ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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CC31話:夜行終焉

「そんな馬鹿な……ウソでしょ? 全員、やられたの……?」

 

 

 

 ぼこぼこ、と泡立つように墨がボールから、そして立ったまま力尽きたカブトプスから抜けていく。

 ポケモン達に使っていた墨が全て失われたからか、祟り神の力も弱まりつつあるようだった。

 しかしもうメグルも、まともに動けはしなかった。ヘラクロスを倒すためだったとはいえ、ギガオーライズ・フェーズ2は彼自身に大きな負担を強いていたのである。

 

(くっそ……ッ!! 此処からが、本番だってのに……、全然身体が動かねえ……!!)

 

「口惜しいなあ、憎らしいなあ、やっと外に出て来られたかと思ったのに……ッ!!」

 

 ゆらり、ゆらり、とアルカはメグルに近付いていく。

 濃縮された墨が身体から湧き出しており、それがメグルを包み込もうとする。

 ニンフィアが立ちはだかり威嚇するが、アルカは全くと言って良い程動じていない。

 むしろ、その虚ろな目にニンフィアの方が怖気づく始末だ。

 

(そういや、墨を何とか引き剥がす方法はこっちで用意するってヒルギさんが言ってたけど……このままじゃ……ッ!!)

 

「だから、君も一緒になろう、メグ──ル!?」

 

 ぴたりとアルカの手が止まる。

 

「──しまっ、コイツ……意識を取り戻しかけて──ッ!!」

「アルカ……?」

 

 漏れ出した墨が更に弱まっていくのが見える。

 

「アルカ……聞こえてるのか!? アルカ!!」

「くそっ、出て来るな……ボクはまだ──消えたくな──」

「いや、これでゲームオーバーなのですよ」

 

 何処からともなくだった。

 アルカの身体に何枚もの御札が貼り付けられる。

 そして勢いよく、御札に墨が吸い込まれていく──

 

「あああああ!? そんな馬鹿な──お前──ッ!?」

「……元がポケモンの墨で描かれていたなら、それが祟りに発展することも考えられなくもないのですよー」

 

 ──メグルが振り向くと、そこに立っていたのは、巫女服を纏った見覚えしかない少女であった。

 

「それが、アルカ様の意識と融合したことで、仮の人格を手にしていた。でも、これでもう終わりなのですよ。人間至宝の絵画が喪われるのは惜しい気もするのですが……その方には私、借りがあるのですよ」

 

 墨が完全に消え失せて──アルカは膝を突き、そして倒れ込む。

 メグルは彼女を抱きかかえようとしたが、もう足が動かなかった。

 そして、背後から自分達の窮地を助けてくれた恩人の名を呼ぶ。

 

「……ヒメノ……ちゃん」

「ふふっ、久しいのですよ、メグル様」

 

 よあけのおやしろキャプテンの片割れ・ヒメノ。

 彼女は霊的なものの取り扱いには非常に長けているどころか、今では現代に残る唯一の霊媒師だ。

 祟りも、呪いも、彼女からすればオヤツのようなものである。何故ならば周囲の霊すら取り込んで自らや配下のゴーストポケモン達の力に変えてしまうほどに、彼女の持つ力は強い。

 

「でも、何で此処に?」

「キヨ婆様は私達の親戚なので、国際警察に事情聴取されていると聞いてすっ飛んできたのですよ。それがたまたま、百鬼夜行のタイミングに重なったのですよ」

「……助かった……マジで……」

「いえいえ、こちらこそ。メグル様が相手のリソースを削いでくれたので、楽だったのですよ」

「……それにしても良かったのかよ。胃潰瘍で退院した後も調子悪いって聞いてたんだけど」

「はい?」

 

 げしっ、とヒメノはメグルの背中を軽く蹴る。

 力が抜けた彼は、そのままアルカの前に倒れ込む。

 胃潰瘍について心配してくれるのは良い。しかし、その原因はヒメノにとっては思い出すだけで不愉快なものだったのである。

 

「あっだだだ、何すんだ……ッ!!」

「全く、一言余計なのですよ。これなら、助けなかった方が良かったのですよ……なーんて。ゲンガー、ジュペッタ、二人を連れていくのですよ」

「ゲゲゲ」

「ケタタタ」

 

 米俵のように、担ぎ上げられるメグルとアルカ。

 雨が止み──再び月の光が雲の間から差すのだった。

 

「あのーっ、せめてもうちょい人間らしい運び方してくれないか?」

「がたがたうるさいのですよー」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──百鬼夜行は完全に収束。

 ヒメノ曰く、アルカの身体には何も異常が無いらしく、後は寝かせておけばいいとのことだった。

 また、フェーズ2の使用に伴って失われたメグルの精気は、ゲンガーの力によって補われ、事無きを得た。

 しかし博士曰く「使うと今回みたいに無防備になっちゃうからね、マジで気を付けた方が良いよ」とのこと。

 結局、強い力に何も代償が無いということはないのだった。

 そのまま事後処理をキャプテンや国際警察に任せたメグルは、そのまま眠りこけたアルカを見守りながら、美術館の地下室で一晩を過ごしたのだった。

 そして──翌朝。

 

 

 

「──えーと、これってどういう状況……?」

 

 

 

 アルカは自分の手持ち達に囲まれていた。

 特に怒っているのは、一際アルカに忠誠心が高いカブトプス、ヘラクロス、デカヌチャンの3匹だ。

 正面には腕を組んだメグルが仁王立ちしている。

 

「よう、お目覚めかお姫様」

「えーとメグル……百鬼夜行は」

「無事収束したよ。いやー、大変だったぜ」

「そっかぁ、良かった良かった……一時はどうなることかと」

「そりゃこっちのセリフだバカヤロウ」

「……えーと……もしかしなくても、あの後大変だった……?」

 

 メグルが何を言いたいかは、流石のアルカにも分かっていた。

 きっちり痛い目は見たつもりだったし、メグルにも心配及び迷惑を掛けた自信があった。

 だが、それはそれとして周囲に居る自分のポケモン達の存在が気掛かりだった。

 なんせ皆いきり立っているようだ。

 

「……ねえ、何で皆も怒ってるの? カブトに至っては……ちょっと見ないうちに大きくなってるし」

「どうやらあの後どうなったか、まだ聞いてねえんだったな」

 

 メグルは事の顛末をアルカに話していく。

 さぁっ、と彼女の顔は真っ青になっていくのが分かった。

 自分は勿論、ポケモン達も墨に乗っ取られてしまったことだ。

 その後メグルとバトルの末に、墨の祟りは抑え込まれ、最終的にヒメノの手で完全に鎮圧されたことも。

 

「ごめんっ、本当にごめんなさい!! まさか、そんなことになるなんて……ボク、全く分からなかった……」

「今回の件に関しては……冷静に考えりゃ、俺も同じ立場だったら同じ事したかもしれねえって思うんだ」

 

 実際、お前を助ける為に命懸けでフェーズ2を使ったわけだからな、とメグルは続ける。

 

「だから俺は許そう──だがこいつらが許すかな」

 

 カブトプス、ヘラクロス、デカヌチャンが3匹掛かりでアルカに関節技をかけた。

 

「あああ!! 痛い!! マジで痛いから!! 手加減してるんだろうけど!! 痛い!! 反省する!! しますぅ!! ごめんなさい!! もうしない!! もうしないから、許してぇ!!」

 

 これ以上は絵面もマズいので、メグルは彼らをボールに戻して中断させてやる。

 痛みで悶絶するアルカは肩で息をすると、よろよろと立ち上がった。

 

「……本当に、ごめん……まさか、手持ちまで巻き込んじゃうなんて。トレーナー失格だ。そりゃあ、皆怒るよね」

「バーカ、それは勘違いだ。あいつらは……操られても、お前を守る為に動くのは全く躊躇してなかったぞ」

「えっ」

 

 そこまで聞いて──彼女はボール越しにポケモン達を覗く。

 皆、心配そうにアルカの事を見つめていた。

 

「……そっか。ごめんね。本当に……心配掛けちゃったね」

 

 カブトプスのボールを目の前に放る。

 見慣れた姿とは違う相棒が現れる。

 だが、優しそうな目は、進化する前から変わらない。

 思わずアルカは抱き着くのだった。

 

「……カブトプス。皆。これからも、ボクと一緒に居てくれる? 無鉄砲でバカなボクだけどさ」

「キュルルルィ」

 

 カブトプスは、優しくアルカを抱き返すのだった。

 

「……ん、ありがと。もう君達を……こんな目にあわせたりしないよ」

 

 一頻り、抱擁を交わした後、彼女はボールの中にカブトプスを戻す。

 今回は意にそぐわぬ形で力を振るってしまったが、次からはきっと──良き彼女の相棒となるはずだとメグルは確信した。

 

「結局、お前が大事にした分だけ、全部返ってきてんだよ。皆、お前が大好きなんだ」

「そこまで考えてたら、無茶なことは……しなかったかもね。それに甘えたらいけなかったんだ」

「見方を変えりゃあ、自殺行為も良い所だからなアレ。俺を庇ってお前が傷ついたら、俺は全然嬉しくねーし。お前だってそうだろ?」

「……そうだけど」

 

 好きなものの為に何処までも頑張れてしまう。それはメグルだって同じだ。

 だが同時に、彼女自身を好きな人が居ることを、もっとメグルは自覚してほしいと考える。

 

「でも説教垂れても仕方ねえよな。優しいのはお前の長所だし、笑って水に流す。戻ってきてくれてよかったぜ、アルカ」

「……えーとメグル? 目が笑ってないんだけど」

「そりゃそうだろ。絶対やるなって言った矢先だからな」

「やっぱり怒ってる!?」

「だから──これは受け売りだけど、()()()()()ことにした」

「え?」

 

 何の事か全く分かっておらず、呆けたように無防備に開いた彼女の唇を──メグルはいきなり奪った。

 

「むぐっ……ッ!? ~~~~~!?」

 

 青白い肌は一気に紅潮し、爆発する。

 ただ重ね合わせただけのソフトタッチなベーゼ。

 だが、それはあまりにもアルカにとっては刺激的過ぎるもので、頭が真っ白になってしまい──唇が離された時には、すっかりと力が抜けてしまい、ベッドに座り込む。

 

「……な、何するのさ、いきなりっ……!!」

「言葉だけじゃ俺の気持ち全部伝わらねえだろうからな。()()()()で伝えることにした。……イヤだったか?」

 

 ぷい、と頬を隠すように彼もそっぽを向く。

 そんな彼にいじらしさを感じ、つい今まで感じていた羞恥心が何処かへ行ってしまう。

 ああ、彼も同じだったのだ、と嬉しさを感じてしまう。

 

「っ……ふふっ、何で君も照れてるのさ」

「うっ、うるせーうるせー、どっかの誰かが今後、無茶しねえようにするためだ。こうやって、分からせりゃ……ちょっとは思いとどまってくれるだろうってな」

「……そっか。君も同じこと、考えてるんだね」

「誰から告ったと思ってんだよ」

 

 もう一度、今度は啄むようなベーゼ。

 今度はさっきのような強張りはなく、リラックスしたまま彼女はソファに倒れ込む。

 きっと今メグルは冷静ではない。 

 アルカも同じだ。

 二度に渡るベーゼは、二人の理性をどろどろに溶かすには十二分だった。

 口づけのあとの甘い空気が、二人の頬を上気させていく。

 

「ゴ、ゴメンね。……今までガマンさせちゃってて」

「……謝るなよ」

「そう、だったね。えへへ。でも……ガマンさせない方が良かったかも──ん」

 

 恥ずかしいから、という理由で行為を避けていたのをアルカは心底後悔した。

 何より、彼に貪られるように口づけされるのが、とても心地が良い。

 繰り返す度に、互いの気持ちは高まっていく。

 

(そっか、恋人って……こういうのなんだ……)

 

「もう遠慮しないからな」

「……だいじょーぶ」

 

 満更でもない顔で彼女は頷く。

 そのまま全て受け入れるように、メグルの両頬に手を添えた。

 その一挙一動が、捕食を受け入れた小動物のような仕草でメグルの征服欲を煽る。

 次の瞬間。

 

 

 

「はーい、おはようございますなのですよー♪ よあけのおやしろキャプテンのヒメノがモーニングコールに──」

 

 

 

 地下室の扉が思いっきり開いた。思わずメグルもアルカも、飛び出してきた彼女に視線が向いてしまった。

 完全に事前現場に遭遇したヒメノは──笑顔のまま硬直。

 自分が完全にジャマだったこと、そして身内以外にもカップルが居たこと、何より自分がその現場に突入してしまったことの全ての不幸を呪い──胃腸を出血させる。

 

「えーと、あの、ヒメノさん? こ、これには深い訳が」

「いや朝ってさ、力があり余っちゃうよね!! えーと、そうだ!! プロレス! プロレスごっこをしてて」

「おいバカ語るに落ちてんだよ、その言い訳は──いや違う!! まだ何にも!! 何にもしてなくって」

「……チ」

「え?」

「浮かれポンチ」

 

 

 

 

「みーんな浮かれポンチポケモンなのですよーッ!! うわーんッ!!」

 

 

 

 間が悪いのは、弟と同じだったようである。そのまま彼女は、泣きながら地下室を飛び出してしまうのだった。 

 割り込みが入り、色々冷静になってしまった二人はそのまま衣服を整えると立ち上がる。

 

「……えーと、どうかしてたな……こんな所で」

「そうだね……早く行こ、皆が待ってるし」

「ああ」

 

 顔は赤くなっていたが──それでも、一度繋がる心地よさを覚えてしまうと、もうアルカはそこから抜け出せなくなっていた。

 廊下で懇願するように、熱っぽい視線をメグルに送ってみせる。

 言葉は返ってこなかったが、彼もまた同意したように頷くのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「クローバーのヤツは、結局誰の依頼で絵画を破壊しようとしたんだろうな」

「何も分からないままですね……」

「……美術館を野生ポケモンで襲撃したヤツの正体も分からず仕舞いだし、分からねえことだらけだ」

「まあまあ、良いじゃない。絵に関する問題は全て解決したしねェ。メグル君たちも無事だったし」

「イデア博士はそれで良いかもしれないけど……」

 

 結局、クローバーもデリバード共々跡形もなく姿を消してしまった。 

 水墨画を破壊したことで、目的を達成したので長居する理由も無いのだろう。

 また、水墨画を貸し出した寺院も、例の絵が問題だらけの品だと知り、むしろ謝罪をする始末だった。

 この”百鬼夜行地獄絵図”に纏わる問題は幾つかの謎を残しつつも解決したと言える。

 

「ま、サイゴクの英雄は、大手柄だったぜ」

「こっちこそ。ダンガンさん達には色々お世話になりました」

「アルカさんもご協力ありがとうございました。無茶は程々に、と言っておきますが」

「ごめんなさい……」

「ところで、何でキャプテンの嬢ちゃんはあそこで突っ伏してんだ? さっき泣き叫んで出てきたが何があった?」

「……胃潰瘍が再発したんでしょ」

「何だそれ」

そんなことより、明日から水墨画の特別展、再開するんですよね、キヨ館長。”百鬼夜行地獄絵図”の穴はどうするんですか?」

「ふぇっふぇっふぇ、近々飾る予定だった、こいつを飾るとするよ」

 

 結局絵に関しては無実だったキヨ館長は1つの絵を持ってきて、メグル達に見せる。

 

「人間至宝の絵画なんぞ用意せんでも、うちにはもう目玉がある……と気付けたからのう」

 

 そこには──優雅に佇むスイクンが描かれていた。

 全員は得心が行ったように頷いた。

 

「やっぱり、絵は誰かに見てもらってナンボぢゃ……あの子もそれを望んでいるぢゃろ。この子に日の目を浴びてもらうとするよ」

「うん……うんっ! きっと、それが良いに決まってるよ!」

 

 ──翌日から水墨画の特別展は再開された。

 新たな目玉となったスイクンの水墨画は多くの人々の心に強く焼き付けられ、フチュウ美術館にその後も展示されることになったという。

 

 

 

「それはそれとして、次はぜってーに捕まえてやるからなクローバーッ!!」

「……先輩にクローバーを捕まえられる日は来るんですかね……」

 

 

 

 多分その日は一生来ない。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──ほんっっっとお疲れ様ッス!!」

「ったく、結果的に百鬼夜行を止められたから良かったけどよ、とんでもねぇ事件に巻き込まれたぜ」

「まあでも楽しい事もあったからトントン、ってことで……」

 

 

 

 ──それから数日後。

 ノオトは、セイランシティに足を運び、今回の事件について平謝りするのだった。

 元はと言えば発端は彼の提案だったので少なからず責任を感じていたのだろう。

 事の顛末は大体ヒメノから聞いていたらしく、アルカが墨に乗っ取られたことなども知っているようだった。

 

「……ところであんたら、前にも増して距離近くねーッスか?」

「え? いやいや、気の所為だよ、気の所為っ! 特に変わりなしだよっ!」

「ああ……そうだな。うん」

 

 ナチュラルにスキンシップが多くなったようにノオトは感じる。

 二人とも照れて目を合わせようとしない。

 だが、テーブルの下では指を絡め合っているのがノオトには分かる。

 

(バレてないと思ってるのが腹立だしいッスね、こいつら……)

 

 そして何より、テーブルの上に陣取っているニンフィアが、非常に機嫌悪そうに唸っていた。「お前何とかしろよ、ナンパ野郎」と顎でこっちに命令してくる。癪だが気持ちは分かる。

 

(分かってるッスよ、ニンフィア。代わりにからかってやろうかな)

 

「ところでメグルさん、首元にでっかい虫刺され出来てるッスけど、何かあったんスか」

「はぁっ!? ウッソ!? 何で!?」

「ね、ねえ、メグル、もしかしてボク──ッ!?」

「バカ!! だから目立つ場所にはやめろって──」

 

 明らかに取り乱す二人。

 これが見られただけで、もうノオトは心底満足だった。ニンフィアも「褒めて遣わす」と言わんばかりに甲高く鳴いている。

 

「わっりぃ、見間違いだったッス。何にもねーッスよ」

「はぁっ!? テ、テメェなぁ……!!」

「ひ、ひっかけたね……!!」

「何の事ッスかねぇ? 何で慌ててるんスかあんたらァ」

 

(あー、良かった、マジで進展してねーのかと思ったッス。でも、しばらくはこのネタで弄れるッスね、収穫収穫)

 

「それで、次は何処に行くんスか、二人とも」

「こ、こいつ……いけしゃあしゃあと」

「コホン……ジョウト地方に戻るよ。メグルが、ウバメの森で探したいものがあるんだって」

「そこはどうやら、セレビィと関係のある場所みたいだからな……」

「そうッスかぁ……じゃあ、今度こそ二人ともサイゴクを離れちまうんスね。ぐすっ、ひぐっ」

「おいおい、泣くなよ、ノオト」

「そうだよ金輪際会えないってわけじゃないし」

「うっうっ、ところで別れるついでで聞いておきたいことがあるんスけど」

「何さ」

 

 泣き止んだノオトは、真顔で二人に問いかけた。

 

 

 

「──あんたら助けに行った姉貴が、まーた胃・十二指腸潰瘍で入院したんスけど、何か知って──」

「悪い多分それ俺達の所為だわ」

 

【特性:ライトメンタル】

 

 

 

 ──CC三章「城下町怪盗捕物帳」(完)

 

 

 

 

ここまでのぼうけんを レポートにきろくしますか?

 

 

 

 

▶はい

 

いいえ

 

 

 

 ※※※

 

 

 

『というわけで、アクシデントはあったけど、絵画の破壊には成功したデス! またのご利用お待ちしてるデスよー!』

 

 

 

「──知ってるよ。この僕も、近くで見てたからね」

 

 

 

 クローバーから送られてきたメールを確認すると、彼はそれをすぐに消去した。

 

「……やれやれすごかったなあ。まさか、500年も経ってから絵が暴れ出すなんて……」

「どぅーどぅる」

「怪盗に頼んででも破壊して正解だったよ。寺院であの絵を見た時、君が騒ぎ出した時は何事かと思ったけどね」

「どぅーどぅる」

「でも、本当に破壊して良かったのかい? ──センセイ。自分で描いた絵だろ?」

「どぅーどぅる」

 

 依頼主──イデア博士は、センセイと呼ぶそのドーブルに問いかける。

 未練など無いと言わんばかりに彼は頷いた。

 

「君からすれば要は若気の至りだもんねえ。君も僕も、あの頃は若かった。セツゲツカの爺さんはお気の毒だけど……破壊こそが芸術みたいな人だったし、本望でしょ。多分」

「どぅーどぅる」

「メグル君たちのおかげでどうにかなったから良かったけどね。まだ、このサイゴクに滅んでもらったら困るからねえ」

 

 くっく、と笑うと彼は「ああそうだ」と続けた。

 

「たまには本当の姿を見せてくれても良いんじゃない? どうせ今此処には僕しか居ないしね……何、僕達は()()()()()()()()()じゃないか」

「どぅーどぅる」

 

 どろり、と()()を覆っている白い絵の具が溶ける。

 普段の姿はウソで偽り。

 中から現れた真の姿は──セツゲツカと並んで描かれていた、真っ黒なドーブルだった。

 

「方舟の奴らはまだ動き出してない。今回の美術館への襲撃は……メグル君たちへのちょっかいってところかなあ」

「どぅーどぅる」

「さーてと……僕達は、いつ動きだそうか? ……センセイ」

 

 

 

【ドーブル(ヒャッキのすがた) すいぼくポケモン タイプ:悪/ゴースト】




「いい加減ヒメノをオチ担当にするのをやめるのですよ!!(in病室)」
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