食&酒

2025.12.21 11:15

世界で人気の「SAKE」しかし国内は苦戦 日本酒が直面する原料と需要の壁

gettyimages/ key05

海外やインバウンドでは人気のSAKE

こうした中、売り上げを下支えしたのがインバウンド需要と海外市場だ。日本酒、いわゆる「SAKE」の国際的な認知度向上を背景に輸出が伸びたほか、訪日客を中心に蔵元見学や試飲イベント、酒造り体験といった「コト消費」への関心が高まった。インバウンド需要は、日本酒業界にとって重要な起爆剤となっている。

ただし、この追い風が今後も安定的に続くかどうかは見通せない。為替や国際情勢、訪日客数の変動など外部要因の影響を受けやすく、需要に波が生じる可能性があるからだ。海外需要とインバウンドに依存するのは、あまりにも危うい。

国内では「日本酒離れ」

国内市場に目を向けると、状況はさらに複雑だ。若年層を中心に日本酒離れが続き、居酒屋など客単価が比較的低い飲食店では、高価格帯の日本酒を扱いにくいという声もある。競合するビールや焼酎などは日本酒ほど価格が上昇していないのも「日本酒が選ばれにくい理由」となっているだろう。

一方で、純米大吟醸など特定名称酒へのシフトは進んでおり、ハレの日需要や地域性。また酒米・製法にこだわるコアなファン層向けの高付加価値がある商品は一部で堅調に推移している。

2024年度は、こうした課題が「価格」という形でより顕在化した年でもあった。酒米の高騰に加え、瓶やラベル、配送費用などのコスト負担も重く、現状の利益率を維持するためには販売価格の見直しが避けられない状況だ。実際、2025年に向けて10%以上の値上げを実施した蔵元も少なくない。

今後は酒米の安定供給をどう確保するか、高付加価値への戦略と価格の転嫁をどう両立させるかが、日本酒の未来を左右する重要なテーマとなりそうだ。

個人的には、日本人が日常的に気負わずに楽しみ、ときどき特別な一杯として選ぶことこそが、世界が誇る美酒「SAKE」を支える源になると思っている。年末年始は、ぜひ特別な一杯で乾杯を。

プレスリリース

文=福島はるみ

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事

Forbes BrandVoice!! とは BrandVoiceは、企業や団体のコンテンツマーケティングを行うForbes JAPANの企画広告です。

2025.11.27 16:00

博報堂DYグループの実行力を武器に、ENND Partnersが目指す「分断を超え、つなぐ」企業変革(後編)

日本企業が抱える「戦略と実行の溝」をいかに埋めるのか(前編より)。後編では、ENND Partners共同創業者兼CEOの岩渕匡敦と共同創業者兼プリンシパルアドバイザーのティム・ブラウンが他のコンサルティングファームと一線を画す「つなぐ」力と真の変革について語り合う。


博報堂DYグループの強みはどこにあるのか

ーENNDとほかのコンサルとの違いは何ですか。

岩渕:「つなぐ」に重点を置いているところです。既存のコンサルは多くの場合、戦略、IT、オペレーションなど機能ごとに会社が分かれています。それぞれの機能に高度な専門性を求められ、簡単に真似できることではないので、私もリスペクトしていますが、支援先の企業にとって頼る相手が複数いると「分断」が起きて戦略実現が難しくなり、その結果として事業価値につながりにくくなりがちです。

なぜなら経営の課題は往々にして領域をまたいで存在しているからです。ENNDはその分断を超え、「戦略と実行」「論理と感情」「人とテクノロジー」をシームレスにつなぐことを目的としています。

私たちは、経営層が描くビジョンを現場の行動にまで落とし込み、社員が実際に動くところまで伴走します。

京都大学の山内裕教授が主宰しクリエイティブディレクターの佐藤可士和さんが特命教授を務められる「京都クリエイティブ・アッサンブラージュ」との連携もそのひとつ。人文学的発想は経営課題とその解決を「つなぐ」ものですから、とても重要と考えています。

ENND Partnersが主催したイベント「Code of Creativity 新たな価値を生み出す力」。ENNDは人文・デザイン・アート分野から創造的実践を探る「京都クリエイティブ・アッサンブラージュ」との連携をしており、このイベントでも多くの聴衆と企業課題の現在や、その解決創造について議論を深めた。
ENND Partnersが主催したイベント「Code of Creativity 新たな価値を生み出す力」。ENNDは人文・デザイン・アート分野から創造的実践を探る「京都クリエイティブ・アッサンブラージュ」との連携をしており、このイベントでも多くの聴衆と企業課題の現在や、その解決創造について議論を深めた。

ー幅広い領域をカバーするには相当なリソースが必要だと思いますが、どう実現するのでしょうか。

岩渕:博報堂DYグループには、クリエイティブ、テクノロジー、オペレーション、デザインなどのグループ会社が約450社あり、約2万9,000人の専門人材がいます。私たちは彼らを実行部隊として編成できます。

そして世界中にネットワークをもつIDEOやSYPartnersといった人間中心に根ざした企業群とも協働しています。だからこそ戦略立案から実行、AIやテクノロジーの実装までを一気通貫で支援できるのです。

ティム:AIで人間を置きかえたり、搾取したりするのか、それともAIを用いて人間の能力を高め、新たなことを成し遂げる方法を模索するのか。

今、我々は明確な選択を迫られています。世界中の企業が同じ問いを突きつけられていますが、日本は他国よりも、利益だけでなく人間の可能性を引き出すことにAIをどう活用すべきか考える企業が多いと考えています。私たちはそうした企業を支援したい。

岩渕:技術の進化は環境の変化として受け止めざるをえません。その前提で、いかに人間の価値を上げていくのか。AIベースのプロダクトをつくっても、人間が使いこなせなければ意味がありません。体験設計や組織変革とセットで、AIを導入する必要があります。

ティム:新技術を効果的に利用している企業の特徴のひとつは、目的意識(パーパス)をもっていることです。誰かにそうすべきだと言われたから新技術を導入するわけではなく、何を達成すべきかを理解しています。

ふたつめの特徴は彼らは実験的な文化をもっています。自社ビジネスに適合する場所、あるいはビジネスの進化を可能にする場所を見つけるまで、試行錯誤を続けます。生成AIのおかげで、より多くの実験が可能になっています。アイデアを思いついたら迅速にコード化し、何らかの体験へとかたちを変え、人々に試してフィードバックをもらえるようになったのです。

3つめの特徴は絶え間なく学習する意欲です。将来どのようなスキルが必要となるのか、私たちにはわかりません。しかし新しいことを学びたいという意欲があれば、外部世界から訪れるあらゆる変化を予測し、適応する機会を自らに与えることができます。

目的意識、実験精神、学習意欲こそ現代の企業が備えるべき特性です。

ー岩渕さんは、これまでボストンコンサルティンググループやマッキンゼーなど、どちらかといえば、戦略や計画をロジカルに組み立てることに重きを置く企業で、キャリアを積んでこられました。人間中心的な経営を推進する側に足を踏み入れるのは大きな決断だったのではありませんか。

岩渕:5年ほど前、当時高校生だった娘から「パパはいつも数字の話ばかりしている」「私たちの将来はもっと人とのコミュニケーションを豊かにしたり、自然と触れ合ったり、クリエイティブなことをして生きていきたい」と言われたんです。ハッとさせられましたね。クライアントのために必死に数字を駆使して効率性を追い求めていましたが、自分が信じてきた「正しさ」の軸が揺らいだ気がしました。

それ以来、若い世代が活躍できるプラットフォームをつくるにはどうすればよいかを考え続け、ENNDの創業コンセプトにたどり着いたのです。数字やロジックは経営にとって欠かせない要素ですが、数字の背後には必ず人がいる。人の感情や関係性、文化、価値観を理解しなければ、本当の意味での変革は起きません。

▶︎前編の記事はこちらから

ENND Partners
https://enndpartners.com/


 いわぶち・まさのぶ◎ENND Partners共同創業者兼CEO。ボストンコンサルティンググループ東京オフィスにてMarketing,Sales and Pricingプラクティスの日本リーダーなどを歴任し、2024年より博報堂DYホールディングスの執行役員に就任。同年3月にENND Partners設立。 「Harvard Business Review」などへの寄稿や執筆多数。

ティム・ブラウン◎ENND Partners共同創業者兼プリンシパルアドバイザー。博報堂DYホールディングスの戦略事業組織であるkyuのVice Chairであり、世界的なデザイン・イノベーション企業であるIDEOのChair Emeritus(名誉会長)。「デザイン思考」を紹介した著書『Change By Design』はベストセラーになった。


>>特設サイトはこちら

promoted by ENND Partners | text by Shinya Midori | photographs by Toru Hiraiwa

食&酒

2025.12.14 12:30

2030年プロテイン危機。日本が救う「食の未来」

Kokhan O / Shutterstock.com

Kokhan O / Shutterstock.com

2025年から30年にかけて訪れるとされるのが「プロテイン・クライシス」なるものだという。世界ではタンパク質が生命エネルギーの格差をつくりあげると言われているのだ。


今から半世紀前──。スーパーの棚からトイレットペーパーが消えた。物価は狂乱のごとく跳ね上がり、日本経済は石油依存という弱点を突かれ、急ブレーキをかけられた。世界を震撼させた「オイルショック」だ。

そして今、目前に迫るのは、2025年から2030年にかけて到来するとされる「プロテイン・クライシス」なのだという。世界的な経済成長と人口増、食生活の西欧化などでタンパク質需要が急増する一方、気候変動や環境負荷、資源の制約により、供給が追いつかなくなる新たな食糧危機だ。

オイルショックから50年、私たちが学んだのは、危機が混乱を招きつつも技術革新や産業転換を大きく促したという事実だ。ならば迫る「プロテイン・クライシス」も同じではないか。かつての克服を支えた三つの原動力──。「技術革新」「代替・需要変化」「価格メカニズム」──を手がかりに、その道筋を探りたい。

1)「技術革新」─時空超越という新たな発展

石油危機を契機に省エネ大国へと変貌した日本。今求められるのは、プロテイン・クライシスを支える技術だ。ここでは、とりわけサプライチェーンやコールドチェーンを最適化し、タンパク質の寿命を延ばす「フード・ロンジェビティ(食の長寿化)」技術に焦点を合わせたい。

Alphabet(Googleの持ち株会社)は、テクノロジーを通じて社会課題の解決に挑み続ける企業だ。そのムーンショット研究機関「X」から生まれたプロジェクト「Chorus」は、今プロテイン・クライシスに挑んでいる。「世界のフードロス3割は輸送中に発生する。不適切な温度管理による損失解消のため、生鮮食品のトレーサビリティ需要が高まるなか、当技術の意義は大きい」と語るのは、プロジェクトに携わる価値デザイナーの渡邉賢一だ。「Chorus」は「位置情報」「温度」「圧力」の3つのセンサーをタグに搭載し、輸送中のモノの動きを計測・追跡。Googleマップと連動し、保存環境を確認できるだけでなく、在庫管理や需要予測、流通品質の向上にも寄与し、持続可能で高付加価値なサプライチェーンを実現する。

フード・ロンジェビティに寄与するもうひとつのテクノロジー、それが冷蔵庫、冷凍庫に次ぐ第三の鮮度保持技術「ZEROCO」。「収穫された瞬間から進む腐敗と劣化。この技術は、時間の概念を超えられるクロノスフリー・ガストロノミー(時間超越の美食)をもたらす」(同社社長 楠本修二郎)。ヒントにしたのは、日本の雪国の食を支えた低温・高湿の保管環境「雪下野菜」だ。野菜は寒さから身を守るために糖分を蓄え、甘みとうまみが増す。この技術により、食材本来のおいしさを保つだけでなく、食材寿命をフレッシュなまま延ばし、フードロス削減に貢献。さらに、サプライチェーンの川上に導入することで鮮魚の神経締めや、はらわた除去といった初期加工業務から解放されるという。「しかもZEROCOを予備冷却機能として活用し、調理済みの食品を冷凍すると従来のような細胞破壊を起こさず、つくりたてのおいしさが復元する。まさに食のレコーディング技術です」(楠本)

KEYWORD|ZEROCO
生産と同時に腐敗や劣化に対応しなければいけない一次産業の希望となるZEROCO。倉庫内は0°付近かつ湿度100%近傍を維持することで長期保存が可能に。 水の気化熱を利用するため電源不足にも有用な設計だ。保存だけでなく、予備冷却装置としての活用や、販売の活用も進む。

次ページ > 脳が喜ぶ代替品

文=谷本有香(1〜3P前半)・安宅和人(3Pコラム)・德川家広(4.5Pコラム)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

| あなたにおすすめの記事

人気記事