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夜に駆けて、朝でも駆けて

恐ろしく難産だった………書いてる本人がこいつのキャラを掴み切れていないという稀有な例

徹夜騎士カリントウはその気になれば十時間以上の連続ログインを可能とするタフネスの持ち主である。


そして、徹夜騎士カリントウはその気になれば(・・・・・・・)二十時間に及ぶ連続ログインを可能とするタフネスの持ち主である。


尤も、フルダイブVRシステム側の安全機構(セーフティ)によって連続ログイン時間には上限がある上に、あまり長時間フルダイブしていると「鬱陶しい」と感じる程度にログアウトを推奨するウィンドウが出現し始めるのでやらないだけだ。


「じゃ、じゃあ落ちます……」


「はい、ご協力感謝ですロンバットさん」


「この人ピンピンしてる……乙でーす」


それ故に配信者連合と通称されるプレイヤー達の中で、彼女こそが最も多くの時間をシャングリラ・フロンティアに注ぎ込んでいる人物であった。

「リアルは大丈夫なのか」とは聞いていけない、というのはリスナーにとっては暗黙の了解だ。元カレ関連の慰謝料とかは関係ないのだ。


長時間の素材集めに付き合っていたプレイヤーたちの、最後の一人がログアウトしたのを見送りながらカリントウはさてどうしたものかと思案する。

そろそろ自分も一度ログアウトするべきかと思うカリントウがいるならば、いやまだ欲しい素材があるし二時間くらい……と思うカリントウもいる。

これが配信であればリスナー側が自身の生活に戻るタイミングで切り上げることもできるが、幸か不幸か今のカリントウは配信ではなくプライベートな「稼ぎ(マラソン)」の最中だった。


「新大陸〜……行けたらよかったんだけど」


新大陸は現在、前王派の拠点と言っていい状況だ。プレイヤーからすれば亜人種を差別する理由もなく、人気NPCである「聖女」が前王派であるために新王派が大手を振って活動するのは少々難しい。

それ以前の問題として物理的に日数がかかり過ぎるので無理、という世知辛い理由もあるのだが。


「ベヒーモスが解放されたのは幸運だね、ツチノコさんに感謝感謝」


リヴァイアサンは物理的距離の問題故に利用不可、しかしファステイアにたどり着きさえすれば入場可能なベヒーモスは旧大陸の設備しか使用できないカリントウにとって非常にありがたいものだ。

王国騒乱シナリオにおいてはサードレマ以前とニーネスヒル以降は両陣営に所属こそしているものの、実質的には無所属に近い。少なくとも両本陣のある街に忍び込むよりはベヒーモスに行く方が容易だ。


カリントウと所属を同じとするFPSスキー達は神代武装の充実という点からリヴァイアサンを利用できないことを残念がっていた。だがどちらかというとファンタジーな装備で戦いたいな、と考えているカリントウからすれば極論ベヒーモスという施設に求めているのはレベルキャップの解放だけである。


「うーん……とりあえず装備の耐久回復して……………」


と、その時だった。


「死ねェ!!」


「!?」


響く声、迫る影、反射的に振り返ったカリントウの横腹に突き刺さる………銃弾。

カリントウのHPが減り、ノックバックによって小柄な女性アバター(カリントウ)の身体が地面へと倒れ伏す。


「やったぜ!」


「ナイッショ!」


「囲め囲め! ドロップアイテムは山分けだからな!!」


「実況者ならたんまり抱えてるぜ!」


(あー、もしかしてどこかから狙われてたかな?)


銃、という武器から大ダメージを想像していたカリントウであったが、どうやら見た目の割に威力が低いらしく二割も減っていないHPを倒れながら確認。わいわいと騒ぐ声に耳をすませながらカリントウは手早く状況を整理する。

プレイヤーネームが赤い、つまり既に誰かしらを殺害(キル)しているプレイヤーキラー。それもカリントウが「徹夜騎士カリントウ」であることを知って襲撃を仕掛けた計画犯。実のところを言えば周回(マラソン)を終えたばかりのカリントウのインベントリには壊れかけの装備と大量のアイテムしか入っていないのだが……


(うーん……プレイヤーキラーはキルしても問題ないらしいけど、装備が保つかな?)


既に数時間以上は打ち打たれを繰り返し続けてきた装備はいつ砕けてもおかしくはない。本気装備ではないものの、長時間周回のために様々な伝手に協力してもらって作ったアムルシディアン・クォーツの装備は失うにはあまりに惜しい。


「さて………私もアイテムを落としたくないから抵抗しますからね?」


「ハッ! この数に勝てるかよ!!」


「配信してもいいぜ! 負け動画になるだろうけどな!!」


「ヒャッハー!」


人数は三人。内一人は恥じらいを捨てたロールプレイヤーといった様子だが、残り二人は真性(ガチ)の気配を漂わせている。実際、この三人は元阿修羅会の悪役ロールプレイヤーと、彼に唆された二人が手を組んだことで実行された犯行だ。

恐らく妙に対プレイヤーに慣れた動きをする一人が主犯なのだろう、どこか浮ついた二人と比較しても明らかにカリントウの動きに対する警戒が堂に入っている。


(でも銃持ちのプレイヤーはこの人なんですね…………あ、もしかして悪役ロールってプロレス寄りなのかな?)


本気で奇襲するのではなく、襲われる側にもチャンス……というより見せ場を与えるヒールレスラータイプの悪役、と言ったところだろうか。プレイヤーキラーな時点で迷惑でしかないのだが、そのお陰で反撃できるのだからカリントウとしてはありがたい配慮だ。


「さて………」


槍使いが二人に銃使いが一人。少なくとも本当に銃だけで戦うわけではないだろうが、少なくとも他の武器を出す気配はない上に下手をすれば追い詰められるまでは銃以外使わない可能性すらある。

カリントウは一時的に銃使いの優先度を下げ、二人の槍使いを視界に入れながら武器を取り出す。


「えっ……」


「ハンマー……?」


「アーカイブとか見てもらえば分かるかもしれませんけど、私って打撃好きなんですよ?」


両腕で握り締めた両手持ち大型金槌(スレッジハンマー)は通常のものと比べてもさらに巨大で重厚なものだ。どちらかというと餅つきの杵に近いサイズの金槌は重厚な漆黒の表面を朝日でより輝かせる。


「な、なんか威圧感が……」


「やばくね?」


その黒鎚は勇者武器ではなく、英傑武器でもなく、そしてユニーク武器でもない。それはプレイヤーの手で作成されたものだが武器として完成した時点で最初から名前が設定されているプリセットタイプのハンマーでしかない。

だがその黒鎚が経験してきた戦いの時間は長く、濃い。言ってしまえば量産品でしかないスレッジハンマーは、しかし英傑が用いた武器に劣らぬ威圧感を放っていた。


「恐れることはねぇぜ! モンスターの突進より痛いことはねぇだろうがよ!!」


ボロボロのスレッジハンマーに気圧されていた槍使いの二人だったが、銃使いに発破をかけられたことで気を取り直して───


「えいっ」


「は? おぼぁっ!?」


「投げたァ!?」


そのうちの一人が、カリントウがフルスイングで投擲した件の黒鎚を顔面で受け止めて吹き飛んだ。


「うーん……耐久値が大体(・・)ゼロに近いし一撃一撃を重くしてくから、頑張ってね?」


間髪入れずにカリントウがインベントリから取り出すは、投擲した黒鎚と同名にして同等の威圧感を放つスレッジハンマー「勇黒の(ドルゲ=イン)剛撃鎚(・ザ・ブラック)」の二本目。六時間以上ひたすらに周回したことで耐久値が無くなりかけている十二本(・・・)のスレッジハンマーをぶん投げ、時に握って振り回す。


「……っべぇな、こりゃあ。余裕ぶっこいてられる感じじゃねぇな」


銃使いの男が己が真の獲物である大鉈を取り出す先で、カリントウは微笑を浮かべながらプレイヤーの脳天に黒鎚を振り下ろしていた。





徹夜騎士カリントウはその気になれば十時間以上の連続ログインを可能とするタフネスの持ち主である。


そして、徹夜騎士カリントウは本人性能(タフネス)を最も活かすことができる物量と質量による猛撃を得意とする打突特化(ストライカー)のパワープレイヤーである。

勇黒の(ドルゲ=イン)剛撃鎚・ザ・ブラック

武器の性質としては特殊な能力を持たずひたすらに耐久値が高く、なおかつ耐久値が減りづらいという銕刀(てっとう)廻渦白波(うねりしらなみ)】と似たタイプ。周回中に壊れた分を含めるとカリントウは20本近いスレッジハンマーを担いで周回していた(戦ってる間にインベントリ内の武器やアイテムが消費されるのでそこにドロップアイテムを詰め込んでいた)

どこからそんな量のアムルシディアン・クォーツを手に入れたかというとプレイヤーを100人くらい集めて「死んでも恨みっこなし」で水晶巣崖に一斉に突撃するという超パワープレイを三日間繰り返し続けた(総睡眠時間:4時間)


なので水晶群蠍を倒せこそしていないが(全員バラバラに走っているため)、外殻などのドロップアイテムはやたら持っているサンラクの次に蠍長者になりつつある女。そして無限インベントリを持たせるとヤバいタイプの女

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― 新着の感想 ―
レベルキャップ解放は言及されてはいないが端末ができる事を大元が出来ないはずがないと思う。
100人規模で突っ込んでやっと素材採取周回できるのなら、一人で尚且つ一回で大量に入手できるイカれた鳥頭幕末志士は一体何なんでしょう?頭のネジがぶっ飛んでるという事以外言語化できない気がするのですよ言語…
カリントウ氏がいちばん好感持てる配信者だなぁ 他の配信者は配信の為っていう感じが拭えないし、シャンフロそのものを楽しんでないのはちょっと……という気持ちがある
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