ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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CC2話:真偽

「いきなり、こんな大物が相手だなんてな……ッ!!」

 

 ライコウは目から赤い光を放っており、まるでオヤブンポケモンのような威容を放っている。

 図鑑よりも体格が一回り程大きく、相対しているだけで焦がされてしまいそうな電気を常に放っている。

 

「アヤシシ、やれるな?」

「ブルトゥ……ッ!」 

 

 ライコウは伝説のポケモンで、種族値もかなり高い。

 そしてメグルの手持ちには、電気タイプに弱点が突ける地面タイプのポケモンが存在せず、逆に電気技を半減に出来るようなポケモンも存在しない。

 轟々と稲光が森林を焼き焦がしていく中、メグルはオージュエルに手を触れる。

 今持っているポケモンで相性差が覆せないならば、後から変えてしまえば良いだけの話だ。

 

「ららいーッ!!」

 

 

 

【ライコウの 10万ボルト!!】

 

 

 

「オーライズ──”サンダース”!!」

 

 

 

 メグルが黄色の珠を投げ上げると、それが光となって飛び散り、稲光が迸る鎧となってアヤシシに身に着けられていく。

 そして、ライコウの放った電撃は全て、アヤシシの角へと吸い込まれていった。

 ダメージは受けているものの、電気タイプに電気技は効果がいまひとつ。

 更にアヤシシの大きな角に電気は吸い込まれてしまうのである。

 

「ブルトゥ……ッ!!」

 

【アヤシシ<AR:サンダース> オオツノポケモン タイプ:電気/エスパー】

 

 大きく咆哮するアヤシシの黒い稲光と、ライコウの青い稲光がぶつかり合い、弾ける。

 互いに睨み合う形で一歩、また一歩と近付き──ぶつかった。

 その瞬間、周囲は激しい光が迸り、思わずアルカは目を腕で覆う。

 

「は、始まった……やっちゃえー、メグルー!!」

「カヌカヌ!」

「デカヌチャン、そっちの男の人背負って! 離れるよ!」

「カヌヌ!」

 

 倒れた職員を担ぎ上げ、安全な場所へと連れていく。

 アルカは、肩に負ぶった男の人に「大丈夫ですか!? 意識は!?」と問いかけると、力無い返事が返って来た。

 

「ラ、ライコウを、こんな形で見る事になるとは……」

「あのポケモンが発電所を襲うなんて……今までもあったんですか!?」

「まさか! そもそもライコウなんて、人気のある所にはめったに現れないからね!」

「じゃあ、何で……きゃぁっ!?」

 

 後ろから雷光が迸る。

 アヤシシが大きな角でライコウを牽制しつつ、振り払っているが、その度に黒い稲光が周囲を焦がしていく。

 伝説のポケモンに匹敵するヌシポケモンの力を身に纏っているのだ、それが伝説のポケモン相手にぶつかれば、まさに天災。

 逃げなければ、雷でその身を焼かれることになるだろう。

 すぐさま血相を変えてアルカは、職員たちと共にその場を離脱する。足元は雪でなかなか動けないが、それでも逃げなければ攻撃に巻き込まれてしまう。

 

「それにしてもとんでもない! 伝説のポケモンとまともにやり合えるなんて……あの若者は何者かね!?」

「ふふーん……サイゴクの試練を乗り越えた、すっごく強いトレーナーなんですよ!」

「ええ!? 君達サイゴクから来たのかい!? って、どわぁっ!?」

「で、電気がヤバい! このままじゃ──」

「──アヤシシ、ひかりのかべだ! 被害をこれ以上増やすな!」

 

 アヤシシが咆哮すると共に、周囲に透明な壁が展開され、それが電撃を閉じ込める。

 だが、それでも獰猛にライコウは吼えて今度はアヤシシに喰らいかかる。

 

【ライコウの かみくだく!!】

 

 サイコパワーを帯びた身体に、悪意を帯びた牙は効果が抜群だ。

 だが、それでも尚持ち前の根性で痛みも、そして迸る返り血も物ともせず、アヤシシは必死の形相で前脚をライコウに叩きつける。

 そして、

 

「ッ……バリアーラッシュ!!」

 

 オーライズしたことで、タイプ一致となり、威力が増したバリアーを盾にした突撃を見舞う。

 ライコウの身体は雪に倒れ込むが、それでも弾けたように再び飛び上がってみせるのだった。

 

(このライコウ、不可解な点があまりにも多すぎる……! 目は赤く光ってるし……そもそも普通、()()()()は人間と出会ったらすぐに逃げ出してしまうはずなんだが)

 

 ライコウに限らず、おやしろの石像にあったエンテイ、スイクンは、ゲーム上ではエンカウントするとすぐに逃げてしまうことが捕獲を難しくしている。 

 その後年の作品ではシンボルエンカウントで現れて、逃げないことが殆どだが、初出のジョウト地方ではこの特徴が3匹全てに当てはまる。

 しかし、このライコウは逃げようとするどころか積極的にこちらを襲っているのだ。

 目の色の変化と合わさり、メグルはライコウそのものに何かしらの異変が起きているのではないか、と考える。

 だが、それを考慮しながら戦うのは、あまりにも危険な相手だ。相手は仮にも伝説のポケモン、放つ高電圧は他のポケモンの技に匹敵し、技として放たれた電撃は、とてもではないがまともに受けられたものではない。

 耐久力に優れ、尚且つ電気タイプとなっているアヤシシだからこそ真っ向から戦える相手と言っても良い。

 

「シャドーボールで攻撃だ!!」

「ブルトゥ……!!」

 

 影を丸め込んだ砲丸に電気を纏わせ、何発も放つアヤシシ。

 それは雪に覆われた地面を抉る勢いで飛んで行き、ライコウを四方八方から取り囲んで爆撃してみせる。

 全発命中。しかし、流石の特殊防御力というべきか。全てが命中しても尚、ライコウは威勢よく電気を放ち、威嚇してみせる。

 

(もしかして、あんまり効いてない……!?)

 

 そればかりか、待つのは手痛い反撃。

 ライコウの目が赤く光り、アヤシシの身体をぴたりと止めてしまう。”じんつうりき”だ。

 そして出来た一瞬の隙を縫い、電撃の如く迫った雷獣は吼えるとその牙を再びアヤシシの首に突き立てる。

 幾ら霊体を含む体とはいえ、その牙は霊気そのものを傷つけ、破壊する。

 更に生身の部分も牙に貫かれ、確かにアヤシシの身体に食い込んでいく。

 ライコウは特殊攻撃力が高いポケモンだが、物理方面も低すぎるわけではないのである。

 

「アヤシシ耐えろ!! オオワザ……を撃ったところで、効果はいまひとつだし、此処は新技……見せてやるか!」

「ブルトゥ!!」

 

 電気を放ちながら暴れ続けるライコウ。

 それを目掛けて、一直線にアヤシシは角を突き立てて突貫してみせる。

 全てを込めた渾身の一撃が、雷獣の身体を狙った。

 

 

 

「”すてみタックル”!!」

 

 

 

 跳ね飛ばされたライコウの身体が宙を舞い、雪に落ちる。

 だが、それでも尚、雷獣は斃れることなく、アヤシシに再び電光石火の勢いで迫りかかる。

 しかし”バリアーラッシュ”で耐久力を再び強化したアヤシシはそれを受け止めて、振り払ってしまうのだった。

 

「何が起こってるか分かんねーけど、捕まえさせてもらうぞ──ライコウ!!」

「ブルトゥ!!」

 

 組みかかる2匹。 

 拮抗しているこの瞬間がチャンスとなる。

 メグルはハイパーボールを投げ付けた。

 雷獣はボールへと吸い込まれていき、運が良ければそれで捕まる──はずだった。

 

「えっ」

 

 ボールはあろうことか、ライコウの身体に弾かれ、そのまま何処かへ飛んで行ってしまったのである。 

 ポケモンならば、ある程度弱らせればボールさえぶつければ一度は入るはずである。そのまま飛び出してしまうことがあっても。

 しかし、今このライコウはボールの中に入る事すらしかなかった。

 

(既にモンスターボールに入っているポケモンなら、プロテクトが掛かっていて弾かれることはある……だけど、こいつは誰かのポケモンなのか!? 指示してる奴が見当たらない……!)

 

 

 

「ららいーッ!!」

 

 

 

 ライコウの目が赤く光り輝き、再び襲い掛かる。

 アヤシシが角を突き立てて応戦しようとした──その時だった。

 

 

 

「ららいーっ!!」

 

 

 

 ライコウの首元に、稲光の如き勢いで何かが突っ込んで来る。

 それは、雪の地面に雷獣を押し倒すと、すぐさま首に牙を突き立てて噛みつく。

 鮮やかな黄色の体毛に、雲の如き髪。そして、鋭い二本のキバ。

 見間違うはずもない。

 ライコウに噛みついて押し倒したのは──()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 しかし、伝説のポケモンとも言われる存在がそう何体も現れるはずがない。

 メグルは思わず目の前の光景を疑う。

 

「ら、らい──」

 

 そしてとうとう、2匹目が1匹目の首の肉を食い破る。

 鮮血の代わりに噴き出したのは──黒い靄のようなものだった。

 たちまち、目が赤かった1匹目の身体は、霧のように霞んでいき、そして消えていった。

 後に残っていた2匹目は気高く吼えてみせる。

 

「ラ、ライコウが2匹……!?」

「ららいー」

 

 そして踵を返すと──ふわり、と音も立てずにライコウはその場から去っていく。

 その光景を、メグルだけではなく、アルカ、そして発電所の職員たちも目の当たりにしており、困惑するしかなかった。

 

「1匹目は影も形も無く消えた……じゃあ、2匹目が本物……ってことだよな……!?」

 

 では、1匹目は何なのか。

 当然の疑問が湧いて出て来る。

 噴き出したのは鮮血ではなく黒い靄。

 そもそもモンスターボールの中に入らなかった。

 何より、極めて凶暴性が高く、手が付けられなかった。

 まともな生物ではないことは確かだ、とメグルは考える。

 しかし、考えている場合ではない。

 

「メグル!! 救助、救助!!」

「あ、悪い!! 急ぐわ!!」

 

 メグル達はすぐさま、職員たちを近くの町まで運ぶべく、アルカの元へと駆け寄っていく。

 怪我人はアヤシシの上に乗せ、何とかメグル達はアサギシティまで連れていくのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──数時間後、サイゴク地方にて。

 この寒気ではとても外に出る事は出来ないため、リモートで緊急の大合議が行われていた。

 出席しているのは、当然キャプテン全て。

 内容は、ベニシティ・ひのたま島に突如として2匹も現れたエンテイの件だ。

 無論、おやしろの石像になるような伝説のポケモンの登場はその場にいた全員を戦慄させることになった。

 しかも該当の個体は極めて凶暴性が高く、町を火の海に変えんとばかりの勢いだったが、早急にブースターが攻撃、更にハズシのギャロップが特性・もらいびで炎技を吸い上げて被害を軽減。

 そのまま戦闘が開始された。しかし──

 

「ヌシ様と二人掛かりで食い止めてたんだけど……突然2匹目のエンテイが出てきて、1匹目をあっさりと倒しちゃったのよねえ!」

「2匹目は、暴れる事も無く早急に立ち去った。では、1匹目は何だったんスかねえ?」

「首の動脈を食い破って血ではなく黒い何かが噴き出したとあったが……これは液体か?」

「いいえ。その周囲を調べてたけど、跡形も無くなってたわ。血じゃあないわね。何かの気体かしら」

 

 ──ハズシは、珍しく疲れた顔で「やんなっちゃうわね、何なのかしら」と続ける。

 それに反応して、ユイは頷くとニュース資料をまとめたものを画面に表示させた。

 ジョウト地方から入った速報で、発電所が伝説のポケモン・ライコウに襲われたというものだ。

 

「……ジョウト地方でも、流れのトレーナーがライコウ相手に大立ち回りを演じたみたいなんだから。でも顛末はハズシさんの所と同じ」

「この寒冷現象と何か関わりがあるのですー?」

 

 ヒメノは首を傾げながら、胃薬を飲んだ。まだ胃潰瘍が完全に塞がっていないのである。哀れ。

 

「無い、とは言い切れないっしょ。エンテイ、ライコウと来たら……後残るのは1つしかねぇっしょ」

 

 一方、その原因とも言えるノオトはその隣で難しそうに言った。その場にいる誰もが、この後の展開は予想出来ている。

 

「……北風の化身、スイクンでござるか。いずれにせよ、伝説のポケモンとは厄介極まる」

 

 筆頭キャプテンのキリは「今の所憶測でしかないが」と続ける。

 

「──今回暴れているのは伝説のポケモンの”偽者”と考えるのが妥当でござろう」

 

 そして、その偽者に当たるのは目を赤く光らせて暴れていた1匹目だ、とキリは断じる。

 

「血を流さなかった辺り、本当にその可能性は高そうね。そして当然、自分と同じ顔が狼藉していれば、あの気高い伝説のポケモン達は──キレるわよねえ」

「ちゃあんと、本物が勝ったってことよね。やっぱり上っ面の力だけ真似てるって感じなのかしら。でも、だとしたらあの偽者って何なんだろう? メタモンじゃないし」

「いずれにせよ、好き勝手暴れたツケはきっちり払ったってことなのですよ。不敬極まるのですよ。まさに天誅ってヤツなのですよー」

 

 そこまで言い終わったところで、ヒメノの顔色が何故か変わる。

 

「誅? チュー? チューはネズミで、イッカネズミの技はネズミざんで……ネズミざんは、ネズミざんだけは……うっ、ヒメノの胃と十二指腸に穴が……」

「姉貴? 姉貴ーッ!?」

 

【特性:ライトメンタル】

 

 ばたり、と彼女は目を回してそのまま倒れてしまった。すぐさま隣に座っていたノオトが彼女を担ぎ上げる。

 以前のお灸が効き過ぎてしまったのか、退院しても尚ヒメノはかなり情緒不安定になっていた。

 恋愛そのものがトラウマになってしまっただけではなく、それを想起する単語を聞いたり自分で言ってしまっただけで、このように連想ゲーム方式で自爆し──倒れるようになってしまったのである。

 今まで好き放題していたツケが回って来たのか、それとも失恋が余程ショックだったのか、はたまた両方か。

 

「姉貴しっかり!! すんません、この人ちょっと最近アレなんで……寝室にブチ込んでくるッス」

「……すまないノオト殿」

「大丈夫なのかしら、あの子。退院してからも、ずっとあんな感じじゃない」

「大丈夫じゃないのは元からなんだから」

「お灸が効き過ぎてしまってな……まあ良い。ヒルギ殿の意見を聞きたい」

「……今すぐ調査に、と言いたいところだがこの豪雪ではそれも出来まい。各々、自分の町を守るので精一杯だ」

 

 約一名は自分のメンタルを守るので精一杯なキャプテンも居るのであるが。

 

「ライコウ、エンテイの動向を見守る必要があるだろう。奴らも偽者の発生源を探っているはずだ。奴らを追うことが、今回の事件の裏を見つけ出すことに繋がる」

「とはいえ、あいつらの速度は並みのポケモンのそれじゃあないわ。追いかけるのは難しいんじゃない?」

「そして問題はまだ1匹、観測されていない伝説のポケモンが居ることだ」

「まあ、あの二匹が居て、スイクンが居ないってことはないわよねえ。偽者がどっかで暴れているのかしら」

 

 ──水の上を歩くようにして移動し、不浄の湖も一瞬で澄ませる伝説のポケモン。

 その名はスイクン。

 すいしょうのおやしろにも石像として祀られているポケモンだ。

 

「……いいや、もしかすると、もう既に暴れているのかもしれない」

 

 ヒルギは嫌な予感がする、と言わんばかりに眉を顰める。

 スイクンは、水ポケモンだが、同時に氷の力を操る権能も併せ持つ。 

 何故ならば、スイクンが司るのは──北風。

 水を浄化すると共に、凍てつく冬を運ぶとされているのである。

 

「……まさか寒波を起こしたのが、スイクンの偽者とでもいうのではあるまいな」

「そう思いたくはないが……そうだとしてもおかしくない、ということだ。例え偽者でも、相手は伝説のポケモンだからな」

「サイゴクだけじゃなく、他の地方を巻き込んでの災害よ? スイクンの力だけじゃあ無理な気がするわ」

「……だと良いのだがな」

「あっ、続報入った! って……あー……」

「どうしたのよ、ユイちゃん」

「いや、やっぱりね、って感じで」

 

 そう言って、ユイがパソコンの画面共有でSNSを表示させる。

 曰く、ライコウと戦って抑え込んでいた凄腕トレーナーなのだというが──そこにはメグルの顔が映っていたのだった。

 

 

 

「……厄介事に巻き込まれることに関しては他の追随を許さないんだから……相変わらず」

キャプテンの中で一番好きなのは?

  • 岩使い・キリ
  • 格闘使い・ノオト
  • 霊使い・ヒメノ
  • 炎使い・ハズシ
  • 電気使い・ユイ
  • 水使い・リュウグウ
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