ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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ユニバァァァァァス!!
本エピソードは2作目である「ポケモン廃人、知らん学園に入学した。」のキャラクターが登場する上に、話が地続きになっています。是非、そちらを読んでからご覧ください。
コンセプトは……もう言わんでも分かるな? 祭りの始まりじゃい!!
それでは皆さんも一緒に──


「ポケモン廃人・ザ・ユニバース」(前編)
第1話:ユニバース!!ユニバース!!ユニバァァァス!!


「──うるせえええええええええええーッッッ!!」

 

 

 

 ──パルデア地方・テーブルシティ。

 石造りの建物が立ち並ぶ隋一の大都市であり、歴史ある”アカデミー”を擁していることで有名である。

 陽はとっぷりと暮れており、静かに人々は一日の疲れを癒す──はずだった。

 静謐さとは凡そ無縁な叫び声が町の雰囲気をブチ壊す。

 そして、青年は後ろに大量のヤミカラスの群れを引き連れていた。

 否、引き連れていると述べると聊か語弊が生じる。好きで彼はヤミカラスの大群を連れていたわけではない。

 より正確に書くならば──追っかけられているというのが正しい。

 

「カァカァカァカァカァカァカァカァカァ!!」

「うるせぇうるせぇうるせぇ! お前らにやるものなんて何一つねーんだよ!!」

「ふぃるふぃー……」

「だークソ、次から次へと集ってきやがって!! 寄るな来るな近付くなーッッッ!!」

 

 ──ポケットモンスター。縮めてポケモン。この星の不思議な不思議な生き物。

 これは、そんな生き物が住む世界に突然放り出されてしまった男の物語。

 彼の名は──メグル。

 その傍を走るリボンをたなびかせたポケモンはニンフィア。

 ふたりはこれまで、幾たびもの冒険を繰り返して来た──

 

「今日はアルカと付き合って丸一年の記念日なんだよ!! 何でテメェらに邪魔されなきゃいけねーんだッ!! くそーっ!!」

「ふぃるふぃー……」

 

 メグルの頭には、愛しいカノジョの顔が浮かぶ。

 それを見て面白くなさそうに鳴くニンフィア。

 彼の手にはプレゼントを入れた紙袋が下げられている。

 今日の為に必死に考えたり集めてきた代物である。

 中でも一番は──パルデア地方では滅多に手に入らないポケモンの化石であった。

 

(くっくく、前にテレビで見て、欲しい欲しいって言ってた大昔のサニーゴの化石!! 知り合いから譲って貰ったんだよな!! 喜ぶ顔が目に浮かぶぜ!!)

 

「カァカァ?」

 

【ヤミカラスの ほしがる!!】

 

「だからお前らにはやらねーってんだよ!!」

「カァカァカァ!!」

 

 ※ヤミカラスは ”ほしがる”を覚えません。

 

 恐らく、ヤミカラスたちはケーキの匂いに釣られてきたのだろう、とメグルは考える。

 だがこの野生ポケモン共にくれてやるプレゼントは生憎、ひとつたりとも無いのである。

 町中に突っ込むと、人々やポケモンが驚いた顔でメグルを避けていく。そして、後に現れるヤミカラスの大群を見て悲鳴を上げる。

 

「クソッ、こいつら町中でもお構いなしかよ!!」

「カァーカァ!!」

 

 ──さて、ヤミカラスを指揮するのは、最後尾にいる一際大きなドンカラスであった。

 人間のモノや、エサとなるポケモン、そして──キラキラ光るものに目が無いドンカラスは、目に入ったものを手下達に命じて掠奪をしていく。

 だが、特に気に入ったものは、自らの手で奪い取るという悪癖があるのだ。

 ドンカラスが目を付けたのは真下で自慢話をしているふくよかな体形のマダム──ではなく、その傍にいる大きな唇が特徴的なポケモンであった。

 

「どうザマス? この、おニューの宝石!! カントーから連れてきたムチュールちゃんにピッタリザマしょう?」

「むちゅー!」

「ムチュールちゃんはパルデアに居ないから、初めて見たザマス!!」

「そうザマしょう? そうザマしょう?」

「むちゅーるっ!」

 

【ムチュール くちづけポケモン タイプ:氷/エスパー】

 

 ムチュールの首には、キラキラと輝く赤い宝石が煌めいていた。

 それを発見したドンカラスはすぐさま急降下。あろうことか、ムチュールを掴んで空へ連れ去ってしまったのだった。

 

「きゃーっ!! ムチュールちゃーんっ!?」

「何ッ!?」

 

 メグルは思わず聞こえてきた悲鳴に振り向く。

 そして度付きのゴーグルを掛けて、ヤミカラスの群れの後方を確認した。

 宝石を付けたムチュールがドンカラスのかぎ爪に捕らえられて宙づりになっている。

 

「クソッ、こいつら……黙って逃げてりゃ好き放題しやがって、もう堪忍袋の緒が切れたッ!!」

「ふぃるふぃーっ!!」

 

 すぐさま急降下してくるヤミカラスたち。

 しかし、ニンフィアはとびっきり悪い顔を浮かべてみせると──絶唱する。妖精の加護を受けた歌声を。 

 皆まで言う必要はあるまい。

 何故このフリフリリボンが、凶悪リボンだとか狂暴リボンだとか、最恐リボンだと言われているのか。

 

 

 

「ニンフィア、ハイパーボイスッ!!」

 

【ニンフィアの ハイパーボイス!!】

 

 

 

 特大の声量の音波を受けたことで、ヤミカラスたちは次々に撃墜されていき、地面に落ちていく。

 だが、リーダーたるドンカラスは部下たちが倒れたのを意にも介さずUターンし、逃げ去っていく。

 

「イヤーッ!! 私のムチュールちゃんがーッ!?」

「安心しろよ、おばちゃん、すぐに助ける!!」

「んまッ!? 貴方は一体──」

 

 すぐに追いかけるメグルは次のボールを投げる。

 空を飛ぶ鳥を堕とすならば岩タイプの出番だ。

 

「──バサギリッ!! ”がんせきアックス”!!」

「グラッシュ!!」

 

 飛び出したのは、黒曜石の斧を携えた蟷螂のポケモン・バサギリ。

 すぐさまドンカラスに追いつく勢いで地面を駆けていき、建物の壁に飛び移るとそのまま空へと飛び出し──ぐるぐると勢いをつけて回転する。そして、ドンカラスの脳天目掛けて、その大斧を叩き込むのだった。

 

 

 

【バサギリの がんせきアックス!! 効果はバツグンだ!!】

 

 

 

 思いっきり致命傷を受けたドンカラスは、そのまま地面へ墜落していく。

 勿論、掴んだムチュール諸共。

 マダムはそれを見るなり悲鳴を上げるが──勿論メグルは抜かりが無い。アフターフォローもバッチリだ。

 次に投げたボールからは、鬼火を身体に纏った大鹿のポケモンが現れ、ムチュールの落下地点目掛けて飛び出す。

 

「アヤシシ!! ムチュールを受け止めろッ!!」

「ブルトゥームッ!!」

 

 地面を蹴ると鬼火が爆発する。

 その勢いで猛加速したアヤシシは、空中のムチュールの首を咥えてキャッチするのだった。

 後から追いついたメグルは、息を切らせながらもアヤシシからムチュールを受け取り、安堵する。どうやらケガはないようだった。

 

「むちゅー? むちゅ!! むちゅーる!!」

「大丈夫だったか? 良かったぜ、連れてかれなくてな」

「むちゅ! むちゅーっむちゅーっ!!」

「おわぁ!?」

 

 ムチュールはすぐさまメグルに飛びつき、首や顔に口づけしていく。

 この種族は気に入ったものに対して、唇をとにかくくっつける習性があるのだ。

 

「うっ、うっ、良かったザマス、ムチュールちゃん……一時はどうなる事かと……」

「いやいや、礼には及ばないって」

「ふぃるふぃー」

「金一封お包みするザマス!!」

「いや、マジで良いから、困るから──あ”ッ」

 

 メグルは──腕時計を見て絶叫する。もう夜の九時。アルカは確実にお冠だ。

 すぐさま走り出す。テーブルシティは広い。まだアパートまで大分距離がある。

 

 

 

「くっそー!! あのヤミカラス共の所為で、もうこんな時間だ!!」

「ふぃー……」

「アルカのやつ、大分待たせちまったな……」

 

 

 

 ──今日はボクが腕によりをかけて料理作るからっ! 早く帰ってきてねっ! 

 

 

 

 本当ならもっと早くに帰るつもりだったのだが、プレゼント選びや受取に手間取り、ずるずると遅くなってしまったのだ。

 このままでは記念日が終わってしまう。

 

「走れニンフィア!! このままじゃ、アルカに怒られるじゃ済まねえ!!」

「ふぃー……」

「よくよく考えたらお前はボールに戻せば良かったか」

 

 何で私まで走らされてんだ、と言わんばかりにニンフィアはメグルを思いっきり睨み付ける。

 メグルがボールを取り出そうとしたその時だった。

 

 

 

「──かぬぬぬっ!!」

 

 

 

 甲高い声がその場に響く。

 聞き覚えのあるそれに一瞬メグルは足を止め、辺りを見回す。

 

「デカヌチャンか!? って事は近くにアルカが──!?」

「ふぃ!?」

 

 

 

 

【──デカヌチャンの ヒートハンマーッ!!】

 

 

 

 突如迫る熱源。

 ニンフィアは慌てて飛び退く。

 石の地面が砕け散り、メグルは後ずさった。

 

「かぬ……かぬぬががががん!!」

「──!?」

 

 メグルの前に現れたのは、アルカの手持ちであるデカヌチャン──だが、その姿は彼が知るものとは大きく異なっていた。

 背中には燃える炎のハンマーを背負い、口と目からは絶えず炎が噴き出している。

 何処からどう見ても、アルカの手持ちの個体と同一には見えない。

 

「な、なんだ……!? 炎タイプのデカヌチャン……!?」

「ふぃるふぃ!?」

「アルカのところのじゃねえな……どう見ても!!」

「ふぃ……!!」

 

 

 

【デカヌチャン(????のすがた) ハンマーポケモン タイプ:???】

 

 

 

 辺りにトレーナーらしき人間の姿は見えない。

 野生ポケモンなのだろうか、と姿を見やるが──首に宝石のようなものをぶら下げている。

 メグルは憤る。やはり人間に育てられたポケモンのようだった。

 

「おい、何処のどいつだ!! トレーナーが居るなら出て来い!!」

「かぬぬがんッ!!」

「ッ……避けろニンフィア!!」

「ふぃッ!!」

 

 

 

【デカヌチャンの かえんほうしゃ!!】

 

 

 

 デカヌチャン──と思しきポケモンは口から炎を噴きだす。

 辛うじてそれを避けたニンフィアは、シャドーボールを幾つも浮かび上がらせて迎撃。

 しかし、それを受けたくらいではびくともしないのか、デカヌチャンは自らのハンマーに炎を噴きつけると再びそれを振り回してくるのだった。

 

「炎タイプか──ニンフィア、交代だ!!」

「ふぃっ!? ……ふぃ!!」

「……ま、お前はそう言うよなあ」

 

 ボールに戻る事を拒否するニンフィア。

 デカヌチャンは彼女にとってライバルのような存在だ。

 個体が違うとはいえ、舐められたままでは納得がいかないのだろう。

 

(つっても今、オーライズは使えねえし……! てか、こいつ一体何処から来たんだ!?)

 

 元々デカヌチャンはパルデア中心に確認されているポケモン。

 だが、当然パルデアに炎タイプのデカヌチャンは生息していない。

 そしてメグルがこの世界に滞在してから知る限り、炎タイプのデカヌチャンは──確認していない。

 となれば、思いつく可能性は唯一つ。

 

(まさか、ヒャッキのポケモンか!?)

 

 ──かつて異界から現れ、この世界に侵略してきた外来種・ヒャッキのポケモンということだ。

 彼らは異界から現れ、サイゴク地方を蝕む兵器として運用されてきた。

 この世界よりも過酷な環境で育ち、そこで耐え凌ぐための進化を遂げた屈強なリージョンフォーム達だ。

 しかし、ヒャッキとサイゴクの戦争はとっくに終わったこと。

 そして、此処はパルデアで、ヒャッキ地方とは縁もゆかりも無い場所であること。

 何故ここに、異界のリージョンフォームが現れたのかメグルには理解出来なかった。

 

「ニンフィア、来るぞッ!! ”シャドーボール”!!」

「ふぃるふぃー……!!」

 

 影の弾を弾幕の如く張り巡らせるニンフィア。

 それを次々に飛ばすが、デカヌチャンはそれらを迷うことなくハンマーで正確に撃ち落とし、跳ね返していく。

 そして、ニンフィアの眼前に迫ると、まるで野球のバットのようにハンマーを軽々と振り上げたのだった。そこに、自らが吹きつけた炎をたっぷりと纏わせながら──

 

 

 

【──デカヌチャンのヒートハンマー!!】

 

 

 

 ニンフィアの身体は軽々と吹き飛ばされ──メグルに叩きつけられ、ふたりは縺れて岩壁に叩きつけられる。

 

「ふぃ、ふぃぎぃ……ッ!!」

 

 殺意の籠った視線で、デカヌチャンを睨み付けるニンフィア。

 しかし、それで獲物への興味を失ったのか、デカヌチャンは建物の壁に飛び乗り、そのまま逃げてしまうのだった。

 

「ふぃ!?」

 

 ニンフィアはふと振り向く。

 頭を打ったのか、メグルは気絶してしまっていた。

 そしてニンフィアもまた、ダメージを受けたからか、そのままもたれかかり、気を失ってしまうのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「……う、あぐ……」

「ふぃ……」

 

 

 

 しばらくして。

 メグルとニンフィアは目を覚ます。

 あのデカヌチャンは、もうどこにも居なかった。

 だが──差し込む朝日で、自分達に何が起こったかを察する。

 

「や、やべぇっ!! もう朝じゃねえか!!」

「ふぃー!!」

「あのデカヌチャン、どっかに行ったみたいだけど……それどころじゃねえ!!」

「ふぃ!! ふぃ!!」

 

 思わずメグルはスマホロトムを開き、蒼褪めた。

 不在着信が大量に届いている。留守電を開く勇気も出ず、そのまま走り抜けるのだった。

 

「ニンフィア、平気か!?」

「ふぃふぃ!!」

「だよな、それどころじゃねえもんな!!」

 

 とっくに記念日は過ぎてしまっている。

 息を切らせ、やっとの思いでアパートに着くと──そのまま呼び鈴を鳴らす。

 返事はない。すぐさま合鍵を使って、中に押し入ったのだった。 

 

「アルカ!!」

「ふぃーっ!!」

 

 部屋に入ると──テーブルの上には、ラップをかけた料理。

 そして、その前でくぅくぅ、と寝息を立てる姿。

 肌の色は青白く、ぶかぶかした部屋着を身に纏っている赤毛の少女。

 間違いなくアルカだった。

 そして、メグルが入ってきたのを察してか──彼女は目を擦り、起き上がる。

 

「……メグル?」

「ごめん、アルカ!! 実は色々あって──帰れなくって!! でも、ほら!! プレゼント買ってきたからさ!!」

「……ひどい」

 

 ぽつり、とアルカは呟き、メグルは口を閉ざした。

 

「ひどい……早く帰ってきてって言ったのに。待ってたのに」

「あ、いや、だから、それは……ほら!! これを見てくれ!! 前に欲しいって言ってたサニーゴの化石……が……」

 

 紙袋からそれを取り出したメグルは蒼褪める。

 頑強なはずのケースはへしゃげてしまっている。中の化石がどうなっているかは言うまでも無かった。

 砂のような音が聞こえてくる。それを聞いて──アルカは一歩、また一歩とメグルににじり寄る。

 

「何これ。何なの? 嫌がらせ?」

「……ち、違っ……違うんだって!! これは、事故!! そう、事故だから!!」

「……じゃあさ」

 

 アルカは──メグルの襟元を思いっきり掴む。

 

 

 

「ほっぺと首に……ボクじゃないキスマークがついてるのも……事故?」

「ほ、他の女──!? バカ言え、そんなはず──」

 

 

 

 さぁっ、とメグルの顔は更に蒼褪めた。

 アルカが指摘する首元、そして頬。そこにはくっきりと赤くうっ血した跡。

 

「あ、あああ……あのムチュール!!」

「よくもまあそんな誤魔化すような言葉がホイホイ出てくるね。信じてたのに。信じてたのに……ッ!!」

 

 アルカの目は長い前髪の所為でよく見えない。

 しかし、涙で滲んでいることだけはよく分かった。

 

「違う! 本当に違うんだって!!」

「ふぃ、ふぃ……」

「デカヌチャンッ!! デカハンマーでふたりを叩きだしてッ!!」

「かぬぬぬっ!!」

 

 アルカはボールを放る。

 中からは、見慣れている方の全身ピンクの野蛮ポケモンが現れる。

 ニンフィアでさえもタイプ相性で太刀打ちできない、文字通りの天敵だ。

 

「そう!! そうだ!! 実は変なデカヌチャンにいきなり出会って──」

()()()()()の──」

 

 

 

【デカヌチャンの デカハンマー!!】

 

 

 

「──バッカ野郎ーッッッ!!」

 

 メグルとニンフィアはデカヌチャンのハンマーに叩きだされ、玄関からそのまま弾き出された。

 

 

 

「二度と帰ってくんなっ!! バカ!! アホ!! 女ったらしの浮気者ーッ!!」

 

 

 

 そう言って、アルカは玄関の扉を閉めてしまう。

 ぴくぴくと震えながら、ゴミ箱まで吹っ飛んだメグルは這う這うの体で起き上がり、頭から突っ込んだニンフィアを引っ張り出す。

 

「ふぃるきゅ~……」

「そ、そんな……何でこんな事になっちまったんだぁ……」

「ふぃー……」

 

 メグルにとってはこれまでで最悪の一日の始まり。

 しかし、彼は思いもしなかった。

 

 

 

 ──これが、宇宙も揺るがす大事件の始まりであったことなど。

 

 

 

──特別編「ポケモン廃人・ザ・ユニバース」

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