2026世界経済総予測 インタビュー「パンデミックは必ず再来する 正しい情報で判断を」尾身茂・結核予防会理事長
── パンデミックの影響を抑えるためにできることは? ■スペイン風邪の時代と異なり、今は科学的な知識がある。新型コロナでは、ワクチンも治療薬もでき、重症者数や死亡者数を抑えた。これがなければ死者が1000万人を超えていた可能性もある。ワクチンについては、これは、さまざまな研究機関が、異なる手法で研究し、死亡あるいは重症化予防の効果がかなりあったと、査読付きの医学誌で数多く発表されている。 新型コロナの経験を経て、パンデミックが起きてから100日以内にワクチンを開発する国際的な目標が立てられている。次のパンデミックでは、より早くワクチンや薬ができると期待している。 しかし、ワクチンができるまでの間は、公衆衛生学的に古典的な方法に頼らざるを得ない。 ── その方法とは。 ■人と人の接触をなるべく避けることだ。新型コロナでは、緊急事態宣言を出し、不要不急の外出と接触を控えるように呼びかけた。人との接触を断てば、感染者も死亡者も減る。日本は海外のようなロックダウンはせず、医療の逼迫(ひっぱく)状況に応じて、対策に強弱をつけた。医療が逼迫しそうになると緊急事態宣言を出し、改善すると解除した。医療崩壊を防ぐのが目的だった。病院は命綱であり、それが機能しなくなったら、社会、経済と感染症の両立などと言ってられなくなる。 新型コロナの第1波(20年)と第8波(22〜23年)を比較すると、実は、第8波の方が感染者も死亡者も多い。しかし、ワクチンができ、新型コロナの患者を診る医療機関が増えたので、緊急事態宣言を出さずとも対処できている。 日本と他の多くの国との違いは、ロックダウンなしでコロナをしのいだことだ。GDPの落ち込みも、ロックダウンをした他の主要国と比べ悪くはなかった。 ── ワクチンに対する懐疑論もある。 ■パンデミックはいつ起きてもおかしくないということを理解してほしい。さまざまな情報が発信されているが、その根拠は何か、背景には何があるのか、正しい情報を得たうえで、判断することが重要だ。
◇略歴 尾身茂〈おみ・しげる〉結核予防会理事長 1949年、東京生まれ。78年自治医科大学卒。90年から世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局に勤務し、ポリオ根絶などに携わる。2022年から結核予防会理事長。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長を務めた。