ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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CC37話:裏切りのキャプテン

 ※※※

 

 

 

 ──方舟・中枢管理室。

 

「それでキャプテン達は?」

「折角なので有効活用しましょう。方舟の各所に配置しています。最強のガードマンになるでしょう」

「船内は盤石か──くふふ! 長かったのう、遂にこの時が来た! 新時代を作り出す時が!」

 

 クガイは、動力炉となる()()を見ながら感慨深そうに言った。

 GSカンパニーがデイドリームに用いていた、無限エネルギー炉心の応用である。

 既にクガイは数年前からGSグループに産業スパイを紛れ込ませており、技術を盗み出していたのである。

 マリゴルドがデイドリームの起動に踏み切った際は、秘密裡に途中で強制的に機械を破壊するプログラムまで組み込ませていた程に、アークの根はGSグループに絡みついていた。

 

「この世は相も変わらず醜い……人はポケモンを利用し、搾り取る。人も人を利用し、搾り取る」

「……」

「ならば、一度、この世の摂理をひっくり返してみるのも乙というものじゃ。苦しみも何も無い新時代」

「……」

「ワシの親は……紛争で亡くなった。もう100年以上も前の事じゃが……そこから下積みから身1つで会社を興し、此処まで来た!」

「……」

「しかし、残る足りないピースはヒルギ──おぬしが全て埋めてくれた!」

「……有難き幸せです」

「おぬしは新時代に……何を望む?」

「──当然、貴女様と居られる未来です」

 

 頭を恭しく下げるヒルギ。

 それが示すのは、高い忠誠心。

 

「このヒルギ、天地が揺るごうと……最期まで貴女に仕えることを選びます」

「くふふっ、流石ヒルギじゃ。ワシが見初めただけのことはある──」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 キャプテン達は皆、警備の人間を付けられて、方舟の各所に配置されることになった。

 皆、その目は虚ろ。頭を垂れ「チカイマス……チカイマス……」と呟いている。

 彼らは皆、有事があれば侵入者を排除する使い捨ての洗脳トレーナーと化したのだ。

 只一人を除いて。

 

「うっぎごごごごごご」

 

 横に並んでいた警備員の首を締め落とし、キリは口に付けられたマスクを外して投げ捨てる。

 

 

 

(──さあて、問題は此処からどうするかでござるな……)

 

 

 

 忍者は、薬品耐性も非常に高い。特にキリは特別だ。

 毒薬やガス等に対する耐性訓練を繰り返し行っているからである。

 マスクを付けられ、催眠ガスで洗脳された──と思われたが、その程度の薬品で洗脳されるキリではなかった。

 とはいえ、それでも頭はぼんやりしてしまっており、漸く今になって手足を自由に動かせるようになったのであるが。

 そして自慢の鉄糸は取り上げられてしまっており、武器は無いも同然。

 ならば何が残っているのか。ポケモンとフィジカルである。後は目を覆い隠すためのスコープだ。

 

(ネムのヤツめ。余計な配慮を……だが後悔するでござる。目元さえ隠れていれば、拙者は活動できるでござるよ。とはいえ、流石に手持ちは早々に没収……()()()()()()()とすり替えられてしまっている。致し方ない、この際言う事を聞けば何でも良いでござる)

 

 通路を抜け、キリは駆けだす。彼女程レベルの高いトレーナーならば、他人のポケモンでも言う事を聞かせられるのである。

 抜け道らしきものは見つからなかった。

 ならば正面突破。斬首作戦ではないが、直接クガイを制圧して方舟の主導権を握る。

 ネムが任務で方舟を空けていることを耳に挟んだ。やれるのは今しかない。

 先ずは各所に配置されたというキャプテンを救出するところからだ。

 

(奴らの計画を聞いた限り、この際忍んでばかりもいられないでござるな……強行突破でござるッ!)

 

 そう考え、彼女は身を隠しながらキャプテンが居るであろう場所に向かって走っていく。しかし。

 

 

 

「──こんな所で何をしている? ……ひぐれのおやしろキャプテン・キリ」

 

 

 

 冷淡な声が通路に響き渡った。

 キリの進路を阻むように──ヒルギが目の前に立っていた。

 

「……ヒルギ殿」

「困るな。薬の量が足りなかったか」

「ネムから聞いていなかったか? 忍者は薬にとても強い、と。それに拙者は筆頭キャプテン。簡単に落とされはしないでござるよ」

「聞いていたさ。想像以上だっただけの事だ。だが、此処でお前を倒せば……何も問題はない。今のお前の手持ちは──」

「そんな事は分かっている。ある物で最善の選択を取る。それが忍者だ」

「……そうか。やっぱりあんた、熱いな」

「こっちは冷え切っているでござるよ。裏切者め!! 何が貴殿を突き動かす!? おやしろまいりを成し遂げ、シャワーズにも認められた貴殿が、何故!!」

「申し訳ないことをしているとは思っているよ。だが……これは俺の戦いなんでな」

 

 ヒルギはセキタンザンを繰り出す。

 キリも対抗するように──ボールの1つを投げた。現れたのはカジリガメ。

 水・岩タイプの、堅牢な甲羅と頑丈な顎を持つカミツキガメのようなポケモンだ。

 すぐさま、二人の戦闘は火蓋を切った。

 セキタンザンに組みかかるカミツキガメは、そのまま扉を突き破り、大きなホールへと雪崩れ込む。

 この場所はどうやら公会堂らしく、観客用の座席が多く立ち並んでいた。

 

(しめた!! 広い場所ならば思いっきり岩技をぶつけられる!! セキタンザンは水・炎タイプ、カジリガメが有利でござる!!)

 

「ストーンエッジ!!」

「ガジガメェェェーッ!!」

 

 岩の刃が浮かび上がり、セキタンザンとヒルギを突き刺さんとばかり飛んで行く。

 しかし、セキタンザンによじ登ったヒルギは、それを躱していく。

 

「”ハイドロポンプ”」

 

 思いっきり地面に向けて激しい水流が放たれた。

 水飛沫は当然ヒルギ達に降りかかる。

 しかし──

 

「特性:じょうききかん……発動ッ!!」

 

 ──次の瞬間には、高速でセキタンザンが疾走し、カジリガメにぶつかった。

 跳ね返ってきた水飛沫を浴びて、セキタンザンの内部にある蒸気機関が活性化したのである。

 これで素早さは限界まで上昇。

 その勢いは激しく、カジリガメの身体は思いっきり吹き飛ばされてしまう。

 

「常軌を逸した速さ、これが蒸気の力!! 幾ら忍者でも捉えられないだろう!!」

「ッ……やはりレベル差が……!!」

「ネムが居ないタイミングを狙って強襲を掛けたのだろうが……俺を侮ってもらっては困るな。俺はあのお方の懐刀。言ってしまえば切札だ。それに、そのカジリガメではとてもではないが、俺には勝てない」

「どんなポケモンも使い方でござるよ、ヒルギ殿。”がんせきふうじ”!!」

「遅い」

 

 セキタンザンの速度は既に限界を超えており、カジリガメを狙って”ハイドロポンプ”が恐ろしい勢いで放たれる。 

 しかし──カジリガメの正面には岩で出来た壁が積み上がっていた。

 

「ッ……岩を身代わりにしたのか!!」

「トレーナーである貴殿を落とせば良いだけの事でござるからな!!」

 

 恐ろしい脚力で跳んだキリは、ヒルギの首元目掛けて手を伸ばす。

 しかし、それでもセキタンザンの方が速い。

 すぐさま水ブレスの軌道はキリへと変えられ、そのまま彼女は吹き飛ばされてしまう。

 

「……頼むから大人しくしていてくれ。俺もあまり、あんた達を傷つけたくないのでな」

「貴様……!!」

「悪いが、しばらくの間寝ていてもらうぞ」

「カジリガメ、”がんせきふうじ”!!」

 

 岩がセキタンザンの周囲に浮かび上がる。

 だが、それを見るなりヒルギは残念そうに溜息を吐いた。

 そして手首の腕輪に指を添える。

 

「知っているか? ガラル地方でのみ起こる現象──ダイマックス」

「ッ……!?」

「……それを他の地方で起こす方法が存在するとしたら、どうする?」

 

 一度セキタンザンをボールに戻したヒルギ。

 そのボールに、腕輪から放出された粒子が注がれ、どんどん肥大化していく。

 

「ま、まさか、そんな馬鹿な事が──ッ!!」

「バディーズキョダイマックス──ッ!!」

 

 巨大化したボールを思いっきりヒルギは投げ上げる。

 次の瞬間には──周囲の座席も全て踏みつぶす程に巨大化し、まるで山のようになったセキタンザンが鎮座していた。

 頭部にまで漏れ出した石炭、そして胴体には巨大な高炉が剥き出しになっており、常に水蒸気を噴き出している。

 そのサイズは天井スレスレで、少しでも動けば周囲のもの全てを薙ぎ払う勢いだ。

 命の危険を感じたキリは、その場から逃走を図る。しかし、間に合わない。セキタンザンの技の出が想像以上に速い。

 

 

 

「突沸させろ──”キョダイフットウ”!!」

 

【セキタンザンの キョダイフットウ!!】

 

 

 

 恐ろしい勢いの水蒸気爆発だった。

 キリの身体は勢いよく撥ね飛ばされ、カジリガメも吹き飛び、宙を舞う。

 そして、ボロ雑巾のように地面に叩きつけられるのだった。

 カジリガメは当然戦闘不能。

 キリもまた、全身を殴打したことでまともに動くことができない。

 肺が潰されたことで、呼吸するだけで精一杯だ。

 それでも尚、近付いてくるヒルギを睨み付ける。

 

「悪いな。あんた相手だと、此処までしなければ黙らないと思ってな。これは俺の戦いだ。あんたの出る幕は最初から無いんだよ」

「……き、さま……ッ!!」

「1つ、良い事を教えてやる、キャプテン」

 

 技を使ったことでエネルギーを使い切ったセキタンザンの身体は収縮していき、元の姿に戻る。

 そして、キリに何か耳打ちをすると──彼女は諦めたように目を瞑るのだった。

 

 

 

「やれやれ、何処にぶち込んでおくか。本当に世話を焼かせる」

 

『おい、ヒルギよ、どうしたのじゃ? 中央ホールがとんでもないことになってるぞ?』

 

 

 

 すぐさまクガイから連絡が飛んでくる。

 それに彼は「問題ありません、鎮圧しました」と返す。

 

「奴は忍者。基準値の倍の洗脳ガスでも足りなかったようです。今後は二度と暴れないように、檻の中に入れておきます」

『他のキャプテンもうっかり洗脳が解けたりせんじゃろうな……』

「忍者ならさておき、常人にあれ以上の量を吸わせたら死にますよ、ネムを優に超える薬品耐性を持つこの女がバケモノなだけです」

『まあ、おぬしがそう言うなら……』

「それと──サイゴクの最後のキャプテンの身柄はどうなりました? ネムが確保に行ったと聞きましたが」

『それがネムのヤツ、しくじりおったわ。たっぷり尻を叩いておいたぞ』

「……やはりアケノヤイバか。無理もありません。しかし、1人では何もできないでしょう。奴は最弱のキャプテンですから」

『最弱か! なら何も問題は無いのう!』

「いずれにせよ……我らの計画を邪魔する者はもう居ないでしょう」

『ははは、そうじゃろう、そうじゃろう!』

 

 ご機嫌な満面の笑みが通信機越しに想像できる。

 そのまま得意げにクガイは言ってのけた。

 

 

 

『この期に及んで我らの方舟に乗り込んで来る愚か者など、居るわけがないじゃろうからなァ!!』

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──居た。

 サイゴク山脈頂上付近まで、3匹の伝説のポケモンは思いっきり駆けあがっていく。

 そのまま、大きく跳躍すると光学迷彩で姿を隠した円盤によじ登った。

 そして、壁の表面をも駆けあがっていくと、そのままてっぺんにまで辿り着く。

 

「スイクン、”ハイドロポンプ”!!」

「エンテイ、”せいなるほのお”!!」

「ライコウ、”10まんボルト”!!」

 

 3つのエネルギーが絡み合い、束となって方舟の表面に大穴を開ける。

 そして開いた穴に、思いっきり3人は飛び込んでいく。

 流石、オリハルコン合金も砕いた伝説のポケモンの攻撃、方舟の防壁など、どういうということもない。

 

「だとしても、ちと威力が高過ぎるなあ……伝説すげぇッス」

「それで、俺達ゃ一体何処に行ったらいいんだ!?」

「地図も何も無いからね……しばらくはこの子達についていくしかないんじゃないかなあ」

 

 スイクン達は辺りを警戒しながらゆっくりと進んでいく。

 メグル達もそれについていくしかない。

 外壁を派手に破壊したので、どうせもう向こうにはこちらが侵入したことが悟られているはずなのであるが。

 

「そうなりゃ強行突破ッスね!!」

「脳筋だなあ……これしかないんだけど」

「策を弄してる場合じゃねえからな。俺達らしいと言えば俺達らしいだろ」

 

 しばらくは静かな時間が続く。

 しかし、それも突如として終わりを告げるのだった。

 警備システムが大きく警報を鳴らし、次々にドローンやポケモン達がすっ飛んでくるのだった。

 残念でもないし当然である。想定通りだ。

 問題は、そのドローンから、あの不愉快なアニメ声が聞こえてきたことである。

 

「うーうーうーうーっ!! 侵入者発見でーす!! てゆーか、まーた貴方達ですか!!」

「げっ、この声は……サーフェス!!」

 

 ドローン、そしてマフィティフ達に囲まれながらメグルは、あのミッシング・アイランドで機械を制御していたクソAIの名前を呼ぶ。

 

「メグルさん、サーフェスって例の……!」

「ああ。例の島を守っていたヤツだ。てっきり、海の藻屑に消えたと思ってたけど……ッ!!」

「消える訳無いじゃないですかぁ。ヒルギ様に命を拾われましてね、私、無事ハイキャリア転職を果たしたんです! 今の私は超高性能清楚系──」

「ららいーっ!!」

 

 すぐさまライコウが忌々しそうに電撃を放つ。

 ドローンは次々に落とされていき、マフィティフ達も黒焦げにされて転がっていく。

 かつて同胞を捕えていた輩をライコウは決して許していない。 

 その顔は怒りに歪んでおり、低く唸り声を上げているのだった。

 だが、しばらくして追加のドローンがすっ飛んでくる。

 

「ちょっとちょっとちょっと!! 幾ら何でも酷くないですか!? 口上の途中で攻撃するのはルール違反なんですよッ!?」

「オメーのセリフが長いからだろが、さっさと通してくれよ、イライラしてんじゃねーかよ」

「生憎、そういうわけにはいかないんですよね!」

 

 今度はメグル達の背後から声が聞こえてくる。

 次の瞬間、床に穴が開き、そこから獰猛な叫び声が聞こえてきた。

 現れたのは──あのミッシング・アイランドで見てきた人造ポケモンであった。

 ピクシーのようでピクシーではない、腕が巨大化したポケモン。そして、全身がガスでできており、放電し続けているポケモン。最後に、黒い竜の如きポケモン。

 それら全てに、あのスピーカー付バイザーが取り付けられている。

 既存のポケモンによく似ているが、相違点も多い彼らは、バイザーに操られるがままにメグル達に敵意を向ける。

 

「タ、タイプ:ゼノォ……!? 何で、あの時──捕まえたはずなのに!?」

「人造ポケモンがほいほい何匹も出て良いんスかぁ!?」

「あっはははは! 単純明快、タイプ:ゼノが1匹だけだと思ったら大間違いですよ! 設計図さえあれば、量産こそ利きませんが造れるんですよ、この子は!!」

 

 タイプ:ゼノ自体が準伝説クラスの強さを誇るポケモンだ。しかも、3つの姿に変身することができ、タイプも変わる。

 凶暴性も抜群。それが3匹も集まれば、流石に手に余る相手である。

 

「ららいーッ!!」

「すすいーッ!!」

「ええいーッ!!」

 

 故に、対抗するように進み出たのはスイクン達。

 彼らもまたミッシング・アイランドで利用された怒りを忘れてはいない。

 タイプ:ゼノも、そしてサーフェスも、彼らにとっては因縁の相手だ。

 

「おや? おやおやおや? まさかぁ、また被検体になりに来たんですかぁ!? それも3匹揃ってェ!?」

 

 そんな安い挑発に乗りはしない。だが、屈辱は必ず晴らすとばかりに彼らは身構える。

 そして、先に行けと言わんばかりにメグル達に振り向くのだった。

 

「……こっから先は、オレっち達の力で進むしかないみたいッスね」

「ああ。だけどこいつらなら大丈夫だ」

「先に行こう!」

 

 メグル達は駆けだす。

 目指す場所は──首領・クガイの居る場所だ。

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