天・空・脳・天・杭・打・一・撃・必・殺
特務ライセンス試験。
要するに自身の得物……この場合は市民用補助機装【アグアカーテ】をこの場で強化し、制限時間内に三つの条件を達成する。
一つ、フィールド内に存在する七つのターゲットデコイを破壊する。
二つ、フィールド内に出現する「エージェントテスター」というメカモンスターを撃破する。
三つ、一度も死亡せずにクリアする。
「成る程ね……「死なないこと」が条件になるような難易度、と」
『特務ライセンスは元々神代人類を想定したものですからね、二号人類たる貴方達の場合はあまり重要ではないかもしれませんが……特務とは、天津気博士の言葉を借りるならば「英雄」に相当する働きを期待された方々です。事実として塵芥のように蹴散らされたとしても、特務に求めるものは無駄死にではなくある種象徴としての継戦ですから』
「死なずの特務兵団ってカッコよくない?」
『身も蓋も無い発言ですが、ある程度の効果は見込めそうなのがなんとも言えませんね……』
百人くらい肉盾兼囮兼爆弾として突っ込ませて丸ごと迫撃砲とか爆撃とかで更地にする運用とか楽しそうだが、発言だけでヴォーパル魂が削れそうなので黙っておく。
さーて、どうしたものか。フルオートデコピンが連射系マガジンタイプだからアグアカーテ君はあえて魔力チャージ型にしようかな……ヤシロバードはマガジン型の方が総合的に優れてる、なんて言ってたがそれはインベントリア、いやあいつのはキャストリア? だったか。ともかく無限インベントリに狂った量のマガジンを詰め込んでいて、なおかつそれを手品のテクニックか何かとしか思えない動きで人力瞬間装填出来る前提の話だ。
魔力チャージ型最大の利点は動作の短縮にこそある、そもそもリアルと違って脳天に弾丸を叩き込んでも大ダメージで済む世界だぞ? 銃は主役たり得ない、少なくとも今の俺のプレイヤービルドではあくまでもサブウェポンでしかない。
「弾速は最高効率に……いや、デコピンと同じにするよりズラした方が対応しづらいか? ならあえて威力偏重にして……弾丸は穿孔特化型一択、多分この弾速なら貫通っていうより傷口を抉る感じになるか……うーん、いい感じに非人道兵器」
というわけで特務用執行機装タイプ:ワカモーレ(暫定)が完成。あとは認定試験をクリアすることでこの大口径ハンドガンは正式にロールアウトする。
「さぁ始めようぜ「勇魚」、残り二時間と二十分……タイムアタックには十分すぎる」
『それでは二号人類サンラクを対象とした特務ライセンス認定試験を開始致します! 特設テストフィールドへの転送完了をお待ちください……』
いわゆるナウ・ローディング?
◆
この手の1クエストに複数の達成目標があるタイプの攻略法は「初見は直列、周回は並列」と相場がきまっている。
慣れないうちはメインターゲット最優先、サブもクリアするにしても一つのターゲットに集中すること。慣れてきたら片手間にサブをこなしながらメインターゲットをクリアする。
昔の人達も「二兎を追うものは一兎をも得ず」というありがたーいお言葉を作ったように慣れないうちから欲を張るとロクな事にならないものだ。
だが先人達よ、もし仮に追いかけてる二羽の兎の片割れが積極的に狩人を殺しにかかってくる殺戮マシンだった場合はどうなると思う?
こうなる。
「ハハハハハ! 探す手間が省けるってもんだぜェーッ!」
エージェントテスターなるモンスターだが、一言で表現するなら足がタイヤの馬……とでも言えばいいのか。いやあのワシャワシャ動く感じは脚が四本の蜘蛛っぽくも……なんだろう、足だけアメンボな馬? 赤竜ドゥーレッドハウルと似た体型だがあいつほど脚が長くない……四つん這いの人間(腕が長い)とかなのか? 本当によくわからん体型だ。
だがエージェントテスター君は俺を見つけ次第見失うまで延々と追いかけてくる事さえ分かっていればやることは簡単、付かず離れずで鬼ごっこしながらターゲットデコイを破壊して回る!!
「はい四つ目ェ!」
暫定ワカモーレでこれまたよく分からない形状のターゲットデコイの頭部? らしき部位を撃ち抜く。俺とて元孤島民現幕末志士兼ネフィリム乗りだ、走りながら射撃するくらいなんて事はない。
リヴァイアサン第一殻層の迷路に似ているもののあそこよりも道の幅が全体的に広いフィールドであるが、逆位置補正で継続的な加速に難のある今の俺でも問題なく駆け抜けられるほどに広くそしてエージェントテスターの脚力はいつでも振り切れる程度の速さしかない。
つまり先人は兎を二羽追って失敗したらしいが俺は凄いので兎を同時に二羽狩れるという事だァーーーーッ!!
「六つ目ェ!」
七つ目は何処だ! とりあえずエージェントテスターを傑剣への憧焉終刃で斬りつけて、っと……はい効果で剣に蓄積された魔力を銃に譲渡! 最強のコンボだ、アグアカーテ君の時は長期運用する意味合いが薄かったがこの暫定ワカモーレならば!!
「見つけたぞ七つ目!」
なんか動く空中足場の一番上に設置されてるわ、ここからハンドガンで狙うのは難しいか……はいスキル起動、空中ジャンプから意識加速、照準合わせてファイア。
「サブタゲクリア! あとはてめーだけだエージェントテスター!!」
露骨に弱点アピールが激しい関節しやがって、剣で叩き割った方が速いがこれはあくまでも特務用デバイスのライセンス試験、やり直しとか言われても困るので暫定ワカモーレをメイン運用で削っていくとしよう。
「くらえ銃パンチ!」
肉薄、接射、破壊! パンチの射程で撃てばどんな銃でも必中なのである!
弾丸のような、というか弾丸そのものな拳がエージェントテスターの右前脚肩関節を粉砕して機動力を物理的に1/4程削ぎ落とす。
「デンプシー射撃! アッパーカット射撃! 動くな怯めデコピン連打!!」
銃弾二発で砕けるような軟弱関節の敵に手間取る俺ではないわァ!!
ガシャッ
「ん?」
……
…………
ヤシロバードが離脱してから一時間後。
『おめでとうございます!この度、貴方は特務ライセンスの認定試験に合格致しました!!』
「ああうん……やったぁ」
エージェントテスター(複数形)は聞いてないぜ……まさかデコイの破壊数と連動して最大七体になるとは。
だが勝った、俺は勝ったのだ。その証拠こそが今俺の手の中で確かな重さを主張する特務用執行機装タイプ:ワカモーレ「エアリアルPD」なのだから。
ちなみにPDとは「パイルドライバー」の略であり、この名は最終的にエージェントテスター最後の一機を倒した技が空中でクラッチしたパイルドライバーである事に由来する……いや、本当はなんかもっとこう凄腕エージェント! みたいな倒し方したかったんだけど流れで。
・エアリアル・パイルドライバー
空中足場からエージェントテスターを蹴落とした際にカッコつけて銃でトドメを刺そうとしたサンラクが躓いて一緒に落ちた際、咄嗟に四肢が破壊され胴体だけになったエージェントテスターにしがみついて編み出したフィニッシュ・ホールド
その威力たるやかけられたエージェントテスターの脳天を粉砕するだけではなくかけた側であるサンラクの尻にも甚大なダメージを与えるほどであり、「勇魚」によるインタビューに対してサンラクは「二度とやらん、という戒めとしてデバイスにこの名前を付けます」と答えたという……