童たるこの私だ!!」

「貴女が神童なら私は創造神になれマスネ……」

 

 

 

 悪タイプへと変化したカクレオンに対抗するため、オーベムは鍵束ポケモン・クレッフィのオーラを纏っていた。

 そのタイプは鋼とフェアリー。数ある複合タイプの中でも最も強力とされている組み合わせだ。 

 弱点は炎と地面のみ。半減以下は9タイプ、無効タイプは2つ。総合的に見れば元の鋼タイプよりも優秀と言える。

 一気に弱点が突けない相手と化したオーベムは、火力がいまひとつ足りないカクレオンにとっては難敵。長期戦を強いられる相手となる。

 

「No probrem! その強力なエスパー技さえ封じてしまえば、後はどうとでもなりマース!」

「ッ!」

 

 周囲の気配に溶け込むカクレオン。

 その姿は一瞬で見えなくなる。エスパー技ならば辺り構わず念動波を打てば、いつかはカクレオンに当たるだろう。

 しかし、他の技はそういうわけにはいかない。一度カクレオンが姿を隠した場合、大抵のポケモンは目視、または嗅覚でカクレオンの居場所を捉えなければならない。

 

「──と、君は思っているんだろうが……何処に隠れても無駄さ。逃げ場なんてない」

「ッ!?」

「確かに念動波そのものは通用しないだろう。だが、念動波によって引き起こされる物理的現象そのものは、悪タイプにも通用する。つまりは、こういう事だッ!!」

 

 突如、周囲の地盤が一気に持ち上がった。

 オーベムの”サイコキネシス”だ。

 それによって浮かび上がった地面は──崩壊していく。

 土砂に巻き込まれれば幾らカクレオンでも無事では済まない。

 

 

 

【オーベムの サイコキネシス!!】

 

 

 

「素晴らしいだろう! オーベムの最大出力! 周囲の物を全て巻き込み、そして押し固める!!」

「お構いなしデス!?」

「さぁ、何処だ? 何処にいるカクレオンッ!! このまま範囲を広げてやってもいいんだけどねえ、他の奴らからのヘイトを今買ったら大変だ」

 

 瓦礫を空中で混ぜ合わせ、球体の巨大な塊に押し固めるオーベム。

 その中にカクレオンが潜んでいるかどうかはこの際関係ない。

 混ぜ合わせたそれをバジルに向かって落とせば、カクレオンは是が非でも炙り出せる。

 ポケモンは主人のピンチには駆け付けざるを得ないからだ。

 

「以前レモンには実験を邪魔されてねえ。まあ仕方あるまい。非才な人間に、私の歴史への挑戦は理解出来んだろう」

「……学園のウォーターサーバーに薬を混ぜて、人体実験してた件デスか──ッ!! 人間をポケモンにする薬を作る、だとか言って!!」

 

 その事件についてはレモンもよく知っている。 

 ズオウとオーベムは非常に悪名が高く、如何せん作る薬は奇妙奇天烈なものばかり、そしてオーベムも周囲の被害を鑑みない戦い方で味方に回っても敵に回っても厄介極まりない恐ろしいポケモンなのである。

 当時のレモンは1年生だったらしいが、ズオウと互角の戦いを繰り広げ、ありとあらゆる手を使って勝利、彼女を制圧したとバジルは聞いた。

 その彼女が言った言葉をバジルは忘れていない。「ズオウを敵に回すな」と。

 

(はっ、レモン。ナメてもらっちゃ困るデスよ)

 

「邪魔をされるのは仕方がない。だが……私の崇高な理念も理解出来ん、愚か者の凡人が未だにこのスカッシュ・アカデミアの顔のように振る舞っているッ!! アーハッハッハ!! 虫唾が走るとは思わんかね!!」

「思わないデスよ。貴女のようなイカれポンチがトップに座ったら、この学園はお終いデショ」

「……やっぱり君も、あの女のイエスマンか。つくづく勿体ない! 君のようにエキセントリックな人間なら、私の理念が理解出来ただろうに」

「理念じゃなくて手段が理解できねーのデース!!」

「黙り給え。どっちも同じだよ。そうなれば君に用はない」

 

 直接ぶつけられなくとも、砕け散れば広範囲に飛散する可能性が高い。

 だが、ズオウはオーベムの張った障壁で守られるため無傷。結果的にバジルとカクレオンだけがダメージを負うという寸法だ。

 

 しかし。

 

「げろろろ」

 

 次の瞬間、オーベムの真下からカクレオンが現れたのである。

 そのままオーベムに組みかかったカクレオンは長い舌を巻きつけてオーベムを締め上げる。

 

「最初っからカクレオンは、オーベムの首を獲るつもりだったのデスよ」

「ッ……こいつ正気か!? 主人がどうなっても良いのか!? もう良いオーベム!! 瓦礫を落とせッ!!」

「りーりりりりりりりーっ!!」

 

 瓦礫の塊が自由落下で落ちる。だが次の瞬間だった。バジルの身体は一気に持ち上げられ、宙へと舞い上がる。

 

「ッ……何ィ!?」

 

 塊が落ち、一気に破片が飛び散った。

 だがもう地上にバジルは居ない。既に天高く飛び上がっていた。

 彼女を持ち上げたのは──クワガノンだった。

 定位置から高速で飛行し、バジルの下に駆け付けて彼女を助けたのである。

 となればゼラは既に定位置を離れており何処かに息をひそめている可能性が高い、とバジルは考える。

 一方、渾身の大技が外れたズオウは歯噛みした。周囲に居るであろうゼラの姿を探す。

 

「チィッ!! だがクワガノンは燃費がすこぶる悪い!! 一度高速飛行してしまえば、もうお得意の狙撃は出来ないだろう!?」

「狙撃する必要は無いデスよ? 後はカクレオンだけで片を付けるデス!!」

 

 格闘戦に於いて、カクレオンは無敵だ。

 そして悪タイプになって念動力も効かない今、オーベムの放つ技を次々に躱しながら”かげうち”でじわじわと削っていく。

 

「これでお終い! ”かげうち”百裂拳!!」

 

 舌、拳、足のステゴロによる格闘がオーベムを叩きのめす。

 そこからは早かった。反撃しようにも姿も気配も消してしまうカクレオンには、技をぶつけることすらできない。

 抵抗空しく、一方的に殴られ続けたオーベムはごろんと倒れ込んでしまうのだった。

 

「この私が……敗北だと!?」

 

 敗北。しばらく彼女は放心したように目の前の光景を見つめていたが──次第に口角を吊り上げ、笑みを浮かべてみせる。

 

「ふっ、アッハハハハハ!! 君は最高に素晴らしいモルモットだよ、アッハハハハハハ!! 面白い、今日の結果はしっかりノートに書き記しておくとするよ!!」

 

 負けても全く凹む様子を見せないズオウ。その自己肯定感の高さだけは尊敬できるバジルであった。

 

「それよりも、人を直接狙うのをやめてほしいデスね。……あれ、当たったら普通に大怪我じゃすまないデスよ」

「なぁに、死なないように瓦礫の飛散する向きを調整するくらいオーベムには朝飯前さ。ほんの脅しだったに決まっているだろう? 君のカクレオンを釣る為のね」

「何処まで信じれば良いのやらデース」

 

 ドローンに誘導されながら、ズオウはその場を去っていく。後に残るのはオーベムが入ったモンスターボールだけ。

 クワガノンに地上に下ろしてもらった後、それを彼女は手に取るのだった。

 そして、何処かに隠れているであろうゼラに──通信機で話しかけるのだった。

 

「Thank you! ゼラ先輩っ。カッコ良かったデスよ!」

『……む』

 

 くぐもったような声が聞こえてきて、バジルは口をへの字に曲げた。相も変わらず無愛想だ、と。

 しかし、通信機の先の彼の顔が真っ赤になっていたのを、知る由もない。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 キリキザンの素早い斬撃がハタタカガチを襲う。

 だが、高圧電流が常に流れている身体に下手に触れれば感電待ったなし。

 故に電撃の流れていない装甲の部分を狙って正確無比に切り付けていく。

 それを見極めるだけの動体視力、瞬発力をキリキザンは持ち合わせているのだ。

 好戦的かつニヒルな笑みを浮かべた侍少女・カンザキは木刀を抜くとレモンに向けて突きつけた。

 

「いやはや、此処で会えるとは思わなかったなァ。斬ってみたかったんだよね、オーデータ・ポケモン!! 斬ってみたかったんだよね、レモン先輩ッ!!」

「世界中の妖刀を蒐集して流れ着いた先がスカッシュ・アカデミアと聞いていたけれど、想像以上に危ない奴だったわね」

「危ないなんてとんでもない。悪い奴等をやっつける力が欲しいだけだよ」

「……もっと今ので危なさが増したわね……貴女、後輩からは学園の問題解決係だなんて言われてるらしいわね」

「やー、光栄だなあ! ハタタカガチを手に入れた暁には、私の真の意味で学園の悪い奴らを切り伏せる正義の刃になれるってわけ」

「御託は良いわ。戦いに来たんでしょう、貴女」

「うん、分かってると思うけど、キリキザンの剣技はこんなもんじゃないから!!」

 

 ふっ、と視界からキリキザンが消える。

 

「悪く思わないでね。あたしは斬り方には拘らないタチでさッ!!」

 

 

 

【キリキザンの ふいうち!!】

 

 

 

 次の瞬間、一気に間合いを詰めたキリキザンは、渾身の斬撃をハタタカガチにぶつけるのだった。

 並みのポケモンならば真っ二つになっているであろう真剣による一閃。

 

「ウソ、確かに今のは斬れたはず──!?」

 

 だが、斬ったと思った次の瞬間には既にハタタカガチはキリキザンに巻き付いていた。

 

「──”10まんボルト”」

「オーライズ──”ドリュウズ”!!」

 

 電撃はキリキザンには流れなかった。

 一瞬で土龍の装甲が纏われ、電気を遮断したためである。

 しかし、拘束は解けない。

 

「それで? さっきので終わりかしら、貴女の()()は」

「ッ……きょ、曲芸? 普段の相手には出さないような本気を出したんだよ? 本当なら瀕死どころじゃない、真っ二つだ! どれだけ頑丈なの──!?」

「良い事教えてあげる。()()()()()()()()()()()、今の」

「はぁっ……!?」

 

 斬れたように見えたのは高速で動いたことによって生じた残像に過ぎない。起こった事象を淡々とレモンは上げ連ねていく。その全てが自分に及ばない事を示すように。

 

「貴女の攻撃を受けている間、ハタタカガチは電力を循環させて”こうそくいどう”の準備をしていたの。貴女は、技を使っている途中のハタタカガチに攻撃を当てて好い気になっていただけ」

「ッ……!」

「……ところでさっきの話の続きだけど、学園で結構暴れてるようじゃない。不良生徒を呼びつけては、闇討ちして倒してるみたいね。貴女がどういうヤツかでジャッジを下すつもりだったけど、これで結果は分かったわ」

 

 至って冷淡に彼女は言った。

 

「私から言わせれば、武士にもならず者にもなれないナマクラ女。”正義の行い”の威を借りて、自分の腕を見せびらかして自慢したいだけ。純粋に正義感の下に行ってるなら、見逃してやるつもりだったわよ」

「こ、こんのッ……何様のつもりで……!!」

「そんな貴女の鍛えたキリキザンの剣技は、稚児のチャンバラにも及ばない。出直してきなさい」

 

 図星であった。それ以上反論する事も出来なかった。カンザキの性格は、レモンが全て言い当ててしまっていた。

 しかし有史以来、正論とは相手を傷つけなかった試しがない。

 キリキザンは無理矢理ハタタカガチの拘束から抜け出し、”じしん”で周囲を揺るがそうとする。

 しかし無慈悲にもハタタカガチのオーラジャミングが先手を打った。

 周囲に響く超電磁波は、キリキザンの装甲を解体していく。

 頼みの綱のオーライズも一瞬で解除されてしまった。

 

「半端な覚悟でハタタカガチに手を伸ばすなら、手首の先が無いと思いなさい」

「誰が半端だッ!! もう許さない、一刀両断してやる……ッ!!」

「オオミカボシに瞬殺されたから、大方過少評価してたんでしょうけど……まあ、特記戦力だなんて呼ばれて思いあがってるお上りさんにはお似合いの末路ね」

「ナメられたまま終われるか!! キ、キリキザン、”つじぎり”!!」

 

 再び間合いを詰めたキリキザン。

 しかし、それを尻尾で弾き返してみせると、カウンターと言わんばかりにハタタカガチは全身から電撃を放つ。

 

 

 

「”10まんボルト”」

 

 

 

 全てを焼き払わんばかりの電撃。雷にも匹敵する威力だった。

 後に残るのは黒焦げになったキリキザンのみだった。

 

「……心を入れ替えて修行なさいな。技も力も、見せびらかすものでも、闇雲に振るうものでもないわ。振るうべき時に、振るうべき人が力を使えば良い」

「く、くそっ……完敗だ……ッ!!」

 

 失格のブザーが鳴り響き、空からドローンが舞い降りてくる。

 これで、特記戦力のうち3人は撃破されたのだった。

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