ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

181 / 225
CC43話:灰燼/赫耀

 ※※※

 

 

 

 悉くを燃やす焦土の炎。

 

 悉くを薙ぐ激昂の嵐。

 

 今こそ巡り合いて、新たなる百鬼の秩序、築き上げん。

 

 舞えよ風、踊れよ炎、夜行の終焉、今此処に──天中殺が昇ろうぞ。

 

 

──”灰燼の日輪”ホウオウ

 

──”赫耀の月”ルギア

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「おいおいおい、やべぇことになってるじゃねえッスか……!!」

 

 

 

 既に町は火の手が上がっており、大火災へと発展している。

 ただ悠然と空を舞うだけで嵐を巻き起こして薙ぎ払うルギア。

 そして、ただ悠然と空を舞うだけで熱風を巻き起こし、辺りを灰に変えていくホウオウ。

 まだ、ヒャッキ地方との戦乱の痕が残っているにも関わらず容赦なく彼らは町を焼き払っていく。

 更に空は赤く染まっており、天高く昇る太陽は黒く染まっていた。

 

「止めないと……ッ!!」

「こんな事もあろうかと!! 今回はヌシポケモンを集結させた!!」

「良いんスか!?」

「キャプテンが動けない上に、伝説のポケモンが二匹!! 最早手段は選んでいられんからな!!」

 

 進撃する二匹の前に立ちはだかるのは──ひとっとびで町を越えることができるアケノヤイバ。

 そして、空を飛んでやってきたヨイノマガンだ。

 これ以上は進ませないとばかりに、二匹のヌシポケモンがオオワザを放つ。

 過去に厄災と直接相対したポケモンと言うだけあって、その危険性を十二分に理解しているのだろう。最初から全力で戦わなければ、倒されるのはこっちの方だ、と。

 

 

 

「エリィィィース!!」

「ケェェェレェェェスゥゥゥーッ!!」

 

 

 

【アケノヤイバの あかつきのごけん!!】

 

【ヨイノマガンの たそがれのざんこう!!】

 

 

 

 巨大な影の刀が実体化し、全てルギアに突き刺さる──と思われたが、それはホウオウに受け止められてしまう。

 そして、ヨイノマガンが放った極光は、ホウオウを狙うが、それはルギアの巻き起こした竜巻に掻き消されてしまうのだった。

 

「ウソでしょ!? あの二匹のオオワザが通用していないの!?」

「伝承によれば、災厄はヌシポケモンによって祓われたとされているが……流石に一度に二匹は無理がある! そもそもの奴らの強さが……ッ!!」

 

【ルギアは荒ぶっている!!】

 

【ホウオウは荒ぶっている!!】

 

 更に二匹の身体には黒い靄が現れており、ただでさえ赤い目の輝きが更に強まった。

 巻き起こる風圧は凄まじさを増している上に、ホウオウの纏う炎も徐々に色を失っていく。

 灰だ。ありとあらゆるもの全ての色を失わせる灰が、不死鳥の周囲に漂っていく。

 今度は分身して四方八方からルギアに攻撃を仕掛けるアケノヤイバだったが、それも風圧によって弾き返されてしまう。

 炎/飛行タイプにとっては致命的とも言えるパワージェムを放ち続けるヨイノマガンだが、陽炎のように揺らめくホウオウの身体には幾ら光弾を撃ち込んでも命中しない。

 

【ルギアの ハイドロポンプ!!】

 

【ホウオウの かいじんのほのお!!】

 

 今度はお返しと言わんばかりに、ルギアは高圧縮した水の柱を、そしてホウオウは青白い強烈な炎を二匹にぶつける。

 躱そうとする二匹だったが、巨体のヨイノマガンが避けることなど出来るはずもなく、脆くも砂の身体が崩れ去っていく。

 そして、青白い炎はアケノヤイバの影を焼き尽くし、霊気の身体を焦がしていく。

 

「ダ、ダメだ!! 引っ込むッスよ、アケノヤイバ!!」

「ヨイノマガン、もう良い!! これ以上は危険でござる……ッ!!」

 

 全くと言って良い程歯が立たない。

 確実にこの二匹は500年前に比べても強くなっている。

 それも、アケノヤイバとヨイノマガンを上回るペースで。

 周囲の瘴気は更に色濃くなっており、ノオト達も息をするのが苦しくなってくるレベルだ。

 

「こうなったら、オレっち達も加勢するッスよ!!」

「ああ。ビルの屋上から奴らを集中砲火だ」

「全員の技をぶつければ止められるかな……!?」

 

 エアームドは降り立ち、アルカ達はボールを構える。

 しかし、その時だった。

 

 

 

「ポリゴンZ──”はかいこうせん”」

 

 

 

 屋上を狙って、極太の光線が撃ち下ろされる。

 それを察知していたキリは、鉄糸を使って一気に移動し、キリとアルカの身体を掴んで退避した。

 屋上には穴が開いており、ビルを貫いていた。

 

「なっ、一体、今のは……ッ!!」

「あーあ、惜しい惜しい。とっても惜しかった! ……あともう少しで苦しまずにあの世に行けたかもしれないのにね」

 

 空からそんな声が聞こえてくる。

 パチパチ、と手を鳴らしながら彼は同じ屋上に降り立つ。

 そこに現れたのは──イデア博士その人だった。

 

「誤射でござるか……ッ!?」

「ちょっと、危ないじゃねーッスか博士!! もう少しで消し飛ぶところだったッスよ!!」

「あーごめんごめん──消し飛ばすつもりで撃ったからさ、今のは」

 

 続け様にイデアはボールをばら撒いていく。

 中から現れたのは、ガチグマ、リキキリン、ノココッチ、そしてアヤシシ──原種の姿──だ。

 破壊光線の反動から復帰した赤と青のサイケデリックなカラーの人造ポケモン・ポリゴンZも、その中に加わる。

 

【アヤシシ(原種) おおツノポケモン タイプ:ノーマル/エスパー】

 

【ポリゴンZ バーチャルポケモン タイプ:ノーマル】

 

 それらがアルカ、キリ、そしてノオトの3人を取り囲む。

 いずれもノーマルタイプのポケモン達だ。

 しかし皆、3人に敵意を向けている。

 

「乱心したでござるか、イデア殿!! どういうつもりでござるか!!」

「……もしかして、まだ分からない?」

「何にも分かんねーッスよ! 説明してくれねえと分かんねえッス!」

「そ、そうだよ……ッ」

「あーあ、仕方ないなあ」

 

 笑みを浮かべた博士は──丁度近くを通りかかったホウオウの上に跨ってみせる。

 

 

 

「──僕はイデア。このホウオウとルギアを使って──この世界の頂点に立つ者……かな」

 

 

 

 それですべてを理解したキリは、鉄糸で跳びあがり、イデアを拘束しようとする。しかし、それを引き留めたのはポリゴンZ。すぐさま”でんじは”が彼女を襲い、身体を麻痺させて地面に墜落させた。

 

「キリさんっ!?」

「燃やさなかっただけ有情だと思ってくれたまえ。くぅ~っ、僕って良い人?

「……答えてよ!! どういうことなの!? 何で──!?」

「ホウオウはね、この間方舟の中で手に入れたんだ。動力炉を止めたって言ったろ? ホウオウが動力炉さ。ルギアはメグル君から拝借したよ。彼には色々協力してもらってね」

「バカ言ってんじゃねえッス!! あんた、自分が何やってるか分かってるんスか!?」

「何やってるかは分かってるよ? ……500年前に捕まえた自分のポケモンを取り戻しに来たってだけさ」

 

 もしかして、また1から説明しないとダメ? とイデアは続けた。

 人が500年も生きているはずがない。無茶苦茶な話だ、と3人は否定する。

 だが、1つだけ言えるのは──目の前にいるイデアは敵だということだ。

 

「500年も人が生きられるわけねえっしょ?」

「じゃあ見せてあげようか?」

 

 イデアは懐からナイフを取り出す。

 そしてそれを思いっきり──頸動脈に突き刺した。

 噴水のように赤い水が吹き上がる。

 3人は、唖然としたままそれを見ていることしか出来なかった。

 しかしやがて──血は止まり、びきびきと音を立てて傷が塞がっていく。

 

「……どう? 何なら首を刎ねてみるかい、キリ君」

「ッ……にわかには信じ難いが……!!」

「ウソでしょ……フツー、死ぬよね、あれ」

「ああ……あんなに喋れるわけがねーッス」

 

 これで3人は完全に思い知らされることになる。イデアを名乗るこの男は、不死身の怪物だ、と。

 

「マ、マジの不死身なんスか……!?」

「……でも、これで分かったでしょ? ホウオウの力で、僕は不老不死なんだ。かれこれ500年生きてる。すごくない?」

「待ってよ。じゃあそれって──」

「ああ。500年前に赤い月を君の故郷から持ち出したのは僕だよ、アルカ君」

「ッ……!!」

 

 アルカは目を震わせる。

 そして拳を握り締めた。

 故郷を荒廃させ、自分が辛い目に遭う原因となった相手が、目の前にいる。

 

「ふざけるな……ッ! お前の所為でヒャッキが滅茶苦茶に──ッ!」

「もう捨てた故郷だから、今更どうなったって良いでしょ? 君は此処で幸せに暮らしてる。それだけで十分じゃないかな、うんうん」

「……あんた……何言ってんスか……? さっきから、おかしいッスよ……!?」

「おかしくなんてない。君達の前では、君達の味方として振る舞ってただけ。僕は──最初っからこうだよ」

 

 そう言うと、ルギアの目が赤く光る。

 次の瞬間、3人の身体は大きく浮かび上がった。上昇気流だ。

 

 

 

「──そういうわけだから……さっさと消えてくれないかな? ”エアロブラスト”」

「しまっ……!!」

 

 

 

 巻き上がった3人に向かって、大竜巻が襲い掛かる。

 

「──衝撃を吸収するでござる、メテノ!!」

「しゃららんッ!!」

 

 しかし、キリも負けてはいない。

 すぐさま鉄糸を何重にも蜘蛛の巣のように展開し、更にその中央にメテノを繰り出す。

 緊急策ではあるが──エアロブラストは受け止められ、3人はそのまま何処かへと吹き飛ばされていくのだった。

 

 

 

(……あーあ。アレ、受け身取られたかなあ。でも良いかあ! ……彼らはこいつに追撃させればいい)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──その頃、サイゴク山脈の空洞にて。

 

「ッ……痛っててて……どわぁ!?」

 

 メグルとニンフィアは目を覚まし、跳びあがった。

 エンテイ、ライコウ、スイクンの3匹がこちらの顔を覗き込んでいる。

 他のモンスターボールも、そしてニンフィアも無傷だ。

 サイゴク山脈は過酷で野生ポケモンも多い環境。

 となると、この3匹がずっと見張って、野生ポケモンから遠ざけてくれていたとしか思えない。

 

「ららいー」

「ええいー」

「すすいー」

「ありがとう! 助かったぜ……」

 

 それでも、爆轟の衝撃は大きかったのか、今の今まで気を失っていたらしい。

 すっかり日付が変わっていた。もう昼である。

 スマホロトムも圏外で今何が起こっているか分からない。

 しかし、急がなければ、あの博士が何をしでかすか──

 

(──だけど参ったな……流石にオーライズ無しじゃあ、あの伝説のポケモンに勝つのは難しいだろうな)

 

 完全に役に立たなくなってしまった宝珠を眺めながらメグルは溜息をつく。

 自分は今の今まで、あの博士の掌の上で転がされていたのだ、と思うと吐き気すら込み上げて来る。

 

「ふぃるふぃー?」

 

 ニンフィアが膝に乗っかってくる。そして、リボンをメグルの頬に伸ばした。不安なのか、と言わんばかりだった。

 

「……分かってる。イデア博士に騙されてたのは悔しいけど……此処で引っ込んだらオシマイだ。だけど、あのオオワザに対抗できる手段が俺には思いつかねえ……ッ!!」

「ふぃー……」

「それに、あんなもんを喰らったら……次こそ俺も、お前達も──」

「ふぃっ」

 

 その瞬間、時が止まったようだった。

 ふわふわとした柔らかい感触が唇に当たる。

 押し付けるような口づけだった。そして次には、リボンがメグルの身体を包み込む。

 

「ニ、ニンフィア……!?」

「ふぃるふぃーあ♪」

 

 

 

 ──バーカ。それでも付いていくのよ。大好きだもんっ♪

 

 

 

 全幅の信頼を示すかのように、ニンフィアはメグルを抱きしめる。

 一連の行為が相手に親愛を示すものであることを彼女は理解しているようだった。

 ふんわりとした感触。そして甘い香りが漂ってくる。

 そして、釣られるように──他の手持ち達もボールから飛び出してくる。

 

「ッ……そうだな。もう少し、お前らのことを信じてみるよ」

「ふぃー♪」

 

 此処まで進んできた道は、決して一本道だけではなかった。回り道も脇道もあった。

 だが、それを乗り越えてきて、今此処に6匹が集っている。

 

(多分きっとそれは……奇跡的な事で、すっごくありがたくって……)

 

「だって、ずっと此処まで付いて来てくれたんだもんな。もうちょっとだけ付き合ってくれるか?」

「グラッシャーッ!!」

「ブルトゥ!!」

「ふるーる!」

「スシー!」

「ラッシャーセー!!」

 

 ならばもう、今更言葉はいらない。

 全員をボールの中に戻し、メグルはスイクンに向かい合う。

 

「スイクン──俺は止めたい奴らが居る。そして、お前らは元々ホウオウによって生まれ変わったポケモン。別世界の存在とはいえ主人を助けたいんだろ?」

 

 伝説の3匹は頷いた。

 かつて、カネの塔が火事で焼けた際に、名も無き3匹のポケモンが焼け死んだとされている。

 それをジョウト地方の伝説のポケモン──虹色の羽根を持つホウオウは、蘇らせたのだ。

 それがエンテイ、ライコウ、スイクンの3匹なのである。

 特に同じ炎タイプであるエンテイは、ホウオウと同じ”せいなるほのお”を受け継いでいるなど、よりその性質が色濃く表れている。

 

「──協力しようぜ。一緒にホウオウを助けよう」

「すすいー」

 

 スイクンは背中をメグルに預けてくる。「乗れ」と言っているようだった。

 ニンフィアも肩にしがみつく。

 そして──まるで風のように、ふわりとスイクンは宙に浮かび上がるのだった。

 その様を、エンテイとライコウが見つめている。そして彼らもまた、稲光と火の玉に姿を変えて、逆の方へと飛んで行く。

 

(あれっ、スイクンだけ何処に行くんだ──!?)

 

 ふわり、ふわりと山を駆けていくスイクン。

 方舟に乗り込んだ時もそうだったが、不思議と落ちる気がしなかった。

 そうして、しばらく山々を超えていっただろうか。

 メグルが辿り着いたのは──セイランシティの西の端。山の上にある”すいしょうのおやしろ”だった。

 

「な、何で今更おやしろに……?」

「すすいー」

 

 スイクンに導かれるがままに、メグルはおやしろの山を駆けあがっていく。

 そして、辿り着いたのは──再建された小さなおやしろだった。

 その前にシャワーズが欠伸をしながら待っていた。

 

「……シャワーズ」

「ぷるるるー」

 

 メグルの目を見て、何かを察したのか──シャワーズは悲しそうに顔を俯かせる。

 キャプテンであるヒルギの死を彼女も遠くから察したようだった。

 しかし、その後ろにいる思わぬ客を見ると、全身の毛を逆立てる程に驚く。

 北風の化身・スイクン。”すいしょうのおやしろ”に石像として飾られる程にサイゴクでは崇められているポケモンだ。

 そしてヌシポケモンからすれば、自らに非常に近しい力を持ちながら”格上”とも言える存在である。

 

「ぷ、ぷるるるるる!?」

「すすいー」

「……ぷるるるー」

 

 何処か納得したように頷いたシャワーズは、ひょいと跳躍し、おやしろの祠を口で開ける。

 そして──何かを咥えて持ってくるのだった。

 

「ぷるるー」

 

 青く光り輝く、水晶のように透き通った宝珠。

 そこに込められているのは、歴代キャプテンと歴代ヌシの想い。

 それがどのようなものであるかはメグルにも一目でわかった。

 

「……これって……()()()か!?」

「ぷるるー!」

 

 それをシャワーズはメグルの手元に落とす。

 握り締めれば、ひんやりとしているものの、海のような雄大な力が伝わってきた。

 更に、腕に着けたオーバングルが御神体と反応している。

 

(これを、オーパーツとして使えってことか……!)

 

 

 

 

【オーパーツ”真泡珠・シャワーズ”を手に入れた!】

 

 

 

 

(ありがたく、使わせてもらうぜ──リュウグウさん、ヒルギさん、シャワーズ!)




──次回から遂に「ポケモン廃人、知らん地方に転移した。」クライマックス開始!最後まで見逃すな!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。