吉田栄作よしだえいさく
俳優
1969年生まれ、神奈川県出身。モデル出身の洗練されたスタイルを武器に歌手、俳優として幅広く活躍。90年代はトレンディドラマの常連となり、主演作『もう誰も愛さない』のサスペンス的な演技が話題を呼んだ。ハリウッドの演技修行から帰国後は、社会派の作品やホームドラマ、舞台にも積極的に出演。味のある演技で役柄の幅を広げている。土曜ドラマ『流通戦争』『64(ロクヨン)』、特集ドラマ『ラジオ』、大河ドラマ『元禄繚乱』など出演作多数。
- 出身地
- 神奈川県
『流通戦争』でお世話になった小松昌代プロデューサーにお声がけいただいた作品で、改めて長いご縁を感じています。同作で演じるのは主人公、皐月(杉咲花)の父、耕太郎。皐月が中学のときに離婚して、現在はパートナーの信爾(しんじ/岡田義徳)と暮らしているという設定。僕自身はバイセクシャルではないので、なかなか全てを理解した上で演じるのは難しいですが、誰かを愛するという気持ちは共通のものですから自然に役の心情には寄り添えていると思います。
耕太郎の場合は好きになってしまったのが男性で、それを家族と秤にかけたときに信爾との暮らしを取ってしまったのですが、そこにはかなりの覚悟があったのでしょう。第1話の最後に耕太郎と信爾が偶然レストランで皐月と陸(藤原季節)に会うシーンがありました。食事を共にして別れた後、道端で信爾が思わず涙する場面があり、台本のト書きには“ハンカチを渡す”と書かれていましたが、僕は信爾を抱きしめてしまったんですよ。街中で信爾を抱きしめることによって、耕太郎の覚悟が見えるんじゃないかって。監督に却下されたら仕方がないけれど、やってみたい描写だったのでオンエアで使われていて良かったです。
また第5話では耕太郎が倒れて、病院に皐月や元妻の梨沙子(若村麻由美)が駆けつけました。耕太郎に裏切られたという思いからわだかまりを抱えてきた梨沙子でしたが、信爾に乞われて耕太郎の病室に入り再会を果たしたんです。その後、第6話で皐月の結婚話に際し、親である2人が話すシーンは演じていてグッときましたし、すごく熱くできていると感じました。
耕太郎は梨沙子に、君への思いも一緒に過ごした時間もウソじゃなかった。けれど、結婚という形ではなかったと謝るんです。彼にとっては家族を続けることの方がウソで、いろんなリスクを背負ってでも自分に正直に生きたいと思ったのでしょう。それは彼が誠実な証拠だと思うんですよ。ですから梨沙子から、皐月を授かったことは本当に感謝していると言われて、たまらない気持ちになった。本当にいいシーンでしたね。
プレミアムドラマ プラトニック(2014)
佐伯武彦役
吉田栄作さんが演じる佐伯武彦は、厳しい競争社会を生き抜いてきたバリバリの企業戦士だ。だからといって家庭をないがしろにしてきたわけではないのだが、一度の浮気が原因で沙良(中山美穂)と別れた。しかし娘・沙莉(永野芽郁)の父親であることに変わりはなく、常にふたりのことを気にかけてきた。自らの心臓を娘に譲るという青年(堂本剛)の出現、さらに青年と沙良の結婚など、佐伯の理解を超える出来事が続くが…。
「撮影前に4話くらいまで台本をいただいていたのですが、佐伯という人物の最終的な着地点はまだその段階ではよくわかりませんでした」とのこと。ただ、脚本の野島伸司さんは「後半の核になる役」と話していたそうだ。その言葉どおり「第6話あたりから、佐伯という男がそれまでロックオンしていた自分の人生に対して、あるベクトルを定めて生きていこうとするんです。沙良や青年とは別のところで」。ところが、その矢先、事態はまた大きく転換し、佐伯はまた沙良や青年と向き合うことになる。
青年が初めて沙良の前に現れてからの日々、「もちろん沙良のこともあるけれど、娘・沙莉の心臓のこと、父親としてどうしていくべきなのか、佐伯はずいぶん悩み考えてきたはずです」と語り、そこで娘のために、そして沙良と対等になるためにある覚悟を決める佐伯の生き方を「“武士道”に通じるものがある」と感じたそうだ。もっともその思いをディレクターに話したところ、捉え方にやや違いはあったようだが、「台本を読んだときに感じた解釈で演じてもいいのかなって。そのくらいの強さ、ゆるがない何かがあってもいいような気がしました」という。
父親として人間としてのベクトルを定めた佐伯の生き方を「すごくカッコいい」という吉田さん。そんな吉田さんが大事にしているのは沙莉と過ごすシーン。「佐伯のような競争社会の中で勝つことを価値観として生きている男が娘とどう接するのか、そこも見どころです」と話してくれた。
作:野島伸司 音楽:上野耕路
特集ドラマ ラジオ(2013)
國枝重治役
東日本大震災の被災地・宮城県女川町に実在する「女川さいがいFM」から生まれたドラマ『ラジオ』は、文化庁芸術祭大賞を受賞し、BSプレミアムなどで全国放送され大きな反響を呼んだ。被災地に生きる女子高生と彼女を見守る大人たちが織りなす青春群像で、吉田さんは仮設住宅に引きこもるヒロインを心配する兄貴分で蒲鉾店四代目の國枝重治を演じた。
「自分がキャストとして参加できたことを誇れる作品です」という吉田さん。「実在する蒲鉾店は津波の影響を受けなかったので、震災の日に出荷予定だったかまぼこが、数日間、女川町の人たちの食料となったそうです」と舞台となった町の様子や人々のことを語る。ドラマを通して出会うことができた人々との関係は今もつながっていると話し、「女川町が復興して人々がふつうの生活に戻るまで」と言ったあとで、「いや、そのあともずっと関わって付き合っていきたい」と力を込めた。それは「僕たちがパフォーマンスを続けていく上で、大きな原動力になるんです。誰かのためになる気がするのがうれしいし、何より被災地の状況を全国の人に伝えることができる。こんなふうに誇りを持てる作品にはなかなか出会えません」と話し、「本当に太鼓判を押せる素晴らしい作品なので、ぜひ機会があれば多くの方たちに見てほしいですね」と熱く語ってくれた。
原作:某ちゃん。 脚本:一色伸幸 音楽:松本俊明
太平洋戦争後、焦土と化した日本の独立と復興に力を尽くした宰相、吉田茂を渡辺謙さんが演じた作品でした。少し年上の先輩である謙さんとの共演はこれが初めてで、いい意味で身が引き締まり、緊張しました。特に僕が演じた服部は真っ向から吉田茂と敵対する役だったので気合いが入りましたね。
服部が登場したのは全5回の放送のうち、第4回のみ。旧陸軍参謀本部部員で東條英機の秘書官を務めたことがあり、旧軍勢力の筆頭でした。日本の再軍備を目指し、公職追放された軍人を中心とする警察予備隊を作ろうとするのですが、吉田に阻まれ激昂します。この吉田との直接対決のシーンで服部は懐にピストルを忍ばせているのですが、自分がガダルカナル島の戦いで作戦ミスを犯し、多くの部下を死なせた事実を突かれてしまいます。服部自身もそういう事実を分かってはいつつ、それでも吉田総理のやり方に納得がいかなかったのでしょう。まさに命をかけたシーンでもあり、撮影時には緊張感がありました。僕は一話きりの出演で谷原章介くんや永井大くんのように謙さんと馴染んでいなかったので、その空気感や距離感がむしろいいピリつきや殺気を出すのに役立ったと思います。
実は別作品の役づくりで長野の自衛隊レンジャー部隊に体験入隊したことがありました。『負けて、勝つ』の撮影が長野ロケで、お世話になった自衛官の方々と撮影の前日にお食事をしたのですが、帰り際に小隊長さんが後ろで手を組みながら集まった皆に言葉をかけている様子や歩き方が印象的でした。「これだ!」とその姿を参考に服部の所作を作ったので、そういった部分も見ていただけたらいいですね。
オファーをいただいた時は39歳。18歳の双子の娘がいる役ということで「僕でいいんですか?」と青木信也プロデューサーに聞きました。そうしたら18歳のときに真喜子(石田ひかり)と出会って結婚し、双子を授かった過去を持つ役と聞いて納得しました。
そんな忠は若いころプロボクサーを目指していたものの夢に破れ、真喜子とも別れて双子のひとり、めぐみ(三倉茉奈)を連れて故郷の松江に戻って稼業を継いだ人物。嘉子(鈴木砂羽)と再婚し、過去を封印して生きてきたけれど、もうひとりの娘、のぞみ(三倉佳奈)と再会したことで、再び過去に向き合うことになります。
家庭が壊れそうになったとき、再びリングに上がり家族のために闘うことを決めた忠には共感しました。「この場面が前半のクライマックスになります」と長沖渉監督には聞いていましたが、改めて動画でご紹介しているシーンを見てみると、忠の心情を表現者としての自分の気持ちと重ね合わせて言っているなと思いますね。
今より10歳以上も若いころに撮った作品ですが「オレのなかにある魂の炎が燃え尽きない限りは、俳優として歌手として走り続けていくんだ」という覚悟がありました。いまもその思いは変わりませんが、改めて当時が蘇り、何だかジーンとするものがありますね。
また、18歳の忠と16歳の真喜子の回想シーンを(石田)ひかりちゃんと撮影したのも思い出深いです。スタッフさんの遊び心から用意されていた衣装はブルージーンズにTシャツ(笑)。ひかりちゃんから「Tシャツはインの方がいいんじゃないですか?」と言われて、若いころそのままの格好で演じたシーンになりました。朝ドラに珍しく、現在の妻・嘉子と前妻の真喜子との間で揺れる忠の心情も話題になりました。そんな危なっかしいお父さんが描かれるのも面白かったと思います。
芸能界を目指した16歳のころに思い描いていた夢を日本ではやりきった気がして、1995年に渡米しました。その当時、アメリカのアジアンチャンネルで放送されていたのが大河ドラマ『秀吉』。あちらで暮らすなかで『毛利元就』、『徳川慶喜』と英語の字幕が付いた大河ドラマを見ていました。もともと時代劇には興味がなく、出たこともなかったのですが、見ているうちに不思議と「そうか!まだ全然やっていないこともあるな」と気づきました。
そんな折、当時のマネージャーから電話があり『元禄繚乱』への出演オファーの話をされました。僕としては渡りに船のような感じで、二つ返事でお引き受けしたことを覚えています。ですから、僕にとっては大河ドラマ初出演作が時代劇初挑戦でもあった。演じた岡島忠嗣は脚本の中島丈博さんオリジナルの役で、とても思いのこもった人物だとうかがい、身が引き締まりましたね。
忠嗣は赤穂藩の浪士ではないにも関わらず、四十七士と思いを同じくしていたことから、大石内蔵助(中村勘九郎/のちの故・中村勘三郎)の許しを得て討ち入りに参加することになります。そこに至るまでには、父と兄が目の前で自刃するという壮絶な経験や、かつて愛を誓い合っていたものの将軍・綱吉(萩原健一)のお手つきとなり、後に柳沢吉保(村上弘明)の側室となった染子(鈴木保奈美)との恋愛など、オリジナルキャラクターならではの自由な展開がいくつもあり、演じる僕自身も作品を江戸時代のシドニー・シェルダンのようだと感じていました。
また、残念ながら亡くなってしまいましたが、主演の勘三郎さんをはじめ萩原健一さんなどの大先輩とご一緒できたのも思い出深いです。吉良上野介を演じた石坂浩二さんからは「大河、初めてなのか!」と驚かれ、僕も「トレンディなんで(笑)」などとふざけたりしていましたが、今思えば皆さんと共演したことは、僕にとっては貴重な経験だったなと時を経てつくづく感じています。それに、当時は若手だった高橋一生くんが僕の息子役を演じてくれていたり、タッキー&翼が出ていたりと、今も活躍する皆さんの少年時代を見られるのも醍醐味です。そう思うと、改めて時の流れを感じますね。
休業宣言をしてアメリカに渡り約2年が経ったころに出演のお話をいただきました。全く帰国するつもりがなかったのですが、当時のマネージャーさんから岡崎栄さんが監督される作品だからこの作品に出るためだけに帰ってくる価値があると言われ、アメリカで学んだ演技や経験を発表できる場になるのではと、復帰を決めたのを覚えています。
作品はスーパーマーケットの出店競争をテーマにした社会派ドラマ。僕はその主人公で大企業の思惑に翻弄(ほんろう)されながらも、自分の信念を貫こうとするスーパーの社員、神野役を演じました。本社から出向になった神野の上司となる店長、橋場早苗を演じたのは吉田日出子さん。日出子さんとは渡米前に映画『国会へ行こう!』で共演したことがあり、久しぶりの再会でした。
橋場店長は日出子さんならではのチャーミングさが出ている魅力的な役で、僕が演じた神野の真っ直ぐな人物像と相性が良かったように思います。2人の間には上司と部下の関係を上回る人と人の絆があり、淡い恋愛感情をほのめかすようなシーンもありました。ともするとそういう描写はいやらしく見えてしまう部分でもあるのですが、感情の機微を岡崎さんが大きく包み込むように演出してくださり、自然でステキな関係性に仕上がったと思います。
タイトルにもある通り流通のリアルを描いた作品でしたが、実は僕自身の実家が小売店を営んでいたので、馴染みのある世界観のなかでお芝居をすることができました。子ども時代からの体験を演技に生かすことができたのも「戻ってこい」と言ってくれた当時のマネージャーのおかげ。そして今(2022年)放送中のドラマ10『プリズム』でもお世話になっている小松昌代プロデューサーとの出会いの作品でもありました。このドラマをきっかけにNHK作品にも多く出演の機会をいただき、僕にとってはある種、原点のような作品ですね。










