12月15日:空、犬のように走れ
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1:1:1:1:1:2:3
これなんだと思う? ディプスロ、サバイバアル、ヤシロバード、カローシス、ウル・イディム氏、サイナ、俺に飛んできた羽ミサイルの割合。
「待てや!!?」
対空意識が高過ぎるだろ馬鹿!!
無論攻撃など中断するしかない。飛んでくる羽ミサイルは明らかにこちらを追尾する動きで、なおかつ高速で回転しながら飛んでくる……ホーミング精度は一体どの程度だ? しかし…………ええい!!
「サイナ! こっち来い!」
「了解:回避挙動」
空中から支援行動をしていたが故に、俺に次いで羽ミサイルに追いかけ回されているサイナに呼びかけつつこちらも動き出す。
羽ミサイルの数は現時点で3、トマホークの名前の通りにぶん投げた刃物の如く回転しながら宙を駆ける羽ミサイルは、それぞれが違う軌道を描きつつも真っ直ぐこちらへと向かってくる……まずは一枚目、空中ジャンプで左にステップを入れ───
「あいたっ!」
くっ、微妙にカスった! 扇風機の羽みたいに回転してるから間合いが分かりづらい!! ていうかHP半減したが!? はいはい分かってましたよ食らったら即死ですねよっしゃかかってこいやーっ!!
第二弾。まだ空中ジャンプの適用時間は続いている、刃という形である以上はどれだけ長さがあっても幅は薄い。空中機動のいいところは空間全てが地面であり天井であり壁であるということだ。
虚空を踏んで跳躍しながら身体を九十度傾けてそのまま壁を蹴るように走る。無重律の恩寵の効力で重力方向が横になったことで縦に飛んできた第三弾がこちらに真横に向かってくる形になる。
「チッ……やれるかアラドヴァル!!」
火力上々、やる気も十分と受け取った!!
思考加速、ざらついた羽ミサイルの切先すら見える加速の中で……銀炎のアラドヴァルを下から上へと斬り上げる。
ギャリギャリとアラドヴァルに羽ミサイルの回転エネルギーによる負荷がかかる……だが、たかが金属片風情がドラゴン属性を付与されてるのが運の尽きだぜ。
ギャリギャリと散る火花は、いつしかアラドヴァルの側ではなく羽ミサイルの方から激しく散り始める。そしてさらに力を込めて……弾き飛ばす!!
「契約者」
「来たか! 手ェ貸してくれ!!」
「了解:具体指示を」
「地面まで逃げるッ!!」
如何に俺とて永遠に空を走れるわけではない。既に空中機動スキルは使い果たしたし、弾いた羽ミサイルのホーミング性能がどこまでしつこいのかが分からない以上は地上に戻るのごベターだ。
差し出した手をサイナの両手がしっかりと掴んだ次の瞬間、俺の身体がサイナが装備したブースターの最大出力で一気に加速に引っ張られる。
「接近:前方より攻性物体、2」
「気合いで避けて追わせる形に! 俺が対処する!!」
「了解:揺れます」
「ジェットコースターなら二年スパンで従姉妹に連れてかれるから慣れてる」
身長が1センチ足りないからってシークレットブーツまで履かせて小学生の俺をジェットコースターに乗せるのは控えめに言って狂気なんだよな……背伸びして! 背伸び! じゃないんだわ。
俺を掴んだサイナが急加速しながらバレルロール、次の瞬間には俺達のいた場所を二つの羽ミサイルが風を引き裂きながら通過する………くっ、何をどうやったら空中で180度向き変えて飛んでくるんだよ! なんつークソホーミングだ!!
「当たる当たらないじゃなくて当たれ八卦!」
アラドヴァルを両足裏で挟んでサイナに掴まれていない方の手を無理やり空け、エアリアルPDを羽ミサイルへと連続で発砲。
ハズレ、ハズレ、ハズレ、一発命中! 羽ミサイルの一つがあらぬ方向へと弾き飛ばされていく。だが残ったもう一つの羽ミサイルに当たらない、最悪サイナに手を離してもらって……駄目だ、当たる!
ポンッ……ボンッ!!
「ん!?」
おそらく下から飛んできた何かがぶつかった羽ミサイルがいきなり爆発した。爆発の熱が僅かに身体を炙るがそれだけだ、浮遊館と共に掴まれていた手が離される。
慌ててアラドヴァルを挟んでいた脚で着地、慣性そのままこっちに飛んできたアラドヴァルが頭に刺さりそうになるというアクシデントこそあったが……なんとか着地に成功する。
「サンラク、あの距離でハンドガン外すのはいただけないね」
「うっせ、接射なら命中100%だろ……ていうか何? グレネードランチャーで狙撃した?」
「原理的には迫撃砲だよね」
多分その原理は間違ってると思うが、助かったので指摘はしないでおく。
ヤシロバード達にぶっ放された羽ミサイルはどうやらそれぞれ対処に成功したようだ、地面に突き立った羽ミサイルの数々はもうその追尾性を失っている。
であれば警戒すべきは未だ空中にある五発か、と視線を上に向けるとそこには奇妙な光景が。
「……滞空している?」
なんだか猛烈に嫌な予感がする。落ちてくるとか、まだ追いかけてくるなら分かる。だがその場に滞空するってのは妙だろう、今のところトマホークの性能は余すところなく殺意の塊みたいな性能だ。
それがあんな、余程油断しないと当たらないような上空に翼の一部を残し続ける理由はなんだ。
「設置オブジェクト? なんのために? 考えられる候補は……」
「デバフ、あるいは向こうへのバフ、触ったらダメージ、単なる障害物……パッと思いついた限りだと」
カローシスが挙げた候補はどれもあり得なくもない、というものだ。だが結局のところ、答えは実践された時に確定するものだ。
トマホークが奇妙な構えを取る。右腕を前へ出し、左腕をひねりながら後ろ後方へと伸ばした見ようによっては歌舞伎の見得のようにも見えなくもない構えだ。だがギヂギヂと聞こえる音は、見得を切って終わりといった気配では断じてない。
その証拠に、金属が軋む音に混じって……否、最早その音を塗りつぶさん程に空間を震わせる振動音が奴の左腕に健在の腕刃から響いてくるではないか。
「来たかッ」
あの謎の亀裂。裂ける、というにはあまりにも断面が綺麗すぎた切断面! あの攻撃こそがその正体に違いないだろう、警戒しながら全員散開する中………気づく。
「あいつどこ狙ってんだ?」
いや待てプレイヤー狙いじゃなくてその方向ってことはやっぱあの羽ミサイルなんか厄ネタってことじゃ───!!
「ギャリリリリリァッッッッ!!」
トマホークが全身全霊のアンダースローで左腕を振り抜いた瞬間、腕刃が地面に真っすぐ一直線の傷を刻みながら斬撃の形をした衝撃波を撃ちだした。それらは俺たちではなく、誰が無効化したかはともかくもう動かない羽ミサイル……トマホークから分離した刃翼へと迷いなき直線で飛翔する。
全員回避の動きをしている以上、地面に突き立った刃翼に飛んでいく斬撃波を止めることはできない。そして斬撃波が刃翼に命中した瞬間、
ッッッッッッッッッッッッッッッッギィィィィィィィン!!!!
「ぐっ!?」
「くぁ!」
「うっ」
「うるさっ!?」
「頭痛がッ」
「ヌグゥ」
「……ッ。解析:高周波による、行動阻害」
数百匹の猫が一斉に黒板で爪とぎした音を後頭部から背骨に流し込まれるような凄まじい音が、俺たち全員の動きを止める。強制硬直技……っ!
そしてそれだけじゃない、斬撃波の行き先を見ていたからこそ気づいてしまった。
地面に突き立って、運動エネルギーを喪失したはずの刃翼が斬撃波を受けたことで……再び、回転を再開したのを。
そしてそれは、硬直した俺たちへと一直線に襲い掛かる──────!!
・再点火
巡航自律刃翼で射出した刃翼に自身のマナ粒子を付与した超音波動をぶつけることで再び自律攻撃機能を付与しなおす。
その際に発生する高周波は生物の動きを数秒止めるほどに強力であり、再び動き出した飛来する恐怖に対して哀れな犠牲者は背筋を震わせるほかにない。