ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】 作:タク@DMP
第16話:狙われた秘密
※※※
──オーデータポケモン。
それは、ポケモンのオーラを含有した古代の工芸品から誕生したポケモン。
そのいずれも、イクサの知る「オーパーツ」に類似した姿をしている。
──アマツツバサ。その姿は「黄金シャトル」のマンタイン版。当時は存在しない航空機を模したと言われた黄金シャトルは、現在では、魚を象った黄金像だったのではないかと言われている。
──イテツムクロ。さながら「水晶髑髏」から漏れ出したプラズマがヨノワールを象ったポケモン。水晶髑髏は様々な媒体で話題になったが、現在は近年作られたものという説が有力的だ。
──ハタタカガチ。電球を頭に乗っけたアーボックだ。蛇と電球と言えば、かのエジプト・ハトホル神殿の壁画に描かれた「デンデラの電球」。巨大な電球を描いていたと思いきや実は「蛇を孕む蓮」を描いた絵だったというオチであるが。
──イワツノヅチ。表面は決して錆びない成分で構成されているらしく、1500年風雨に晒されても錆びなかった「デリーの鉄柱」に相応するのではないかとイクサは考えた。
──そして残る1匹は不明。10年前に突如姿を現したものの、捜索隊と交戦し、その後も行方不明らしい。
元居た世界との知識を照らし合わせながら、色々考察したイクサだったが、何故彼らが迷宮から現れるのか、何故既存のポケモンのオーラを纏っているのかは不明だ。
だが、1つだけ言えるのは、オーデータポケモンは力の象徴。特に
此処まで来れば、分かるのは──それだけ狙う人間は多いということでもある。
現状1種1個体しか存在しない稀少なポケモンで、しかも強力な力を持つとなれば、欲しがる生徒はそれだけ多くなる。
1年生の「同学年同士の」決闘解禁期間は6月。入学後2ヵ月が経過した現在だ。
時間経過とリハビリにより、ポケモンへの恐怖心を克服しつつあったイクサを待ち受けているのが何なのかは言うまでもない。
──オーデータポケモンを賭けた、決闘である。
※※※
「ヒャッハァァァーッ!! 決闘に行く前に、重機でぶっ潰しちまえば、決闘は実質的にお前の負け!! ポケノーベル賞は俺様のもんだぜぇぇぇ!!」
「発想が蛮族だぁぁぁーっ!!」
【サンドパン型決戦兵器”トゲトゲ君2号”】
──この学園に於ける決闘の”妨害”は、そこらの学校の陰湿なイジメとは訳が違う。
決闘で勝てる見込みがないなら、物理的に負傷させてしまえば良い──のスケールが違うのである。
この学園に蔓延っている戦術兵器”重機”の形状は様々。戦車であることもあれば、自律式の遠隔操作ロボットであることもある。
飛び出して来たのはハリネズミのようなポケモン・サンドパン……を模したロボットである。
(
先日技術科の生徒に襲われた時も同様のタイプの重機が現れたのをイクサは思い出す。
背中の棘はさながらスティンガーミサイル。背中から離れて標的目掛けて射出されていくのだ。
決闘の時間まで残り10分。よりによってハッカとテマリが選択授業で居ない時に襲撃してきたので、他に増援は居ない。
(故郷の母上、父上、友達の皆さま、如何お過ごしでしょうか。スカッシュ・アカデミアの治安は──相も変わらずカスです)
「くっくく、弱い奴が転校生に決闘を挑む→転校生が不戦敗する→弱い奴にオーデータポケモンが渡る→俺がそいつからオーデータポケモンを決闘で奪う……完璧な計画だなァん!!」
「なんて回りくどいんだ……ッ!! じゃあもうここでオーデータポケモンを奪えば良いんじゃ──」
「……その手があったか!! お前、やっぱり頭良いな……ッ!」
「こっちはそっちの頭が悪すぎてびっくりしてるよ!」
スティンガーミサイルが次々にイクサを狙う。幾ら相手の頭が残念でも、機械はそうではないのである。地面に着弾すると爆発が起こり、爆炎と爆風がイクサを襲うのだった。
「とにかくオーデータポケモンを寄越せ! それさえ寄越せば追うのはやめてやるよ! どーせパモ様とイワツノヅチ以外のポケモンなんざ飾りだろうしなあ!」
(コイツ……ッ! 幾ら僕でもトサカに来たぞ……ッ!)
「──じゃあコイツとかどうかな? キルリア!!」
「りーっ」
【キルリア かんじょうポケモン タイプ:エスパー/フェアリー】
──このキルリアは、授業で潜った迷宮で捕獲したポケモンだ。
くるくるとバレリーナのように踊りながら華麗にミサイルを躱すキルリアは、信管が作動する前にミサイルを足場にして飛び移り、サンドパンに近付いていく。
「”かげぶんしん”!!」
更にその数は一気に増殖。
自身の分身を影から生成し、複数匹で踊りながらサンドパンのロボに近付いた。
「クッソこの野郎ッ!! トゲトゲ君2号!! キルリアに向かってミサイルを撃て!!」
「りーっ♪」
追尾式だからか、ぶつかるまでずっとキルリアを追いかけてくる。
だが、それでも尚キルリアは楽しそうに踊りながらトゲトゲ君2号の正面に立つ。
そして、ぎりぎりまでミサイルを引きつけると宙返りした。
次の瞬間──大量のミサイルがトゲトゲ君2号にぶつけられる。
「げぇっ!! しまった!!」
「──トドメだ!! ”サイケこうせん”!!」
くるくると空中でトリプルアクセルを決めたキルリアは、両手からサイケデリックな色彩の閃光を放つ。
それはトゲトゲ君2号に直撃。そのまま爆音を立てながら撃沈するのだった。
「ほげぇ……せ、製作費凄かったのに……」
「悪い事は出来ないようになってるんだよ! じゃあね!」
※※※
──9分後。
決闘の時間ギリギリで会場に辿り着いたイクサは、息を切らせながら舞台に立つ。
【決闘:ポケモン3匹見せ合い、オーカード3枚公開、1匹を選出】
相手はフリーザー寮なのか、青い制服を着た男子生徒だった。
格上が格下に決闘を挑むのは恥である、という風習から、現時点で決闘が解禁されているのは同学年同士のみ(代理で呼ばれた場合、つまりレモンの代理に選ばれたイクサのようなケースを除く)。
2年生以降は実力の差が横並びになっていくので、その縛りも無くなっていくらしい。
つまり──相手もまた同じ1年生という事だ。
「おではフリッジタウン出身のユキノシタ!! 雪山で鍛えたこのフィジカル!! そしてダイナマイツなファッツ!! 暑さに負けないファイツを期待するべーッ!!」
「……イワツノヅチをあげるつもりはないけど、よろしく頼むよ」
両者のオーカードが公開される。
ユキノシタが展開したのは、巨大なクジラのポケモン・ハルクジラ、蝋燭を生やした犬のポケモン・ハカドッグ、そして力士のようなポケモン・ハリテヤマだ。
一方のイクサは、パモ、キルリア、そして──目玉であるオーデータポケモン・イワツノヅチの3匹である。
(まだ恐怖が薄れた訳じゃない……だけど、この子達と一緒なら僕は戦える!)
『それでは、決闘開始だにゃーんっ!!』
実況のクロミの掛け声で二人は同時にポケモンを繰り出す。
「──頼むよイワツノヅチ!!」
「ハルクジラァ!! お前の出番だべ!!」
【イワツノヅチ オーデータポケモン タイプ:岩/鋼】
【ハルクジラ りくくじらポケモン タイプ:氷】
互いに超重量級のポケモンだ。
ハルクジラは、足を生やした鯨の如き姿をしており、その全長は4メートル。
巨体に加え皮下脂肪によって寒さだけでなく、半端な攻撃でもびくともしない。
全長6メートルのイワツノヅチと比べても引けを取らない。
しかし、オーディエンスの注目は専らイワツノヅチにあった。
「イワツノヅチ”いわなだれ”!!」
「ハッハハハハハ!! 効かない、効かないべ!! ”じしん”!!」
降りかかってきた岩を撥ね飛ばすハルクジラの耐久は、イクサが想定していた以上の物だ。
加えて、既にイワツノヅチのタイプは全校中に知れ渡ってしまっている。
地面タイプの技が4倍の弱点となってしまう岩/鋼タイプ。攻撃を耐えられた以上、次は弱点技で攻撃されてしまう。
しかし──
「締め上げて”いわなだれ”!!」
──イワツノヅチの速度は既存のイワークのそれを遥かに凌駕する。
一瞬で肉薄したイワツノヅチは、その全身を分解してハルクジラに巻き付き、更に頭上から岩を一気に降らせる。
突如巻き付いて来たイワツノヅチを前に、ハルクジラは完全に怯んでしまい、技はキャンセル。
そして、幾ら耐久が高いと言えど弱点の技を何度もぶつけられればいつかは倒れてしまう。
「ならオーライズだべ!! オーライズ”ハカドッグ”!!」
故に、弱点を突かれないタイプへとオーライズすれば、その圧倒的耐久力で持久戦に持ち込むことが出来る。
ゴーストタイプになれば、イクサのオーカードのポケモンで弱点を突かれることは無くなる。
「──”オーラジャミング”!!」
──イクサが対抗して放つのは、オーデータポケモン全てが持つ専用技”オーラジャミング”。
決闘の場で披露するのはこれが初めてだが、相手のオーライズを解除し、更に相手がオーライズしたポケモンだった場合は大ダメージを与える技だ。
しかし、そんな事は読めていると言わんばかりに相手の少年は叫ぶ。
「勿論、対策はバッチリだべ!! ”みがわり”!!」
「んなッ……!?」
すぐさまハルクジラそっくりの人形が現れ、”オーラジャミング”の電波を遮ってしまう。
大技を透かされたイワツノヅチの後隙はあまりにも大きく、ハルクジラの反撃を許してしまう。
「ガッハハハハ!! ”ボディプレス”!!」
「マズいッ……オーライズ”キルリア”!!」
イワツノヅチの周囲には妖精の加護の鎧が纏わりつき、目の電飾には一瞬だけ「キルリア」とこの世界の文字で浮かび上がる。
そして、圧し掛かってきたハルクジラを押しのけてみせるのだった。
(とはいえ、これで相手のOワザ……ゴーストタイプの技が効果抜群になってしまった。オーラジャミングしようにも、”みがわり”が邪魔だ……ッ!!)
「だっははははは!! これで終いだべ!! Oワザ”ゴーストダイブ”!!」
ハルクジラの身体が一瞬で消える。
「この技は相手の守りを貫通する──分かるべ?」
「知ってるよ……ッ!!」
(この人も強い……幾ら同じ1年と言っても、相手も相応のものを賭けて勝負してくるんだ。それなりに自信があるに決まってる……ッ!!)
「だけど……イワツノヅチ、こっちも”あなをほる”だ!!」
「何ッ!?」
この世界で学んだことがある。”あなをほる”や”ゴーストダイブ”のような
ゲームとは違うリアルのバトル。だからこそ取ることが出来る戦術がある。
潜行技は相手の不意を突くことが出来る上に、その間は相手の攻撃を受けない。
だが、相手も潜行技を使った場合、攻撃出来るのは後からこの技を使った方になる。
特に”ゴーストダイブ”は潜行の限界時間が存在するため、相手を捉えられないハルクジラは無防備を晒しながら飛び出してくることになるのだ。
「しまった──ッ!?」
「──”あなをほる”!!」
地中からカチ上げる攻撃。
身代わりは破壊され、後に残るのは、不意の一撃を受けて転がるハルクジラだけだ。
そこにすさかず大野槌は大口を開けて攻撃を放つ。
「”オーラジャミング”!!」
ハルクジラのオーライズはその時点で解除され、更に追加効果の大ダメージ。
そこに更に追撃と言わんばかりにイワツノヅチが”いわなだれ”を浴びせたことで勝負は決した。
『勝者はイクサ選手だにゃーんっ♪ おめでとだにゃーんっ!』
※※※
「つーかーれーたー……!!」
食堂でイクサは突っ伏した。6月に入ってから、これでイワツノヅチを賭けた決闘は二度目だ。
「何やお前、バトルは好きや言いよったやんけ」
「決闘だけならいいよ! だけど、決闘に行く度に妨害されるんだから」
「これでも風紀委員が目ェ利かせとるから、これで済んではるんやろね」
「それに、一品モノのオーデータポケモンを寄越せ言うた以上は、相手方も相応のモノを差し出さんといかへん。二回もお前が防衛しきった以上、割に合わない決闘仕掛けてくる奴は早々居らへんやろ」
「そうなら良いけどねえ……今回も結構危なかったんだよ。イワツノヅチ、種族としてはそれなりに強いんだろうけど、レベルとしては他の1年が持ってるポケモンとそんなに変わらないからさ」
入学して早2ヵ月。
それだけポケモンを鍛え上げている生徒もちらほら居るという事である。
そしてイワツノヅチがオシアス磁気の除去が終わって実戦で使えるようになったのがほんの一週間前。
まだまだ仕上げられていないのだ。
「せやな。どんなポケモンも育ち切らんと何ともやろ。でも、今回の賞金で強い技マとか買えるとちゃうんか?」
「買えるとは思うけどね」
現状、この二度の決闘でイクサは、アンティに賭けられたポケモンとそれなりに大量の賞金を手にしていた。
戦力は現状充実しているも良い所だ。
「と言っても、フツーのポケモンとオーデータポケモンのアンティじゃあ割に合わへんやろ」
「割に合う合わないの問題じゃなくて、自分のポケモンを差し出してくるのは相当覚悟が居ることだと思うけどね」
イクサは、決闘の報酬で手に入れた2つのモンスターボールを机の上に置いた。
1つは、イワツノヅチを賭けた最初の決闘で手に入った、みずたまポケモンのマリルだ。
どうやらオシアスの迷宮では滅多に出てこないポケモンらしい。
(出てくるところでは沢山出てくるんだけどなあ、コイツ……まあ、オシアスの迷宮で手に入ったポケモンじゃなきゃ、オーデータは取れないみたいだし仕方ないんだけど)
もう1つは、今回の決闘で手に入ったハルクジラ。
本人は漢泣きしながらだったものの「大事にぞだででくれだべぇ!!」と託してくれた。
「正直良いのかなあ、って思っちゃうよね」
「良いやろ。お前、負けたら逆にイワツノヅチを取られてたかもしれへんのやで」
「それくらい覚悟決まってるってことなんやろなあ。うちには理解できへんよ」
「うーん……相手が納得してるなら良いんだけど」
「決闘を仕掛けた時点で、納得せなあかんのや」
寮の前の開けた場所で、イワツノヅチの身体をブラシで擦るイクサ。
先の決闘で鋼でコーティングされたボディが汚れてしまったので洗ってやっているのである。
最初こそ、あの巨体に怯えていたイクサだったが、触れ合ってみると案外可愛らしいところも見せるようになった。
こちらに敵意を向けてくることもなく、むしろ電飾の目で感情表現が分かりやすい。
水をあまり浴びせると嫌がってしまうので、ブラシで擦ってやると喜んでいるのか「ゴアアア」と鳴き声を上げるのだった。
「もうすっかり馴染んだやないか。俺ら無しでもブラシ出来るんとちゃうんか?」
「そうかもね……ありがとう、毎回付き合って貰って」
「ええって。ほんま一時はどうなるかと思ったで。お前がポケモン触れんこなるんやないかって」
そんな和気藹々とした時間を破ったのは、一通のメールだった。
「──ん? 何だろ」
ブラッシングを終えた後、タブレットにメールが届いたのでイクサは思わずそれに目を通す。
そして──顔を青くした。
「へっ!?」
「なんや、どうしたんや」
「すっごい顔色悪いけど」
「な、何でもない! 何でも!」
すぐさまイクサはタブレットを隠す。
「ごめん! 僕、急用ができたから行くね! んじゃあ!」
「おー……何や、どないしたんやアイツ」
「さあ?」
血相を変えてイクサが駆け込んだのは──風紀委員長室だった。
『──異世界から来た生徒へ 私はお前のことを知っている。決闘を受けないなら、お前が異世界から来た事と、レモン風紀委員長の秘密を全校生徒に公開する。 生徒会の者Xより』