ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第5話:学園モノ、治安が悪くなりがち

 ※※※

 

 

 

(向こうの世界のお父さんやお母さん、友人たちへ。成り行きでポケモンの世界に飛ばされ、知らん学園に入学することになってしまいましたが、僕は元気です)

 

(成り行きで決闘の代理人にさせられた挙句、宝物のレックウザのカードがとんでもない代物だという事が分かってしまいましたが、僕は元気です)

 

(今のところは帰ろうにも帰れないので、折角だしこの世界を出来る事ならエンジョイして帰ろうと思っています。出来る事なら)

 

(オシアスはとても暑い所です。空気がカラカラしていて、とてもではないけど学園都市の外に出る気にはなれません。何なら部屋から出るのも辛いです)

 

(その代わり、夜はとても涼しく、気持ちよく寝ることが出来ました)

 

(とりあえず僕は無事です。それを伝える手段が無いことだけが、非常に心残りです。きっと心配しているでしょうが、そのうち帰ります)

 

 

 

(そして、今日から──本格的に、僕の新しい学園生活が始まります)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──オシアス地方は、昔からポケモンすらなかなか住み着かない大砂漠が広がっていマス。では、そのような土地で人々が町を作り、発展することが出来たのは何故か?」

 

 

 

 ──転校最初の授業は「地理Ⅰ」の授業だった。

 スカッシュ・アカデミアは、日本の大学に似た、生徒が授業毎に講堂に移動するという形式だ。

 しかしテストが相応に難しいからか、生徒達は皆必死な顔で授業に食いついている。

 驚いたのは──生徒数が多く、授業の数も多いからかこの学園ではAIを搭載したロボットが教師を務める事も多いということだった。

 このスカッシュ・アカデミアでは、このAI教師を始めとして他にも様々な最先端の技術が採用されているのだという。

 例えば生徒はノートを取ることは無い。入学時に配布されるタブレットロトムをノートの代わりとする。

 これは、プラズマポケモン・ロトムが入り込み、ユーザーのサポートを行う超高性能品。更にポケモン図鑑の機能も併せ持っている上に耐久性も抜群。

 冒険にも耐えうる一品だという。

 

(今朝、寮を出る時に貰ったけど……最近恒例になってるロトム入り図鑑のシリーズだ。進化してるんだなぁ……) 

 

「川に湖。人間とは基本的に()()の流れる所を起点として生活圏を確保するのデス。最初にオシアスに降り立った人々は先ず北東部の海辺を拠点として、徐々に川を頼って南下しマシタ。この時の最初の湾岸が、この学び舎のあるプライシティなのデス」

 

(どっからどう見てもアフリカ大陸の北東、即ちエジプトだ……例によって、こっちのエジプトとは色々違うんだろうけど)

 

 この世界の地理が、イクサの居た世界の地理と一致する部分がある──というのはゲームと同じようだった。

 オシアス地方は、イクサが居た世界のエジプトに相当しているようだった。道理で暑くてカラカラしているはずである。

 現実のエジプト同様に海辺と川沿いを中心として都市部が建築されており、それ以外は大体砂漠らしい。

 

「しかし、オシアスには他の地方には無い厄介な性質が存在し、人類の発展を阻んでいマス──生徒ID34532──イクサさん、起立ッ」

「はいッ!?」

 

 AIが生徒を当てるのかよ、とイクサは驚く。既に冷や汗はたらたらだった。

 周囲の視線が一気にこちらを向く。

 

「早速ですが問題デス。オシアス地方特有の厄介な土地的性質を答えよ」

「え、えーと、厄介な性質ですよね……?」

 

(うっわ、心臓バクバクする……! 何で余計に目立たせるようなことするのさ……!)

 

 じっ、と生徒達の視線がイクサを囲う。

 非常にやりづらい。

 

「迷宮がある、ことでしょうか……?」

「うん? 音声が認識できませんデシタ」

「迷宮がある事です!!」

「正解デス──座って良し」

「はぁ……」

 

 心臓に悪い。ただでさえ周囲から注目を変に浴びていることをイクサは理解していた。

 昨日の決闘の所為だ。さっきから周りの視線はイクサに注がれている。

 正直これでは心が休まらない。イクサは自らの心に言い聞かせる。

 

(気にしない気にしない……別に僕、何か悪い事したわけじゃないし……)

 

「迷宮は、オシアス地方の生ける災害。中はポケモンが生息する異空間デス。常識は通用しまセン。内部はオシアス磁気が大量に充満しており、長居していれば()()()()()()()()()()()()危険性もありマス」

 

 さらっとなされたAI教師の説明に、イクサは恐怖を覚えた。自分のポケモンが暴走する──というのは聞き捨てならない。

 

(実はオシアス磁気って結構ヤバイのかな……? それをカードに記録する技術を作ったシトラス家って一体……)

 

「直に1年生も迷宮を探索する演習が始まると思いマスが……くれぐれも、安全的側面から、たとえ危険度が低い迷宮であっても勝手に入り込まないように」

 

(……演習、か。さっきの話を聞いた後だとワクワクしてばかりもいられないな)

 

 カリキュラムやシラバスをまだ全部理解しきっているわけではないが、1年生も演習で迷宮を探索できるのだと知ってイクサは胸を躍らせていた。

 しかし、オシアスを蝕む災禍がただ楽しいだけの場所のはずがなかったのである。

 迷宮演習に期待半分不安半分といったところで、チャイムが鳴る。

 

 

 

「それでは──定刻デス。皆様、お疲れ様デシタ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──授業が終わった瞬間、大変な事になったのは言うまでもない。

 ざっ、と生徒達が団子になってイクサに集ってきたのである。

 

「昨日の決闘見たよ!!」

「代理とはいえ、あのラズを打ち負かすとはな!!」

「ちょっと! 何うちの寮長負かしてくれてんのよ、空気読みなさいよ、あんた!!」

「あっちに行ってろ、ファイヤー寮の単細胞は!!」

「あんですってぇ!?」

「とんでもないのが転入生で入ってきたな……いや、うちの寮長を打ち負かすような強いヤツだから転入してきたとか?」

「何処出身?」

「どんなポケモン持ってるの?」

「わわわわわ……」

 

 寄ってくるのは主に赤と黄のブレザーの少年少女たち。

 決闘と直接絡みがない青のブレザーの生徒の姿も散見される。

 まさに試合勝利後のスポーツ選手の如く、だった。

 昨日の時点では、イクサは風紀委員室に呼び出され、その後はレモンに明日の事について案内されながら寮に直帰したので、彼と接触した生徒は少なかったのである。

 

(参ったなァ……これから事あるごとに、こうなるの? 僕、成り行きで代理になっただけなのに……)

 

 別に望んでそうなったわけではないので、鬱陶しいことこの上ない。それどころか、次の授業までまだ時間がある。

 このままでは、ずっと人混みの中であれやこれやと質問される羽目になる。

 

 

 

「はいはいはいはーい、そこまでや! そこまで! 堪忍やで、コイツなァ新聞部で取材のアポ取ってんねん」

 

 

 

 ぐいっ、と誰かがイクサの腕を掴む。

 そしてそのまま人混みの中から連れ出した。

 

「あーっ、!! ()()()、お前、転校生独り占めする気か!?」

「きっしょい言い方すんなやアホ!! 俺が独り占めにしたいんはスクープや──ほら、テマリちゃん、アレ頼むわアレ」

「はいはい……悪く思わんといてな。チルット、目晦ましお願い(”しろいきり”)!」

 

 

 

【チルットの しろいきり!!】

 

 

 

「どっわぁ!? 前が全然見えん!」

「あのやろ、校内でポケモンの技使いやがった!!」

「きゃあ! えっち! 今胸触ったでしょ!」

「ヒィッ、違ェよコレは事故で──」

 

 もくもくと周囲に白い霧が溢れかえり、視界は完全に封じられる。

 そして、その隙に二人はイクサを抱え込み、教室から抜け出すのだった。

 

 

 

(なんか拉致られちゃったけど、結果オーライかな……)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「この一軒家が新聞部の部室やねん」

 

 

 

 ──学園都市の近辺には、部活動の拠点となる部室棟が存在する。

 そして、大きな部活になると、1つの部活だけで大きな建物を所有していることもあるのだという。

 一方で、小さな部活や同好会ともなると、何処かの部屋を借りなければいけないらしい。

 そう言う意味では、彼らは比較的豪華な部室を貰っているのかもしれない。

 ……小さくてボロい、手作りのトタンの小屋を一軒家と呼ぶなら──であるが。

 

「それにしても、寮長下したっていうから、もっとゴツいヤツかと思ったら、存外可愛い顔やないか。女と間違えそうになったで」

「こら、ハッちゃん! 失礼!」

「ははは、すまんすまん」

「いいよ言われ慣れてるから……それより、新聞部の取材のアポなんて受けた覚え無いんだけど」

「ああ堪忍な。アレ、口から出まかせやねん。あのまま絡まれとったら、自分大変やったやろ」

 

 イクサを引っ張ってきたのはサンバイザーをつけた、気の良さそうな少年だった。

 背が高く気さくそうな笑みを浮かべている。

 

「ついでに、()()()なんてものがあるのも出まかせなんよ。新聞なんて今時時代遅れだし、部員はうちしか居らへん」

「うぐっ……それを言ったらオシマイやないか」

「えーと、君達は?」

「あんたと同じ1年、サンダー寮、トレーナー科のハッカや。特技は人より迅速に情報手に入れる事や。そんでもって、このモコモコが──」

「ちょっと! モコモコ言わんといてよ! 同じくサンダー寮、トレーナー科のテマリって言います。このチルットは、うちの友達なんよ」

「ぴぃー」

 

【トレーナー科1年”広報同好会”会長 ハッカ】

 

【トレーナー科1年”広報同好会”部員 テマリ】

 

 テマリは背丈の小さな女子生徒だった。

 成程、確かに彼の言う通り髪の毛の癖が強く、もこもことしている。

 きっと彼女が抱きかかえているチルットに似ていると言ったら、怒られるな、とイクサは口を噤んだ。

 だが、それはそれとして、実物のチルットは想像以上にもこもこしていた。

 綿のような羽根を持つ、ずんぐりとした鳥のポケモンだ。目はつぶらで、非常に愛らしい。

 

(か、可愛いッ……!)

 

「ぴぃ?」

「……何や、ガン見やないか。チルット見るの初めてなんか? 自分」

「え、えーとっ、そう! 実物見るの初めてで!」

「そうなん? うちも、迷宮でこの子と出会ったから、気持ち分かるよ。とっても可愛いやろ?」

「うんっ……抱っこしても大丈夫だったりする?」

「ええよ、大人しくて人懐っこいんよ!」

「せやなぁ、チルットの綿毛は極上やで」

 

 成程確かに、これは人をダメにする羽毛であった。

 胸に抱くと体温が直に伝わってくる上に、ふわふわの羽毛が癒しを与えてくれる。

 ボールから飛び出してきたパモも、チルットの羽根に埋まっており、すっかりと恍惚とした顔をしている。

 

(ダ、ダメになるぅ……)

 

「ぱもぉ……」

「おっ、それが例のパモ様か。あんさんがそのまま預かっとるんか?」

「え? ああ! パモ様、出て来てる!」

「ぱも?」

 

 パモは何を驚いているんだと言わんばかりに首を傾げてみせる。

 

「勝手に出てきたらダメだよ」

「ポケモンも、ボールから出ようと思ったら出て来る時があるんよ。ちゃんと躾けないといけんよ?」

「せやな。そも、ポケモンを弱らせへんと捕まえられんってのはそういうことやからな」

「ええ……モンスターボールって意外と信頼性無いんだね……」

「なんや、ポケモン捕まえた事あるんなら分かるやろ。今まで知らへんかったんか?」

「あっ、いや! 改めてそう思っただけ! ところで……その話し言葉……もしかしてジョウト出身とか? 僕、ジョウトって一回行ってみたくて──」

 

 異世界出身の為、こうして向こうの常識とすり合わせられない時があることをイクサは痛感した。誤魔化すように話題を転換し、切り返す。

 

「おっ、ジョウトに憧れるとは、なかなか自分センスあるやんけ! せや、俺はコガネ出身。んで、コイツがエンジュ出身やねん」

「うん。うちの方がコガネに引っ越してきたんよ」

「それ以来の付き合いっちゅうわけや。いやぁ、テマリちゃんのお世話もこうしてみると長いもんで」

「お世話って何! いけずな言い方せんといてよ!」

「どうだか」

 

 ジョウト地方とは、イクサの居た世界で言う日本の中部地方に相当する場所だ。

 コガネシティは大阪、エンジュシティは京都に対応しており、方言を使うキャラクターもゲームに登場する。

 彼らの方言が似ているようで違うのは、大阪弁と京言葉で差異があるからである。

 

「へぇ……この学園、色んな所から人が来るんだね」

「せや。パルデアカロスガラルにイッシュ、オーレ……でも、俺らみたいな()()出身の留学生は少数派やけどな」

 

 彼の言う列島とは、シンオウ地方、カントー地方、ジョウト地方、サイゴク地方、ホウエン地方のように、日本をモチーフとした地方全般の事を指す。

 「日本」という国の概念が存在しないから、このような呼び方をするらしい。

 

(うーん、この世界の常識とか色々調べ直した方が良さそうだ。ゲームだけじゃあ分からない事だらけだぞ)

 

「ジョウト出身は俺と、腐れ縁のもこもこだけやねん」

「はぁ? そんないけずな言い方せんといてよ!」

「腐れ縁やろ。ハッちゃんと離れるのイヤやぁー、言うて泣きながら必死こいて勉強しよったやないか」

「そんな事言ってへん! それに、受験もらくしょーやったもん!」

「どーだか」

「要するに……幼馴染で、とっても仲が良いんだね」

「良くないっ!」

 

 二人とも息ぴったりだった。

 

(僕、ひょっとして邪魔なんじゃないかな……)

 

「堪忍な? ハッちゃん、頭すかたんやから時々ヤな思いさせるかもやけど、ガマンしてあげてな?」

「オイこら、誰が頭すかたんや、もこもこ」

「だからもこもこ言うのやめてよ、いけず!」

「もこもこやからもこもこ言うとんねん!」

「えーと……それで、僕はどうしたらいいの? 匿ってくれたお礼に取材受けたら良いのかな」

 

 口喧嘩を始めてしまった二人を諫めるように、イクサは割って入る。

 我に返ったハッカはコホン、と咳払いするとメモ帳とペンを慣れた手つきで取り出す。 

 メモ帳の表紙には「取材」と書かれていた。

 

「せや、広報同好会記念すべき最初の記事が、転向早々寮長下した1年生の記事っちゅうのは……なかなかビッグな紙面になるんとちゃうかな」

「何言うてはるの、ハッちゃん。転向早々決闘の代理の代理に選ばれて、えらい思いしとったに決まってはるやないの。これ以上目立たせたら可哀想や」

「オイ転校生。お前はどうなんや。男なら人生に一度はパァーッと目立つ機会が欲しくならへんか?」

「い、いや、僕目立ちたくて決闘の代理を引き受けたわけじゃなくって……色々仕方ない事情があったんだよ」

「何や自分、あの寮長になんか弱みでも握られとるんか? 食えない顔しとるもんなぁ、あの人」

「ちょっとハッちゃん!」

「どーせ此処には俺らしかおらへんから、何言うてもヘーキやヘーキ!」

「もう……ただでさえ此処、えげつなく治安悪いのに、バチ当たっても知らへんよ?」

「え、治安悪いの? 此処……」

「ハッハ、決闘が合法化しとるようなガッコが治安良い訳あらへんやろ。確かにお嬢様お坊ちゃま秀才天才集まるエリート校やけど……どいつもこいつも負けん気が強いのばっかやねん」

 

 説得力しかない一言に、思わずイクサは頭を垂れた。おまけに学校を挙げて、その決闘にノリノリなのだから、救いが無い。

 

「まあ決闘で済むうちはええねん。部活同士、寮同士で派閥がバチバチやし、それでよく争いも起こる。風紀委員もハッキリ言って手が追い付いてへん。そして生徒が良い所の坊ちゃまや嬢ちゃんばっかで上もあんまり口を出せへん」

 

 言ってしまえば、生徒の力が非常に強く、生徒の自治権限が強い校風らしい。

 教師をAIに任せているのも、その辺りの「面倒な問題」を回避するためではないか、とイクサは考えると末恐ろしくなった。

 

「当然、金持ちたちは威張り散らしとるし……ポケモンの強いヤツも威張り散らしとるし、弱い奴等も群れて威張り散らしとる。目くそ鼻くそや。俺らみたいに慎ましく生きとる人間は涙ちょちょぎれるでホンマ」

「……言うほど慎ましいとは思えへんのやけど」

「やかましいわ! とにかく、自分も気ィ付けぇや。例えばこうして扉を開けると、誰かがいきなりカチコミ仕掛けて来るかもしれへんのやで」

「またまたぁ……幾ら何でもそんなことあるわけないでしょ」

「ハッハ! やと良いけどなァ」

 

 がちゃり、と何の気も無しにハッカが扉を開けた瞬間、芝刈り機の音を更に激しくしたような轟音が響き渡る。

 トタンの小屋を睨むように──見上げるような大きさの重機が鎮座していたのである。

 それは、サイ型のポケモン・サイドンに酷似していた。目は電飾のように光っており、全身は鋼に包まれている。

 足はキャタピラになっており、動力となっている部分には歯車のポケモン・ギアルが嵌めこまれて回転しているのだった。

 ハッカは見なかった事にしよう、とばかりに扉を閉めるが、イクサとテマリがその手を止めた。現実逃避している場合ではない。

 チルットは震えあがってしまっており、パモもごしごしと電気袋を擦って怯えた顔をしている。

 

「いやいやいやいや! 何で!? 何事!? 君なんかやらかしたの!?」

「何にもやってへん!! 何にもやってへん!! 知らぬ存ぜぬや!!」

「てか、何なのあのブリキのマシンは!?」

「うちには技術科があんのは知っとるやろ!? だから、部活や委員会、寮、ありとあらゆる組織や派閥があんな感じでメカメカしい戦力を保有しとるんや……物騒極まりないでホンマ……」

「技術科ァ!!」

「どうせハッちゃん、またどっかですかたんしたんやろ!? 土下座して謝って!!」

「俺の土下座は安くあらへん!!」

「そんな事言ってる場合ィ!?」

「こんな時まで喧嘩は止しなよ、二人ともォ!?」

 

 

 

『やっぱりそこに居たな転校生ッ!! よくも先日はうちの寮長を……ッ!! どうせ疚しい手でも使ったんだろうッ!!』

 

 

 

 スピーカー越しの女の声がサイドン型重機の中から聞こえてくる。どうやら、昨日の決闘の結果が不服なファイヤー寮の生徒らしいことはすぐに分かった。寮の旗が重機からは飛び出している。

 

 

 

『大人しく出て来いッ!! ラズ様の名誉に懸けて、”ラズ様非公式ファンクラブ”が貴様を断罪してくれるわッ!!』

 

 

 

 ハッカの言った通りだった。この学園の治安は──終わっている。

 身を以てイクサは思い知らされるのだった。決闘で物事が決まるなら、まだ優しい部類だったのである。

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