ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

137 / 225
Act2:沸騰する闘気

 ※※※

 

 

 

「小さい頃、リュウグウさんの下に預けられたことがある。それで、まだイーブイだった頃のシャワーズともよく遊んでいた」

「ぷるるるるー」

「最初は噛まれていたが、だんだん懐かれるようになった。何が切っ掛けだったか……もう忘れた」

「ぷるる!?」

 

 シャワーズはショックそうに顔を引きつらせると「何で忘れてるの、バカ!」と言わんばかりにぐいぐい、と服を噛んで引っ張る。

 

「忘れたって……」

「マイペースな御方でござるな……」

「ぷるるー」

(だが、恐らくあの実力もシャワーズは買っている)

 

 おやしろまいりを終えたトレーナーならば、シャワーズと途中で相対している者も中には居る。だがそれはポケモン6匹で漸く対等に戦えるということが殆どだ。

 しかし、先のバトル、セキタンザンは、1匹だけでシャワーズと互角だったのである。無論、両者ともにどこまで本気を出していたか分からない。だが、あのシャワーズ相手に一歩も引かないヒルギの指示は、それだけの自信があってのこと。

 

「ところであんた達こそ何者だ? 俺は名乗った」

「ああ済まねえ! オレっちはイッコンタウンのキャプテン・ノオトッス! 多分、ヒルギさんがおやしろまいりしてた頃はまだキャプテンじゃなかったッスからね」

「……イッコンのキャプテンは霊能力者が務めると聞いていたが……お前、霊能力は使えるのか?」

「うぐっ……オレっちは使えねえッスけど、姉貴が」

「アケノヤイバはキャプテンを二人、同時に選定した。格闘タイプの扱いに長けたノオト殿と、霊能力に長けたヒメノ殿の二人だ」

「そういうあんたは……クワゾメの忍者か。ウルイさんは元気か?」

「……父は病で亡くなったでござるよ。3年ほど前に」

「──!」

 

 ヒルギは目を見開く。

 そして──どことなくショックを受けた様子で「……そうか」と呟くのだった。

 

「……拙者は後継者のキリ。現在はリュウグウさんに代わり、筆頭キャプテンを務めている」

「そうか。5年も経てばサイゴクも変わるな……サイゴクのキャプテンの仕事は過酷だが、こうも早くに入れ替わっているとは」

「実は、シャクドウのキャプテンのショウブさんも……昨年、ポケモンに襲われて亡くなってて」

「……」

 

 がくり、と膝を落とすと──彼は少し落ち込んだ様子で息を吐いた。

 

「……という事はハズシさんも」

「いやハズシさんは元気でござる、ピンピンしてるでござるよ」

「勝手に殺すなッス!!」

「何だ……驚かせるな」

「こっちが驚いたッスよ」

 

(この男……悪い人じゃねーんスけど、ひょっとしなくてもドが付くマイペースか……)

 

「ところであんた、さっきは仮面を外していたな。何故今は付けている」

「詮索しない方が身のためでござるよ」

 

(……デリカシーとかも無さそうッスね……)

 

「後、お前達……距離が近かったがデキているのか?」

 

 サクッと苦無がヒルギの頭に刺さる。

 血を噴水のように噴き出しながらも、ヒルギは納得したようにうなずいた。

 

「分かった、詮索はしない」

「……マジでデリカシーとか無いんスねコイツ……」

 

 そして此処まで、一切表情を乱さない鉄面皮っぷり。最初は冷たい男だと思っていたが、単純に天然なだけなのだろうと二人は考える。

 しかし同時に、シャワーズに懐かれるだけの器の持ち主で、尚且つバトルも強い。

 これだけ見れば、キャプテンとしての適性は、オーディションに来ていた有象無象よりも高いと言える。

 

「ヒルギ殿。突然済まないが……貴殿なら後継者には相応しいと我々は考えている」

「そうッスね! シャワーズもこんなに懐いているし!」

「待て。何故勝手に後継者がどうとかそういう話になっている」

「え? 後継者になりに来たんじゃねーんスか? オーディションの事聞いてたじゃねーッスか」

「オーディションとやらも、果たしてシャワーズの御眼鏡に適う相手がいるのか見に来ただけだったからな」

「ぷるるっ!?」

「まあ、このお転婆は構わず全員突っぱねてしまったようだが」

「ぷるるー……ッ!」

 

 鳴き声を上げながら、拗ねたように彼女はそっぽを向いてしまった。

 傍から見れば、彼女には最初からヒルギしか選択肢が無かったようにしか見えない。このマイペース男はそれが分かっていないようだった。

 

「じゃあ、帰ってきたのは……」

「リュウグウさんが亡くなったと風の噂で聞いたから帰ってきただけだ。渡航制限の所為で死に目にも会えなかったからな」

 

 ロクにサイゴクのニュースも入って来ないようなところに居たからである。サイゴクに何が起こったのか、正直ヒルギはまだ分かっていない。テング団がこの地方を襲ったのは知っているが、リュウグウがどうして死んだのかや、事の顛末も分かっていない。

 

「それについては話すと長くなるんスけど……」

「しかし、リュウグウさんはきっと、多くの人やポケモンを守る為に命を張った。それだけは分かる。だが、俺にも同じ事が出来るかと言えばそうじゃない」

「何故またそのように。ヌシに好かれている時点で──」

「俺は冒険家、フィールドワーカーだ。肝心な時にサイゴクに居ないかもしれない人間に、キャプテンなど任せるなという話だ」

 

 彼は俯く。少なからず、一番サイゴクが大変な時に居なかったことへの負い目があるようにノオトには見えた。

 

「そもそも……お前達は他所のおやしろのキャプテン、ましてや御三家と対立する旧家二社だ。それがセイランの心配をするとはどういう風の吹き回しだ」

「そんな時代は既に終わったでござる。旧家二社も御三家も関係ない。五社全てによる結束が拙者の目指すところ」

「……あんた、見掛けによらずなかなか熱いヤツだな」

「それに! ヒルギさん以外、今このセイランでキャプテンが出来る人は居ねーッスよ! 頼むッス!」

 

 頭を下げて頼み込むノオト。

 そんな彼を見て、ヒルギは──ぽつり、と一言。

 

「お前は……蒸し暑いな」

「それって褒めてるんスか? 貶してるんスか……?」

 

 

 

「ぷるー……ぷるるるー……」

 

 

 

 すりすり、と頭をヒルギの足に擦りつけるシャワーズ。

 彼女からもキャプテンになってほしい、と懇願しているようだった。

 見知らぬ人間相手ならいざ知らず、旧知のポケモン相手ならば仕方がない、と言わんばかりに彼はシャワーズを抱き上げる。

 

「ぷるる?」

「……仕方ない。シャワーズの言う事だ。考えてやらない事もない」

「本当ッスか!?」

「シャワーズの願いだからだ。条件付きでなら了承してやらんこともない」

 

 2つだ、と彼は指を二本立てた。

 

「風の吹くまま未開の場所の調査をするのが仕事だ。おやしろを不在にすることもあるだろう」

「まあ、副業やってる人らも居るし、その辺は良いんじゃねーッスか? 代わりにおやしろを守る人間が必要かもッスけど……リュウグウさんの家の人間がやってくれるっしょ。おやしろまいりのオンシーズンじゃなければ問題ねえと思うッスよ」

「……ふむ。そう考えると意外と両立できるかもしれないな」

 

 やるからには、出来るだけ短く戻って来れるように尽力するが、と彼は続けた。

 

「だがそれ以上に、俺が重要視するものがある」

「まだあるんスか……」

「……ヌルいヤツの言う事は聞かないことにしている」 

 

 そう言うと、彼はモンスターボールをノオトに突きつけた。

 

「頼んできたからには、()()()()()()()()()だと思って良いんだろうな?」

「……成程、そう言う事ッスか」

「ノオト殿。此処は拙者が行こう」

「いや、オレっちに任せるッス、キリさん」

「しかし──」

 

 その後に続くであろう言葉を、彼はさえぎる。

 

「オレっちだって、強くなってるんスよ!」

「くわんぬ」

 

 飛び出すのはルカリオ。それが、セキタンザンと相対し構えを取る。

 

「ルカリオ、か。俺は……変わらず相棒で行こう」

「しゅぽぽー!!」

 

(セキタンザン……もとい進化前のタンドンはキビ周辺の限られた場所に生息するポケモン……! 澄み切った水と食する鉱石の性質の違いから、原種とは違う進化を遂げた……!)

 

 石炭を食すだけでなく、鉄鉱石も食すことでその身体は水蒸気に耐えうるだけの頑強さを手に入れた。

 まさに生ける蒸気機関車とも言えるポケモンだ。

 キリが見守る中、突発的にバトルが始まる。

 

「では──始め!!」

 

 ルカリオが”はどうだん”をチャージすると同時に、セキタンザンが”ハイドロポンプ”を上空目掛けて放つ。

 噴水のように吹き上げられたそれは、シャワーのようになりルカリオを、そしてセキタンザンをも狙う。

 当然、それくらいならばルカリオにとっては苦ではないダメージだ。しかし問題はセキタンザンである。

 水を取り込んだ彼の身体からは一気に水蒸気が巻き起こり、目の色が変わる。

 

【特性:じょうききかん】

 

「ッ……な、何スか!?」

「……特性:じょうききかん。水タイプの技を受けた時、セキタンザンの速度は沸騰する」

 

 目にも止まらぬ突貫がルカリオを襲う。

 自分のハイドロポンプを雨にして降らせることで、自ら特性を発動させたファインプレーに傍目から見ていたキリは思わず舌を巻く。

 

(この技量の時点ですでにキャプテンの中堅以上……ヒメノ殿とも互角にやり合えるだけの力がある。しかし、まだ序の口……!)

 

 残像が出来る程の素早さでセキタンザンは高速で動き回り、ルカリオの周囲を取り囲み、何度も何度も何度もぶつかっていく。

 腕でガードすることで防ぐルカリオだが、徐々に態勢が崩れていく。

 

「……さぁて、ギアを1つ上げていくぞ。”SLブレイク”」

「見切った!! ルカリオ、”はどうだん”!!」

 

 セキタンザンが突っ込んで来るその瞬間、地面を蹴り上げてルカリオは飛ぶ。

 二人の息はこの瞬間、ぴったりだった。

 動きを先読みし、飛び上がったルカリオは、そのまま”はどうだん”を背中に放つ。

 後ろから攻撃を受けたセキタンザンは勢いよく吹っ飛んで行き、頭から突っ込んだ──しかし。

 

「突沸的だな──だが、俺のセキタンザンは頑丈だぞ」

「しゅぽぽぽーっ!!」

「鉱山で貨物を引っ張って運ぶセキタンザンの馬力をナメて貰っては困る」

「くっ……!」

 

 SLブレイクが直撃していれば、ルカリオは倒れていた。

 度重なる突貫攻撃で、既に体力が削られているのである。

 幸い、セキタンザン自身、攻撃力が然程高いポケモンではない。

 しかし、持ち前の耐久力を盾にして被弾を気にせずに突っ込めるのが最大の強みなのだ。

 現に今の”はどうだん”は、セキタンザンに然程ダメージを与えられたとは言い難い。

 

(とはいえ、速度が限界まで上がっているはずのセキタンザンの攻撃を見切るとは……次は通用しないか)

 

(次にあの技が来たら、”はどうだん”で弾幕張って叩くッス……!)

 

「少し、熱くなってきたな。セキタンザン、”ハイドロポンプ”!!」

 

 セキタンザンが水を思いっきり口に含み、放出する。

 それを一度は躱すルカリオだが、一撃目はあくまでも威嚇射撃。

 本命である偏差射撃が避けた所に飛び、ルカリオを吹き飛ばす。

 

「諦めろ。こっちは既に素早さが限界まで上昇している。そのルカリオでは、俺のセキタンザンに追いつけない」

「……追いつけねえなら、追いつけるようにするまでッスよ」

「ならば──その前に落とす。SLブレイクでトドメを刺せ」

「しゅぽぽぽーっ!!」

 

(SLブレイクは、能力が上がっていればいるほどに威力が跳ね上がる炎技……当たれば助からんぞ、ノオト殿!!)

 

 全身を炎に包み、突撃するセキタンザン。

 弱点技を受ければ、間違いなくルカリオは斃れる。

 しかし、そうなることはノオトも分かり切っていた。

 セキタンザンが迫ったその瞬間、ルカリオの姿が消える。

 

 

 

「──”しんそく”!!」

 

 

  

 隠し持っていた奥の手。

 神がかった速度で、セキタンザンの背後に回り込んだルカリオは、思いっきりセキタンザンの背負った石炭を蹴り飛ばす。

 エネルギー源とも言える石炭の山は、崩れてしまうと一気に弱体化してしまう。それでも普段は、セキタンザン自身の熱によって溶解し、固められているのだが──それすらも上回る強烈な一撃だった。

 

「セキタンザンの素早さを超えた!? な、何たる心眼でござるか……!」

「そいつの弱点は、オレっちもルカリオも知ってるんスよ! キビ周辺はよく行くッスからねぇ!! 進化前のトロッゴンがうようよいるッスから!」

「……お前、やっぱり蒸し暑いな」

 

 だが、弱体化したと言っても、今まで限界まで上昇していた素早さが低下しただけに留まる。

 これで漸くフェアになったとも言える状態だ。

 

(再び”じょうききかん”を発動させる暇はなさそうだな……だが、相手も奥の手を切った。後はぶつかり合いだ)

 

(ヤツの特防は防御に比べれば低い! トドメを刺すなら特殊技しかねぇッス!)

 

「セキタンザン──”フレアドライブ”!!」

「ルカリオ、”はどうだん”!!」

 

 全身を炎に包み込み、突貫するセキタンザン。

 一方、ルカリオは限界まで波動を溜め込み、突っ込んできた敵目掛けてぶつける。

 だが、それさえも押しのける勢いで突っ込んでいくセキタンザン。

 両者は鼻先に迫るまで競り合い続け──炎と波動がぶつかったことで、爆発が巻き起こった。

 

「ッ……!!」

「……どうなったでござる!?」

 

 セキタンザンも、そしてルカリオも地面に倒れ込む。

 両者ともに睨み合いながら、立ち上がろうとする。

 しかし。

 

「しゅ、しゅぽぽぽ……」

 

 先に立ち上がったものの──そのまま寝転げてしまったのは、セキタンザンの方だった。

 一方のルカリオは、フラフラではあったものの、右腕を突きあげ、そのまま立ち上がってみせる。

 

「……ゆっくり休めセキタンザン。まだまだ、俺達も伸び代があるようだ」

「ッ……しゃあ!! やったッスよ、ルカリオ!! オレっち達、勝ったッス!!」

「ガォン!!」

 

 ルカリオの下に駆け寄るノオト。

 互いに喜び合う姿を見ながら──ヒルギはキリの方を見やる。

 

「……約束通りだ。キャプテンにはなってやる」

「かたじけない、ヒルギ殿。だが……本当に良かったのでござるか? こんなに急で」

「本心では分かっていた。こうなるかもしれない事はな。だが……踏ん切りが付かなかった」

 

 それを吹っ切らせてくれたのがノオトだ、とヒルギは語ってみせる。

 

「俺よりも小さいのに此処まで強いヤツが居る今のサイゴクは、なかなか面白そうだ。しばらく居てやってもいい」

「ヒルギさん……!」

「だが、条件がある」

「え?」

「言ったはずだ。俺は本来、この後にもう1つ調査の依頼をされていた」

 

 彼は語る。研究機関からの依頼で未開の地や、危険地帯の調査を行うのが仕事である、と。

 それを全て終えなければ、キャプテンになることはできないのだという。

 

「ま、確かに引き継ぎとかあるだろうし……すぐは無理ッスよね」

「安心しろ。任されている仕事は後1つ。それさえ済ませれば良い。俺はフリーランスだからな」

「その仕事というのは?」

 

 

 

「──()()()()の調査……だ」

 

 

 

              ──断章Ⅱ「水晶を継ぐ者」(完)




──次回より、第二部「クリア・クリスタル編」、開始!!

※ついでにアンケートを置いておきます。

キャプテンの中で一番好きなのは?

  • 岩使い・キリ
  • 格闘使い・ノオト
  • 霊使い・ヒメノ
  • 炎使い・ハズシ
  • 電気使い・ユイ
  • 水使い・リュウグウ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。