ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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CC18話:百鬼夜行地獄絵図

 ※※※

 

 

 

「仕事をする以上は、一度本物を見とかねえとな。なあボウズ、俺らが居なきゃ拝めねえんだぜ。感謝しな」

「ボウズじゃねーんすけど」

「そうですよ、先輩も21歳。大してメグルさんと年齢は変わらないんですから」

「えっ、ダンガンさんってボクと同い年だったんだ」

「えっ、お前俺とタメ!?」

「……皆そこで驚くんだな……」

「ふぇっふぇっふぇ、国際警察に凄腕のトレーナー。頼もしい限りですぢゃあ」

 

 ──ひと悶着あったものの、4人はキヨ館長の案内で今回のターゲットである”百鬼夜行地獄絵図”を見せてもらうことになった。

 

「ふぇっふぇっふぇ、今回の目玉は……こちらですぢゃ」

 

 キヨ館長に連れられ、メグル達は鉄の倉庫の扉を開ける。

 他所の美術館のような大きな設備を用意することは出来なかったのか、電子ロックに鉄鍵の合わせ技になっている以外は、特に何の変哲もない倉庫だ。

 

「”百鬼夜行地獄絵図”……やっとこの目で拝めるんだね……!」

 

 アルカが期待と不安の混じった顔で生唾を飲む。

 そこには、額縁に入れられた水墨画が立てかけられていた。

 いずれも今度の特別展で展示する予定のモノだと言う。

 枯山水、神社仏閣、胸像、ポケモン、モチーフは様々だ。だが、墨だけで描かれているにもかかわらず、まるで色づいているかのような鮮烈さと存在感を放っている。

 

「すごいっ、水墨画って墨だけなのに、どうしてこんなに引きつけられるんだろう!」

「ああ。墨は黒一色なのにな」

「むっ、デリカシーも情緒も無いな、メグルは! 墨は黒一色じゃないよ!」

「え? でも、墨って黒いじゃねえかよ?」

「ふぇっふぇっふぇ、それについては館長であるワシから話すとしようか」

「折角だし聞かせて貰おうかァ。おい、トレーナーのボウズ、しっかり聞いときな。折角美術館に仕事に来てんだからな」

 

(だからボウズって……俺も一応成人してんだけど)

 

「ふぇっふぇっふぇ、墨の生み出す色にも多様性があるんぢゃよ。強弱、濃淡、筆のしなやかで柔らかな穂先が絵に命を吹き込むんぢゃ。それが、墨の中に黒だけでなく灰、青、紫といった他の色もみせる」

 

 水墨画の一つを指差しながら、キヨは濃淡の違い、強弱の違いによって生まれる色を示す。

 

「そして、墨の原材料は煤、膠、香料の3つ。煤は墨の肝であり、膠は筆を紙の上で滑りやすくする文字通りの滑油、香料は墨独特のにおいを消し、心を落ち着かせるのぢゃ」

「ススって……火が燃えた時に出る、あの黒い煤だよな。ニワカってのはなんだ?」

「ニカワだよ、膠! こっちはポケモンの皮や骨から抽出した動物性の油だよ……全くもう、これくらい常識だからね!」

「常識かはさておき、墨って色んなモノからできてるんだなあ。そこに香料か。あれって墨の原材料そのものの匂いじゃなかったんだな」

 

 メグルは小学生の頃の習字の授業を思い出す。

 墨の香りが妙に心地よかったのは、気の所為ではなかったようである。

 

「さて、煤の原料は、木の皮、植物の油、鉱物、時には草ポケモンの一部を頂いた高級原料まで様々ぢゃ。これが色の違いに直結するのは言うまでもない」

「そ、そうなると、水墨画の色のバリエーションって、墨の数だけあるってことだよな!?」

「ふぇっふぇっふぇ、さっきも言ったぢゃろ。筆も数多の種類があるし、強弱と濃淡の付け方で陰影は変わる。そりゃあ西洋絵画に比べれば色の数は少ないが……これでもまだ、墨が黒一色と言えるかえ?」

「……と、とんでもありませんっ!」

「ふぇっふぇっふぇ、墨に五彩あり、しかし世に同じ水墨画は二度と生まれはせんのぢゃ。……ま、これは水墨画に限ったことではないが」

「成程なァ。つまり詫び寂びってヤツだねぇ。沁みたぜ」

「……先輩、絶対分かってないでしょう」

「まあ年寄りの蘊蓄なんぞ心の隅にでも留めておけばいいわい。此処にある絵はいずれも唯一無二。どれも喪ってはいかん代物ぢゃよ」

「そうだよ! それを盗もうとする怪盗なんて、許せないよね! ……あれ?」

 

 ふと、アルカの目に入ったのは、倉庫の隅で裏向きにされた額縁だった。

 

「ねえ、キヨ館長。何であの水墨画は──裏向きになってるの? しかも埃を被ってるけど──」

「……ああ、その絵か」

 

 キヨ館長はとぼとぼと絵に向かって歩いていくと、埃を手で払い──その絵を表向きにした。

 全員は思わず息を呑む。

 清く流れる鬣に、凛冽な佇まい。

 静かなる水面に、蠢く波紋。

 そこに立つは──水の遣い。

 特にメグルとアルカは、数日前に目の当たりにした本物を強く強く想起させ、全身に心地よい鳥肌が立つのを感じる。

 

「ッ……スイクン!?」

「……な、素晴らしい絵だ……! しかも伝説のポケモンときた! 俺ァ絵は素人だが、キヨさん、何でまた埃を被らせてんだ!? 間違いなく美術館の目玉になるぞ!?」

「まるで本物を見たかのような絵です……! それも、伝説のポケモンを!」

「ふぇっふぇっふぇ……あたしも何度かそうしようと思ったが、結局此処に閉まったままぢゃよ……」

「勿体ない! 展示すればいいのに!」

 

 キヨは絵を切なそうに見つめる。

 

「……これは長男が描いた絵ぢゃよ。もう40年も前か」

「ッ……す、すごい! 息子さんはどんな高名な画家なんですか!?」

 

 アルカが身を乗り出して問うと、キヨは首を横に振った。

 

「家を飛び出して、ジョウトで貧乏画家として暮らしていたんぢゃ。なかなか絵は売れんかったみたいぢゃ。旦那もあたしも何度も帰るように言ったんぢゃが、聞かなかった」

「無名の天才か……画家の世界じゃ珍しくない。だが、この絵を描ける画家を無名にするにはあまりにも惜しくないか?」

「ふっふっふ、この絵が描かれたのはまだ、世間にスイクンというポケモンが想像上の生き物と思われておった頃ぢゃ。スイクンを見た! という衝撃が、あの子をこの絵に走らせたんぢゃ。当然、周囲には嘘つき呼ばわりされたみたいぢゃが……」

「ッ……そうですか」

「当然、噓つきの絵なぞ誰も買うものは居らんかった。孤独に絶望したまま、息子は──若くして病床に臥せて亡くなった。死に目にも会えんかったよ」

「……ご愁傷様です」

「ふぇっふぇっふぇ、残念でも何でもない、死んで当然のバカ息子ぢゃよ。何度も帰って来いと言ったのに……帰ってきたのは、売れなかった作品だけ。でも、売れずに苦労した苦悩が見え透ける絵の中で──このスイクンの絵だけが生き生きとしておったわい」

 

 口では悪態をつきながらも、額縁に手をかけるキヨの目は優しかった。もうとっくの昔に居なくなった息子を見るかのようだった。

 

「踏ん切りがつかんのぢゃよ……この絵はあの子のものだと思ってしまう。あの子が最期に描いた絵ぢゃから……な。手元に置いていたくなってしまうんぢゃ」

「形見ってわけか。それなら展示しないのも一つかもしれませんね」

「ふぇっふぇっふぇ、こんな湿っぽい絵よりも、見たいのは”百鬼夜行地獄絵図”ぢゃろう? お嬢さん。こいつは人間至宝・セツゲツカの描いた最高傑作ぢゃ」

「セツゲツカってどんな画家なんですか?」

「水墨画の名手ぢゃよ。真骨頂は他の誰にも真似できない繊細さなのぢゃ。筆使い、光の遣い方、後は……今風に言うならでふぉるめというべきか、その才能もあったようぢゃ」

 

 最も有名な作品が”人鬼争乱戯画”、”魑魅魍魎行脚”、そして”百鬼夜行地獄絵図”の3つ。うち”魑魅魍魎行脚”は想像上のポケモンを描いた図だが、これは既に焼失してしまっているという。

 

「”人鬼争乱戯画”はどんな絵なの?」

「鬼同士の争いを描いた絵ぢゃよ。争う人間を鬼に見立て、こうはなるまいと戒めた絵ぢゃ」

「……そして残りが、百鬼夜行地獄絵図……サイゴクを襲ったヒャッキのポケモンを描いた絵──か」

 

 奥に──ひときわ頑強なフレームに入れられた水墨画がベールを被っていた。

 キヨが絵に被せられた布を取る。

 そうして目に入ってきたのは──表題に反して、静かで穏やかに、しかし──透き通った水面に落とされた墨のように浸食する妖達の絵だった。

 繊細で淡い色使いだが、確かにメグル達が今まで戦ってきたポケモン達の姿がはっきりと描かれている。

 空から、パラセクト、オニドリル、アップリュー、タルップル、カバルドン、ダーテング、フーディン、ルカリオ……夥しい数のポケモンが降ってくる絵だ。

 その一番上には、翼を広げた銀色のアーマーガアが大口を開けている。絵では淡い墨の色だが、確かにあの白銀の鎧の色を想起させた。

 そして、絵の下にはそれに追われる人間や小さなポケモン達が描かれている。

 

「写実的というより戯画的なんだな」

「本当は写実画で食っていきたかったらしいが、戯れで描いた戯画がウケが良かったらしく、以後はその作風だったらしいんぢゃ」

「……似たような話は何時何処の世界でもあるもんだなあ。なあアルカ、どうだ? 実際見てみた感想は──」

「あ、あ……」

 

 ぺたん。

 

 アルカは気が抜けたかのように、尻餅をついてしまっていた。

 様子が明らかにおかしい。

 

「おい、アルカ?」

 

 

 

「はぁっ……ッ!! はぁっ……ッ!! はぁ、はぁ、はぁっ……ッ!!」

 

 

 

 唇は震え、眼球も開ききっており、絵に釘付けになってしまっている。

 胸を抑え、そのまま過度に息を吸いだし苦しみだしたのだ。

 すぐにメグルはしゃがみ込み、彼女の背中に手を当てて摩るが、良くなる様子はない。いきなりのことで彼もどうすればいいか分からず、名前を呼びかけるしかない。

 

「おい、アルカ!? アルカ!?」

「はぁ、はぁ、はぁ──!!」

 

 蹲って余計に苦しむアルカ。そこにダンガンが割って入る。

 

「過呼吸だッ!! いいか、息を吸うなッ、ゆっくりと吐け!」

「ッ……はぁっ、はぁっ、ふぅー、ふぅーっ……!!」

「キヨさん、絵を布で隠してくれ!」

「ど、どうしたんぢゃ、一体」

 

 ダンガンの指示でアルカはゆっくりと息を吐いていく。

 しばらくしただろうか。漸く呼吸音が落ち着き、縋るようにアルカはメグルの手を握りしめる。

 

「お、おにーさん、おにー……っはぁ、はぁ……ふぅ」

「大丈夫だ。俺がついてる。大丈夫だから……ッ!」

「どうしますか? 救急車を──」

「良いよ……ッ、そこまで大袈裟にしなくて良い。もう、落ち着いた。少し、びっくりしちゃっただけだよ」

「そんなに怖い絵ってわけぢゃあないんじゃが……倉庫が埃っぽかったかの?」

「みたいだな、喘息かもしれねえし、俺こいつを連れて宿に帰ります」

「べらんめぇ、無茶すんじゃねぇよ。喘息なら病院行った方が良いんじゃねえか? ……それとも違う病気だったりするかもだぜ」

「……大丈夫。大丈夫ですから、えへへ……メグルもごめんね」

「……」

 

 メグルに肩を貸してもらい、そのまま全員は一緒に倉庫を後にする。

 その場で挨拶をした後、逃げるように二人は宿へと帰るのだった。

 その間、ずっとアルカは不安そうな顔をしており「ごめんね、ごめんね」と譫言のように呟いているのだった。

 

 

 

(クソッ、喘息じゃねー事くらい、俺が一番分かってるよ!!)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「落ち着いたか?」

「た、多少は……あの絵を見たら、胸が、ずきりって強く疼いて、凄く怖い気持ちが湧き上がってきて……」

「……向こうのトラウマを思い出したのか」

「違う!! 本当に、()()()()()()()()()()!! まるで中からポケモンが溢れ出てきそうな勢いだったんだよ!!」

「待て待て、確かにすごい絵だったけど──普通の水墨画だったぜ」

「本当だよ、信じて!!」

「ッ……」

 

 彼女は泣きそうな顔でメグルの服を掴む。

 そして──「ごめん」と消え入りそうな声で謝るのだった。

 どうして謝罪されなきゃいけないのだろう、とメグルは俯く。

 謝りたいのはメグルの方だった。

 彼女の受けた恐怖が彼には何一つ分からない。

 そのズレが──致命的に自分達に亀裂を入れそうになっていることを痛感していた。

 

「誰もお前のことを信じないだなんて言ってねえだろ。俺はお前の味方だ」

「ッ……ごめん」

「謝るな。お前はヒャッキ出身だからな。俺達には分からないものも、お前には分かるのかもしれない」

 

 とはいえ、メグルから見ても、あの絵からは何も感じとることは出来なかった。 

 あの場にヒャッキ出身の人間はアルカだけ。他にもヒャッキの人間がいれば分かる事があったのだろうが──

 

(今の俺にはこいつを信じてやることしかできない)

 

「カヌヌ……」

「ピギィ……」

「ご、ごめん、デカヌチャン……カブト……心配掛けちゃったね」

「ポケモン達も心配してるんだ。今は大人しく寝てろ」

「やだ」

 

 消えそうな声でアルカは言った。

 

「……寝るなら、一緒に寝てほしい」

「……いっ!?」

「怖いんだ。とても、怖い。意識が落ちる時、そこに君が居ないのが──怖い」

 

 そこまで言って──彼女は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。

 

「って……ワガママだよね。ごめん。大丈夫!」

「……バーカ。付き合ってるのにワガママもへったくれもねえよ」

 

(こいつの見えてるものが、俺には見えない。だけど、こいつの恐怖は……しっかりと伝わってくる)

 

 ベッドで丸まって目を瞑る彼女を後ろから抱き締める。

 だがそれでも──しばらくするまで彼女の震えは止まらなかった。

 掛け布団の上でニンフィアも心配そうにアルカを眺めている。流石にこの状況を見てほくそ笑む程性根は曲がっていない。曲がりなりにも彼女をライバルとして認めているのだろう。

 

「ふぃるふぃー?」

「……大丈夫。展示が終わるまでの間だ。そうなったら、元に戻ってるよ」

「ふぃー!」

 

(あの絵は一体何なんだ……!? 只の思い過ごしなら良いんだが……)

 

 しばらくして。

 一緒に寝てしまった二人を守るように取り囲んでいたニンフィア、カブト、デカヌチャンも、そのまま寝てしまうのだった。

 ニンフィアはメグルの上で丸まり、デカヌチャンはハンマーを枕代わりにして床で豪快に寝転び、カブトはアルカを守るように彼女の頭の上に乗っかっているのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──フチュウのホテルの一室。フカはノートPCを広げながら気怠そうにダンガンの顔を見遣る。

 

「それで? ……あの人たちにクローバーの残りの情報を言わなくて良いんですか?」

「余計な事は言わねえ方がガードに集中しやすいだろう。それに上から伏せられてる。奴らはお人好しだから気持ちは分かるがな」

「そうですけど」

「クローバーの関わる盗難事件には、()()()()()()()()()

 

 気怠い身体をベッドに倒しながらダンガンは葉巻を咥えた。思い浮かぶのは──クローバーの不可解な動き。

 そして、これまでに起こった3回の盗難事件の続きだった。

 

「──1件目。パルデアの美術館で盗まれた宝石は後日警察に届けられた。しかもこれが元々盗難品である証拠も一緒にな。捜査すると、芋づる式に美術館も盗品塗れのハリボテであることが判明した。元の持ち主に宝石も戻っている」

「2件目はガラルの豪邸で起こった絵画の盗難ですね。ただ、あの絵画の争奪を通した騒乱がきっかけで、豪邸の持ち主が黒い組織と繋がりがあることが分かり、現在水面下で捜査中です。絵画の行方は不明」

「3件目、ミアレの美術館。あの盗まれたミロカロスの涙は奴のサインと名前で宝石鑑定人の下に届けられ、偽物であることが発覚した。宝石に紐づけされたタグで、あれが美術館のものであることも確実。まあ、本当に精巧な偽物で、館長も悪気があったわけじゃないみてーだが、おかげで偽物を展示せずに済んだ」

「こうしてみると、クローバーは一定の美学に基づいて行動しているように思います。クローバーが盗むものは必ず曰くつきなんです。盗みのついでに悪事も暴く。まるで、現代のラッタ小僧ですね」

 

 ラッタ小僧とは、カントー地方でかつて活躍したらしい伝説の怪盗である。悪人から金品を盗み、貧しい人々にばら撒いたという逸話を持つ。しかし、近年では何処までが本当なのか疑わしいという。

 一方、クローバーのこれまでの行動は、巣に隠れた悪党の悪事を暴くために盗みを働いたり、美術品の偽物を盗むなど、私利私欲ではなく正義感や美学に基づいて行動しているように見える。

 だがそれが秩序の番人たる国際警察にとって好ましいかと言えば、当然そんなわけが無く。

 

 

 

「バーロー……何が義賊だ。理由はどうあれ……法を犯すなら、それは悪。国際警察がそこを曲げたらオシマイよ」

 

 

 

 煙を吐き出しながら──ダンガンは呟く。

 

「奴も自覚はあるのか、あくまでも怪盗を名乗ってるしな。悪党は悪党だ」

「我々は刑事。前例から、あらゆる可能性を考えなければなりません……あの辺境の美術館に何か裏がある可能性を」

「……人の良い婆さんだったんだぜ? 何か裏があるようには思えない」

「先輩の悪い癖ですよ。お人好し過ぎるのはね」

「べらんめぇ。相手を信じるのが刑事の基本だ」

「被害者()疑うのが刑事の基本です」

 

 これだけ長く一緒に居ても、2人のスタンスはなかなか交わりはしない。それでも、それ以外歯車がかみ合うように相性が良いのか、離れられない。この議論は平行線で一生同意する時など無い事は分かっているのか、そこで終わり。

 

「……案外、あのガードの女の子が何か握ってるかもしれませんよ?」

「俺も、そこはきな臭いものを感じてるよ。引き続き接触を試みる」

 

 ──テーブルの上に置かれたノートPCには【アルカ 女 石商人 出身:ヒャッキ地方】と顔写真付きでデータが入力されていた。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──草木も眠る丑三つ時。

 フチュウ美術館の倉庫に一人、彼女はスイクンの水墨画に向かい合っていた。

 埃を手で払い、老婆は妖しく微笑む。

 

 

 

「……そろそろ、この子が日の目を浴びる時が来たのかもねえ……ふぇっふぇっふぇ……!」

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