ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】 作:タク@DMP
先ずは何とかして館内からデルビル達を追い出すのが先だ。
だが、既にデルビル達が炎を吐きだし、火が付き始めている。
すかさず彼女はタブレットを取り出し──アルカに一言。
「……特性:すいすいのポケモンは居ますか?」
「いるけど──雨でも降らせるの!?」
「いいえ、雨を降らせれば美術館全体に被害が出る上に、加減が利きません。もっと手っ取り早い方法があるんですよ。その為に少し、時間をください」
アルカがボールから出したのはカブト。特性:すいすいのポケモンだ。
続けてフカが繰り出したのはミガルーサ。
鋭利な刃物のような鰭を持つ魚型のポケモンで、しかもエスパータイプだからか常に宙に浮いている状態だ。
デイドリームのビッグバトルレースで、湖エリアのお邪魔役になっていたのが、アルカにとっては記憶に新しい。
だが、サイゴクには生息していないポケモンなので、情報があまり無い。だがタイプは知っている。
【ミガルーサ きりはなしポケモン タイプ:水/エスパー】
相手のデルビルとヘルガーは悪タイプ。エスパータイプは天敵と言える相手だ。
現にヘルガーは、放火を部下に任せ、こちらが攻めて来ればいつでも”ふいうち”で仕留める準備をするべく腰を低く構えている。
「悪タイプにエスパータイプを投げるって、何か策でもあるの?」
「相性が不利なら、ひっくり返せば良いんです──よし、後は待てばいいだけ」
「な、何やってるの?」
「次の段階に進みます。奴らに、どっちが捕食者か思い知らせてやるんですよ。食う側と食われる側は、容易にひっくり返りますよ」
フカが取り出したのは──モンスターボールに似た黒い球体だった。
しかし、上半分は透明なガラスになっており、何かが光っている。
それのスイッチを起動すると、凄まじいエネルギーが中から溢れ出す。
「……な、何それって!?」
「深海より暗い敗北に引きずり込んであげましょう──テラスタルです、ミガルーサ!」
「ギャギャーッ!!」
光り輝いたそれをミガルーサに投げ付けると──周囲に爆ぜたように結晶が広がる。
そして、次の瞬間にはミガルーサの身体は全身、半透明の結晶のようになっており、頭には噴水のような形の冠が生成されていた。
【ミガルーサ<テラスタル> きりはなしポケモン タイプ:[水]】
「な、何コレ、ポケモンが……変化した!? メガシンカじゃないよね!?」
「話は後! 奴らを食い止めてください、アルカさん!」
「分かった──先ずはこれだ! ステルスロック!」
カブトの目が光ると、周囲に見えない鋭利な岩が浮かび上がる。
そして、無警戒に突っ込んできたデルビル達にそれらが突き刺さり、後退させていく。
だが流石にリーダーであるヘルガーは易々とステルスロックに引っ掛かりはしない。
口に大きく溜めた炎を、指揮者であるトレーナー二人目掛けて吹きかけようとした、その時。
甲高い警報が鳴り響き、天井から強烈な水飛沫が降りかかる。
「んなっ、これって──!?」
「システムに干渉して、エントランスのスプリンクラーを降らせました。しかも、此処のスプリンクラーは消火剤付き。炎は燃え広がりませんよ」
「す、すごい! 今の一瞬でハッキングしたってこと!?」
これが、フカが”天才”と呼ばれる所以だ。
電子機器の扱いはお手の物。その気になれば、無線でシステムを掌握する事ができる、まさに電子の世界の魔術師。
苦手な水を浴び、デルビル達は弱り果てた様子でじりじりと後退していく。
「よしっ、これならいける!! カブト”アクアブレイク”!!」
「ミガルーサ、”アクアブレイク”です!!」
ミガルーサが全身の贅肉を切り離し、ヘルガー目掛けて突貫する。後から突っ込むカブトを守るかのように。
だが、頭領であるヘルガーの一吼えで、デルビル達は一気にミガルーサを”ふくろだたき”にする。
しかし悪技が弱点であるはずのミガルーサはそのままデルビル達を吹き飛ばし、ヘルガーへ一直線。
そのヘルガーも”ふいうち”と言わんばかりに前脚を叩き込むが、そのままミガルーサは止まらずに必殺の一撃を突き刺すのだった。
「ガオオオン!?」
ヘルガーはそのまま壁に向かって叩き込まれて気絶。”雨”が乗ったアクアブレイクを受けたのだから当然であった。
更に、残る残党もカブトが高速で襲い掛かり、次々に仕留めていく。
これで、エントランスに入り込んできたヘルガーたちは皆、倒すことができたのだった。
周囲にトレーナーらしき姿はなく、皆縮んで見えなくなってしまう。
「す、すごかった……! ミガルーサってエスパータイプなのに、何で悪技を受けても平気だったの!?」
「テラスタルは、パルデア地方の技術です。ポケモンのタイプを、そのポケモンが持つ”テラスタイプ”に変えるんですよ。私は、テラスタルでミガルーサのエスパータイプを消したんです」
「タイプを変えられるってこと……!?」
「そう。そして、元のタイプとテラスタイプが同じならば、今のように破壊的なダメージを出せるんです」
ヘルガー相手ではオーバーキル気味でしたがね、と彼女は続ける。
とはいえ、放火を狙っていた相手である以上は一撃で確実に仕留めなければいけなかったので、これで良かったのだろう。
「トレーナーは何処だろう!?」
「外に出れば分かるかもしれませんね」
思い切って二人は外に飛び出す。
だが、正門からは──更に新手のポケモンが空から飛んでくるのであった。
全長およそ1.9メートルのトンボのバケモノが薄羽を高速ではためかせ、周囲に居る赤いトンボのポケモン達を従えているのである。
「誰ですか、こんなの用意したのは──ッ!!」
「今度は虫ポケモン!?」
【ヤンヤンマ うすばねポケモン タイプ:虫/飛行】
【メガヤンマ オニトンボポケモン タイプ:虫/飛行】
「……猶更、ミガルーサをテラスタルして正解だったかもしれませんね」
「第二ラウンドってことだよね……ッ!!」
羽音の正体はこいつらか、と身構える二人。
すぐさま飛び掛かってくる蜻蛉の群れは、翅をはためかせて空気の刃を次々に地上目掛けて放つのだった。
【ヤンヤンマの エアスラッシュ!!】
【メガヤンマの エアスラッシュ!!】
空気の刃はアスファルトすらも抉り、おまけに風圧でこちらを近付かせない。
カブトが岩を降らせるが、倒せるのはせいぜい1匹。またどこかから援軍が湧いて出てくる始末だ。
更にこれで危険を察知したのか、メガヤンマは上空へと逃げていく。これでは攻撃が届かない。
こちらは2匹。対して相手は十匹以上。むれバトルどころの話ではない。
だが、勿論アルカも無策ではなかった。
「──”がんせきふうじ”だ!! 時間稼ぎお願い!!」
カブトは宙に浮かび上がらせた岩を周囲に積み上げ、空気の刃から守る為の防壁とする。
当然そうなれば、防壁を壊す為に今度は岩を目掛けてヤンヤンマ達は集中攻撃をしていくわけだが──
「……要するに、統率者であるあのメガヤンマを倒せば良いわけです」
最も高い場所でのうのうと逃げ果せたメガヤンマ目掛けて──ミガルーサは音速の勢いでスッ飛んで行く。
「──”みをけずる”で身軽になったミガルーサは、空飛ぶ鳥をも撃ち落とす!! ”アクアブレイク”!!」
流石のメガヤンマも不意を突かれたようだった。
すぐさま”むしのさざめき”で接近してくるミガルーサを爆音で撃墜しようとするが、テラスタルによって強化された”アクアブレイク”を止めることはできない。
全身に水を纏ったロケット砲は、破竹の勢いでメガヤンマの身体を射抜き、地面へと叩き落とすのだった。
ミガルーサは自分の贅肉を削ることでスリムになり、極限まで無駄を削った体から為す超高速の突撃を得意とする。
アルカが時間を稼いだことで、”みをけずる”を使う時間が増えたのである。
「す、すごい……ッ! なんて威力だ……ッ!」
「相手が何処に居ようが、関係ありません。皆、沈めてしまえば良いだけです」
リーダーを倒されたからか、ヤンヤンマ達は一気に烏合の衆と化す。
カブトが”ロックブラスト”を空中に放つと、次々に逃げていってしまうのだった。
「……これで、一先ずは追い払えたでしょうか」
「大した被害が無くてよかったよ……」
※※※
「行くぞ、バサギリ!!」
「──鎮圧しろ、ハッサム」
ほぼ同時刻。
ミツハニーとビークインの群れの前に立ち向かうのは、同じストライクから進化した2匹のポケモン。
全身が鋭利な岩に覆われ、巨大な大斧を携えたメグルのバサギリ。
そして、全身が赤い鋼のコーティングに覆われ、重く硬い鋏を振り上げた、ダンガンのハッサムだ。
【ハッサム はさみポケモン タイプ:虫/鋼】
「ギィイイイインッ!!」
「ハッサムか……!」
(H70 A130 B100 C55 D80 S65……バサギリに比べると素早さが低いが、その代わり耐久がある上に、強力な先制技の”バレットパンチ”がある! オマケに特性がテクニシャンなら、その威力は1.5倍!)
いずれにせよ、この大群を相手にする上ではこの上なく心強い相手だ。
並び立った2匹は、互いに目配せするとすぐさま司令塔であるビークインに突貫する。
だが、それを阻む肉の壁となるのは、無数のミツハニー達だ。
【ビークインの ぼうぎょしれい!!】
元々蜂の巣のような姿をしているミツハニー達が組み上がれば、それはハニカム状の防壁となる。
それは強固に二匹の攻撃を遮断し、そのまま跳ね返してしまうのだった。
「べらんめぇこんちくしょう!! こっちの攻撃を守りやがった!!」
「クィンクィイイイン!!」
今度は、蜂の子達は一気に拡散し、強烈に翅をはためかせる。
激しい風が周囲を揺さぶった。
【ミツハニーの かぜおこし!!】
1匹1匹の起こす風はそよ風程度だが、全員が呼吸を合わせて一斉に羽ばたけば、それは暴風同然の威力となる。
バサギリとハッサムの身体はじりじりと後退していき、メグルとダンガンの身体も、近くの電柱に掴まっていなければ飛ばされてしまう程だ。
「ちっ、ふてぇ奴らだ。ビークインを攻撃しようにも、あいつ──”ぼうぎょしれい”で防御力を更に固めてるし、オマケに風圧で近付けないってか。数の利を存分に生かしてやがるぜ」
(参った……流石に国際警察の目の前でオーライズを使うのは気が引ける……)
バサギリにオーライズを使い、オオワザ”ホノイカズチ”でビークインを撃ち抜けば大打撃を与えられることは確かだ。
しかし、元々オーライズはヒャッキ由来の技術、あまり外の地方の人間であるダンガンの前では使いたくない。
(根掘り葉掘り聞かれてアルカの事まで話さなきゃいけなくなったらマズい……! とにかく、タイプでは有利を取れてるんだ、奴らを纏めて一掃すれば良い!)
【ビークインの こうげきしれい!!】
「げぇっ!!」
ビークインの蜂の巣から、大量の小蜂たちが姿を現し、メグル達に飛んでくる。
ミツハニーよりもさらに小さい、ビークインの眷属たちだ。それらが皆、毒針を向けて突撃してくる。
文字通り急所に当たりやすい必殺技だ。それもそのはず、無数の蜂の針が襲い掛かってくるのだから。
「ハッサム、受け止めろ!!」
だが、その針はいずれも鋼の身体には通らない。鋏を振り回し、小蜂たちを次々に撃ち落とす。
しかし、当然蜂たちはすり抜けてメグル達に襲い掛かってくるわけで、彼らは手で追い払ったり上着を振り回す。
そしてその努力の末──5秒もしないうちに、メグルもダンガンも腕や顔が刺され、真っ赤に腫らす羽目に。
残念だがこの世には「無駄な抵抗」という言葉があるのである。
「痛い……クッソ痛い!! マジで許せないんですけどあいつら!!」
「慌てんなァボウズ、どっちにせよ、バサギリの攻撃が通りさえすれば、ビークインは倒せるんだろが」
「それどころじゃないんですよね、俺もあんたも!! 顔パンパンなんですよ!!」
「ミツハニーの壁と風圧を超えなきゃいけないが、風圧はいずれ弱まる。奴らだってずっと”かぜおこし”できる訳じゃねえ。そこがチャンスだ」
「どうやって”ぼうぎょしれい”を超えるんですか?」
「なーに任せろい。ああいうのは一転集中で弱い所をブチ抜けばいいだけの話、後はバサギリに任せるぜ」
ダンガンが取り出したのは──モンスターボールに似た黒い球体だ。
「これが俺の
「ギュイイイイン!!」
ミツハニー達の風圧が弱まったかと思えば、今度はダンガンの握る球体から凄まじいエネルギーが溢れ出す。
そして、光り輝くそれを、彼はハッサム目掛けて投げ付けた。
周囲には水晶が広がっていき──次の瞬間には、鉄斧の冠を被ったハッサムが、全身半透明の結晶の身体と化していた。
【ハッサム<テラスタル> はさみポケモン タイプ:[鋼]】
「こ、これって……!!」
「引き金は二度引かねえ。一発でブチ抜くぜ──”バレットパンチ”ッ!!」
ハッサムの右鋏に、エネルギーが集まっていき、更に硬く、そして重く硬化していく。
そして、アスファルトが抉れるほどに強く踏み出したかと思えば、ビークインへと渾身の打撃を見舞う。
【ハッサムの バレットパンチ!!】
【ビークインの ぼうぎょしれい!!】
すぐさまミツハニー達が再び集結して障壁と化す。
だが、一転集中で弾丸のように撃ち出された拳は、捻りが加えられたことで破壊力が増す。
そして、ミツハニー達が気絶してしまった事で、ばらばらと崩れ落ちるのだった。
これで、女王への道は開かれた。後はバサギリの攻撃を叩き込むだけである。
(は、速い──ッ!? そんでもってなんて重い一撃だ……!! 俺達も負けてられねえ!!)
「バサギリ──”がんせきアックス”!!」
思いっきり勢いを付け、跳躍したバサギリは斧を振り下ろす。間合いは一瞬で詰められた。
小蜂たちを身代わりにしようとしたビークインだったが、その程度の壁では気休めにもなりはしない。
鋭利に研がれた重い斧は、女王の硬い脳天を叩き割り──玉座から追い落としたのだった。
頭部の外骨格を破壊されたビークインは、一瞬で意識を持っていかれ、そのまま仰向けに倒れてしまう。
そして、指示をする女王を失ったミツハニー達は混乱し、あるものは逃げ、あるものはビークインに近付いていくが──
「ほうれ、これでお終いだ」
ダンガンがロングスローでビークインにボールを投げる。
その身体は一気に吸い込まれていく。
何度か揺れると、カチッとロック音が響いた。
今度こそ、蜂の女王は此処に討たれたのだった。
「……さーてと、一先ずは片付いたなァ」
「だけどこいつら、何で襲い掛かってきたんでしょうか」
「野生のポケモンってことは確かだな。じゃなきゃ、ボールに入るはずがねぇよ」
となれば、猶更何故生息域が離れたフチュウに、このポケモン達が現れたのかが分からない。
今回の件は不可解な事があまりにも多すぎる。
だが、此処で待っていても何も解決しないので、彼らは一先ず女子ペアと合流することにしたのだった。