創作活動が行き詰まったときの処方箋
最終更新日:2025年11月9日
noteに限らず、ブログやウェブサイトでコンテンツを公開していると、行き詰まりを感じることは少なくありません。
現在、Googleは検索結果に「AI概要」を導入しており、その影響で一般的なブログやウェブサイトへのトラフィックは大きく減少しています。
かつてのGoogleであれば、トラフィックが低下しても、ページを修正・更新することで回復が見込めました。
しかし近年はスポンサーサイトが上位を占め、順位が多少上がった程度では回復しにくくなっています。さらに、ページを修正してもランキングに反映されないケースが増えており、従来の改善サイクルが機能しづらい状況にあります。
「不安」というエネルギー
2010年に開設したウェブサイトは、時期にも恵まれ、1年ほどで収益化が可能になりました。その後、ドメインを取得して WordPressへ移行し、収益も拡大。給料を上回る収入が得られるようになり、独立して現在に至ります。
しかし、2023年以降、Googleの検索結果が大きく変化し、AIの導入も相まって、サイトのトラフィックは激減、収益も大幅に落ち込んでいます。
独立してからは、収益とトラフィックの増減ばかりを気にするようになりましたが、収益やトラフィックは成果の可視指標にすぎません。
Deci & Ryan(1985)の「自己決定理論」では、動機づけを維持する要素として「自律性・有能感・関係性」が挙げられており、収益やトラフィックの減少はそのうちの「有能感(competence)」の低下を意味します。
つまり、成果が上がっていたときの「俺すげぇ感(自己効力感)」が叩きのめされ、方向性を見失ってしまうのです。
トラフィックが比較的安定している時期でも、増減は常にあります。
減少幅が大きかったり、減少傾向が続くと、現状に不安を覚えて対策を講じます。
この不安とは「不確実性の上昇」であり、その不安をエネルギーとして、現状を打開するための変革行動が起こります。
皮肉なことに、右肩上がりで調子の良い時期には「変革」は起こりません。
結果が自己効力感を高め、承認欲求を満たすため、自律性と有能感の充足による「安定」の状態が形成されます。
この安定は不安とは異なるベクトルで働き、現状を維持するエネルギー源となります。
行き詰まり
創設時は「不安」を原動力として改善を重ね、成果が上がってくると「安定」のために現状維持を図ります。しかし、安定した状態は「停滞」であり、「この状況がいつまで続くのか」という不安を内在しています。
結果として、この将来不安が、成功の惰性化を防ぐ自己調整機構として機能します。
構造的に見れば、安定は不安期の中に生じる一時的な「間」にすぎず、改革と停滞は常に循環しているのです。
一方で、改革によって成果が上がらない場合でも、心理的には不安と安定の循環が続きます。
結果が出ないことに現状への不安を抱き、その不安をエネルギーとして打開策を考えます。
そして、何らかの案を思いついた瞬間に「安定」が訪れます。しかし、結果が伴わないため、再び不安が生じ、安定を求めて立案の実現に着手するのです。
ただし、不安と安定の循環は普遍ではありません。
不安は事態を打開する強いエネルギーに転換できますが、そのためには、因果の可視性(成果の確認)と期待可能性(行動すれば変化が起こるという信念)という条件があります。
改善しても成果がなく、改善による変化を期待できない状況下では、不安は改革エネルギーに転換されず、閉鎖系の自己消耗エネルギーへと変質してしまいます。
この状態こそが、行き詰まりです。
処方箋
コンテンツの内容やサイトの構成を改善してもトラフィックは向上せず、Googleの検索結果ページはスポンサーサイトや SERP機能(「他の人はこちらも質問」や「関連検索」など)で埋め尽くされています。
Googleに関しては、 もはや従来のSEO(サーチエンジン最適化)は意味を成さないと判断して良い状況です。
この現状下で、世界中の中小ウェブサイトが行き詰まり、閉鎖に追い込まれています。一時的な減収であれば再起を図れますが、すでに2年以上、因果の可視性と期待可能性が得られない状態が続いており、SEOのコミュニティでは、ここ数年で多くの常連が姿を消しました。
実際、行き詰まった状態からの脱却は容易ではありません。
収益化している場合、短期的に従来の収入を確保するのは極めて困難です。まず、収益が得られないことを前提として、収入源を別に確保する必要があります。トラフィックを獲得するための投資は、費用対効果が悪く、推奨できません。
そして最大の障害は、創作活動を維持するエネルギーである承認欲求を満たせないことです。成果を確認できないため、ガス欠の状態で走り続けるような状況に陥ります。さらに、不安が常在しているため、現状への疑念や疑問が短サイクルで浮かび上がり、行動の足を重くしてしまいます。
対策としては、創作活動の基盤そのものを変化させるしかありません。
収益化や承認欲求を満たすための媒介としてではなく、収益も閲覧数も未知数だった創設期への原点回帰です。
これは、これまでのトラフィックや収益といった「外的成果」ではなく、文章表現の洗練やサイト構造のブラッシュアップなど「内的構造」への転化であり、内部的改善の可視化が、新しい「成果の確認点」となります。
これらの再定義は、心理学的に見ると認知的再構成に近いプロセスです。
既存の意味づけを中断するための抑制エネルギーと、新しいパターンを組み立てる探索的エネルギーが同時に必要になります。
この二重負荷によって、通常の創作活動よりもエネルギー消耗率が極端に高くなりますが、不安を構造内に常駐させたまま運転可能にするためには避けられません。
再定義後は、従来のように遠い到達点を見据えるのではなく、完了可能な最短の目標に向けて作業を進めます。到達点を意識しすぎると、不安による自己消耗エネルギーによって手が止まってしまいます。
行き詰まっていると、漠然と同じ思考を反芻する割に答えは出ず、作業も進みません。特に抑制エネルギーと探索的エネルギーがせめぎ合っている状態では、何も進んでいないのに妙に疲れます。
しかし、これは打開策を模索するプロセスの一部です。
この状態は、いわば「無限の徒労」を受け入れ、その内部に主体的な意味づけを与えようとしたシーシュポスの構造に通じています。
不条理を前提としながら、それでもなお反抗し続ける中に、カミュのいう「喜び」が含まれているのかもしれません。
ちなみに、私の座右の銘は「駑馬十駕」です。


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