意外と多い!日本語の不規則活用動詞・形容詞
日本語の不規則活用動詞・形容詞を、私の個人的なメモやインターネットなどから集めてまとめてみました。実は「する」と「来る」以外にも色々あります。
この記事はProjekto Babel Advent Calendar 2025の9日目の記事です。
ザ・不規則活用
「する」「来る」
よく知られているように、「する」と「来る」は完全に不規則な活用をします。サ行変格活用、カ行変格活用というやつです。「開始する」「サービスする」「やってくる」などの複合動詞も同様の活用をします。
このほかにも「ます」などの助動詞は不規則な活用をします。
「くれる(呉れる)」
下一段活用動詞ですが、命令形は「*くれろ」「*くれよ」ではなく「くれ」になります。ただし、命令形「くれ」に終助詞「よ」がつくことによって「くれよ」の形が現れることはあります。「見る」の命令形「見ろ」に「よ」がついて「見ろよ」になるのと同じです。
「やめてくれる」なども命令形は「*やめてくれろ」「*やめてくれよ」ではなく「やめてくれ」になります。
なお、方言によっては「くれろ」「くんろ」「けろ」などと言うことがあります。
「得る(える/うる)」
現代でも下二段活用が一部の活用形に保持されている珍しい動詞です。最近は下一段活用への移行が進んでいますが、「ありえる/ありうる」「なしえる/なしうる」などの複合動詞の特に終止形・連体形では依然として下二段活用をよく使います。
「罰する」「発する」など(「れる/られる」に特殊な未然形を用いるサ変)
「する」は助動詞の「せる/させる」「れる/られる」がつくときには、未然形の「せ」「し」「さ」のうち「さ」を使って、「させる」「される」となります。複合動詞でも同様に「開始される」「サービスされる」「愛される」などと言います。古風な言い方では文語文法に従って「開始せらる」のように「せ」と「る/らる」を使うこともありますが、「*開始せられる」のように「せ」と「れる/られる」が組み合わさることはありません。
ところが、「罰する」「発する」「禁じる/禁ずる」などは「*罰される」「*発される」「*禁ざれる」ではなく「罰せられる」「発せられる」「禁じられる/禁ぜられる」と「せ」を使って言わなければなりません。「禁じる/禁ずる」は後で説明しますが上一段活用が混ざった動詞で、「禁じられる」の方は上一段活用の形です。「命じる/命ずる」も同様に「命じられる/命ぜられる」ですね。
「行く」「問う」「請う(乞う)」
一般に、標準語の場合、五段活用動詞に助詞の「て」「た」を接続するときは、単に連用形にするだけではなく、何行の五段活用かによって決まった音便を用いたり、「て」「た」を濁らせたりします。これをテ形・タ形といいます。「たり」「たら」などでも同じ形を使います。
カ行 → イ音便+て(「書いて」「聞いて」)
ガ行 → イ音便+で(「漕いで」「脱いで」)
サ行 → 音便なし+て(「刺して」「模して」)
タ行・ワア行・ラ行 → 促音便+て(「持って」「買って」「取って」)
ナ行・バ行・マ行 → 撥音便+で(「死んで」「遊んで」「噛んで」)
(ザ行・ダ行などのその他の活用をする動詞は存在しない)
ところが、「行く」「問う」「請う」では規則通りに「*行いて」「*問って」「*請って」とはならず、「行って」「問うて」「請うて」となります。
ちなみに、標準語だとナ行五段活用動詞は「死ぬ」しかないので、テ形タ形のことを考えると「死ぬ」は不規則動詞に含めても良いかもしれません。
また、「行く」は「いく」と「ゆく」で表記や発音にゆれがあることでも知られています。
「なさる」「おっしゃる」など
「ます」は通常であれば音便を用いずに「連用形+ます」の形で接続します。ところが、「ござる」「なさる」「いらっしゃる」「おっしゃる」「くださる」などの一部のラ行五段活用動詞は、「ます」が接続すると「*ござります」「*なさります」とはならずに「ございます」「なさいます」のようにイ音便を使います。連用形を使った命令文でも「なさい」「いらっしゃい」などと言います。
さらに、テ形・タ形は規則通り「なさって」「いらっしゃって」「くださって」と言うことが多いですが、「なすって」「いらして」「くだすって」と不規則な活用をすることもあります。
「濃い」
形容詞に「め」を付けるときは、通常であれば「甘め」「辛め」「薄め」「大きめ」のように形容詞の語幹を使います。ところが、「濃い」は「め」を付けると「*濃め」ではなく「濃いめ」になります。「口(くち)」を付けるときも「甘口」「辛口」「薄口(うすくち)」「濃口(こいくち)」と不規則な変化をします。「茶」を付けるときも「薄茶(うすちゃ)」「濃茶(こいちゃ)」と同様です。その他の変化では「薄くて」「濃くて」「薄すぎる」「濃すぎる」など規則通りです。「濃いい」「濃ゆい」という言い方もたまにします。
【以下追記】
ここで挙がってる「濃い」については、語幹が1モーラだから音節の制限に引っ掛かって不規則に成ってるっぽいという直感がある。
— Ojciec0629(N170) (@Ojciec0629_N170) December 15, 2025
わりと最近の形容詞語幹に-みをくっつけて名詞化するやつは、良い、ない、濃いで良さみ、なさみ、濃さみでわりと容認度も高い気がする。*濃み、はかなりキモい。
ただ、 https://t.co/348fmf2o1I
形容詞に「げ」や「み」を付ける時は「悲しげ」「可愛げ」「悲しみ」「深み」「温かみ」のように語幹を使いますが、「濃い」以外でも「良い」「無い」など語幹が1モーラの形容詞であれば「良さげ」「無さげ」「濃さげ(?)」「良さみ(?)」「無さみ(?)」「濃さみ(?)」のように「さ」が入りそうです。少なくとも「*濃げ」「*良み」「*無み」「*濃み」とは言えそうにありません。
「ない」
形容詞に助動詞「すぎる」を接続するときは「甘すぎる」「大きすぎる」「濃すぎる」のように語幹に接続しますが、「ない」は例外で「*なすぎる」ではなく「なさすぎる」になります。「甘くない」「差支えない」「だらしない」などについても同様に「さ」を入れます。
ただし、「運動しない」などに現れる助動詞の「ない」は「運動しなさすぎる」と「さ」を入れることも多いですが、「運動しなすぎる」が正しいとされることがあります。「くだらない」「つまらない」「おぼつかない」なども同様に「さ」を入れないことが多いです。この辺りの問題にはいろいろと議論があります。
「すぎる」以外に「そうだ」が接続するときにも同様の現象が発生します。
参考:https://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/pdf/20160901_7.pdf
複数の活用型の混合(と説明されることが多い)もの
「愛する」など(サ変と五段の混合)
「愛する」は本来はサ行変格活用をすると思われますが、未然形と命令形では「*愛しない」「*愛しよう」「*愛しろ」とはならず、「愛さない」「愛そう」「愛せ」と五段活用します。さらに、他のサ変動詞と異なり「*愛できる」と言うことができず、五段活用動詞として可能動詞を作って「愛せる」と言うことしかできません。
他の活用形では「愛して」「愛す」「愛せば」と五段活用で言うこともあれば、「愛して」「愛する」「愛すれば」と変格活用で言うこともあります。
このような動詞は他にも「適する」「属する」など山ほどあり、五段活用の混ざり度合いはバラバラです。「課す/課する」「訳す/訳する」などに至ってはほぼ完全に五段活用になっています。
「信じる/信ずる」など(サ変と上一の混合)
「信じる/信ずる」「禁じる/禁ずる」「案じる/案ずる」「諳んじる/諳んずる」などはほぼザ行上一段活用をしますが、終止形などに本来の形であるサ行変格活用が残っています。
「満ちる」「足りる」(上一と五段の混合)
「満ちる」は上一段活用動詞ですが、「ない」が接続するとき「*満ちない」ではなく「満たない」と五段活用のように活用します。打消の「ず」「ぬ」が接続するときも同様に「満たず」「満たぬ」と言うことが多いです。ただし、同じ未然形でも「よう」が接続するときは「*満とう」とは言わずに「満ちよう」と上一段活用します。
「足りる」は普通に「足りない」と言うこともありますが、「満ちる」と同じように「足らない」と言うことがあります。
【追記】「滅びる/滅ぶ」「綻びる/綻ぶ」(上一と五段の混合)
上一段活用の形「滅びる」「綻びる」と、五段活用の形「滅ぶ」「綻ぶ」が並行して使われています。かつてはどちらも上二段活用動詞で、現在でも上一段活用が標準的・規範的とされることがあります。(特に、「滅びる」は対応する他動詞が「滅ぼす」なので「滅びる」の方が自然に聞こえるんじゃないでしょうか。)
「せる/させる」(下一と五段の混合)(いわゆる使役受身)
「せる/させる」は助動詞ですが、下一段型の活用をするのでここでは下一段活用動詞とみなして話を進めます。
サ行以外の五段活用動詞に「せる/させる」と「れる/られる」がこの順で接続するときは、「書かせられる」「歩かせられる」と通常通り活用させることもありますが、「書かされる」「歩かされる」と「せる/させる」を五段活用のように活用させることがあります。
それ以外の活用の場合はそうではなく、「貸させられる」(サ行五段)「信じさせられる」(上一)「食べさせられる」(下一)「開始させられる」(サ変)「来させられる」(カ変)とは言えても「*貸さされる」「*信じさされる」「*食べさされる」「*開始さされる」「*来さされる」とは言えません。
一番後ろに「れる/られる」が接続しないときは「*書かす」「*書かさない」「*書かせば」のように「せる/させる」が五段活用することはありません。通常通り下一段で「書かせる」「書かせない」「書かせれば」としか言えません。
ただし、「沸く」「散る」「動く」など少数の動詞は「沸かす」「散らす」「動かす」と言うことができて、逆に「沸かせる」「散らせる」とはほとんど言わず、「*動かせる」とは言いません(可能動詞としては使える)。ここまで来るともはや自動詞他動詞対の問題に近そうですが。
【以下追記】
「せる/させる」のテ形タ形は通常「書かせて」のようになりますが、話し言葉では「書かして」と五段活用することがあります。
また、「見せる」でもテ形タ形が「見して」のようになることがあります(「見る」に「せる/させる」をつけると「見させる」になるので、これは別の動詞です)。関西弁でよく言うという情報がちらほらありますがよくわかりません。「着せる」「浴びせる」「似せる」「乗せる」「寄せる」などではこのようなことは起こらなそうなのでやっぱりよくわかりません。
さらに、「遅らせる/遅らす」も下一段活用と五段活用で揺れがある動詞です。古語では四段活用ですが、今では下一段活用のほうをよく使いますね。
【追記】「憂う/憂える」(上一・下一・五段の混合?)
拝見しました
— SirAndy (@logoxenis) December 15, 2025
五段と下一段の混成活用の「憂う」(少なくとも「憂える」「憂えて」「憂われる」は使わない)も入れていいのではと思いました
元々は下二段活用でしたが、中世以降に上二段活用も用いられるようになり、さらに現代では(文語の終止形の影響なのか)終止形と連体形に「憂う」の形まで見られるというややこしい動詞です。
現在の活用の解釈や規範については、下一段・二段以外は誤りだと言われたり、五段と下一段の混合であって上一は誤りだと言われたり、下二段と上二段の混合だと言われたり、あまり見解が一致していないようです。
この件については工藤力男による詳しい考察が(https://www.seijo.ac.jp/pdf/falit/226/226-6.pdf)にあります。
欠如動詞
「ある」
ラ行五段活用動詞ですが、助動詞の「ない」が接続して「*あらない」と言うことができません。代わりに形容詞の「ない」を使います。「あらず」「あらぬ」と言うことはできます。
「要る」
ラ行五段活用動詞ですが、テ形とタ形「要って」「要った」を欠くとされることがあります。ただし、方言によっては違和感なく用いられることもあります。「要りまして」「要りました」「必要で」「必要だった」は言えます。
微妙なもの
「言う」
終止形(および連体形)は「ゆう」と発音することが多いです。表記の上でも「ゆう」と書いてしまったり、終止形以外でも「ゆわない」「ゆって」「ゆえば」「ゆえ」と活用させる人がたまにいます(わざとすることもあります)。
「良い(よい/いい)」
本来は「よい」ですが、終止形・連体形では通常「いい」になります。
「違う/違ぇ(ちがう/ちげぇ)」
ワア行五段活用動詞ですが、(首都圏方言の?)砕けた言葉遣いでは終止形および連体形で「違ぇ」と言うことがあります。このような母音の変化は形容詞にはよく見られますが、動詞では稀です。
また、これは誤った表現(あるいは冗談)とされることも多いですが、未然形や連用形で「違くない」「違くて」「違かった」と形容詞のように活用することがあります。「違うくない」のような形も稀に見られます。
「違ぇ」も形容詞型の活用であると分析することがありますが、「違くない」「違くて」「違かった」が形容詞らしく中高型アクセントに変化しているのに対して「違ぇ」は平板型アクセントを保っているので、やはり色々な点で不規則な語だと言えます。
「好きだ」
形容動詞ですが、「違くない」と同じように「好きくない」などと形容詞のように活用することがあります。
「蹴る」
ラ行五段活用動詞ですが、命令形が「蹴れ」ではなく「蹴ろ」と下一段活用することがあります。「比較的多くみられる誤用」と分析するべきものかもしれませんが、文語で下一段活用していたことの名残かもしれないので念のため挙げておきました。方言の可能性もあります。
「喋る」「滑る」なども命令形で「喋れ」「滑れ」ではなく「喋ろ」「滑ろ」と誤って活用されることがやや多いようで、話題に上ることがあります。一段活用動詞のように見える他の五段活用動詞「走る」「混じる」「帰る」などで「*走ろ」「*混じろ」「*帰ろ」と言うことはないと思うので、動詞によって間違いやすさに違いがあるのかもしれません。
「恋う」
既に挙げた「請う」「乞う」と同じ読み・同じ中高型アクセント・同じワア行五段活用の動詞です。「請う」「乞う」と同様に特殊なテ形タ形「恋うて」「恋うた」を持つとの情報が日本語版ウィクショナリーに要出典つきで載っています。英語版ウィクショナリーの活用表にも「恋うて」の形が載っています。
が、「問う」「請う」が元々四段活用だったのに対して「恋う」はかつては上二段活用をしていたので、語源的には異なる動詞のはずです。「恋う」のテ形タ形が「恋うて」「恋うた」であるという情報はウィクショナリー以外には見つからないので、結局真偽が良くわかりません。そもそも用例が少なすぎて分析が不可能かもしれません。
おしまい
以上です。多分忘れているものや私が知らないものもあると思うので、ご存じの方がいれば是非コメントなりTwitterなりVRChatなりで教えてください。


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