原田泰造はらだたいぞう
俳優
1970年生まれ、東京都出身。「ネプチューン」のメンバーとして活躍する一方、俳優として多数の作品に出演。舞台『ザ・ヒットパレード ショウと私を愛した夫』『ニッポン無責任新世代』、映画『ミッドナイト・パス』『スマホを落としただけなのに』、ドラマ『営業部長 吉良奈津子』『血の轍』など。NHKでは、『胡桃の部屋』『コントレール~罪と恋~』『どこにもない国』『そろばん侍 風の市兵衛』、連続テレビ小説『ごちそうさん』、大河ドラマ『篤姫』『龍馬伝』など。『大全力失踪』では、前シリーズ『全力失踪』に続いて再び失踪に導かれる主人公・磯山武を演じた。
- 出身地
- 広島県
『全力失踪』は、いろいろな現場で監督から「あれ、面白いね」と言っていただいたり、サウナで会ったおじさんに「あの逃げるやつ、いいね」と声をかけてもらうなど、代表作の一つだと思っていました。それが続編を撮ると聞いて、続編の喜びは経験がなかったので率直に嬉しかったです。ただ、7年失踪していた磯山が家族のもとに戻り落着したのに、今回は一体どうやって逃げるんだろうと疑問でした。
まあ、ふつうのおじさんがやくざに追われて日本全国を逃げ回る悲惨な話なんですが(笑)、けっこう明るく撮っています。夢があるドラマだという気がして、現実逃避というけれどいやなことから逃げるのは、そんなに悪いことじゃないよというふうにも思えますね。
ただ、やっぱり走っているときは全力で走りますから、気持ち悪くなることもあります。それより辛いのは、緒川たまきさんが演じる奥さん(聖子)と、娘(ななみ)役の優希美青ちゃんが、磯山をものすごいさげすんだ目で見て「帰ってこなくていい」とか言うんですよ。その日の撮影が終わり、帰りの車の中でなんかショック受けているなと思ったら、あの二人の厳しい言葉が辛くて泣きそうになりました(笑)。もちろん、役を演じていないときは優しいんですけどね。
前回は真夏の炎天下を走りましたが、今回は雪の中をこの歳になってこんなにというほど走ってます。びっくりするほどカットされていますが、すごい傾斜の坂道を走り降りてくださいと言われたこともありました。ADさんに「降りてみたんですか?」と聞いたら、「足跡がつくから降りてません」って。それはそうですよね。でも案の定、駆け下りたのにシーンカットされていました(笑)。
新たな出演者として登場したのが、娘のななみの婚約者・白金雅也。演じている山田裕貴くんは参加してくれてありがたいのですが、美青ちゃんといちゃつくシーンは、僕が役に入っているので父親としてむかつきましたね(笑)。あと強い印象を残したのがToshilさんです。前回、江波杏子さんがママ役を演じられたバー「Disappearance」のバーテンダー役ですが、バーの空間に妖精のように存在しているToshilさんからは強いオーラを感じました。撮影が終わって握手をしていただいたのですが、どこか異空間にいたかのような感覚になりました。
これは原作の小説が面白いですよね。父親も大ファンなので、僕が唐木市兵衛(向井理)の友人で同心の鬼しぶ(渋井鬼三次)をやると言った時は、ものすごく喜ばれました。僕自身も鬼しぶができるというだけで本当にハッピーで、衣装合わせのときも嬉しくてしょうがない(笑)。この黒羽織を着られるのかとか、顔のここに傷をつけるんだとかね。「もう少しべらんめえ口調にしていいよ」なんて言われて、やっていても楽しくて。練習していると、これ言いたいな、あれ言いたいなというセリフがいっぱい出てくる役です。
セリフといえば、向井くんはよくセリフ合わせにつきあってくれるんです。そこで、「あれ、次なんだっけ」ということがあると、教えてくれたりするんですよ。僕の長ゼリフも覚えていて、びっくりしましたね。必死にというのではなく、さらっと覚えている感じで僕との距離感もわかってくれる素敵な方です。
とにかく物語がぶっ飛んでいて面白いので、また鬼しぶをやりたいんです。だから向井くんに違う作品で会うと、必ず「風の市兵衛やりたいってみんなに言ってね」とお願いしています(笑)。
旧満州に取り残された日本人を帰国させるために命がけで奔走した男たちの実話をドラマ化した作品でした。僕もいろいろ調べていったつもりだったのですが、内野聖陽さん、満島真之介さんと3人で話をしていたら、内野さんが「これ読んでください」と本をくださったたんです。「原田さん、何もわかっていませんね」みたいな感じで(笑)。それを読んで、こんなにすごいドラマがあったのかと改めて感動して、また役に入ることができました。
この3人は満州から命がけで脱出したのに、そこからまた引き揚げのための船を用意して戻る。読めば読むほど本当にすごいことをやったんだということがわかります。中国でも何日間か撮影しましたが、やはり現地に行くと実感が伴うので圧倒されました。撮影は大変なこともありましたが、内野さんがリーダーとなって引っ張ってくれたので、すごくありがたかったです。それに、3人で考えて3人で走って3人で耐えてという3人組だったことも良かった。僕はいつもネプチューンで3人なので、なんかしっくりきて、やりやすかったんです。
強い印象を受けたのは、吉田茂を演じられたショーケン(萩原健一)さんです。リハーサル室に現れたときには、役作りでもう額を剃っていたんです。その場にいた全員に緊張感が走りましたね。メガネの置き方、杖のつき方、口に入れた含み綿と、すべて役を作られて「俺はここまでやってきているんだぞ」というオーラがすごかった。内野さんを見ていてもそうですが、役者ってすごいなと改めて思いました。
このとき、ショーケンさんに「セリフはどうやって覚えられているんですか?」って聞いたんです。そしたら「リズムだよ」って。「リズム大切にしなよ、メトロノーム買いなよ」って。やっぱりミュージシャンなんだなと感動しました。お会いできて良かったです。
主人公・め以子(杏)のお父さんでしたが、怒ったり笑ったり激しい人でした(笑)。だけど家族を大切にする、そして食べることを大事にするというのが一貫していて、やっていても楽しかったですよ。
不思議なドラマで、いつもみんなでご飯を食べていたという記憶があります(笑)。納豆をかき混ぜながらセリフを言い合ったりね。みんなが自由に芝居をしながらちゃんと旦那さんを立ててくれて、本当の家族という感じになれた優しい現場でした。
僕は洋食店の店主でコックの役なので、先生から料理指導も受けていました。その時に言われたことが、料理人というのは手が空いたら掃除をするものだということ。撮影の合間でも、絶対にぼーっとしていちゃいけないよ、手を動かして掃除をしなさいと。「はーい」と従っていたので、今でも家で皿洗いはすごくします。料理はまったくしませんけどね(笑)。
結婚しため以子を大阪に送り出してからは、東京組の僕らは家でドラマを見るしかないんです。そしたら嫁ぎ先でめ以子がものすごくいじめられてたでしょ。特に悠太郎(東出昌大)の姉の和枝を演じたキムラ緑子さん(笑)。緑子さんが怖く映ってテレビを見ていても本当に心配でした。だからバラエティーで緑子さんにお会いしたときは、こんなにチャーミングな人なんだって安心しましたね(笑)。あと、妹の希子を演じた高畑充希ちゃんが「焼氷有り〼の唄」を人前で歌った時は家で泣きました。
テレビで見ているだけでなく、め以子の親として大阪に行きたいと思っていたら、それも実現。酉井捨蔵役の近藤正臣さんと一緒のシーンもあり嬉しかったですね。朝ドラって、こんなに幸せな気持ちになるんだと教えてもらえた作品でした。
初めての大河ドラマで、まさか大久保利通役をやれるとは思ってもいなかったので本当に嬉しかったし、今でも僕の中に強烈に残っています。とくに思い出に残っているのは、熊本で西郷(小澤征悦)と別れて薩摩に帰った大久保が母・フク(真野響子)に「おいは今日から鬼になりもす」と告げたところです。あそこは、後に維新の英傑として育っていく大久保の原点となるシーンだという思いがあり、演じていても本当に力が入ったことを覚えています。
もう一つは、やはり最終回ですね。紀尾井坂で不平士族に暗殺されて最期を遂げたのですが、「やり残したことばかりじゃ、そげなもんなのかいのう、吉之助さあ」と言って亡くなる。このセリフがいまだに抜けないんですよ。その後も、何回か鹿児島に出かけて大久保さんや西郷さんの生まれたところや墓地にも行っているのに、大久保さんが抜けない。他の人が大久保役を演じているとつい見てしまいます(笑)。同じように宮﨑あおいさんも僕の中ではずっと篤姫なんです。その後、映画で一緒になったことがあるのですが、「姫を守らなくては」という薩摩の武士の意識のままでしたね(笑)。
『篤姫』は僕にとってものすごく特別で大事な作品です。またどこかで全編見直してみたいなと思っています。










