ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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CC45話:三位一体

 ──スオウシティで二匹のヌシを蹂躙したイデアが次に行く先は、シャクドウシティ。

 戦争の傷がまだ癒えないこの町に、イデアは強襲していく。

 今まで住居を置いていた町だが、未練など無かった。

 

「後腐れが無いように──今度はしっかり燃やしておかないとねぇ」

 

 既に住民たちは避難済み。しかし、ルギアとホウオウは空を飛ぶことができる。

 逃げ場など無い。いずれは追いつかれてしまう。

 羽ばたけば嵐が巻き起こる。そして、炎が全てを灰燼に帰す。

 だが、それを善としないポケモンが当然、いる。

 

「──ギュラルルルッ!!」

 

 バチバチと電気を放ちながら威嚇する黒いヌシポケモン。

 イデアと、2匹の伝説のポケモン相手でも臆さずに立ち向かっていく。

 それを取り囲むのは、おやしろのトレーナー達だ。

 

「敵は飛行タイプ!! 電気が有効だ!! まとめて掛かれーッ!!」

「ユイちゃんが頑張ってるんだ、俺達が命張らなくってどうするってんだ!!」

「イデア博士ーッ!! 見損なったぞーッ!!」

 

 電撃が四方八方からホウオウとルギアを襲う。

 しかし──

 

「あ、あれ、何で、効いてねえんだ……!?」

 

 ──全くと言って良い程、二匹にはダメージが通っていない。

 無理もない。ルギアもホウオウも非常に高い特防を持つ。

 更に、ルギアは元よりエスパータイプ。攻撃技も豊富だが、補助技のバリエーションも多い。

 

「”ひかりのかべ”……これを展開した以上、もう2匹に死角はない。電撃で彼らを落とすのは諦めたまえ」

「ギュリリリリリィーン……ッ!!」

 

 サンダースが全身から黒い稲光を放つ。

 そしてそれが、弓矢のように装填されていき、ホウオウとルギアを狙う。

 オオワザの姿勢だ。近付いただけで焼け焦げる程の電圧が放たれている。

 

 

 

【サンダースの ホノイカズチ!!】

 

 

 

 レールガンのように放たれた一撃は、イデア諸共ホウオウを貫く──はずだった。

 

「オオワザ──”てんちゅうさつ・そらなき”」

 

 黒い太陽が──電撃を全て飲み込んでしまったのである。

 そして、それはゆっくりと周囲のものを飲み込んで熔かしながら進撃していく。

 トレーナー達も、ポケモン達も逃げ惑うしかない。

 サンダースも流石に危険を感じたのか、退避を試みる。しかし。

 黒い太陽の引力は非常に強く、引きずり込まれてしまう。

 

 

 

「サンダース……君1匹で勝てるわけがないじゃないか。こっちは伝説だぞぉ、伝説」

 

 

 

 黒い太陽が──爆ぜた。

 クレーターが出来る程の爆轟。

 サンダースは撥ね飛ばされ、木に叩きつけられると、そのまま気を失ってしまう。

 ヌシポケモンでさえ、1匹では伝説に傷をつけることすら叶わない。

 死の灰は振り撒かれ、シャクドウの町も荒れ果てていく──

 

「させるかぁぁぁーっ!!」

 

【オトシドリの がんせきふうじ!!】

 

【パーモットの でんこうそうげき!!】

 

 しかし、死角からすっ飛んでくるのは、オトシドリが放った岩石。

 そして電撃を拳に溜めて振り回し、ルギアの背中にぶつけるパーモットだ。

 物理技を防ぐ”リフレクター”はまだ展開していない。不意を突かれたホウオウは翼に岩を受けて墜落。

 更にルギアも背中に強烈な物理の電気攻撃を受けたことで叩き落とされてしまう。

 それでも持ち前の耐久力故か、二匹とも起き上がるのであるが──

 

「ッ……あれを掻い潜ってきたんだねえ!! 流石に驚いたよ」

「──メグルさんは……生きているッ!!」

「そうだよッ!! ボク達が信じてればきっと──ッ!!」

 

【パーモットの ほっぺすりすり!!】

 

【カブトプスの あまごい!!】

 

 オトシドリから飛び降りたアルカはカブトプスを繰り出す。

 空は曇天となり、雨が降り出す。

 これにより、炎技の威力は半減され、水技の威力は1.5倍。

 そして──カブトプスの素早さは倍増する。

 更に、パーモットがルギアの背中に貼り付いて、電気を帯びたほっぺを擦りつけた。

 その身体は一気に痙攣し、羽根を動かす事すらままならなくなる。

 更に、雨が降ったことによってホウオウの熱が一気に失われ、相手を惑わせてきた陽炎も消え失せる。

 

「あーあぁ、もしかしてそれで勝ったつもりになっちゃってるのかなぁ!! ルギア、”レッドタイダル”!! ホウオウ、”てんちゅうさつ・そらなき”!!」

 

 大竜巻がすぐさま巻き起こり、更に漆黒の炎が生成されていく。

 だが、それを上回る速度でカブトプスは肉薄し、ホウオウ目掛けて岩の刃を突きつける。

 

「幾ら伝説のポケモンって言ったって──ッ!!」

「ポケモンである限り、付け入る隙はあるんスよーッ!!」

 

 特性:すいすいによって、ホウオウよりもカブトプスの方が圧倒的に速い。

 すぐさま背後に回り込み、タイプ一致・4倍弱点のストーンエッジが突き刺さった。

 そして、パーモットがぐるぐると腕を振り回し、ルギアに向けて渾身の雷パンチを見舞う。

 雨で濡れていたこともあって、一気に身体全部に電撃が回り──ルギアのオオワザは解除されてしまう。

 

「──おいおい、やってくれちゃうねえ」

 

 最大の弱点とも言える攻撃を受けたホウオウは体力を削り取られ、瀕死一歩手前。

 ルギアも麻痺したことによって持ち前の素早さを失い、疲弊している。

 天候が味方しているということもあり、一気に形勢はノオト達に傾いた。

 

「そう、メグルさんが今までの戦いで教えてくれたんスよ……強敵相手は弱体化が鉄則!!」

「そして……どんな相手にだって、弱点はあるんだッ!! それを突けば、勝てない戦いは無い!!」

「……なるほどねえ。確かにポケモンであれば、弱点がある。それは仕方がないことだ。じゃあ──()()()()()()()()()()どうかな?」

 

 にやり、と笑みを浮かべたイデア博士は──再びドーブルをボールから出す。

 

 

 

「……ドーブル。墨を全部使っちゃえ!!」

「どぅーどぅる……ッ!!」

 

 

 

 どくどくとドーブルの尻尾から墨が溢れ出す。

 それは、グロッキーなホウオウとルギアを包み込み──飲み込んでいく。

 

「お、おいおい、何をするつもりッスか……!?」

「伝説のポケモンが……墨に……!?」

「いやぁ、本当はクライマックスで使うつもりだったんだけど、やっぱ出し惜しみって面白くないじゃない?」

 

 墨はドーブル自身も飲み込んでいき、五重塔をも超える程に巨大な大きさへと変貌していく。

 そうして完成したのは──全身が墨で覆われた、巨大なドーブル。

 しかし、その表面にはボコボコと音を立てて、ルギアとホウオウの頭部が浮かび上がり、見え隠れしている。

 あまりにも悍ましいその姿に二人は、慄き、後ずさってしまった。

 全長30メートル。

 どろどろとした墨で町を飲み込む文字通りの怪物だ。

 

「力ってのは、使ってこそ意味があるものだ。500年の僕とは違う。ちゃあんと制御しなきゃね……ッ!」

「と、取り込んだ……伝説のポケモンを……ッ!!」

「色々と台無しなんスけど──!? 悪趣味な怪獣ッス!!」

「ふふっ、良いだろう? ……僕が世界の頂点に立った暁には、センセイも世界の頂点に立つってことだからね!! 勿論……オオワザだって使える!!」

 

 

 

【ドーブルの レッドタイダル!!】

 

【ドーブルの てんちゅうさつ・そらなき!!】

 

 

 

 右手からは、海を穢す赤き渦潮を。

 左手からは、全てを飲み込む漆黒の太陽を。

 それがまとめて町を喰らい尽くし、その余波だけでアルカとノオト、そしてカブトプスとパーモットを吹き飛ばす。

 更に黒い太陽が大きく爆ぜた。

 家屋が焼かれ、五重塔も燃えていく。

 町は一瞬で灰燼と化した。

 

「ははははははーッ!! 良いねえ!! 流石だよセンセイ!! これが、僕の欲しかった力さ!! これなら……世界全部を手に入れることだって夢じゃないよ!!」

 

 ノオトも、アルカも、それをただ茫然と見つめることしかできない。

 爆風に巻き込まれたパーモットとカブトプスは、倒れて気絶してしまっている。

 存在するだけで全てを飲み込み、そして灰に帰していく。

 まるで、イデア博士の在り方そのもの。

 しかし、対抗する手段が全くと言って良い程存在しない。

 

「畜生……こんなヤツに……こんなヤツにサイゴクを、蹂躙されて堪るかッスよ……ッ!!」

「ッ……メグルが来るまで、僕達が……抑え込まなきゃ……!!」

 

 墨はうねり、周囲の物全てを飲み込む。

 まるで津波のように、激しくのたうち回りながらアルカ達を捕捉する。

 雨が降りしきる中、墨は更に流れでて、周囲の森をも飲み込んでいく。

 

「君達もセンセイの一部になると良い。このサイゴクは……この世界はッ!! ……僕とセンセイのものだからね」

 

 墨がアルカ達を飲み込む。

 シャクドウシティは──墨の中に沈もうとしていた。

 ありとあらゆる全てを飲み込んで。

 

(メ、グル……ッ!! 僕達……頑張ったよ……ダメだったけど……!!)

 

(ヤバいっ、何とか、出ねえと──ッ!!)

 

 手を伸ばそうとする。

 だがもう沈む。

 どす黒い墨の中で──溺れていく。

 

 

 

 

「手を伸ばせッ!!」

 

 

 

 そんな声が聞こえた気がした。何かが力強く、アルカとノオトの手を掴んだ。

 次の瞬間には、一気に新鮮な空気が肺に吹き込んで来る。

 熱い体温が掌に流れ込んで来る。

 そのまま、一気に二人は引き上げられ、空へと浮かび上がる。

 

「っ……良かった……!! 間に合った……ッ!!」

「……グル? ……メグルーッ!?」

 

 思わずアルカは目を見開いた。

 歓喜よりも先に驚きが先に来る。

 メグルが、強く強く両手で彼女の手を握り締めていたのである。

 彼はスイクンの上に跨っていた。体を倒し、手だけ出ていたアルカを引っ張り上げたのだ。

 そしてノオトは手首に違和感を覚える。

 彼女が両手で引っ張り上げられているということは──

 

「すすいー」

「あーっ!! オレっちの手首ィ、噛まれてるぅぅぅーっ!?」

 

 力は加減しているものの、スイクンが口で彼の手を引っ張り上げているのだった。

 

「あのー、オレっち美味しくはねえッスよ……!?」

「すすいー……」

 

 ぽいっ、とそのままスイクンはノオトを勢いよく放り投げ、自分の背中に乗せる。 

 アルカも、メグルに引っ張り上げられ、そのまま抱っこされるのだった。

 そのままスイクンは、小高いビルの上に降り立つ。

 そこで、アルカはメグルにもう一度強く強く抱き着くのだった。

 

「ばっ……バカ!! 心配したんだよ!? 僕、君が死んじゃったのかと思って──ッ!!」

「わりーわり、スマホロトムが故障しちまって、連絡出来なかったんだ」

「ばかぁ!!」

 

 ぎゅう、とそのまま彼は押し倒される。

 ずっとアルカは泣いていた。

 

「へへ、ただいま。ちゃあんと帰ってきたぜ、今回もな。……スイクン達に助けられたんだ」

「もう少しでボク達だってヤバかったんだよぉ……」

「ほんとッスよ! マジで心配してたんスよ!?」

「ねえ、メグル聞いて! イデア博士が──」

「ああ知ってる。要するに、大体全部あいつの所為ってこともな」

「すすいー」

 

 スイクンは忌々しそうに巨大なドーブルを睨み付ける。

 

「全部……聞いたんだ」

「ああ。向こうからご親切に喋ってくれたよ。今まで俺達がやってきたことは全部、あの人の野望に繋がってたんだ」

「ッ……テング団の討伐、赤い月の確保……方舟への強襲……ッスか」

「だけどな、だからこそ此処で博士を止める。最後の最後で、このふざけたシナリオにケチをつけてやる」

 

 そのためには、町を──ひいてはサイゴクを蹂躙するあの怪物をどうにかしなければならない。

 最早ポケモンという枠を超えたモンスター。墨は辺り一帯を飲み込み続けている。

 

「伝説のポケモンを取り込んだことで、今のドーブルは無敵ッスよ」

「先ずは……あのでっかいヤツからどうにかしねえとな……ッ!!」

「そうだけど、あいつ、ルギアとホウオウを取り込んでて、奴ら2匹のオオワザを振り回せるんだ!」

「オオワザに真っ向からぶつかれるのは……オオワザだけだ。お前らは、ポケモンを回復させていてくれ! ヤバくなったら逃げろ!」

「どうするんスか!?」

「試してみたいことがある。いや、試さねえと──あいつには勝てない」

「メグルっ!? また行っちゃうの!?」

「──チャンスが来たら、全員で攻撃だ! それまで俺を信じて待っててくれるか!?」

 

 その言葉に──二人は頷いた。

 死んだと思われ、誰もが生還を絶望視したこの状況から帰ってきた男を、誰が信じられないというのだろうか。

 

「分かった。信じる。ボクは……メグルを信じるよ」

「たりめーっしょ! オレっち達の英雄の言う事なら!」

「へへっ、ありがとな!」

 

 スイクンに跨り、再びメグルは飛ぶ。

 北風に乗り、雨が降りしきる中ドーブルへと向かっていく──

 その頭の上に立つ博士は愉快そうに口角を歪めるのだった。

 

「ああ、いい。それでこそメグル君だ! まさか殺しても死なないとは思わなかったよ!!」

「──よう、博士ッ!! 地獄から帰ってきたぜ!!」

「じゃあ、地獄に帰って貰おうか!!」

 

 ドーブルが再び絵筆を振り回す。

 ”かいじんのほのお”と”エアロブラスト”が両方共スイクンを襲う。

 しかし、北風の如き動きでスイクンは青い炎も竜巻さえも躱し、危なげなくドーブルへと接近していく。

 

「スイクン、”ハイドロポンプ”!!」

「すすいーッ!!」

「受け止めろ!!」

 

 スイクンの強烈な水の柱がドーブルを襲うが、それも右手で振り払われてしまった。

 その全身は呪気の籠った墨に何重層にも覆われており、まともなポケモンの技を通すことは無い。

 

「この姿になったセンセイに、弱点は無い!! そして僕自身も不死身だからね!!」

「ッ……流石に硬いな……!! 分かり切ってたけど!!」

「そして──幾らスイクンと言えど、この合わせ技に耐えられるわけがないよね!」

 

 ドーブルが両手を叩く。

 荒ぶる風が巻き、そして黒き太陽が合わさる。

 

 

 

【ドーブルの てんちゅうさつ・しまきがみ!!】

 

 

 

 巨大な漆黒の太陽が宙に浮かび上がる。

 そして、周囲は大嵐と化し、一気にスイクンを引き寄せていく。

 まさにそれはブラックホール。メグルとスイクンを、太陽の中に取り込み、熔かすつもりなのだ。

 

「さあ、飲み込まれるんだ!! 絶対にして唯一の──黒き太陽の中にね!!」

 

(引きずり込まれる……とんでもない風だ、飲み込まれたら今度こそオシマイ──!!)

 

 そんな事は分かっている。分かり切っている。

 だからこそ──ポケモン廃人は敢えて、不敵な笑みを浮かべてみせる。それが虚勢だったとしても。

 

「……へっ、博士。()()()()()()──小学生でも分かるポケモンの常識だぜ」

「ははっ、そこらの水じゃあ太陽の前では消し飛ぶしかないよ!」

()()()()()()()()

 

 メグルはオーバングルを指でなぞる。

 その瞬間、鞄に入れていた水晶の御神体が飛び出し、スイクンに重なった。

 

「──ッバカな!! オーライズは封じているはず──」

 

(一か八か、賭けてみるしかねえよな……ッ!!)

 

 御神体はエネルギー体と化し、スイクンの身体に纏われていく。

 根源が同じ二つの力が重なり合ったことによる更なる共鳴。

 オーライズを超えたオーライズだ。

 幾度となくアブソルと共にそこに立ってきたメグルだから分かる。

 

 

 

「──ギガオーライズ!!」

 

 

 

 全身に水晶が纏わりついていく。

 体は透き通り、曇天さえも吹き飛ばす程に光り輝いていた。

 頭部の結晶にも水晶が纏わりついていき、龍の角が如き威容と化した。

 そして一瞬、シャワーズの姿が浮かび上がって消える。

 

「こっちもオオワザだ!! あの黒い太陽を砕く──っ!!」

「すすいーッ!!」

 

 スイクンが吼えると共に、高圧縮された水が龍の如く暴れ、うねり、そして──

 

 

 

【スイクンの むげんすいりゅう!!】

 

 

 

 ──太陽へ、牙を剥いたのだった。

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