カカカカカカンカカンパイ!!!
この少女、名をガラテナと言うらしい。
らしい、というのは俺が聞いても怯えるばかりで何も答えてくれなかったからである。いやでもあんな良いリアクションされたらこっちも気合い入れて驚かしたくなるじゃん。
で、同様に女性用装備だとしてもいかつい女鬼武者なレイ氏もアウト、ロールプレイが暴走していきなり女言葉になるおっさんのイムロンもセーフ寄りのアウトなため火酒夏氏はともかくとしても、我々三人はガラテナちゃんの好感度稼ぎにおいて人形と羽トカゲ人間に負けた事になる。
そんなわけで自動的に火酒夏氏がガラテナとの交渉役として会話を行うことになる。
「ガラテナちゃんはお水を取りに来たんだねー?」
「うん………ドゥーレッドハウル様、いないから……本当はダメなんだけど」
「そっかー、実はドゥーレッドハウルが死んだ事って知ってる?」
「──────え?」
「おい常時ホロ酔いテンション、会話の切り口が鋭すぎるぞ」
「いいじゃないですか常時悪酔いテンションさん、どちらにせよ遅かれ早かれですよ。あと私はちょっと飲んでからフルダイブした方が調子がいいんですぅー」
「マジでホロ酔いなのかよ……あと誰が悪酔いだ」
「主に格好ですかね」
エナドリを飲めエナドリを。酒が百薬の長と言うならエナドリは百一番目のスーパーグレートな薬だ、アルコールよりもカフェインの時代だよ。
「ドゥーレッドハウル様…………死んだ?」
「本当なのよねーこれが、ほら見てガラテナちゃん。あそこにいるヤバめな人いるでしょ? あの人ヤバいからドゥーレッドハウルの腕を毟り取ったんだよー?」
「アラドヴァルのサンラクと呼んでくれ、もしくはサンラク・ザ・ハイアーザントップと」
「長いからサザハザップとかで良くないか?」
やだよそんな環境装備の頭文字だけ繋げましたみたいな名前。
そんなアホな会話を続けている間にもガラテナのキャラクターイベントは進行しているらしい。ドゥーレッドハウルが死んだという情報に呆然としていた背の低い少女は火酒夏氏と繋いでいた手を離すと、ラダー氏へと顔を向ける。
「ほ、本当に……?」
「うむ、それは事実だ。そして真実だ」
弱者への恐怖だけではなく強者への恐怖でもありたい、それが男のダンディズム。その理論でいくと例の狼が最強クラスなんだよなぁ……はい、おのリュカノルマ。
「と、とーちゃんに知らせなきゃ……!!」
どこか警戒するように穴……もとい地下トンネルを歩いていたガラテナが走り出す。一人で行かせては危険かもしれないのであくまでも保護者的観点から我々もダッシュでそれに続く。
いやあくまでも保護者的観点であってね? ガラテナちゃんを鍵とか勘合符代わりにしようとかそういう邪念はないわけでね?
「レイ氏、このトンネルこれくらいの広さだったら後ろから迫りくるスラッシャー系モンスターのモノマネできそうじゃない?」
「流石に……敵対される、かと」
だよなぁ……なんていうか今のところガラテナだけしか知らないのもあるが、鉱人族から森人族と同じ匂いがする。
やはりヒトが万物の霊長たりえないこの世界では自然と小動物的な気質になってしまうものなのだろうか………
◆
んなこたなかった。
「酒じゃああああああ!! 酒樽を開けぇぇぇぇぇいい!!!」
「宴だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ひょおおおおおおおおおおおおお!!!!」
赤竜ドゥーレッドハウル死す。
ガラテナを経由して二号人類から齎された情報は俺達がドゥーレッドハウル討伐報酬である「赤竜の魔菌」を見せた事で彼らの疑念は確信へと変わり、彼らの本拠地たる地底都市ホルヴァルキンは狂乱の歓喜に染まった。
数秒前まで警戒と憔悴を無気力を「辛気臭いカクテル」として混ぜたような顔をしていた鉱人族と本当に同一人物なのか、それくらいのレベルで騒ぐ彼らの様子についていけない俺達は視線を交わしながらどうしたものかと相談を開始する。
「どうする? 当初の目的としては多分、元首だかリーダーだかに会いに行くのがベストだろうけど……」
「んー、芋焼酎っぽい感じ?」
「いやしれっと飲むなよ」
「シャンフロって味の再現は中々だけどやっぱりアルコールの脳味噌炙って溶かすような感覚はカットされちゃうんですよねー」
脳味噌炙って溶かす、とかいう表現初めて聞いたわ。人間の脳味噌はマシュマロじゃねーんだぞ?
「とりあえず明らかに偉い人がいます、みたいな場所を探してみます? ただ……」
「ただ?」
「ツチノコさんはここに釘付けですね」
何故……? と、ここで俺は気づく。
俺が腰に佩いているのはアラドヴァル、すなわち竜殺しの刃先にしてドゥーレッドハウルをぶっ飛ばした剣であり、そして俺はそのことをガラテナに話しているのだ。
さらに言えば先程ガラテナが鉱人族の大人(テンプレドワーフ程露骨に背が低いって感じじゃない、腕が何かしら金属って事を除けばガタイのいい小柄なおっさんって感じだ)にドゥーレッドハウル死亡の情報を伝える際にアラドヴァルを指差していたような……
つまり、今の俺は「ドゥーレッドハウルをぶっ飛ばした面々の一人であり直接相対した者本人」というわけで。瞬く間に鉱人族に囲まれた俺は、話を聞きたがる鉱人族達からなんとか逃れるべく秘技「乾杯を連打して全員泥酔させる」を実行するものの、しれっと俺を囮にしてくれやがった火酒夏氏達に追いつくまでに十分以上足止めされたのだった……おのれ火酒夏。
「おう!その剣まさか伝説のアラドヴァ……」
「とりあえずかんぱーい!!」
「「「乾杯!!!」」」
「じゃあまずこの剣について語ろうと……おっと、舌が乾いた、かんぱーい!!」
「「「乾杯!!!」」」
「この剣は竜を殺す巨人の槍、その穂先! 怨敵ドゥーレッドハウルを……盛り上がってるかー!! かんぱーい!!」
「「「乾杯!!!」」」
こんな感じ