ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第13話:凶来・イワツノヅチ

 ※※※

 

 

 

「僕……このままで良いのかな……」

 

 

 

 ──えーと、ご飯はこれとこれを上げて……トイレの世話は……ちょっ、そこでしたらダメだってば!

 

 ──ぱもぉ!

 

 

 

 その日の部屋は静かだった。

 触れ合う時間は、あまりにも短く、接する時間はあまりにも短く、共に戦う時間も──あまりにも短かった。

 ボールも何も無い。残るのはレックウザのカードだけ。

 あれだけ手に戻ることを切望していたカードなのに、とても寂しく感じる。

 だが、目を閉じれば──蘇るのはあの時の記憶。

 多くのポケモンに追い回され、技を受け、殺意を向けられた時の記憶。

 ポケモンは最早、恐怖の対象になりつつあった。

 

(大好きなポケモンの世界にやってきて、ポケモンが怖くなるだなんて……バカみたいじゃないか……)

 

 眠れない。

 病院で処方された睡眠薬を手に取る。

 

(……寝なきゃ……憂鬱だけど……あ、その前に)

 

 タブレットロトムの電源を点ける。

 そこには──音声のメッセージを受信していた。

 

『聞こえるか? 俺や、ハッカや! 心配したでホンマ、俺らは元気になるの待ってんぞ』

『うちも! 明日授業に出るの待ってはるから! 元気なかったら、うちが美味しいモン沢山買うてくるから、3人で一緒に食べよ! な?』

 

 ハッカとテマリだ。

 二人には心配をかけてばかりだ、とイクサは苦笑する。

 

(二人共……僕を本気で気にかけてる)

 

 

 

 ──ぱもぉ?

 

 

 

 展望台で、勝手にボールから飛び出して来たパモの姿がフラッシュバックした。

 怖い。怖いはずなのに──その表情が鮮明に思い出される。

 

「あの時、パモ様は僕を心配してた……心配してたのに……僕は……」

 

 ポケモンは怖い。

 それは不変の事実だ。

 だが──それでも、ポケットに入っていたパモだけは自分の味方をしてくれようとしていたのだ、と。

 パモもまた、重傷を負っていたのを思い出す。ポケモンはメディカルマシンですぐに回復するから実感が湧かなかっただけだ。

 そしてなぜパモがそこまで傷ついたのかを考えれば、理由は一つだった。

 

(あの時だって、パモ様は好きで暴走したんじゃないんだ……あの瞬間まで、僕を守ろうと戦ってくれたじゃないか……パモ様だって、怖かったはずなのに……ッ!)

 

 格上の野生ポケモンと戦ったから、に他ならない。

 

(それを僕は怖がって、拒絶して……手を振り払って……)

 

「謝らなきゃ……明日、風紀委員室に行って──」

 

 

 

『緊急警報!! 緊急警報!! 学園に野生ポケモンの群れ接近を感知!! ザザの地下迷宮から野生ポケモンの群れが出現!! 総員は指示に従い、学内建物に避難を行ってください!! 繰り返します!!』

 

 

 

 警報が鳴り響いた。

 そして、けたたましく放送が鳴り響く。

 

「これって──そうだ! ハッカ君とテマリさんは──」

 

 思わずハッカに電話を掛ける。

 すぐさま彼らも通話に応える。

 

「おお、お前か!!」

「ハッカ君、これって一体……何があったの?」

「あの迷宮や! ザザの地下迷宮から野生ポケモンが漏れ出して来たんや! 今、学園の腕自慢共が鎮圧に向かっとる……ッ!」

「ザザ……あそこから……」

 

 原因は分からない。

 しかし、地下迷宮からポケモンが現れることは初めてのことではないらしい。

 その度に鎮圧部隊が用意されているのだという。

 今回は学園付近の為、学園自慢のトレーナー達が直々に出向いているのだという。

 さっ、とイクサの顔が蒼褪めていく。

 

「おい──大丈夫か!? おい!」

「ッ……ごめん……思い出しちゃって」

「ああ、すまん、こっちこそ……」

「でも、大丈夫。学園の人たちが何とかしてくれるんでしょ?」

「そのはずや」

「良かった……そうだ、テマリさんは」

「ああ、テマリちゃん──あッ」

「どうしたの!?」

 

 通話しているハッカの声がみるみる精気を失っていくのが分かった。

 

「あ、あいつ、プライシティに出かけとる……ッ!! まだ帰ってへん……ッ!!」

「何だって!? 何でこんな時間まで──」

 

 時計を見る。そうは言っても20時。学生ならば外出をするのに現実的な時間ではあった。

 

「プライシティのデパートに行っとるんや!! あいつ……お前の見舞の品買いに行く言うとったってな……ッ! 俺、課題の締め切りがヤバくて付いていかんかったんや……ッ!」

「じゃあ1人で!?」

「子供やないもん言うて聞かんかったんや……俺のアホーッ!! 課題なんてすっぽかして付いていけば良かったんや!」

「いや、課題をもっと早くに終わらせておきなよ……」

 

 御尤もであった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──野生ポケモンの群れがプライシティを襲ってる。進路は学園……か。防衛戦の始まりだ」

「群れの強さは危険度4相応……ザザの新しいエリアに生息する、端くれ共ってところか」

 

 寮長二人は望遠鏡で近付いてくるポケモンを観察しながら出方を伺う。

 周囲には、ポケモンを既に繰り出して構えている生徒達の姿が。

 

「そして、群れのキングは……例のオーデータポケモンだね」

 

 群れを追い立てているのは巨大な岩蛇のポケモン──に酷似したデータポケモンだ。

 危険度4のポケモンすらも、そのデータ体に追われて逃げ惑うしかない。

 群れの規模は数十匹単位。オノンドやドータクン、コドラといった「面倒な」ポケモン達が団子になっている。

 更に、いずれの個体も目は青白く光っており、狂暴化した暴走個体であることが分かる。

 

「オシアスポケモン協会は該当個体を【イワツノヅチ】と呼称したらしい」

「これまたヘンテコな名前だね。岩角土(イワツノヅチ)?」

「絶対違うと思うぜ……野槌(ノヅチ)はヘビ型ポケモンの別名……要は()()()()()だ。サイゴクとかいう辺境の田舎出身なんだよ」

「データ合致種族はいわへびポケモンの【イワーク】。通算5機目のオーデータポケモンだね」

 

 全てのオーデータポケモンは、元々、既存のポケモンを元にした作られたかのような工芸品の姿をしていた。

 それがオシアス磁気の影響を受けて、プラズマ体の身体を得て動き出した──と推測されている。

 イワツノヅチの姿はいわへびポケモン・イワークに似ているだけでなく、纏っている磁気もイワークのそれと同じだという。

 

「ただ、まさか学園を狙って進軍してくるとは。狙いは何だろうね?」

「何だって良い──イワツノヅチは俺様が捕獲する」

「おや、燃えてるねえ」

「テメェらに今回出番はねぇよ。オーデータポケモンは親父も興味を示してる。此処で巻き返してやるぜ」

「……悪いけどね、ラズ。オーデータポケモンの確保は我が社にとっても、最重要事項だ」

「こんな時にまで派閥争いデスねー?」

 

 凛とした声が聞こえてくる。

 二人は振り向いた。

 金髪碧眼、そしてブレザーの上に二重コートを羽織った少女が立っていた。

 その傍らに、緑色のカメレオンのようなポケモンが突如現れる。

 

「ゲロゲロっ」

 

【カクレオン いろへんげポケモン タイプ:ノーマル】

 

「──”代理様”……復活したのかよ」

 

 先日まで熱を出して倒れていたはずの「彼女」がそこには立っていた。

 サンダー寮が誇る、トレーナー科最高戦力だ。

 

「たった今さっき、デスねー! ところで、その代理の代理に負けた寮長が居るらしいって聞いたんデスけど、気の所為デショウか?」

「今此処で決着をつけても良いんだぞテメェ?」

「やめたまえ! すぐに熱くなるのが君の悪い所だぞ、ラズ」

「チッ……寮長様は大方机の上か──このもやもや、ぐっずぐずに煮込んで奴等にぶつける!!」

 

 ラズはボールを投げる。

 中から現れたのは、全身に赤いプラズマを纏った黄金のナマズのようなポケモンだった。

 

「アマツツバサ!! 起動しろッ!!」

 

 その形状はさながら黄金の飛行船。

 自由自在に空を泳ぐ文字通りの要塞。

 カイトポケモンのマンタインに酷似した姿で優雅に空を舞い、そして苛烈に相手を焼き払う。

 

【アマツツバサ オーデータポケモン タイプ:炎/飛行】

 

「さあて、ラズに負けてはいられないね……君の出番だ、イテツムクロ」

 

 その姿は水晶の髑髏。

 そこから煙のようにプラズマが漏れ出し、冥界の主の如き威容を作り出す。

 さながら、てづかみポケモン・ヨノワールに酷似した姿をしたそれは、存在するだけで周囲を凍てつかせる。

 

【イテツムクロ オーデータポケモン タイプ:氷/ゴースト】

 

「テメェら!! 俺達二人が群れを叩く、テメェらは町に侵入したポケモンを叩け!!」

「うっかり他の生徒にイワツノヅチを捕獲されたら困るもんね?」

「えー……コスいデース」

「余計な事言うんじゃねえ! それにテメェだって分かってんだろ。あんな奴等、俺達の切札がありゃあ、アッと言う間に殲滅できるってな」

「ちぇー、折角の快気戦が雑魚散らしだなんて聞いてないデスよー」

「そうだよラズ、そんな高圧的な言い方じゃあ、誰も君の言う事なんて聞いてくれやしないよ──」

 

 

 

「うおおおおーッ!! 戦争だ戦争ーッ!!」

「今日は派手に暴れても良いんだよな、ラズ寮長ーッ!!」

「迷宮のポケモン共に人間様の実力理解させ(わからせ)てやるからなぁぁぁん!!」

「野生ポケモン共に負けるようなヤワな育て方してねーぜ!!」

「あたしら技術科の開発した重機が火を噴くーッ!!」

 

 

 

 血の気の多い生徒達の姿を見て──シャインは首を横に振った。

 どうやら何も心配する必要は無かったらしい。それどころか別の意味で心配になってくる始末であった。

 

「……もしかして、この学園の生徒って私が思ってた以上にヤバい?」

「安心しろ、テメェも十分ヤバいぞ」

「タネボーの背比べデース」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 すぐさま散会した生徒達は、プライシティに侵入してしまった野生ポケモン達を攻撃しに掛かる。

 流石にそこは、2年や3年の実力者たち。相手が強力なポケモンであっても臆することなく立ち向かっていく。

 そんな中、道路を占拠しながら猛ダッシュするコドラ達をビルの上から狙うのは、狙撃手のように耳当てをした黄色のブレザーの生徒だ。

 その手には身の丈もあろうかという大きなレールガンが構えられており、更に隣に居るクワガタムシのようなポケモン──クワガノンもまた、コドラ達を狙う。

 

【クワガノン くわがたポケモン タイプ:虫/電気】

 

「……ロック・オン」

「ヤッテキマッシャーッ!!」

 

 タイミングを合わせ、同時に発射。

 稲光の束が極雷となって降り注ぐ。

 進軍していたコドラ達の群れは一気に爆発し、転げまわり、そのまま動かなくなるのだった──が、それを物ともせずに進軍していく個体がまだ居る。

 

(流石野生ポケモン、これしきで倒せるほど甘くはない……か)

 

「……次」

 

 そのままボールを放ると、四角い芋虫のポケモン・デンヂムシが何匹も現れ、クワガノンに掴まれるとその電力を補給していく。

 クワガノンの進化前であるデンヂムシは、バッテリーのように電気を溜め込み、別の物に放電する性質を持つのだ。

 更に彼自身も、デンヂムシにレールガンのコードを接続し、電力を補給していく。

 次に通ってくる第二陣を狙い、砲塔を構えた。

 

 

 

「……ロック・オン」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 一方、別所ではオノンドたちの群れが商店街を蹂躙しながら進む。

 それを待ち構えるのは、一振りの特殊警棒を構えた、青い制服を着崩したポニーテールの少女だった。

 飛び掛かるオノンドの牙を警棒でいなし、地面に叩き伏せると、そこに刃を頭から生やした武将のようなポケモンがトドメの一閃を放つ。

 

「妖刀探して幾星霜、まさか先に百鬼夜行の群れを見るとは思いもしなかったなぁ。でも、強敵相手はまさに武者震いがするというもの……キリキザンもそうでしょ!」

「キッシャァ……ッ!!」

 

【キリキザン とうじんポケモン タイプ:悪/鋼】

 

「さーてオノンドさん達。ヤバイところにずっぷし行く前に……引き下がった方が良いんじゃない?」

 

 同胞が倒されたことで更に怒り狂うオノンドたち。

 しかし、その背後から小さな影が幾つも襲い掛かる。

 キリキザンの進化前のポケモン・コマタナだ。

 幾ら強力な野生ポケモンと言えど数の暴力と不意打ちには敵わない。

 

「誇りは故郷に捨ててきた。これもまた、武士の戦い」

 

 背中から身体を刺され、次々に倒れていく。

 

 

 

「……()()()()()()()()()──なんてねっ♪」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「どいたどいたどいたァァァーッ!! 技術科のお通りだァい!!」

 

 

 

 プライシティを進軍するのは野生ポケモンだけではない。

 学園から派遣された重機たちだ。それらはミサイルを放ち、催眠ガスを溢れさせ、次々にポケモン達を無力化させていく。

 だが、それでも危険度4相応のポケモン達の猛攻を抑えきることはできない。

 狂暴化したコドラたちが重機を押しのけ、ガスをものともせずに罷り通る。

 

『先輩ダメですーッ!! 敵が強すぎます、突破されましたーッ!!』

「構わん、雑輩のガラクタに元より何の期待もしていないからねぇ!!」

『ヒドイ!?』

「無垢なる野獣共──人間を害するのは貴殿らの自由だが……()()()()()()()()()()()()()()()()だということを、ゆめゆめ忘れないでもらおうか!」

 

 その猛攻を嘲笑うように前線に立つのは、赤いブレザーの上に白衣を身に纏った少女。

 度の強い瓶底眼鏡は確かに敵の大群を捉えている。その隣には、三色の指を持つ埴輪のようなポケモンが浮かんでいた。知能の高いエスパータイプのポケモン・オーベムだ。

 

「オーベムよ!! 全知全能たる我々で、理屈では分からぬ超常現象というものの恐ろしさ、雑輩の脳に刻み込んでやるが良い!!」

「ぴーぴーぴぴぴぴー」

 

 

 

【オーベム ブレインポケモン タイプ:エスパー】

 

 

 

 突っ込んで来るコドラ達は皆、念動力で浮かび上がらされ、そのまま同時に衝突させられ、沈黙していく。

 更に追加で、オノンドたちの群れも現れたが、一気に彼らの動きは沈静化。一方で、オーベムの動きは高速化し、次々にオノンドたちをサイコエネルギーで撃滅していく。

 

 

 

「──どうだね? これが”トリックルーム”!! 遅いものは素早く、素早いものは遅く──貴様等には理解しえない、全知全能の超能力の神髄というものだ!! アーハッハッハッハッハッハ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 町に迫るポケモンの群れの第二陣を正面から迎え撃つのは、腕利きの教師陣だ。

 その先頭に立つのは、トレーナー科のダイモン先生だ。

 帽子を深く構える彼女の隣には、稲光のような毛を逆立てた獣型ポケモン・ライボルトが立っていた。

 すぐさまその身体を紫電に包むと、敵の大群に突撃していき──全てを吹き飛ばしていく。

 

 

 

「さあ、何処からでも掛かって来い。……此処から先は、このダイモンが通さんッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「あ、あかんっ、逃げ遅れてもうた……ッ!」

 

 

 

 人混みの中、足を挫いてしまったテマリ。

 しかし、この間にもショッピングモールの中に野生ポケモン達は入り込んで来る。

 とてもではないが、手持ちのポケモンで対抗できるような強さではない。

 かと言って、足が痛むので逃げることすらできない。

 オノンドの群れが彼女に襲い掛かる。

 

(あかん、あかん──ハッちゃん──うちもうダメや……こんな事やったら、もっとハッちゃんに素直になってたら良かった──ッ!!)

 

 ぎゅっと目を瞑ったその時。

 体に何かが巻きつけられ、一気に彼女の身体は天井まで引き寄せられる。

 

「ひゃああああ!?」

 

 目を開けた時。そこは、天井の吊り照明の上だった。

「さっ、私に付いてきて! Follow Me! 安全なところまで、連れていきマスからネー!」

 そしてその傍には、金髪碧眼の少女が座して、床の野生ポケモン達の姿を伺っていた。

 

「──OK! もう大丈夫デス!」

「お、おおきに……」

「さっ、私に付いてきて! Follow,Me! 安全なところまで、連れていきマスからネー!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

『うちは大丈夫っ! 親切な人に助けてもらったんよ!』

「よ、良かったぁぁぁー……」

『騒ぎが収まるまで匿ってもらうから、安心して!』

『……アホ! どんだけ心配したんや思うとんねや!』

『ご、ごめんっ……』

「とにかくこれで、一安心なのかな」

 

 ベッドに倒れ込むイクサ。

 友人の安全も確保できた。

 しかし迫りくるポケモンの群れ、と聞いて不安は更に強くなっていく。

 

(薬飲んで寝ちゃおう。多分、先輩や先生たちが何とかしてくれる──)

 

 ドンドンッ!!

 

「……?」

 

 寮の扉の方から何かを叩く音が聞こえてくる。

 こんな時に出歩いている人がいるのだろうか。

 

「どないしたんや?」

「いや、扉を誰かがノックしてて」

「ああ? 不用心やなぁ」

「……ちょっと覗いてみるよ」

 

 

 ドンドンッ!!

 

 ノックというよりも、殴りつけるような音だった。

 そして扉の前に立った時──

 

 

 

「ぱもっ! ぱもぱもっ!」

 

 

 

 あの鳴き声が聞こえてきて、イクサは思わずドアノブに伸ばした手を止めた。

 

「パモ……様? 何で来たの……?」

「ぱもぉっ、ぱもぱもっ!!」

 

 声は明らかに何かに怯えているような、怖がっているようなものだった。

 

(何故わざわざ風紀委員長室を出て、此処まで……!?)

 

 疑問は尽きない。

 しかし、その声は何かの危機を伝えているようだった。

 だがイクサは未だにパモが怖い。

 あの記憶が思い出される程に。

 

(……だけど)

 

 だが、その鳴き声に只ならぬものを感じた彼はドアノブを捻る。

 

 

 

(君だってきっと、怖かったはずなんだ……ッ!!)

 

 

 

 その時だった。

 ──地鳴りが寮を襲った。

 迷宮が出現した時とは比べ物にならない程の規模の揺れだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「おい、どうなってやがる」

「……非常にまずいことになったね」

 

 

 

 倒され、その身体を縮めて逃げられる前に、次々に野生ポケモンを捕獲していく二人。

 しかし──群れの最奥に辿り着いても、そこに居るはずの大物の姿は無かった。

 その代わり、巨大な大穴が口を開けていた。 

 穴を開けたのが誰なのかは言うまでもない──

 

「……逃げやがった……!?」

「いいや……野生ポケモンを追い立てたのは結果的にそうなったに過ぎないんだろう。邪魔なものを避けて、自分だけ最短ルートで目的地に辿り着くつもりだ」

 

 知ってるかい? とシャインはラズに問う。

 

「イワークは、時速80kmで地中を掘り進む……地上よりも遥かに速いスピードでね」

「……そして奴はそのイワークよりも種族として強いと考えると」

「それを上回る速度で向かってるんだろうね」

 

 穴の隆起している方角は──真っ直ぐに学園を示している。

 

 

 

「……学園が危ない──ッ!!」

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