ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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CC40話:壊龍

「──先に聞いておきてえんだけど。何が目的だ」

「なぁに見たじゃろ? 争いも何も無い世界。もっと言うなら……今とは違う世界が欲しいんじゃよ」

 

 

 

 事も無げにクガイは言い放つ。

 

「そのためには、既存の仕組みを全て破壊して0から始める……それだけじゃよ」

「……」

「今のこの世界がある限り、憎しみだとか争いとか面倒くさいモンは消えんじゃろ。じゃから、ワシが……新しい時代を作るんじゃよ。おぬしも見たいじゃろ、新時代」

「ハッ、生憎そんなもん要らねえよ」

 

(こんなヤツに別の世界がどうこうとか言っても響かねえだろうな、絶対……ッ!!)

 

「……そうか。だが、おぬしが何と言おうが関係ない。既に圧縮次元砲の準備は整っておる。とはいえ、折角じゃ。ワシに勝てたら、次元砲を止めてやるわい」

「やってやろうじゃねえか」

 

 馬鹿正直に相手が約束を守るかはさておき、ヒルギが殺されたことでメグルも腸が煮えくり返って仕方が無かった。

 コイツだけは許せない。コイツだけは放っておけない。

 そんなドス黒い思いがメグルを突き動かしていた。

 だが不思議と頭は冷静だった。

 対面はカイリュー、こちらがニンフィアだ。相手がドラゴンタイプで一見有利と思われるが、カイリューには恐ろしい特性:マルチスケイルが存在する。

 これにより、体力が満タンの時受けるダメージは半減される。これにより、カイリューはどのような攻撃も必ず一度は耐えるとまで言われているのだ。

 

「そのニンフィアで……何処まで戦える?」

「ぴーりゅう」

 

 管制室のだだっ広い空間で二人は向き合い、ボールを握り締める。

 

「”ハイパーボイス”ッ!!」

「”りゅうのまい”」

 

 爆音が空気を揺らす。

 妖精の加護を纏ったそれがカイリューを揺さぶっていく。

 怒りが入り混じったそれは、幾らカイリューと言えど受け切れるものではなかった。

 しかし、それでも──特性:マルチスケイルにより、複雑に入り組んだ鎧が致命傷を避ける。

 その隙にカイリューは雄々しく舞い上がり、自らの力を高めていく。

 

「……くすっ、お終いじゃ。このカイリューで……かるーく何匹のポケモンを捻ってきたかのう」

 

 カイリューの頭部が硬化していく。

 妖精が嫌う鋼だ。

 それが思いっきりニンフィアにぶつけられる。

 りゅうのまいで強化された攻撃から放たれるそれは、防御が薄いニンフィアにとっては致命的になりかねない痛打だ。

 しかし。

 

「──オーライズ”ブースター”ッ!!」

 

 ニンフィアの頭も鋼のように硬化していた。

 鋼技は──炎タイプと鋼タイプにはいまひとつだ。

 カイリューの攻撃は殆どニンフィアには効いていない。

 技を受ける直前で、メグルはオーライズを選んだのである。

 

「しまっ……ならば”しんそく”──」

「まだ俺のターンは終わってねえよ。もう1回、ハイパーボイスだ!!」

 

 妖精の加護を受けた大声が衝撃波となり、カイリューを吹き飛ばす。

 今度はもう、マルチスケイルによる加護は無かった。

 ヒルギの命を奪ったカイリューは、あっさりと沈黙したのである。

 それをボールに戻すと、クガイは次なる手持ちに手を伸ばす。

 

(こ、このニンフィア……何という破壊力……! まさか、トレーナーの感情に応じて能力が上がっておるのか!?)

 

「はははは! 面白い! 面白い! それがオーライズか! 久方ぶりに面白いぞ、メグルよ! だが……こいつはどうだ? キングドラ!!」

 

【キングドラ ドラゴンポケモン タイプ:水/ドラゴン】

 

「……水タイプで攻めに来たか。それなら」

 

 メグルはボールにニンフィアを戻し、シャリタツを繰り出す。

 キングドラは水とドラゴンを併せ持つポケモン。

 そして、シャリタツもまた水とドラゴンを併せ持つポケモンだ。

 

(種族値上でどっちが上かは分からねえけど……この勝負、鍛えてる方が勝つ)

 

「そんな小さきポケモンで! ワシのキングドラに勝とうとは笑止千万!! ”りゅうのはどう”!!」

「”りゅうのはどう”だ」

 

 速度は互角。

 二匹のドラゴンエネルギーがぶつかり合う。

 最初は競り合っていた”りゅうのはどう”だったが──徐々にキングドラの方が押されていく。

 

「ッ……何故じゃ!? どうなっておる!? ワシのキングドラが──」

 

 龍気は間もなく爆発した。

 キングドラは二体分の”りゅうのはどう”を受ける羽目になり、そのまま耐え切れず崩れ落ちる。

 

「は、ははは、まさか……そんなまさかじゃ。怒って……おるのか? おぬしのポケモン……!!」

 

 当然であった。

 故郷を失った主人の悲しみはボール越しでも伝わってきた。

 すすり泣く主人の姿は彼らだけが知っている。

 メグルだけではない。メグルのポケモンも──怒っている。

 これまでにない程に。

 倒れたキングドラをボールに戻し──クガイは次なる手持ちを繰り出す。

 

「バカな事があるものか!! 支給品のポケモンに手こずっていたおぬしらに押されるなどと!! ──こいつは少々手強いぞ!! ヌメルゴン!!」

 

【ヌメルゴン ドラゴンポケモン タイプ:ドラゴン】

 

 現れたのは全身が粘液に覆われたドラゴンだ。

 攻撃には秀でていないが、異様に突出して高い特防が強みであることはメグルも分かっていた。

 すぐさまシャリタツを引っ込め、メグルは次にヘイラッシャを繰り出す。

 

「──ヌメルゴン──”10まんボルト”!!」

 

 紫電の束が纏めてヘイラッシャに襲い掛かる。

 だが──ヘイラッシャは苦手なはずの電撃を受けても尚、強く強くヌメルゴンを睨み付けていた。

 そのまま、尻尾で地面を強く叩き、ヌメルゴンに襲い掛かる。

 

「”いっちょうあがり”」

 

 強烈な尻尾による一撃がヌメルゴンを襲った。

 ヘイラッシャが覚えるドラゴンタイプの技だ。

 龍気を纏った尻尾で強く強くヌメルゴンを叩きつける。

 ヌメルゴンは特防は高いものの、防御力自体は高くない。

 そして、怒りによって攻撃力が上がったそれを受けたことで、ぐらりと巨体が崩れ落ちていく。

 一撃だ。

 栄光のあるドラゴンでさえも、龍気を纏った一撃には敵わない。

 

「怒ってる? それだけじゃねえよ。キャプテンとの戦いから此処に来るまでポケモンには力を極力温存させてたからに決まってんだろうが。今なら、全力で技が出せるってもんだぜ」

 

(それでもアヤシシには無理させちまったけど……!)

 

「──ぬぅ。温存か。それならば次はこやつじゃ!! ジジーロン、来い!!」

 

【ジジーロン ゆうゆうポケモン タイプ:ノーマル/ドラゴン】

 

 現れたのは、白い体毛に身を包んだ老練とした東洋龍。

 大人しそうな見た目をしているが、メグルの知る限り、その特攻種族値は135。

 そこらのドラゴンポケモンのそれを優に上回る。

 

「確かこいつは防御の方が低いんだったな──次はお前だ、アブソル」

「ッ……何が来てもやることは変わらん!! ”りゅうせいぐん”じゃ、ジジーロン!!」

 

 天井から流星が降り注ぐ。

 しかし、それが着弾する位置をアブソルは先読みして把握しているので当たることはなく、更にメグルに飛んでくる流星も尻尾から放つ斬撃で爆破する。

 そして鈍足なジジーロンはそれ以上動けるはずもなく、素早いアブソルが一気に距離を詰め、尻尾を振り回す。

 

「”インファイト”だ、アブソルッ!!」

 

 斬撃が何度も何度も何度もジジーロンを切り裂いた。

 己の身も顧みない攻撃は、反撃さえも許さない。

 ジジーロンは再び”りゅうせいぐん”を呼び出そうとするが──断末魔の叫びを上げ、そのままぐらり、と倒れ落ちる。

 

「……ッ!! ……成程。おぬし、なかなかやるのう。ジジーロンの”りゅうせいぐん”を全弾躱したのはおぬしが初めてじゃ。だが、こいつはどうじゃ? ジュラルドン!!」

「──次はお前だ、バサギリ」

 

 現れたのは全身がジュラルミンのような合金の身体で覆われたドラゴンだった。

 全身が合金で覆われた身体では、バサギリの岩の斧は当然通らない。

 

【ジュラルドン ごうきんポケモン タイプ:鋼/ドラゴン】

 

「とうとうタイプで不利なポケモンを……あまり良い気になるでない!」

「”がんせきアックス”」

 

 にも拘わらず、メグルはバサギリに岩技を使わせる。

 半減の上に防御も高いジュラルドンには然程、そのダメージは通らない──と思われた。

 しかし、想像以上にバサギリの膂力は強く、ぎりぎりと鋼の身体に傷をつけていく。

 堪らずラスターカノンを撃ち放ち、バサギリを追い払うジュラルドンだったが、ひらりとバサギリは跳んでそれを躱し──

 

「”インファイト”で砕け!!」

 

 ──背後から、防御を捨てた連撃を放つ。 

 その猛攻は耐えきれるものではなく、鋼の身体を砕かれたジュラルドンは俯せに倒れるのだった。

 

「ッ……おいおい、ネムよ。話が違うではないか……!」

 

 目の前に立つ男と、それが使うポケモン。

 いずれもステータスがデータより大きく上回っているように思えた。

 ほぼ一撃。まともな攻防も無いまま──クガイは残されたポケモン1匹に追い詰められていた。

 

「……ポケモンはつえーけど……全然ダメだなお前。ポケモンの表面上のタイプしか見てねえのか──死なねえからバトルに本気になったこともねえんだろ」

「ッ……貴様。その口が利けるのも今のうちであるぞ? 行け──カイリュー!!」

 

 現れたのは二匹目のカイリュー。

 さっきの個体よりも一際大きく、そして目つきも何処か凶暴だ。

 当然、特性もマルチスケイル。どのような攻撃も一撃は耐えることができる。

 

「2匹目……か。まあ予想はしてたけどな」

 

 しかし、何処か冷めた目でメグルはそれを見ていた。

 自信満々で出したのは良い。だが──”がんせきアックス”を撃った以上、そこには見えない岩が漂っていた。

 次々にそれはカイリューに突き刺さっていく。

 その結果起こるのは、カイリューの体力が満タンではなくなってしまうことである。これでは、カイリューの強みは失われたも同然だった。

 

「お終いだ。”がんせきアックス”!!」

「”しんそく”!! あの小僧を潰せ、カイリュー!!」

 

 最早交代するまでも無かった。

 一気に飛び出したバサギリは石斧を構える。

 そしてカイリューは飛び出し、バサギリではなくメグルを狙って拳を振るう。

 だが──既にそれを見切っていたバサギリは一気に身体を捻じり、カイリューのどてっぱらに石斧を叩き込んだ。

 効果は抜群。

 一気に意識が刈り取られる。

 巨体はしばらく、宙を力無く舞っていたが──もう一度バサギリが石斧を脳天に叩きこみ、崩れ落ちる。

 勝負はこの瞬間に決した。クガイのポケモンは全て倒されたのである。

 

「さあ、まだ何かあるか? クガイ。……7匹目が居たら出してきても良いんだぜ」

「──久々の遊戯、楽しかったぞ」

「……何だと」

 

 次の瞬間、モニターに光が灯る。

 それは、サイゴク地方の上空を映し出していた。

 

「くっふふ、そうじゃ。ワシ自身あまりバトルは得意でなくてのう。洗脳したキャプテンの方が強いに決まっておろうが! ……だが、時間稼ぎなら出来る」

「まさかあんた──さっきの時点で、もう既に」

「そうじゃ。時間が経てば、圧縮次元砲はオートで発射されるようになっていてのう。おぬしに暴れられて、砲塔を壊されるのが一番癪じゃったから、一芝居打った……というわけじゃ」

 

 まあ負けるとは思っておらんかったがのう、とクガイは続ける。

 

「──この際どうでもええわい!! 新時代の幕開けじゃッ!! 圧縮次元砲が──空に大穴を開けるのじゃーッ!!」

 

 手を広げ、狂気的な笑みを浮かべるクガイ。

 しかし──いつまで経っても圧縮次元砲が撃たれる様子はない。

 ぴくり、と眉を顰めると、彼女は急いでコントロールパネルに向かう。

 

「は、ははは、そんな馬鹿な。さっきまでは……こうではなかったはず……」

「……?」

「待て、待つんじゃ──ッ!! おかしい、おかしい!! 次元砲が、次元砲の動力が動いて──まさか!!」

 

 だっ、とクガイは管制室から駆け出す。

 追いかけようとしたメグルだったが、その前にコントロールパネルの様子を見る。

 そこには、圧縮次元砲の画像が図式で映っていた。

 しかし、その中核を担うであろう動力炉が──「EMPTY」、つまり「空」となっていたのである。

 

(燃料切れ……? どうなってるんだ……!? 今から撃とうってのに……!?)

 

 すぐさま逃げたクガイをメグルは追いかける。

 さっきまで余裕の表情だったクガイの慌て方はどう見ても只事ではなかった。

 ヒルギの亡骸をちらりと見やると──メグルは痛む脚を押さえ、もう一度走り出すのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「はぁ、はぁ──ッ!!」

 

 

 

 辿り着いたのは「動力室」と書かれた大きな部屋だった。

 直接砲塔に繋がっているのか、とても蒸し暑く、周囲も赤暗く光っている。

 必死の形相を浮かべて走るクガイは、胸を押さえながら漸くその部屋に辿り着く。

 そして、炉心となっているであろう巨大なカプセルの前に立っている人物に向かってヒステリックに彼女は叫ぶ。

 

「貴様ァ!! それは……それはワシの理想じゃ!!」

「……理想、ね。ダメじゃない、そんなもののために、ポケモンをこんな所に閉じ込めてたら可哀想だよ」

 

 それを受け流し、振り返ったのは──イデアだった。

 メグルは思わず胸を撫で下ろす。

 

「ああ、メグル君。圧縮次元砲? ってヤツの動力炉は僕が抜いておいたよ」

「よ、良かったあ……止まったんだ……」

「とんでもない代物だよ。ポケモンを動力源にして動かす兵器。デイドリームも似たような仕組みだったね。開発者が同じなのかな」

「……博士。これで終わったんですかね? 全部……」

「圧縮次元砲とやらが動くことはもう、金輪際無いと思うよ」

 

 ふふっ、と彼は微笑む。

 だが当然、クガイは内心穏やかではない。

 

「……返せ!! 返すのじゃ!! それは、ワシの理想!! 何年かけて完成させたと思っておる!!」

「分かるよ分かる。100年近く追いかけ続けてたんでしょ? 悪いねえ、でももうこの通りでさ」

 

 博士が握り締めていたのは、紫色の半球に赤いMの字が刻まれたボールだった。

 それは──メグルもどのようなものか知っていた。

 

「……博士、それってマスターボール……ですよね」

「ああ、シルフカンパニー製の最高級ボールさ。いやあ大変だったよ、これを手に入れるの」

「返せ!! 返すのじゃ……ッ!!」

「ところでさあ、君、100年近く夢とか追ってたんだって? 案外僕達似た者同士なんだろうね」

 

 ま、それもそうか、と彼は続ける。

 

「……僕もこいつの力はよく知っていてね。こいつの炎に焼かれると、人としての身体を失い、蘇る。そうしたら不老不死のバケモノになるわけさ」

「ふ、不老不死……!?」

「そう。勿論、こんな力を持ってるポケモンはこっちには存在しない。時空の裂け目の先、ヒャッキ地方に生息していた伝説のポケモンというやつさ」

「そ、そうだったのか……!? ワシはてっきり、サイゴク特有の姿かと……!!」

「持ち込まれたのさ。そして逃げ出した。500年前に……ね」

 

 メグルは違和感を覚える。初めて聞く話だ。

 

「……博士。そんな伝説のポケモンを知ってるなら……何で教えてくれなかったんですか? 今の今まで」

「うん?」

「しかも、ヒャッキから持ち出されたのって”赤い月”──ルギアですよね。でも、ルギアは俺が捕まえたはずじゃ──」

「ああ、もう1匹居たんだよ。500年前、ヒャッキから持ち出された伝説のポケモンはね」

「フィッキュルルル!!」

 

 次の瞬間だった。

 今まで大人しくボールに入っていたニンフィアが飛び出す。

 そして、いつものように全身の毛を逆立て、博士に向かって威嚇をする。

 

「”赫耀の月”──対になるは”灰燼の日輪”。月のある所には必ず太陽がある」

「何で、それを黙ってたんですか」

「……ふふっ、言える訳無いじゃない。この時、この瞬間までは……ね!!」

 

 そのまま握っていたマスターボールを宙高く放り投げる。

 ボールは思いっきり音を立てて開く。

 

 

 

「ショォォォォーッッッ!!」

 

 

 

 それは、色を失った灰燼の羽根。

 死の灰を振りまくそれは、直視すると希望が奪われていくかのようだ。

 目は荒々しく赤く輝いており、凶暴性を露にしている。

 

 

 

「500年前に……()()()()()()んだ。ルギアも……この、ホウオウもね」

 

 

 

【ホウオウ(かいじんのひのわ) かいじんポケモン タイプ:炎/飛行】

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