海自隊員93人処分、架空取引の川崎重工と癒着 私物受け取り13人
防衛省は30日、海上自衛隊の艦船修理を担う川崎重工業が架空取引で裏金をつくった問題で報告書をまとめた。海自部隊は三菱重工業など各社と癒着し備品の提供を受けていた。私物を受け取った隊員も計13人に上った。海自トップの斎藤聡海上幕僚長を含む自衛隊員93人を処分した。
川崎重工は海自の潜水艦を受注している。下請け企業との間で架空取引をして資金をためていた。2018〜23年度でおよそ17億円にのぼる。乗組員らの物品購入代や飲食代を負担していた。
元検事らが独立した立場で調べる「特別防衛監察」の報告書を発表した。問題の原因として「海自の艦船部隊は必要な質・量の工具類や用備品などを正規の調達・補給手続きによって必ずしも適時に取得できない状態に置かれてきた」と記した。
報告書によると、乗組員らは必要な工具や艦内用品などがあると、海自側で調達せずに川崎重工や三菱重工、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)、佐世保重工業から提供を受けた。実際には実施しない架空の作業を発注し、そこで浮いた資金を原資にした。
こうした癒着は隊務とは関係ない私的な物品供与にまで発展した。一部の隊員は川崎重工の工事担当者に要望し、ゲーム機やワイヤレスイヤホンなど私物をもらっていた。総額は140万円ほどで、なかには合計50万円相当の私物を受け取った隊員がいた。
川崎重工の職員が自ら使う私物も架空取引で得ていた。調査では「乗組員による要望品だと虚偽の説明をして責任を転嫁している可能性が相当程度ある」とも記した。
防衛省は川崎重工がためた裏金17億円のうち、どの程度が自衛隊員向けに使われていたかは今回の監察で明らかにできなかった。
防衛省は30日付で指揮監督や注意義務違反として自衛隊員93人を懲戒処分にした。訓戒は75人、注意は17人が受けた。
斎藤氏の扱いについては減給10分の1(1カ月)と決めた。手続きの改善などをせず「防衛省・自衛隊に対する国民の信頼を失墜させた」と認定した。
中谷元防衛相は海幕長への指導が不十分だったことを踏まえて増田和夫次官も口頭で厳重注意した。
私物を受け取った隊員は今後、自衛隊員倫理審査会の審議を受けて処分する方針だ。
防衛省は三菱重工に同社がまとめた再発防止策の着実な実行を求めた。川崎重工とJMUには厳重注意、佐世保重工には注意をした。
斎藤氏は30日の記者会見で「国民の期待と信頼を大きく損ない、改めて深くおわび申し上げる」と陳謝した。
中谷氏は記者団に「決して許されることではない」と語った。「再発防止策を着実に実施し、海自のみならず省全体として実現する」と強調した。
川崎重工は「調査結果ならびに厳重注意措置を重く受け止め、実効性の高い再発防止策に徹底して取り組むことで信頼回復に努めてまいります」とのコメントを出した。25年4月までに不正のあった神戸造船工場長、修繕部長ら43人を処分したと明らかにした。
JMUは「処分を重く受け止めるとともに再発防止に社をあげて取り組んで参ります」と発表した。三菱重工は再発防止策を進めていくと説明した。
一連の問題は24年2月に大阪国税局が川崎重工に対して架空取引を指摘したことで発覚した。同年7月から特別防衛監察を始め、川崎重工以外にも防衛関連企業100社に対して架空取引がないか自社点検を要請した。