ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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CC24話:災禍凶来

 ※※※

 

 

 

 魑魅魍魎よ集えや集え、此度は宴、幽世から来たる行進なり。

 悪鬼に唐笠、飛頭蛮、河童に九尾、氷鬼、最後に来たるは大天狗。 

 魑魅魍魎よ歌えや踊れ、此度は宴、現世を脅かす地獄絵図なり。

 

 

 

──”災禍の凶来”フチュウ百鬼夜行

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 町に入り込むべく侵入を図るポケモン達。

 城下町を蹂躙していくのはオニドリルにパラセクト。

 いずれも体格はヌシポケモン相応に巨大で、存在するだけで災禍を振りまいていく。

 オニドリルの喇叭は町中の野生ポケモン達を扇動して追い立て、パラセクトの吐き出すキノコばくだんは周囲に火を点けながら毒素を放つキノコを生やしていく。

 既に住民には避難勧告が出ており、人々もポケモンも逃げ惑うしかない。

 その流れに逆行するようにして、メグルとアルカは進んでいく。

 

「あーあーあー、もう怪獣映画じゃねーかこんなの……ッ!! 傍迷惑な絵師様だぜッ!!」

「……ッ」

 

 じり、と引き下がるアルカ。

 絵から感じた不気味さの正体は分かったが、それでも尚、200年間醸成された百鬼の魂を前に威迫されてしまう。

 だがそれでも、今の彼女の隣にはメグルが居る。ポケモン達が居る。

 

「……ねえ、メグル。手を握ってほしい」

「……不安か?」

「うん──こいつらの恐ろしさはよく知ってるし……絵に込められたドーブルの力が、想像以上で。それが、ヒャッキの民であるボクに伝わってるんだ」

 

(怒り? 悲しみ? ……違う。この絵を描いた人は、どんな思いで……? 全く分からない……!!)

 

 ぎゅっ、と彼の手を握り締め──彼女は目を瞑る。

 そして目の前に迫りくるポケモン達の群れを前にボールを取り出した。 

 だが、標的を捉えたオニドリルとパラセクトがすぐさま飛び掛かってくる。

 

「でも──君が隣に居るなら。この子達が居るなら。ボクは、戦える」

「安心しろよ、今度は居なくなったりしねえ。約束する」

「破ったら……許さないから」

 

 もう一度固く二人は手を握り、ボールを投げた。

 飛び出したバサギリの大斧がパラセクトの脳天に一撃を叩き込む。

 そして、モトトカゲの”りゅうのはどう”がオニドリルにぶつけられ、地面へ撃墜する。

 いきなり現れた敵を前に、オニドリルとパラセクトは怯んだようだったが、それでも身体が巨大なヌシポケモンクラスということもあってか、すぐさま持ち前の体格を盾に二人を目掛けて押し潰しにかかる。

 

【オニドリルの あなをほる!!】

 

【パラセクトの キノコばくだん!!】

 

 体を思いっきり回転させ、地面へ潜行するオニドリル。

 そうしてる間に地表をパラセクトが”キノコばくだん”で爆撃していき、オニドリルの位置を悟らせない。

 

「モトトカゲ、高速で周囲を回転!! オニドリルのターゲットから外れるんだ!!」

「んでもってそうなったらバサギリを狙うよなァ!! バサギリ”つるぎのまい”!!」

 

 モトトカゲはパラセクトの狙いを引きつけながら、バイクの姿となって辺りを駆けまわる。

 地下からもこの動きは伝わっており、オニドリル側は動きが比較的遅いバサギリに目を付けることになる。

 だが、その間にバサギリは斧をカチカチと打ち付け、更に鋭利に磨き上げる。

 間もなく、オニドリルが地面から飛び出し、バサギリの喉元に嘴を突きつけた──

 

 

 

「──”がんせきアックス”!!」

 

 

 

 ──と同時に、バサギリもまた、オニドリルの脳天に両斧を叩き込む。

 嘴は確かに胸に突き刺さるが、それ以上に”つるぎのまい”で威力倍増した穿撃が痛打となって襲う。

 オニドリルの角は根元から圧し折れ、巨体が地面に倒れ込む。

 そして一方のモトトカゲも、パラセクトに一瞬で間合いを詰め、至近距離から”りゅうのはどう”を撃ちこむのだった。

 

「あの頃とは訳が違うんだよ!」

「そう言う事だね!」

「パララララッ……!!」

 

 完全に怒り狂ったオニドリルは再び跳びあがると、地面に脚を思いっきり叩きつけた。

 砕けたアスファルトが浮かび上がり、オニドリルの身体の周囲を舞う。

 この姿勢にメグルは覚えがあった。最初に”あかがねのとう”で戦った時にオニドリルが見せたオオワザだ。

 周囲のアスファルトも誘因されていき、オニドリルを守るように纏わりついていく。

 

 

 

【オニドリルの──ならくおとし!!】

 

 

 

「待って! アレどうしたらいいの!? ボク、あいつのオオワザ見た事無い!!」

「合図に合わせてヤツに”りゅうのはどう”をブチ込んでくれ!! バサギリ、”インファイト”!!」

 

 一方、バサギリも高く高く跳び、オニドリルの高度にまで追いつくと、思いっきり大斧を振り下ろす。

 纏う岩は闘気を纏った斧で砕かれ、ばらばらに飛び散る。

 当然、勢いでバサギリの身体も自由落下するが、後に残ったのは身を守る岩が無くなり、無防備に力を溜めているオニドリルが残るだけだ。

 

「今だ!!」

「そういうことか! モトトカゲ、お願い! ”りゅうのはどう”!!」

「アギャァス!!」

 

 一直線。

 モトトカゲの放つ竜のエネルギーはオニドリルの身体を貫き──元の形の無い瘴気へと還してしまうのだった。

 

「……ノットリィィィ……!!」

 

 仲間が倒されたことに気付いたパラセクトは、今度は自らの身体を思いっきり膨張させ、熱エネルギーを圧縮させていく。

 誰が見ても分かる。自爆の準備だ。

 

【パラセクトの──キノコだいばくはつ!!】

 

「げえっ!! あいつまでオオワザかよ!! バサギリ、大忙しだがもう一発頼む!! ”がんせきアックス”!!」

「グラッシャーッ!!」

 

 跳ぶバサギリ。

 パラセクトが膨張するにつれ、周囲の気温も上昇していく。

 このまま爆ぜれば、二人とも爆発に巻き込まれる。

 大きく振りかぶった斧を、真上から振り下ろす。

 すぐさまキノコの肉も虫の甲殻もあっさりと割られ、パラセクトは真っ二つになり、そのまま瘴気の姿となって消えていくのだった。

 

「へへん、どんなもんだ! あの時と比べて手持ちのレベルも経験も違うんだ!」

 

 などと言えば、どうなるのかをメグルはこの時理解していなかった。

 フラグ、お約束。古今東西でそう呼ばれる概念は往々にして即座に回収されるものなのである。

 言っている間に──瘴気は再びポケモンの姿を取り戻し、オニドリルとパラセクトの姿を象っていく。

 たった今倒したばかりのポケモンが再び復活するのを見て、アルカは肩を落とし、そしてメグルを睨んだ。

 

「……もしかして……”やったか?”と同レベルの禁句だった今の」

「君が余計な事を言うから!!」

「絶対に違うだろ!!」

「ノットリィィィーッ!!」

 

 パラセクトのキノコから大量に胞子がばら撒かれる。

 キノコポケモンの常套手段、”キノコのほうし”だ。

 それを至近距離で吸引してしまったバサギリは即座に昏倒してしまう。

 加えて、オニドリルもそこに報復と言わんばかりの”ドリルくちばし”を叩き込むのだった。

 何もかもがコレで全てパー。今までの攻撃は一体何だったというのだろうか。

 メグルは匙を投げそうになった。何ならもうブン投げても良かった。

 「ダメなのでは?」とさえ思った。

 敵はいずれもオオワザを使う上に、一度倒しても再び起き上がってくるのである。

 ズルである。立派なズルである。何なら怪盗よりもずっと罪が重いと思う。

 つまり、戦闘の先にあるのは約束されたジリ貧。

 眠ってしまったバサギリを引っ込めたメグルはアルカに目配せした。

 彼女も同じことを考えていたのか、頷いてモトトカゲに跨り、メグルもその後ろに飛び乗る。

 意気込んだ矢先だったが、事態は二人が想定していた以上に深刻だった。

 さっきまでの恰好良いシーンは全部無かったことにしてほしいほどである。

 

(ヒグマを必死こいて機関銃でブッ倒したら即起き上がられたような絶望感!! そこは大人しく倒れておいてくれよ!! 思い出の中でじっとしておいてくれよ!!)

 

「ズルじゃん!! 何もかもがズルじゃん!! オオワザが使えるのも謎だし、起き上がるのも謎!! どうすればいいのコレ!!」

「俺が聞きてえよ!! ……待てよ、倒してもリスポーンするなら、倒さなきゃいいんじゃねえか」

「はぁ!? 倒さずに無力化する──そういうことか!」

 

 オニドリル、そしてパラセクトのセットに追いかけられながらなので、もう既に危ない状況ではあるが、二人は後ろに向かってボールを同時に投げ込んだ。

 

「アヤシシ!!」

「ジャローダ!!」

 

 蜷局を巻いたジャローダが思いっきり空中のオニドリルに巻き付いた。

 そして、アヤシシも迫りくるパラセクトに向かって角の宝珠を突きつける。

 

 

 

「”さいみんじゅつ”!!」

「”へびにらみ”だぁ!!」

 

 

 

 首に巻き付いた状態でジャローダの赤い視線がオニドリルの身体を麻痺させ、そのまま地面に落とす。

 

「これでお終い!! カブト、”がんせきふうじ”!!」

 

 そして空中から岩が降りかかり、オニドリルとパラセクトの動きを封じ込める。

 倒す必要はない。これ以上暴れないように無力化すれば良いだけ。

 そこに気付けば話は早かった。

 状態異常で足止めし、がんせきふうじで生き埋めにすれば、ポケモンの動きは止めることはできるのだ。

 

「……しっかし、こんなのが後何体居るんだ……? アップリュー、タルップル、カバルドン、ダーテング、フーディン、ルカリオ、アーマーガア……!!」

「後7体……ッ!? ウッソでしょぉ……!?」

「絵の中から出て来てるってことなら、同じポケモンが増えることはないとは思うが……いや、思いたいが……」

 

 報告によれば、残りの7体はフチュウに入るなり何匹かのまとまりに分かれて暴れているのだという。

 特にオオワザを放つような連中を野放しにしておくわけにはいかない。

 

「──工業地帯にフーディンとアーマーガア、下町にアップリューとタルップル、港町にカバルドンとダーテング、ルカリオ……!!」

「見事にバラバラに分かれてるな……」

「一番近くは工業地帯……ッ!!」

「よりによって、フーディンとアーマーガアか……」

 

 フーディンはアルカの妹・アルネが使っていたエースポケモン。

 大量の御札を実体化させて、起爆させる強力な技を持つため、工業地帯で暴れられれば被害は大きくなることは想像に難くない。

 そしてアーマーガアはテング団の実質的トップ・タマズサが使っていたエースポケモンにして、破滅の象徴。

 流石にギガオーライズ無しでは、おやしろや森を吹き飛ばすような竜巻は扱えない。しかし、特性のメタルアーマーで実質的に鋼タイプの如き耐性を持つ悪/飛行ポケモンで、隙が無い。

 オニドリルやパラセクトのように小細工が通用する相手ではない。

 

(かと言って他の奴らが厄介じゃないかと言えばそれも違うんだよな……下町に出て来てるアップリューとタルップルはすさまじい冷気を放つし……相対的に一番マシそうなのがポケモンとして純粋に強いカバルドンとルカリオってのがな……ダーテングもタイプが強いから油断ならねぇし)

 

「一番手っ取り早いのは、林に行って絵の方をどうにかすることだけど……」

「ねぇ、SNSに上がってるこの写真を見てよ!」

「……?」

 

 SNSには既に今回の事件が取り上げられており、写真まで撮影されている。

 そしてフチュウの工業地帯で暴れる2匹のポケモンも映し出されていた。

 見ると──フーディンが小脇に例の水墨画を抱きかかえている。

  

「……それなら話が早い! フーディンとアーマーガアから絵を奪って、破壊する!」

「それが今、ボク達がやるべきこと……だねっ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──先輩。先輩ッ!! 起きてください!!」

「んあ?」

 

 

 

 ──ムクホークに乗ったまま墜落したダンガンは、そのまま街路樹に突っ込み、今の今まで気絶していた。

 彼のインカムにも発信機を付けていたフカは、居ても立っても居られず駆け付けたら案の定大の字で倒れている彼を発見したのである。

 正直あの高さから落ちたら死んでいてもおかしくはないのであるが、そこは彼のダメージコントロールが生きたことで致命的なエラーは避けられたのだろう。

 ムクホークも戦闘不能だが、息はあるようだった。

 

「……どうなった?」

「どうなったもこうなったも、あの絵からヒャッキのポケモンが飛び出して来たんですよ!」

「ウッソだろオイ!? 前日、ゴーストポケモンに調べさせた時は何事も無かったじゃねえかァ! どうなってやがんだ……!?」

「ひとつだけ言えるのは、ゴーストポケモンが潜んでいたというわけではないようです。あの絵そのものが特級の厄物だったというオチでしょう」

「あんな絵を飾っていたってことは、いよいよあの館長が怪しく見えてくるなァ……ッ!! べらんめぇこんちくしょう、今の今までこんな所で寝ていた自分に腹が立つ!」

「それよりも、先ずは市民の安全を確保することが最優先です。ムクホークを飛ばすのは酷なので……アーマーガアを使います」

 

 そのままフカから共有してもらった情報により、凄まじい勢いで道路を凍らせて進軍するアップリューとタルップルが下町を南下していることが判明。

 彼らは、この墜落地点から最も近い場所で暴れているヒャッキのポケモンだ。

 

「んじゃあ、俺達はそいつらを止めれば良いのか」

「……ん、待ってください。続報が入りました」

「ああ? 続報? 良い方か悪い方か、どっちなんだァ」

「どっちから聞きたいですか」

「……悪い報せからで」

「……工業地帯に侵入したルカリオとカバルドン、ダーテングが変電所をブッ壊しました」

「……なぁ、それって……ヤバいよな?」

 

 もう既にフカの顔はお通夜であった。

 

「ええ。変電所に住み着いた野生ポケモン達と激突したようで……まあ、野生ポケモンが敵う相手じゃなかったんですが、その戦いの余波で……ドカン」

「勘弁してくれや……俺ァ今回ので何枚始末書書かなきゃいけねえんだァ? 怪盗には絵を盗まれる、何故か絵からポケモンが実体化する!! 最高だぜ!!」

「私も手伝いますよ」

「始末書を書くのを前提にしないでくれ!!」

 

 大惨事である。

 もしかしなくても、警察急行案件だ。

 このままでは大火災に繋がりかねないとのことだった。

 しかし、いずれもヌシクラスのポケモンである以上は現地の警察がどうにかできる相手ではない。

 

「で、良い報せってのはなんだ!? もう何でも喜べる自信があるぞ」

「セイランのキャプテンが、フチュウに到着しました」

「キャプテン!? ああ、そういやこの地方ってジムリーダーじゃなくてキャプテンが町の元締めやってんだっけか。で、そいつは強いのかァ?」

「……ええ。既に──アップリューとタルップルの二匹を圧倒しているようですよ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「あっぷりゅりゅりゅー!!」

「たるるるーぷるっ!!」

 

 

 

 路上はスケートリンクとなり、街路樹は樹氷と化す。

 凍てつく飛頭蛮・アップリュー、そして氷鬼のタルップルだ。

 通常のサイズよりも遥かに巨大な彼らの吐息は周囲の空気を氷点下に到達させ、雪さえも降らせる。

 

「……冷たいな。寒いのはあまり好きではない」

 

 だが、凍り付いていた路上は一瞬で融解した。

 周囲には熱い水蒸気が溢れ出していた。

 逃げ惑う民衆には、その熱気がまさに希望の象徴にさえ思えた。

 

「キャプテンだ! キャプテンが来たぞ!」

「リュウグウさんの後継者だ!」

 

 彼は民衆を背に立つ。

 そして、その無感情な目に2体のターゲットを映す。

 

 

 

「……セキタンザン。キャプテンとしての初仕事だ。キッチリ沸かせるぞ」

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