ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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CC38話:ジョウトのノーマル、追加進化貰いがち

 ※※※

 

 

 

「侵入者とは大したものじゃ。大方……方舟を止めに来おったってところかのう。まあ良い、どの道サーフェスが食い止めておるじゃろう」

「サーフェスは伝説のポケモン3匹掛かりで押さえつけられています」

「……え? マジ? ウソじゃろ? 伝説のポケモン? 聞いてないんじゃが? ……まさか、()()()引き寄せられてきおったか」

 

 苦々しい顔を浮かべると、クガイはカチカチと爪を噛む。

 

「……つくづく蠅のような連中じゃ!」

「解放しましょう、洗脳した彼らを」

「おお、やるんじゃな? 早速、我らアークの船団の技術力の一端、見せてやろうぞ!」

 

 ヒルギが端末を弄る。そのプログラムは全て、キャプテン達に繋げられたマスクを起動させるものだった。

 洗脳ガスの種類が変わり、意識が眠っている彼らを半ば覚醒させるのである。

 だが、目覚めた時には既に、彼らはアークの意志を刻みこまれた人形と化しているのであるが。

 

「圧縮次元砲の準備はどうなっておる?」

「現在出力60%です」

 

 深海で幾度となく行った実験で、既に出力と威力は確認済み。

 後はレーザーを溜めるだけである。

 

「……秒読みか。直に新時代の始まりじゃな! わっははははは!!」

「チャージ完了まで残り30分です」

「わは……()()()じゃな」

 

 ──新時代創世まで、残り30分。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 襲い掛かるポケモン、そして社員たちを振り払いながら、メグル達は更に奥へ奥へと進んでいく。

 尤も、その社員たちの目は完全に虚ろ。皆、「新時代……新時代……」と呟いており、精気がない。

 そんな連中の使うポケモン等相手になるはずもなく。

 バサギリが迫りくる敵達を回転斬りで薙ぎ払い、ルカリオが波動弾で吹き飛ばし、そしてデカヌチャンがハンマーを振り回して道行く者皆を追い回す。

 

「どいつもこいつも……怖いぜ、新時代……!!」

「そうッスよ! やっぱ新興宗教みてーな側面があるんスかね、アークの船団とやら……!!」

「皆目が据わっていて怖いんですけどぉ……!」

「ふるーる……」

 

 災禍を感知するアブソルに案内してもらいながら、円周状の方舟をメグル達は突き進んでいく。

 

「しっかし、この方舟って何なんスかねぇ……!? 何でまたわざわざこんな形で作ったんスかねえ?」

「さあな。ただ、船団って言うくらいだから、自分達だけが新時代に進むための船ってところだろ」

「何て自分勝手な連中……!!」

「どっちにしたって、他の世界に迷惑が掛かってる時点でアウトッスからね」

「迷惑どころか滅びてんだよな……」

「あっ……すまねえッス」

「いーんだよ。……この世界を守れれば、それで良い」

 

 突き抜けた先は、荒れ果てた巨大なホールだった。

 何かが暴れた痕跡があり、座席も潰れてしまっている。

 アブソルが導いた最短のルートは、此処から非常階段を渡ることであった。

 そのため、彼女は非常階段の方を向いて走り出す。

 しかし──次の瞬間、天井から火の粉が降り注ぎ、アブソルはすぐさま退避するのだった。

 

「アブソル!?」

「な、何かいる! 天井に!」

「──あらあらぁ、悪い子ちゃん達ねぇ。一体こんな所に何をしに来たのかしら」

 

 声が何処からともなく響いた。

 ホールの裏側から、かつん、かつんと甲高い靴の音が響く。

 その声、そして顔を見てメグル達は驚愕した。 

 案の定顔の半分は例のマスクで覆われてしまっているのであるが。

 

「ハズシさん……ッ!! やっぱり洗脳されてんのか……!」

「ってことは、この火の粉は──」

 

 劈くような咆哮と共に、暗い天井に太陽が昇ったようだった。

 火球となってそれは、ハズシの傍に現れる。

 鱗粉を撒く鮮やかな6枚羽根。そして、どっぷりと太った腹部。

 神々しい蛾のようなポケモンが彼の傍に立っていた。

 

「ぷひぃぃぃぃぃぃっぷ!!」

 

【ウルガモス たいようポケモン タイプ:炎/虫】

 

 凄まじい熱。

 振り撒かれる炎の鱗粉。

 特筆すべきは高い特攻、特防、そして素早さ。

 炎タイプとしても、虫タイプとしても、トップクラスの厄介さを持つポケモンだとメグルは記憶している。

 しかし、ウルガモスはサイゴクには生息していないのか、ノオトは物珍しそうな顔をしていた。

 

「……ありゃあハズシさんの手持ちじゃねえッスね……すり替えられてるッス」

「残念ながら、貴方達は此処でお終いなのですよ」

 

 今度はコインの山が周囲から溢れ出してきて、足元まで浸かる。

 そして、あの穏やかさの中に狂気を携えたような声が聞こえてくるのだった。

 

「そう──胃痛と十二指腸潰瘍に悩まされない、新時代が始まるのですよ!!」

 

 ──違った。穏やかさの中にお労しさを携えたような声であった。

 現にマスクの上に見える目の下にはくっきりと隈ができてしまっている。

 これはきっと洗脳の所為ではないことをノオトは知っていた。

 

「ヒメノちゃん!?」

「……や、やつれてやがる……! 一体どうしてこうなっちまったんだ……許せねえぜ」

「アーウン、ソウッスネー」

 

 全ての真実を知っているノオトは知らないふりを此処では通すことにした。

 洗脳されてはいるが話が早い。とっととあのマスクを外せば、姉を洗脳から解放することが出来る。

 しかし、彼女を守るように立ち塞がるのは全身が黄金のコインで構成されたポケモン・サーフゴーだ。

 

(サーフゴーも進化前のコレクレーもサイゴクには居ねえ! 多分奴らから持たされたポケモンッスね!)

 

「こっちも大概にヤバいんだったな……! あいつ、状態異常が効かないんだったっけか?」

「しかも鋼/ゴーストはかなり厄介なタイプッスよ。炎タイプか地面タイプ、誰か持ってたッスか」

「オーライズすればあるぞ」

「モトトカゲが実質炎タイプみたいなもんかな」

「無いんじゃねーッスか!」

 

 

 

「……アークの船団の目指す新時代に逆らう、愚か者が居るようね」

 

 

 

 閃光が暗いホールを照らす。

 そして、全てを薙ぎ払うような拳が襲い掛かる。

 思わずアブソルが尻尾で受け止めて相打ちとなったが、それでも彼女の身体にはしばらく電気が残っていた。

 

「今のはほんの準備運動。新時代を邪魔するなら、此処で潰してやるんだから」

「ビリリリ……!!」

 

【エレキブル らいでんポケモン タイプ:電気】

 

 筋骨隆々な熊のようなポケモンだ。

 その頭からコードのようなものが伸びており、一本一本から電気が放たれている。

 そして美女と野獣のように、傍に立つのは──ユイ。

 例に漏れずその目は虚ろではあったが。

 

「ユ、ユイちゃんまで……!」

「キャプテン3人が揃い踏みッスか……あれ? でも、キリさんは? キリさんが居ねえッスよ!?」

「今此処にあの人まで来られたら手の付けようがねえだろ……!」

「それもそうッスね……でも、何処にいるんスかねえ」

 

 何時まで経っても、キリが来る様子はない。

 しかし、敵の方が待ってくれるはずもなく、すぐさまエレキブルがいの一番に飛び出すのだった。

 それをいなし、アブソルがすぐさま”むねんのつるぎ”を放つ。

 一方、サーフゴーも全身からコインを放出し、辺りを更にコインで沈めていく。

 このままでは動けなくなるので高所へ逃げていくメグル達だったが、それを追い詰めるようにしてエレキブルが急接近した。

 

【エレキブルの かみなりパンチ!!】

 

「ッ……パーモット!!」

 

【パーモットの かみなりパンチ!!】

 

 それに対抗するように、ノオトが繰り出したパーモットがエレキブルに拳をぶつける。

 両者は再び弾き飛ばされ、激しい格闘戦を演じるのだった。

 

「ビリリリリリリーッ!!」

「ぱもぉーっ!!」

 

 拳をぶつけ合う二匹。

 しかし、それでも体格差には勝てないのか、パーモットの方が地面に落ちてしまう。

 エレキブルは全身が筋肉の塊。更にそれを電気で刺激し、活性化させているのだ。

 

「開くは華麗な炎の華ッ!! 邪魔するものは焼き払うわ!」

 

【ウルガモスの ほのおのまい!!】

 

 ウルガモスがぐるぐると身体を回転させれば、辺りに炎の鱗粉が吹き荒れる。

 それが爆ぜて、アルカの身体を吹き飛ばした。しかし、空中で体勢を立て直すと、アルカは握っていたボールを思いっきり投げる。

 飛び出したカブトプスがウルガモスに向かって食らいつく。

 

「ストーンエッジだ、カプトプス!!」

「ッ……エナジーボールよ、ウルガモスちゃん!」

 

 突き刺すような岩の刃。

 しかしそれをも砕く勢いでエナジーボールが進撃する。

 すれすれでそれを躱したカブトプスだったが、命中していれば一撃で瀕死は免れない攻撃だ。

 

「しっかり草技まで持ってる……やりづらいんだけど!」

「ウッフフフ! このくらいはまだ序の口よ。ウルガモスちゃん、鬼火よ!!」

 

 青白い炎が浮かび上がり、カブトプスの身体を焼いていく。

 

「やけどっ……!!」

「”エナジーボール”よ。これは耐えられないでしょう!?」

 

 宙に無数に浮かび上がる緑色の弾。

 それを次々にウルガモスは飛ばしていく。

 

「”あまごい”!!」

 

 飛来してくる弾幕を躱すため、カブトプスは周囲にスコールのような雨を降らせる。

 これで特性:すいすいが発動。弾幕を紙一重で躱し、ウルガモスに刃を突きつけた──が、ウルガモスも惑わすような動きでそれを躱してしまう。

 

「アブソル、戻れ! 今お前を消耗させられねえ! ……此処はアヤシシ、お前の出番だ!」

 

 アヤシシの背に跨るメグル。

 足を鬼火で爆破させることで跳躍力を伸ばしたアヤシシはサーフゴーに肉薄しながら、影の弾幕を展開させていく。

 しかし、ヒメノもまた、サーフゴーに”シャドーボール”を乱打させて相殺させるのだった。

 

「此処で死んでアークの礎になるか、アークの礎となって死ぬか。選ぶのですよー♪」

「さっすがヒメノちゃんだぜ……手持ちじゃねえポケモン使わせても一流だな」

 

 サーフゴーとは一度戦った事があるメグルだが、全身をバラバラのコインに変えることができる性質と、変化技が効かない特性、そして平均的に高い能力、そして優秀な複合タイプ──といったように、優秀な部分が組み合わさって強力な性質を形成しているポケモンだ。

 この変化技が効かないという性質が非常に厄介で、アヤシシの得意な催眠や混乱がサーフゴーには通用しないのである。

 

「はいーっ、それでは”ゴールドラッシュ”で押し潰すのですよー♪」

 

 天井から黄金のコインが降り注ぐ。

 それがアヤシシとメグルを押し潰していく。

 しかし、そこは流石の膂力というべきか、鬼火を爆破させてアヤシシは一気にそこから飛び出してみせる。

 だがそれを狙って狙撃されるのは”パワージェム”。顔面にそれを受けたアヤシシは怯み、更にコイン弾の追撃を受けてしまう。

 

「アヤシシ!!」

「あっはははは! 落ちるのですよ!」

 

 甲高いヒメノの笑い声が響く。周囲を見ても、アルカやノオトの戦績は芳しいものではない。

 ウルガモス、エレキブル、共に種族値が高いポケモンだ。

 それがキャプテンの指揮で更に強さに磨きがかかっている。

 かと言って今此処でメガシンカを切ってしまえば、後の戦いに響きかねない。メガシンカはポケモンに少なくない負荷を掛けるのでクールタイムが必要となる。

 

(なら、オーライズを使うか……!? キャプテン相手にこれ以上出し惜しみは出来ない……!!)

 

 オージュエルにメグルが手を伸ばそうとした瞬間だった。

 既にサーフゴーはサーフボードに乗って直上に移動しており、頭上から大量のコインを降らそうとしていた。

 

 

 

「──サーフゴー、トドメの”ゴールドラッシュ”なのですよ!!」

 

 

 

 迫りくるコイン。

 思わず目を瞑り、腕で顔を庇う。しかし。

 

 

 

「ガチグマ、”ぶちかまし”だッ!!」

 

 

 

 突如、巨大な影がサーフゴーを捕えて地面に叩き伏せた。

 うめき声を上げ、コインの化身は手を伸ばすが、そのまま更に殴打を繰り返され、沈黙するのだった。

 

【効果は抜群だ!! サーフゴーは倒れた!!】

 

「ッ……な、何者なのです!?」

「ガ、ガチグマ……!?」

 

 全員の視線は、中央ホールの入り口に注がれる。

 そこに立っていたのは──白衣姿の男だった。

 

「ごめんごめーん、でも……その子達には先に行ってもらわないと困るんだよねえ」

 

 適当で間延びした声の彼はすたすたとステージを降りていく。

 そして、メグルの前に立つのだった。

 

「やっほ、メグル君。助けに来てあげたよ」

「博士ーッ!! 何で!?」

「このガチグマは僕のポケモンだ。ま、頼れる助っ人ってヤツだね」

「ぐまぁ」

 

【ガチグマ でいたんポケモン タイプ:ノーマル/地面】

 

 重戦車の如き佇まいだった。

 泥炭を顔に塗りつけたヒグマのようなポケモンだ。

 それは、サイゴク地方の山間部の生態系で最上位に位置する生物であり、ゲーム上でも圧倒的な耐久力と火力を誇るポケモンである。

 メグルも野生で遭遇し、何度か死を覚悟したことがあるほどのポケモンである。

 

「イデア博士……どうやって此処に来たんスか!?」

「詳しい話は後! キャプテンが居ない時だからこそ、僕みたいなのが身体を張らなきゃと思わない?」

「み、見直した……博士がかっこよく見える……!」

「そこは素直にかっこいいって言ってくれないかなあ!? とにかく、キャプテン達は僕に任せてくれたまえ」

「任せるって──まさか全員相手にするんですか!? キャプテンは皆強敵揃いですよ!?」

「そうだねえ。だけど……止められない相手じゃないよ。僕のポケモンは生憎、相当鍛えていてね──ノココッチ、リキキリン!! 出番だよッ!!」

 

 イデア博士は続けて2つのボールを投げ込む。

 中から現れたのは、膨れた腹が連なったツチノコのようなポケモン。そして、ぎょろりとした目玉の付いた頭をフードのようにして被ったキリンのようなポケモンだ。

 

【ノココッチ つちへびポケモン タイプ:ノーマル】

 

【リキキリン くびながポケモン タイプ:ノーマル/エスパー】

 

(こいつ……確か、スカバイの告知で先出しされてたキリンリキの進化形、んでもってこっちがノコッチの進化形!? えーと、ノコッチって進化しなかったよな確か!!)

 

 キリンリキは第二世代に登場したポケモン。いずれもパッとしない性能の進化しないポケモンだったが、それが追加進化を得ることを事前の告知で話題になっていた。

 ノコッチに至っては告知なしで追加されたポケモンだったため、メグルからすれば初めて見る進化だ。

 

(ちょ、ちょっとネタバレされた気分……)

 

「さあて暴れるよ! リキキリン、ツインビームでウルガモスを攻撃! ノココッチはハイパードリルでエレキブルを攻撃だ!」

 

 先ず手始めにリキキリンが巨大な首を振り回してウルガモスと距離を離したかと思えば、目玉から鮮やかなビームを放つ。

 その威力はすさまじく、座席を焼き払いながらウルガモスも捕捉して翅を焼き切る。

 幸か不幸か翅そのものは燃え上がる炎と共にすぐ復活したが、それはハズシに警戒させるには十二分だった。

 更に、ノココッチは体をドリルのように回転させると、エレキブルの背後から攻撃するのだった。

 

「……な、何なの、この強さは……!!」

「エレキブル、しっかりしなさい!!」

「くっ、次のポケモンを使うのですよ……!!」

 

 キャプテン3人を1人で圧倒する実力。

 それを前にメグル達は何も言えなくなってしまう。

 

「ほら、行きな。サイゴク地方に滅んでもらっちゃ、困るんだよね」

「……ありがとうございます!」

 

 ぐっ、と親指を立てるイデア。

 それでメグル達は先に進むことを決心する。

 

「皆! 此処は博士に任せて先に進むぞ!!」

「大丈夫なのかなあ!?」

「博士はつえーッスから、何にも心配要らねえッスよ!」

 

 目指すは管制室。

 それを目指し、メグル達は下にある非常階段へ進んでいくのだった。

 そうして彼らが居なくなったのを確認した後、イデア博士は深く息を吐く。

 

 

 

「……さあて。僕も頑張っちゃおうかなあ」

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