ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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CC14話:爆発オチはやはり最低だと思うこの頃

 地下施設を進みながら、カルミアは振り返った。

 スイクンがずっと、後ろから付いてきている。

 その真っ直ぐに澄んだ目を見つめながら、彼女は頭を下げた。

 

「ごめんなさい、スイクン。人間の作った機械が……紛い物が、貴方を苦しめてしまった。もっと言えば……私がこの島を起動した所為で……」

「すすいー」

 

 気にしなくて良い、と言わんばかりにスイクンは首を横に振る。

 

「……良いんですか?」

「まあ、その何だ。結果オーライってヤツじゃねーか?」

 

 メグルはカルミアの肩に手を置いた。

 

「確かに元はお前が島を起動させちまったのが始まりかもしれねーけど……これだけの研究資料や機械がある島なら、誰かが悪用しようとしたかもしれないだろうし。発見したのが君で良かったかもしれないぜ」

「……でも」

「しかも、君が島を浮かび上がらせたおかげで──タイプ:ゼノを助ける事ができた。……助けたかったんだろ?」

「……」

 

 カルミアは腰にぶら下げたボールの一つを撫でた。

 嬉しそうにそれは揺れていた。

  

「……そうですね。クローンである私にできる事は、これだけですから」

「いーや、これからもっと見つかるかもしれねーんだぜ? もっと明るくいこうや!」

「明るく──」

「そうだ。もう君を縛るものは何にもないからな。これからは自由の身だぜ」

「……どうしましょう。これから何をするのか、何をしたいのか、全く考えてなかった」

 

 少し考えるように唸った後──カルミアはタイプ:ゼノのボールを取り出して、言った。

 

「……そうだ。貴方に外の世界を見せてあげたい。試験管や研究所だけじゃない。世界は広いってところを見せてあげなきゃいけない」

 

 かたかた、とボールが震える。

 それは、彼女の期待する「これから」に、タイプ:ゼノもまた期待していることを意味していた。

 

「この子を守るのは……私の使命。この子のために……私はまだ、生きていなきゃいけない……そうですよね?」

「決まりだな」

「……メグルさんは、何かやるべき事があるんですか?」

「ある」

 

 先ず一つ。たった一つだけ決まっていることがある。

 

「俺さ……連れと一緒に旅してたんだよ。女の子」

「……カノジョって奴ですか?」

「ああ。だけど、そいつの目の前でスイクンのコピーに連れ去られちまったからさ。先ずは、早くそいつと顔を合わせなきゃいけないんだ。普段は明るく振る舞ってるけど、その反面気にしいだから……すっげー心配してると思う」

「……もしかして、私と似たような目をしてるのって、その女の子ですか?」

「そうだな。そいつは無鉄砲で、自分から死にに行くような真似をしてたから。お節介だったかもしれねーけど、放っておけなかった」

「その人は幸せ者です。そんなに強く想ってもらえる人が居るなんて」

「君にもいつかできるさ。君は、君の旅路を歩めば良い」

「私の──旅路」

 

 彼女は俯く。

 それは今、決めた事。

 タイプ:ゼノと共に生きる。

 その上で何ができるだろうか──と彼女は考える。

 

「ところで──」

 

 メグルは徐に足を止めた。

 ぴたり、とカルミアも釣られて足を止める。

 彼の顔からは冷や汗が流れていた。

 

「なんかいい感じにシメようとしたけど……俺達ゃどうやったらこの島から出られるんだ?」

「あっ……」

 

 結局、あのコピーマシーンを止めたところで、此処から出られるわけではないのである。

 このエリア5の何処かに、中枢となるコンピューターもあるはずだ。

 そして、例のサーフェスも別に、あのマシンの中だけに入っているAIというわけではないので──

 

 

 

「ぴんぽんぱんぽーん♪ あーあー、マイテス、マイテース!! 聞こえてるでしょうかぁ」

 

 

 

 ──こうなるのである。

 あの甲高いアニメ声がハイテンションで廊下中に響き渡る。何処かからスピーカーを通してこちらへ話しかけているのだろう。

 ニンフィアが低く唸り、スイクンもまた敵意を剥き出しにして辺りを見回す。

 だが、コピーポケモンの姿はいつまで経っても見えない。

 

「なんかこう、しんみりした空気になってるところ悪いんですけどねぇ? 私を忘れて貰ったら困るわけなんですよ! うん!」

「これって……サーフェスの声!?」

「あいつ、まだくたばってなかったのかよ……!」

「そりゃあそうですとも! 私の本体は中枢コンピューターにありますから!」

「ッ……おい、その中枢コンピューターは何処にあるんだ!?」

「言う訳ないし、そもそも貴方達が辿り着くことは永遠にありませんからねー!!」

 

 得意げにサーフェスは続ける。

 

「タイプ:ゼノを捕獲し、あまつさえコピーマシーンまで完膚なきまで破壊してくれた貴方達は見事この島の脅威と認定されました!! てゆーか、好き放題された挙句、タイプ:ゼノまで島の外に持ち出されたら困るんですよねぇ!」

「いや……その節は悪かったからさ、大人しく帰してほしいんだけど」

「夢の中で永遠にじっとしていてほしいんですが……」

「えー!? やだやだ、そんな寂しい事言わないでくださいよぅ、でもほら、私って超が付く程健気で献身的なアシスタントAIじゃないですかぁ」

「知らねえよ」

「だから、最後の最後まで研究所や島の為に殉じるのが筋だと思うし、そうなるようにプログラミングされているんですよねぇ、うん!!」

「いや、だから知らねえよ、さっさと帰せ」

「まあまあ聞いてくださいよ、貴方たちにとっても悪い話じゃないと思うんですけどね?」

 

 間髪入れずにサーフェスは──確かに聞いていなければ詰んでいたであろうことを抜かしたのであった。

 

 

 

「とゆーわけで! この島の下にあった自爆装置を全部作動させて、この島諸共貴方達を葬ろうと思いまーす!!」

「待て待て待て待て」

 

 

 次の瞬間、爆音が遠巻きに聞こえてくる。

 それで何が起こっているのかメグル達には理解が出来てしまった。

 このAIは、島中の施設全てを爆破してでもメグル達を始末するつもりなのである。

 急いで地下施設の入り口に辿り着くと、開けっ放しになっていたはずの扉が閉まっている。

 

「当然、島中の電子錠はロック済み!! 貴方たちは、まとめて海の底に沈むしかないってわけなんですよー!! 私って働きもの☆」

「おい!! ふざけんなテメェ!! 何古典的な自爆に走ってやがんだ考え直せ!!」

「あーあー、もうダメですね、中枢コンピューターも自爆する準備が整ってるんで。むしろこうしてアナウンスしてあげるって──くーっ、私って良いAI?」

「黙れ!! 良いAIは自爆したりしねーんだよ、悪意すら感じるわ!!」

「あ、お構いなく! 黙れと言われずとも、もうじきに自爆し──」

 

 遅れて、爆音がスピーカーから響き渡る。

 この時点で、中枢コンピューターを弄って脱出するという当初のプランは完全に潰えてしまったのだった。

 

「あ、あははは、物理的に黙っちゃった……あのポンコツAI」

「黙ったっていうか消し飛んだといいますか」

「すすいー……」

「フィッキュルルル……」

「待て! そんな目を俺に向けるな! 俺は悪くねえ!! 先ずは、この扉をぶっ壊さないと──バサギリ!」

 

 すぐさま、バサギリが飛び出す。

 後ろの方からは既に、爆音と爆炎が迫ってきている。

 カルミアもタイプ:ゼノを繰り出した。

 モデルはピクシー。その巨腕を振り回すと、鉄の扉はへしゃげてしまった。

 続けてバサギリも石の斧を回転させ、歪んだ扉を一刀両断。そのまま蹴飛ばすと、道は開ける。

 何とか地下から飛び出すと、既に島の施設は遠巻きから見ても皆炎上しているのが見えた。

 誇張抜きにこの島全てを自爆させるつもりらしい。

 すぐさま海辺に向かうべく、メグルはアヤシシを繰り出してその上に跨る。

 そしてカルミアも、その後ろに乗っかった。

 

「つっても、出口はどっちだ?」

「正門があるんですけど、あそこは非常に硬い金属の扉に守られていて……」

「電子錠で封じられているだろうしな……」

 

 そうこう言っているうちに、地面も爆ぜていき、逃げ場は無くなっていく。

 建物が倒壊し、木々は炎上。

 アクション映画もかくやという惨状が広がっていく。

 

「ど、どうしましょう、私達、此処から出られるんでしょうか!?」

「そんなの分からね──どわぁっ!?」

 

 突如、地面に穴が開き──そこからハッチが現れる。

 そして、あのやかましいギャル音声も聞こえてくるのだった。

 

 

 

「あーっはっはっは!! まさか、そのまま手ぶらで逃がすとお思いですかぁ!? せっかくなので出血大サービス!! この子も連れていってくださいな!!」

「ヒュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウッ!!」

 

 

 

 それは──3メートル程はあろうかという、角の生えた真っ白な海獣のポケモンだった。

 あしかポケモンのジュゴンであることはメグルにも分かる。だが、その顔面には制御用のバイザーが取り付けられている。

 

「ただでは転ばないのがサーフェス☆クオリティ!! 地獄の果てまで看取って差し上げますとも!!」

 

【ジュゴン あしかポケモン タイプ:水/氷】

 

(あんまり露出が少ないから地味な印象のポケモンだが、四天王・カンナの先鋒で有名! VC(バーチャルコンソール)の初代ではこいつに苦戦させられたなぁ!?)

 

 一見した種族値以上に強敵である印象が強いポケモンだ。水・氷の複合は優秀で隙が無い。

 更に、そのサイズは通常の種類より遥かに巨大。ヌシ個体とでもいうべきサイズだ。

 凡そ、研究所で改造されて巨大化したのだろう、とメグルは考える。此処まで来ればもう何があっても驚かない。

 

「つーかテメェ、まだ生きてたのかよ!!」

「当然でしょう! 私だって消えたくないですからねぇ! 超高性能清楚系全知アシスタントAIの私は、抜け目なくバイザーにデータをきっちり移していますとも!」

「自尊心だけは高いなぁ、このAIは!!」

「私、電子工学は専門外ですが……このAIを作った人が奇妙奇天烈系変人奇人であることだけは確かだと思います……」

「何でも良い! ジュゴンと戦ってる場合じゃねえ!! とにかく逃げるぞアヤシシ!!」

「あっはははは!! せいぜい逃げれば良いじゃないですかぁ!? 逃げ場なんてもう、ありませんけどもねぇ!!」

 

 角から放つ”れいとうビーム”で地面を凍らせながら滑るようにしてメグル達を追跡するジュゴン。

 その間にも島の各所は次々に爆発しており、既にミッシング・アイランドは傾きつつあった。

 各部から浸水が始まっており、島が浮上できなくなっている。

 そして発電所も破壊されたことで、各所の電子ロックも解除出来なくなってしまった。

 

「このジュゴンは、この島の最奥で封じられていた暴れん坊! 遺伝子組み換え100%の鬼強個体!! ちょちょいっとボールにハッキングして、解放してあげたんですよね! くーっ、私って良いAI?」

「遺伝子組み換えはアピールポイントでも何でもねーんだよ、ポンコツ!!」

「ああっ!! またそうやってポンコツって言いましたね!? 一度とならず二度までも!! 私は当時の最先端技術で作られた超高性能なッ!! 自己学習型!! アシスタントAIなんですよぉ!!」

 

 れいとうビームに加え、フリーズドライも乱発してくるため、これではスイクンも近付くことができない。

 三聖獣と言えど、タイプ相性には敵わない。周囲を凍らせたところで、氷タイプのジュゴンには全く意味が無い上に、一緒に逃げているメグル達を巻き込むだけだと理解しているのだ。

 伝説の力は、そう簡単に振るえるものではないのである。

 ただただ、アヤシシとスイクンに出来るのは、逃げるだけ。なんせ周囲は耳がおかしくなるほどの頻度で爆発を繰り返しており、いつ巻き込まれるか分からない。

 そしてその爆発を、”あついしぼう”で受け止めながら突き進みながら周囲を凍てつかせていくジュゴンは、海獣ではなく怪獣という言葉が相応しい。

 

(ジュゴンで良かった……ッ!! トドゼルガだったら恐怖3倍だったかもしれん……ッ!!)

 

 と思っていた矢先、角から飛んできた”れいとうビーム”が頬を掠める。

 肩から首にかけて凍り付いていた。

 

(前言撤回!! やっぱヤベーよ、コイツも!!)

 

 トドゼルガ程のパワーは無いとはいえ、それはあくまでも同体格・同体重の個体と比べた時の話。

 おまけに、ジュゴンは角から”れいとうビーム”を放つことで正確無比にこちらを狙ってくる。

 このままでは、自分はおろかカルミアも危ない。

 

(此処まで来て、諦めて堪るかよ!! 絶対に誰も死なせるか!! そんでもって──)

 

 脳裏に映るのは、あのメカクレ少女の顔だった。

 

(絶対帰るって決めたんだ!!)

 

「クソッ、しっかり掴まれ!!」

「は、はいぃっ……!!」

「飛ばせアヤシシ!! 疾く疾く駆けろ!!」

「ブルトゥ!!」

「ビッグバトルレースのあの時を思い出せ!!」

 

 しかし、ジュゴンの速度も想像以上に速い。

 体を滑らせながら、巨体を武器にどんどん迫ってくる。

 しまいには尻尾を地面に叩きつけて、飛び掛かってくるのだった。

 

「やっば、避けられな──」

 

 

 

 

「ららいー!!」

 

 

 

 雷光直撃。

 飛び上がったジュゴンを撃ち落とすように、青白い閃光が突如降りかかる。

 

「ほぎゃーっ!? しびびびびーっ!? 何事ですかぁー!?」

 

 墜落したジュゴンは、それでも尚怯むことなく辺りを見回す。

 バイザー越しにサーフェスが捉えた視界には──全身の毛を逆立てた虎の如きポケモンが立っていた。

 通り過ぎ様に、メグルもその姿を確かに見た。

 

「ッ……ライコウ!?」

 

 

 

「ええいー!!」

 

 

 

 更に今度は追い打ちをかけるようにして、巨大な火球がジュゴン目掛けて飛び、爆ぜる。

 そのまま押しやられたジュゴンの巨体はのたうち回りながら、爆炎に巻き込まれ、見えなくなった。

 

「エンテイに……ライコウ!?」

「電子錠が掛けられている状態で入ってきたってことは──正面入り口を突破したんでしょうか!?」

 

 着いて来い、と言わんばかりに2匹は駆ける。それに続き、スイクンも一歩遅れて2匹に続く。

 彼らの速度はアヤシシのそれを遥かに上回っており、メグルも追いかけるので精一杯だった。

 そうしてしばらく走っていると、何者かにこじ開けられたであろう正面ゲートが見えた。 

 

「出口だ!! 出られるぞ、外に!!」

「やりました!! これで漸く──」

 

 

 

「逃がしぃ、ませんよぉぉぉーっ!!」

 

 

 

 

 あの甲高いアニメ声が、まだ聞こえてくることにメグルは恐怖を覚えた。

 ジュゴンが滑走しながられいとうビームを放ち、追いかけて来るのである。

 バイザーも未だに健在。故にサーフェスも健在だ。

 だが、最早なりふり構ってはいられなかった。爆発音をBGMに、メグルはアヤシシのライドギアを握り締め、思いっきりゲートから海へと飛び出す。

 ミッシング・アイランドは既に傾いており、水面まで凡そ10メートル。

 乗り換えるべくヘイラッシャのボールを投げようとした矢先、鋭い痛みが手を襲った。 

 ”れいとうビーム”がメグルの右手をボール諸共凍らせたのだ。

 

「しまっ……!?」

「あっはははははぁーっ!! これでお終いです!! 海の藻屑になりなさいッ!!」

 

 ずるずると這い出し、遅れて空へと飛び出したのはジュゴン。

 そのままメグル達を空から海中へ叩き落とすべく、巨大な鰭を振り下ろす。

 万事休す、と思われたその時だった。

 

 

 

「ルカリオッ!! ”はどうだん”ッス!!」

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