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注目の「衛星コンステレーション」とは? 背景や仕組み、代表的な企業、メリットやビジネス分野を紹介

最終更新日:2025年11月17日

【この記事でわかること】

・衛星コンステレーションとは何か(定義・仕組み)
・世界(Starlink / OneWeb / Amazon Kuiper)の比較
・日本の衛星通信の最新動向
・メリット・課題・未来展望

はじめに


従来、宇宙に関する産業は、日本のJAXAやアメリカのNASAが代表されるように、国が主導する事業がほとんどでした。しかし最近では、民間企業が人工衛星やロケットを打ち上げ、それをもとに新たなサービスが提供されるようになってきました。
 
中でも注目されているのが「衛星コンステレーション」。多数の人工衛星を一体的に機能させ、衛星インターネットなどの新たなサービスを実現する技術構想を指します。

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低軌道で衛星コンステレーションが一体的に機能するイメージ(IISEで作成)

近年は、低軌道(Low Earth Orbit: LEO)に何百機、何千機もの大規模な衛星コンステレーションを築くことで、いままでにない新しい価値や機能が市場に生まれることが期待されています。例えば、全地球規模でつながるインターネット通信や、より詳細な地球の観測など、私たちの生活やビジネスに対する多大な影響をもたらすと言われています。
 
この記事では、「衛星コンステレーションとは何か?」その基本的な概念から、利点、課題、そして今後の展望について説明します。

衛星コンステレーションとは何か

衛星コンステレーションとは、複数の人工衛星をネットワーク化し、地球全体をカバーする仕組みを指します。

世界における人工衛星の今

人工衛星は現在、通信、地球観測、科学研究、そして軍事目的など多様な用途で利用されています。また国だけではなく企業、さらには非営利団体までもが、宇宙に人工衛星を送り出しています。
 
それぞれの衛星は、特定の目的や機能を果たすために設計され、それぞれが独自の軌道に配置されています。近年では、その目的や機能が多様化し、多種多様な人工衛星とその使われ方が目立つようになってきました。特に近年は衛星インターネットの需要増加に伴い、通信用途の人工衛星が急増しています。

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人工衛星の種類

 人工衛星にはその目的により、様々な種類が存在します。

「地球観測衛星」は光学センサーやレーダーなどのセンサーを搭載し、自然災害の監視、環境調査、資源探査などに用いられます。天気の観測や気象データの収集に活用される「気象衛星」もこの一種です。地球上の自然現象だけでなく人間の社会活動も観測できるため、「リモートセンシング衛星」とも呼ばれたりします。

近年注目の集まる「通信衛星」は遠隔地間でのデータ通信を可能にするもので、インターネット接続、テレビ放送、無線通信などに用いられています。

「測位衛星」は複数の人工衛星から地球上の受信機へ電波を発信し、到達した時間で自分の位置や正確な時刻を取得できるもの。米国のGPS衛星や日本の準天頂衛星「みちびき」などが該当し、カーナビやスマートフォンに活用されています。

国ごとの保有数

国ごとの衛星保有数については、アメリカが商用、軍事、科学研究を問わず多くの衛星を打ち上げており、2022年12月時点で4511機と、その数で圧倒しています。

次いで中国が586機、英国が562機、ロシアが178機となりますが、日本やインド、カナダも続いており、これらの国々もまた高度な技術力を有するプレイヤーとなっています。

またヨーロッパ各国が共同で運営するESA(欧州宇宙機関)を始め、多国籍で協力して衛星を保有するケースも増えており、最近の特徴とも言えそうです。

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地球の軌道上を回る衛星の数、トップ10(2022年12月31日時点、Union of Concerned Scientistsの公式サイト「UCS Satellite Database」をもとにIISEで作成)

衛星コンステレーションの仕組み、歴史と背景

仕組み

衛星コンステレーションは、多数の衛星を同じ軌道上に配置し、一体的に運用するシステムです。地球全体がカバーできるため、通信や観測サービスを効率的に実現できます。コンステレーション(constellation)とは英語で「星座」を意味しており、その名の通り、点在している衛星が一つのまとまりを成しているイメージです。

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衛星コンステレーションのイメージ(IISEで作成)

衛星のサイズや数に定義はありませんが、近年は低軌道(高度200km~2000km)に何十、何百、何千機と衛星を打ち上げて地球全体を網羅する、“低軌道かつ大規模な”衛星コンステレーションが注目を集めています。

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低軌道で大規模な衛星コンステレーションを構築するイメージ(IISEで作成)

赤道上の高軌道(高度3万6000km)に打ち上げられた衛星は、地球の自転と同じ周期で一周するため、地球上からだと止まって見えます(そのため「静止衛星」と呼ばれます)。また地球への照射範囲も広いため、数機で地球をカバーできます。

一方で低軌道の衛星は、地球からの重力の影響をより強く受けるため、落下しないよう高軌道に比べて倍以上の速さで周回しており、地球の上空を通過していきます。また地表に近いがゆえ、衛星から照射できる範囲も狭いです。

そのため低軌道の衛星コンステレーションでは、地球全体をカバーするために数十~数千機、場合によっては万単位もの衛星を必要とします。そしてある地点の上空を1つの衛星が通り過ぎたら、次の衛星に切り替えることでその地点への通信を途切れないようにするなどして、多数の衛星を一体的に動作させるのです。

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衛星コンステレーションが多くの衛星で地表をカバーするイメージ(IISEで作成)

歴史と背景

衛星コンステレーションとは「多数の衛星をネットワーク化し地球をカバーする仕組み」で、その概念自体は早くから登場しています。

例えばおなじみのGPSも、24機以上の測位衛星を高度2万kmで周回させる衛星コンステレーションの一種で、打ち上げは1978年から始まっていました(正式運用は1993年より)。

1990年代には、商用通信の需要の増大に伴い、民間企業による衛星コンステレーションを使ったビジネスが現れます。

早い段階での代表例としては、米Motorola社のIridiumや米Globalstar社、米ORBCOMM社などが挙げられ、いずれも低軌道に約30~80機の通信衛星を打ち上げ、地球上のどこでも通信をできるサービスを目指したものです。

しかし高い打ち上げコストが主な要因で限定的にしか普及せず、なかなか成功するプロジェクトが現れませんでした。

近年は、科学技術の発展のおかげで、打ち上げコストが大きく低減。低軌道までなら1kg2000ドル程度(約30万円)と、80年代に比べて50分の1にまで低下しました。また、小さくて安い部品を使って、高集積、高機能な衛星を低コストで作れるようになりました。

さらに巨大テック企業が参入し、衛星を大量に開発し、1つのロケットで何十機も打ち上げるなど、1機あたりのコストを下げる生産体制も登場したことで、低軌道に何百機、何千機もの衛星を打ち上げるプロジェクトが始動し、継続しています。

低軌道(LEO)衛星コンステレーションのメリットとデメリット

あらためて近年の低軌道・大規模な衛星コンステレーションの代表的なメリットとデメリットをまとめます。

メリット

低軌道であるがゆえにそれぞれの衛星が地表に近く、通信衛星の場合、地上との通信が中・高軌道よりも高速で、遅延も少ないです。さらに、電波の強度が高いため大容量の通信も可能になる特徴があります。

リモートセンシング衛星の場合、より高い解像度で地表を観測できるほか、機数も多いため観測回数が高頻度になります。

また、複数の人工衛星で地球全体をカバーすることで、これまで地上の基地局からでは電波が届かなかったリモートエリアや海上、極地でも、低遅延かつ大容量のデータ通信が可能になります。

デメリット

一方で、数十から数千機、場合によっては1万機以上の衛星を設計、製造、打ち上げる必要があるので、いくら1機あたりのコストが下がってきているとはいえ、静止軌道に数機の衛星を上げるのに比べて全体の初期投資は圧倒的にかかってしまいます。衛星の状態を監視・制御する作業もその数が膨大がゆえに複雑になり、維持管理のランニングコストもかさみます。

また、低軌道だと地球の重力の影響をより強く受けるので、衛星の運用年数が数年と比較的短く、後継機の打ち上げが必要になるため運用費用がかかるなど、費用面で様々な課題を抱えています。

通信衛星の場合は、地球上の特定のエリアにデータを送る衛星が次の衛星に切り替わるタイミングで、通信が不安定になる可能性も。

リモートセンシング衛星の場合は、衛星によっては不要なエリアの上を周回する時間が発生してしまうため、稼働率が悪いといった欠点もあります。

また、衛星が多くなればなるほど宇宙デブリになってしまう確率が増えてしまう他、同じ周波数帯を使う多数の衛星が存在すると、干渉や混信が起きる可能性もあります。

複数国が同じ空間を使う場合、領域や利用権についての国際的な摩擦が起きる可能性があるなど、衛星が多数存在するがゆえに避けられない問題が存在します。

代表的な活用例その1:衛星ブロードバンド通信

衛星インターネット(衛星ブロードバンド通信)は、低軌道衛星コンステレーションの活用が最も顕著な例の一つです。特に通信設備の整っていないエリアや、車、船、飛行機など移動中の通信において、低軌道に多数配置された衛星群が、大容量と低遅延を実現し、高速で安定したデータ通信を可能にします。

地理的な制限に囚われない通信が可能になるため、産業、教育、医療など、多くの分野で革新が期待されている他、災害時など通常の通信網がダウンしている状況でも稼働が可能なため、地上の通信網のバックアップとしても期待されています。

このように、全地球規模かつ地上設備にとらわれないブロードバンドサービスが可能になると、情報格差の解消や、教育、医療などのサービス改善が期待されます。

こういった明確なメリットおよびニーズが存在するため、現在では数多くの企業がこの衛星ブロードバンド通信の潜在能力に注目しています。

代表的なものとしては、米SpaceXのStarlink、米AmazonのProject Kuiper、英OneWeb社のOneWebなど。これらのサービスの一部では、既に商用利用を実現しており、運用を開始しています。

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OneWebにおける通信衛星

日本の通信事業者の現状(2025年11月アップデート)

日本の衛星通信(低軌道LEO)市場では、通信4キャリアを中心に導入が急速に加速しています。
日本の通信事業者は、既存の地上ネットワークを補完する形で、低軌道衛星コンステレーションを活用するビジネスモデルを模索しています。基本的には自社で衛星の研究開発はせず、米国やヨーロッパで通信用の衛星コンステレーションを構築している宇宙開発ベンチャーと提携している企業がメインです。日本の衛星通信(低軌道コンステレーション)の最新動向を以下にまとめます。

KDDIは、SpaceX社のStarlinkと提携し、山間部などこれまで設備が整っていなかった地域でもブロードバンド通信が可能なサービスを提供しています。2025年4月10日には、日本国内で スマートフォンから直接衛星通信が可能なサービス「au Starlink Direct」 を商用化しました。このサービスにより、山間部・離島・海上・建設現場などにおいても、「空が見えれば、どこでもつながる」環境を提供しています。

NTTは、自社で衛星を保有するスカパーJSATホールディングスと業務提携し、2023年12月には、共同設立した「Space Compass 株式会社」が「宇宙総合コンピューティング・ネットワーク」という構想を発表。衛星コンステレーションを活用した分散コンピューティングや、地上インフラに依存しないモバイル高速通信の提供の他、宇宙センシング事業の構想を固めています。また、NTTドコモは、Starlinkと連携し、2026年夏にスマホと衛星の直接通信を開始予定です。

ソフトバンクは、イギリスのOneWeb社と業務提携を行い、2024年12月より同社の衛星コンステレーションを自社のバックホール回線に利用した衛星通信サービスを提供しています。また、2026年には、衛星とスマホを直接接続するサービスの開始を計画しています。

楽天モバイルは、アメリカのAST&Science社とパートナーシップを締結。同社の低軌道衛星を活用して、携帯電話のサービス利用可能なエリアの拡大を目指しています。2025年4月には、スマホによる衛星通信実験に成功し、2026年末のスマホダイレクト通信のサービス商用化を計画しています。

代表的な活用例その2:リモートセンシング

リモートセンシングとは、遠く離れたところ(リモート)から、対象物の形や性質を触れずに測定する(センシング)技術。一般的に衛星を用いて地球の自然環境や人間活動に関連するデータを収集、解析することを差します。衛星データを利用したビジネスでは、気候変動、環境汚染、災害監視、資源探査など多くの用途で低軌道衛星コンステレーションが利用されています。

中・高軌道から数機の衛星で観測するよりも、低軌道衛星コンステレーションが提供するデータは、広範囲を網羅しながらも地表に近いためより高い解像度でより高精度な観測データが得られています。これにより、降水量、温度、海面上昇など、気候に関する様々な数値を導き出すことが可能です。

また地球観測データは、作物の健康状態、土壌の状態、灌漑(かんがい)の最適化など、農業においても多くの貢献が予測される他、鉱物資源や水資源の探査にも役立つと考えられています。

このように、企業は衛星コンステレーションによって取得された豊富なデータを活用して、新たなビジネスモデルやサービスを展開しています。

低軌道(LEO)衛星コンステレーションの軍事利用

低軌道衛星コンステレーションは、陸、海、空、そして宇宙という多層的な領域で網羅的な通信・監視を可能にし、安全保障・防衛分野に大きな影響を与えています。これにより、効率的かつ迅速な戦術が遂行できるようになります。

定期的な地球観測によって得られるデータは、敵の動きの把握や、目標地点の選定などに利用可能です。敵のミサイル発射をリアルタイムで検知し、その情報を防衛システムへと迅速に伝えることにも活用できます。ほかにも高度な通信網を利用して、無人機やロボットを遠隔で制御することも考えられます。

このように、低軌道衛星コンステレーションは軍事利用にも大きな可能性をもっており、国際的な軍事バランスに影響を与える可能性があります。宇宙を平和的に利用するという原則が、軍事利用によってさらに侵される可能性があるため、国際的なルール作りが急務となっています。

衛星コンステレーションをめぐる国内外の状況

衛星コンステレーションの世界的な動向を見ると、主要企業・国が大規模なネットワーク化に取り組んでいます。

世界で大規模な衛星コンステレーションの開発を進める企業、国(2025年11月アップデート)

SpaceX Starlink(米国)

米SpaceXのStarlinkは、現在世界で最も注目を集めている衛星コンステレーションです。

数千~数万機の衛星を低軌道上に配備し、地球全体にブロードバンドのインターネット接続を提供しています。2025年10月末時点で軌道上に8,811基の衛星を保有し、日本を含む世界100カ国以上で利用可能となっています。将来的には4万機以上を打ち上げる計画で、現在発表されている衛星コンステレーションの中で最も大きな規模となっています。加えて、衛星間レーザー通信(衛星間リンク)を通じて地上ネットワークを介さないメッシュ化を進めるなど、技術的な深化も加速中です。
ただし、衛星数の急増に伴う“軌道混雑”“光害による天文観測への影響”“地上端末コスト・普及モデル”などの課題も改めて浮上しており、規制面・持続可能性・ビジネスモデルの両立が今後の鍵となります。

OneWeb(英国)

イギリス企業のOneWebもまた、各国の通信会社にインターネット接続のインフラを提供して利益をあげようと、衛星コンステレーションを構築しています。2023年3月末時点で618機を打ち上げ済みで、全世界をつなぐのに必要な数は揃っている状況です。日本でも2024年8月6日に地球局(ゲートウエイ局)免許を総務省から取得し、ソフトバンクが日本国内の企業や自治体などを想定し、「Eurosat OneWeb」の提供を開始しています。

OneWebは一般消費者ではなく企業向けに通信インフラを提供しており、ゆくゆくは途上国や災害地域で代替の通信インフラとして使用される未来を構想しています。将来的には第二世代衛星を打ち上げ、6372機からなるコンステレーションを計画中で、高速化・低遅延化・運用軌道多様化とともに、地上・衛星連携による利便性向上が鍵となるでしょう。

Amazon Kuiper(アメリカ)

米Amazonもこの分野で大きなプレイヤーになると注目されています。同社のKuiperプロジェクトは、主に北米でのインターネット接続サービスを提供する計画です。2025年4月に初の27基の衛星打ち上げを完了し、今後80回以上の打ち上げを計画しており、全体で3200機以上からなるフル体制を敷くとしています。
クラウドサービス(AWS)とのシナジーを武器に、通信・データインフラと衛星インターネットを統合する野心的モデルです。

中国 Guowangプロジェクト

中国も衛星コンステレーション事業を行うための国有企業として、2021年にChina Satellite Network Groupを設立。「Guowang」と呼ばれるプロジェクトで、最大1万3000機を打ち上げる計画を発表しています。2024年12月に打ち上げを開始し、2025年8月時点で72機を軌道投入しています。Guowangは、民間利用通信サービスにとどまらず、安全保障用途も含むと報じられており、留意が必要です。

SpaceX Starlink(スターリンク)の革新性

イーロン・マスク氏率いるSpaceXは、近年の衛星ビジネスにおいて様々な革新をもたらしました。

従来、人工衛星は10年に1機という長期スパンで開発・打ち上げを行なっていましたが、1機にかかるコストが数百億円と膨大でした。ビジネス利用が難しいどころか、ものづくりのスパンが長すぎるせいで技術者も集まらず、市場の裾野が広がらないという課題がありました。

しかし、SpaceXは「1機にかかるコストをできるだけ下げて、市場を切り開こう」という目論見のもと、毎月何十機というペースで衛星を開発し、1つのロケットで同時に何十機も打ち上げる体制を編み出します。

主力ロケット「Falcon 9」の技術は特に画期的で、打ち上げ後にロケットをそのまま廃棄するのではなく、第1段機体(ブースター)を発射場に帰還させて繰り返し使うという“再使用型”となっており、宇宙開発の常識を覆しました。

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SpaceXがStarlink衛星を打ち上げる様子(SpaceX公式Flickr より)

また、これまで宇宙産業において「衛星を作る会社」と「ロケットを作る会社」は別でしたが、SpaceXは衛星の開発から打ち上げまでを一社でまかなう垂直統合モデルを敷きます。衛星やロケットの機体の設計、デザイン、ソフトウェアの開発、部品の製造と機体の組み立て、宇宙服の裁縫、さらに打ち上げた後の運用までも自社で行うことで、衛星1kgあたりのコストを極限まで下げられるよう徹底しました。

一社で衛星を大量に開発し、打ち上げ、そこから得たフィードバックをもとに衛星の形やロケットへの積み方などデザインやフレームを最適化していった結果、2023年は週に約60機もの衛星を1つのロケットで打ち上げるという脅威の生産体制を実現しています。

さらに、大量の衛星を開発して打ち上げた場合、どのようなサービスを市場に実現できるかという観点から、低軌道に衛星群を構築して高速のインターネット通信を提供するサービスまで打ち出したことも画期的でした。

SpaceXは、各国がこぞって大規模な衛星コンステレーションを築き上げようとするいまの潮流を生み出した、ゲームチェンジャーだと言っても過言ではありません。

主要サービス比較テーブル

世界の衛星コンステレーションの比較

世界の主要な衛星コンステレーション(Starlink、OneWeb、Amazon Kuiper、Guowang)の比較一覧を以下にまとめます。

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Starlink 日本でのサービス・料金(KDDIホームページからIISEにて編集)

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日本における低軌道(LEO)衛星コンステレーションの技術

日本は長い歴史を持つ宇宙開発国であり、JAXA(宇宙航空研究開発機構)を中心に多くの人工衛星、探査機を開発し、宇宙に送り込んできました。いわゆる衛星コンステレーションに必要な基礎技術のレベルは、世界の中でも日本は大学も企業も高いです。

一方で、衛星コンステレーションを商業的に実運用している組織はまだなく、4機の衛星から得た情報で測位できる「みちびき」(準天頂衛星システム)のように、政府が運用する衛星にとどまっているといえます。

内閣府宇宙開発戦略推進事務局は、宇宙安全保障や通信、地球観測、衛星測位などあらゆる分野で日本が宇宙を開発・利用していくためにも、人工衛星を他国に依存せずに自国から打ち上げることが必要だとし、「衛星を宇宙まで輸送する能力の強化」「打ち上げ価格の低減」「打ち上げの高頻度化」「多様な打ち上げ需要への対応」などが要求される、と認識を示しています。

また、宇宙産業における独自の強みを築くための方策として、世界的にリードしてきた宇宙空間における光通信技術や小型衛星の開発に資金を投じ、これからの宇宙産業における新たなビジネスモデルを形成していく計画があります。

日本政府の政策動向【宇宙戦略基金/安全保障】(2025年11月アップデート)

日本政府もまた、宇宙戦略基金などを通じて、衛星コンステレーションの構築や関連技術の開発を国家戦略として位置づけ、新しい宇宙インフラの創造という壮大な挑戦が、日本でも着実に始まっています。

 -宇宙戦略基金
宇宙事業の「市場の拡大」、「社会課題解決」、「フロンティア開拓」の3つの出口に向け、宇宙戦略基金が創設されました。本基金は10年1兆円規模を目指すとされています。

その中に「商用衛星コンステレーション構築加速化」(総額950億円)があり、2024年11月に4社(アークエッジ・スペース、QPS研究所、Synspective、日本電気)が採択されています。

 -経済安全保障技術育成プログラム
経済安全保障を強化・推進するため、内閣府や経済産業省、その他の関係府省が連携し、先端的な重要技術の研究開発から技術実証までを迅速かつ柔軟に推進するために、本プログラムが創設されました。

その中に「光通信等の衛星コンステレーション基盤技術の開発・実証に関する研究開発」があり、2022年~2029年まで事業規模600億円で採択されています。実施体制は、Space Compass(幹事企業)、情報通信研究機構、アクセルススペース、日本電気となっています。

-防衛・安全保障関連
宇宙安全保障の取り組みとして、衛星コンステレーションの構築を目指しています。2025年から契約を開始して2030年までに約2832億円の事業を防衛省は計画しています。

光衛星通信が注目される理由 メリット・デメリット

光衛星通信とは?
光衛星通信(レーザー通信 /衛星間レーザーリンク / Optical Satellite Communication)は、衛星コンステレーションの高度化を支える中核技術です。レーザー光を用いて人工衛星間や衛星と地上との間で通信を行います。

従来、宇宙空間における通信はほとんど電波で行われてきましたが、衛星コンステレーションにおいてレーザー光での通信が実用化されれば、衛星ビジネスをさらに飛躍させるとして注目を集めています。(詳しくはこちら

この光衛星通信の最大のメリットは、大容量のデータが送れるようになる点です。無線通信では周波数が高いほど送れる情報量も多くなり、電波から光になるとデータ量を数十倍以上増やすことができます。

また、レーザー光は直進性が高いため、長距離であっても電波干渉が起きづらく、秘匿性も高いです。

波長が短いとアンテナ径も従来の約10~20分の1ほどに小さくできるため、衛星や航空機、地上に設置する機器も軽量小型化できるなど、数々の利点があります。

一方で光衛星通信には高度な技術が求められます。

衛星同士で通信する場合は、高速で移動する機体を互いに捕捉追尾し合う技術が必要です。また、光は雲に遮られたり大気の影響も受けたりするため、地上と衛星間での光通信では多くの技術課題が積み重なっています。

このように、技術面での困難さはあるもののポテンシャルは非常に高く、日本とヨーロッパは古くから光衛星通信の技術開発に力を入れてきました。
2014年より欧州宇宙機関(ESA)が世界で初めて実運用をスタートさせ、近年はアメリカも軍から支援も借りて急速に追い上げています。日本の技術は衛星コンステレーションにおける光通信の実用化にどのように貢献していくのか注視されます。

低軌道(LEO)衛星コンステレーションとビジネス


低軌道衛星コンステレーションは、その特性やメリットを活かし、多くのビジネス創出が期待されています。

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低軌道の衛星コンステレーションの活用が期待される分野(IISEで作成)

通信事業では、未開地や災害地など、通信インフラが整っていない地域でも高速インターネットの提供が可能となり、地域の情報格差を埋める助けになりえます。
また、航空機や船舶などの移動体通信への寄与も期待されており、従来の通信ではカバーできなかった領域から、様々な可能性を生み出しています。
 
ほか、農業分野では、リモートセンシング衛星を利用し農地の状態や病害虫の検出を行うことで、収穫量の増加やコスト削減が見込めます。物流では実際の天候や交通状況をリアルタイムで把握し、最適なルートを計算することで配送の効率化やコストダウンが実現可能です。
 
さらに、エンターテイメント面では、イベントのライブ中継や遠隔地とのリアルタイムコミュニケーションが可能となり、これまでにない新たな体験が生まれる可能性もあります。

低軌道(LEO)衛星コンステレーションの課題


これまで紹介してきたように、低軌道衛星コンステレーションには数多くのメリットがありますが、同時に多くの課題も浮き彫りになってきました。

日本のビジネスにおける課題

低軌道に衛星コンステレーションを築くには、上記の通りインフラの構築や維持に莫大なコストがかかります。民間企業が衛星コンステレーションを使った宇宙産業に参入する場合、リスクが高い初期段階はもちろん、ビジネスとして軌道に乗るまでの資金調達や技術支援が不可欠です。

欧米では宇宙産業において「国が投資して民間産業を育てる」→「育まれた技術をほかの民間産業に転用する」サイクルが確立されています。例えば米国では国防総省を中心とした「安全保障」、EUでは衛星を使った「通信インフラの統一」と、国がそれぞれ明確な目的を達成するため民間の宇宙産業に投資してきた背景があります。

日本も、2023年度の宇宙関連予算は6119億円と世界的に決して少ない額ではありませんが、米国防省の宇宙軍への2023年度予算は245億ドル(約3兆6000億円)と、資金投入に大きな開きがあるのが現実です。また、日本の宇宙関連予算の内訳は、防衛機能強化や気象観測などの公益サービス、月面探査への協力などが中心で、民間の宇宙ビジネスに回る資金はまだ小規模に留まっています。

アンカーテナンシー

打開策の1つとして注目されているのは、米政府の「アンカーテナンシー」戦略です。民間産業の育成や基盤の安定を目的に、政府や軍が企業と契約して製品やサービスを継続的に購入する考え方になります。NASAはこの戦略のもと複数の宇宙ベンチャーと長期契約し、企業の資金繰りへの不安を解消しながら、技術開発に集中できるよう後押ししてきました。SpaceXの躍進はその代表例となっています。

日本にも民間の宇宙開発に対して補助制度はありますが、市場が定着するまで安定的に支援するような政策はありませんでした。内閣府は2023年の宇宙基本計画にて、国内のロケット開発事業者に対してアンカーテナンシーを通じて支援を拡充すると記していますが、具体的にどのような支援がなされるのか、ほかの宇宙開発分野にも取り組むのか、今後の動向が注視されます。

得意領域での貢献

日本側も衛星コンステレーションを構築して真っ向勝負しようとするのではなく、日本の得意領域に特化して国際競争力を高めていこうとする意見もあります。日本には宇宙開発においてこれまで培ってきた高い技術力があり、小型化・軽量化のノウハウやロボティクス技術など、衛星コンステレーションビジネスで発生する技術的な問題に対し、様々な形で貢献できるかもしれません。

特に、先述した光衛星通信の開発技術は日本にアドバンテージがあります。低軌道衛星コンステレーションでは電波干渉による通信の混乱も懸念されており、干渉の可能性が極めて低い光通信を扱えるようになれば、大きな国際競争力になるとして期待されています。

宇宙デブリ・軌道混雑・宇宙交通管理の課題

世界共通の社会的な課題になりますが、低軌道衛星コンステレーションの増加に伴い、衛星の総数が増えすぎてしまう宇宙空間の混雑が問題となってきました。このため、衛星の衝突回避や軌道変更の調整など、宇宙における交通整理の必要性が高まっています。

さらに、衛星の増加は宇宙デブリの問題にも直結する可能性があります。

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宇宙デブリのイメージ

他にも、大気圏外からの衛星の再突入による環境への影響や、電磁波の問題も考慮する必要があります。光害(ひかりがい)の問題も指摘されており、特に天文学者からはその影響が危惧されています。これらの問題に対応するための国際的なルールや規制が検討されています。

まとめ

低軌道(LEO)衛星コンステレーションは、衛星インターネットをはじめ、通信・観測・安全保障の基盤として急速に拡大しており、私たちの生活やビジネスに革命的な変化をもたらす可能性を秘めています。とりわけ、通信、農業、物流、エネルギーといった多岐にわたる分野での活用が期待されています。一方でその発展の背後にはデブリ問題といった課題も存在するので、これらの課題に対応しながら、持続的な成長と安全な宇宙環境の構築を目指す必要があります。

本記事へのお問い合わせは、こちらまで。

企画・制作:IISEソートリーダーシップ「宇宙」担当チーム
取材協力:三好 弘晃(NECフェロー)
制作協力:中山記男 
編集:黒木貴啓、伊藤駿(ノオト) 
図版:小峰浩美
更新・文:IISEソートリーダーシップ推進部 佐野智
  JAXAに長年勤務し社会課題解決に向けた新規宇宙事業創出に尽力。内閣府(衛星を利用した社会実装プログラムを推進)を経て現職。博士(理学)。


参考文献

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参考文献 更新版(最終アクセス日は2025年11月12日)

・“au Starlink Direct”. au Starlink Direct.
・“ほぼA4サイズの「Starlink Mini」、日本でも購入できるように 3万4800円 USB-PDでも動作可能”. ITmediaNEWS. 2025年1月22日
“ドコモ、「スマホと衛星の直接通信」を2026年夏に開始”. CNET Japan. 2025年5月9日
“いつでもどこでもつながり続ける通信を。”.ソフトバンクニュース. 2025年8月12日
・“楽天モバイル、ASTと共同で衛星とスマホの直接通信による「Rakuten最強衛星サービス」を日本国内で2026年9〜12月に提供開始!ビデオ通話も”.S-MAX. 2025年4月23日
・“Starlink satellites: Facts, tracking and impact on astronomy”.Space.com. October 30, 2025
・“ソフトバンクが低軌道衛星通信「Eutelsat OneWeb」を提供開始、帯域保証型も用意”. 日経XTECH. 2024年9月4日
・“Project Kuiper(プロジェクトカイパー)初の本格的な衛星打ち上げと今後の展望”. Amazonニュース. 2025年4月3日
・“China’s Guowang megaconstellation is more than another version of Starlink”. Ars TECHNICA. 2025年8月21日

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コメント

1
森田 祥弘
森田 祥弘

記事を拝見しましたが、衛星の電磁波により地球温暖化を加速させている可能性が高いとみています。独自の温暖化対策を記事にまとめていますので、よろしければご覧ください。

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