脇道寄り道迷い道
「やっぱこう言う時ってさぁ、順番決めるのがそもそも面倒臭いから完全に別の作業始めちゃうよな」
「その気持ちすっごいよく分かる……僕もよく会議とか面倒で別のタスクに逃げるからなぁ」
「おい大丈夫か社長」
「ヤシロバードだよ、ここじゃあ僕は単なる開拓者だからね」
ガチャコン、ガシャン、ウィーン。
「はいはい………あ、ヤシロバードこれ弾速って最低初期値から増減何%くらいが理想?」
「それハンドガンタイプ? 弾速削るなら76%、上げるなら113%だね。それ以上それ以下は致命的にカスか大して差がないから」
ガチャコン、ピッ、ピピピピピピピ、ウィーン、ガシューン。
「いや二丁拳銃作るつもりなんだけど銃のタイプそれぞれ違う感じにしたいんだよな、片方リボルバーでもう一方連射系にしたいんだけど」
「フルオート? このゲームフルオートとハンドガンの相性そんな良くないんだけど……ペイント弾とかにする?」
「豆鉄砲じゃねーか、いや視覚と嗅覚潰すと考えたら割とアリなのでは……?」
「実はマガジンに弾種設定できるからマガジン一体型の魔力リロード型よりあらかじめリチャージしたマガジン分離型の方が応用力高いんだよね」
「へー」
ガッシューン、ガッシューン、ガッシューン、キュイイイイイイイイ!
「と言うわけで完成しました鳥さん印クラスタースモークグレネードランチャー「フォグロッソ」二型です」
「条約違反では?」
「いやいや、クラスター型のスモークグレネードだからね、無害無害」
「組成をスモークからガスに変えるだけで広範囲無差別殺傷兵器じゃん……」
「このゲーム、状態異常基本的に一、二回しかかからないし割とセーフ」
「個人の見解で範囲攻撃すんな」
チキキキキ、カシュン、カシャッ、カチッ、プシュシュシュシュシューーーーー、ピンポーン
「わぁい完成」
「あ、完成させちゃった? どうせなら設計図渡そうと思ったのに」
「いや、別に決定力は求めてないしこれでいい。名前は………ヘイヨーガンマニア、なんかいい名前ある?」
「単体名称じゃなくてメーカー名称にしたら? ナントカ100とかそう言う感じの」
「サンラク25とか?」
「なんで25?」
「マガジンの装填数」
「クソ安直、25点。「勇魚」は何か案ある?」
『炸裂衝撃弾頭搭載型、小威力、自動速射型………「FF-45」を提案します』
「フリックフィンガー?」
「デコピンだってさ」
「……結構良くない?」
「あ、気にいるんだ………」
◆
俺は今、諸々の全てをぶん投げてリヴァイアサンで銃の制作を行なっていた。いやなんか、もういろいろ面倒くさいし武器周りの強化しようかなって………
そして案の定と言うかやはりと言うか当然と言うか、嬉々として銃を開発し続けていたヤシロバードからのアドバイスを受けつつ、新規造形と強化造形で二つの銃を作っていたわけだ。一つは今作ったデコピン45、そしてもう一つが……
「新規造形で作った方が良くない? 対人相手でもそんなに強くないよそれ」
「百人が見捨てても俺はこのアボカド君を見捨てないって決めてるんだよ」
そう、リヴァイアサン一層で入手可能な銃器にしてこの世界の現代人類が最初に触れることになる銃器。そして………あまりにも威力が残念すぎて人の頭にクリーンヒットさせてもそんな大した威力にならない残念武器、それが「お野菜シリーズ」と揶揄された市民用補助機装が一つ、「アグアカーテ」君である。
「いやぁーどうだろうそれ、弾速固定だし魔力弾頭だから魔力耐性高い相手だとそもそも弾かれるしウチのクランの人に頼んで検証したけど下級魔法以下の威力しか出ないよ?」
「えーと、強化強化……」
なるほど、この武器カテゴリはアンバージャックパスを上げることで次のランクの武器として強化できる、ってデザインなのか。市民から軍人、軍人から将官、そして要人……
「そりゃスコア稼ぐのサンラクなら作業なだけで難しくはないだろうけどさー、それだったら今作ったFF-45のマガジンの種類増やした方が良くない? 軟体モンスターなら多少威力低くても貫通系持たせたらいいし」
「へー、軍人用とか要人用とか色々派生できるのか……」
「あーダメダメ、軍人用地雷だよ。使いやすさに重点置きすぎて本当に威力がしょぼいんだよ。要人用の方がまだ威力高いってどういうことなんだろうね、でも要人用も要人用で維持コストがやたら高くてさぁ……将官用はマジで微妙、ゴミじゃないけど微妙なんだよねー。まぁ一通り全部作ったんだけどさ」
「なぁ「勇魚」、この特務用って何?」
「ああそれ? それは………………………ちょっと待って、今なんて言った?」
おっと? ヤシロバード君顔色が変わったぞ???
『ご説明致しましょう! 特務用執行機装とはセツナ・天津気博士によって構想された単騎で特記戦力足り得る特務階級の兵士に支給されるオーダーメイドカスタムチューンが施されたデバイスとなっております!』
「……………」
「成る程? どうも通常の方法じゃ出現しないらしいが条件とかは教えてもらえるのか?」
『お望みとあれば。特務用執行機装は市民用、兵士用、将官用、要人用に属するデバイスの使用履歴を参照し、特務規定基準に達した個人に対して解放されます。噛み砕いて説明すれば特務として相応しい実力を備える個人に対して刹那理論に基づいた明確な「個」を確率する補助としての役割を期待するものであります』
「ふーん…………で? この「ワカモーレ」ってやつの性能を聞こうか」
『その前に特務用執行機装を獲得、運用する場合は特務ライセンスの獲得が条件となっております。こちらのライセンスは………』
肩を叩かれる。胡乱げな眼差しで振り返れば、そこには清々しいほどにいい笑顔をしたヤシロバードが市民用補助機装を担いで立っていた。まるで今から大規模な遠征に向かうような準備っぷりに、俺もにっこりと笑みを浮かべる。
「僕たち、友達だろ?」
「まぁ、昔馴染みのゲーム友達だな」
「ちょっと世界の果てまで冒険してみないかい?」
「一人で行けよ情報弱者」
「ちくしょおおおおおおおお!! 特務用とか聞いてなーーーーーーーい!!!!」
・特務用執行機装
要するにウェザエモン程じゃないけど規律的画一的量産的な人類戦力の中に眠っていたハリウッド・アクション・ウォリアーを集めてスペシャル部隊Aチーム作ろうぜ、という計画において支給されるオーダーメイドカスタム。
厳密には「ワカモーレ(アボカドに色々混ぜたサルサ)」も銃の名前そのものではなくワカモーレタイプ、という意味なのでさらにここにカスタムを重ねてオリジナルのネームをつけることで完成する(つまり正式名称は特務用執行機装タイプ:ワカモーレ「◯◯」となる)
これは画一量産に対する世界からの減衰処理に対抗する意図があるためであり、名前被りや極端に見た目が似ていると製造時点で警告が出るという徹底ぶり。
タイプ:ワカモーレはハンドガンタイプ全般を包括したカテゴリであり、当時の銃匠達による試行錯誤から生まれたカスタムを施すことが可能である………そして、この特務用から発展し、神代終焉の間際に形になったものこそが銃匠達の執念たる七つの特殊マガジン「魔弾」シリーズである