エピローグ 復讐の炎は達成の水なくして消えることなし
肉が焼けている。
「たった一晩の初配信で登録者数50万オーバー……羨ましいなぁ、配信者ドリームだ」
「納得のクオリティではあったがな。なるほど確かにVRMMOで有名人になるだけのことはある」
とある高級焼肉店にて、二人の男が真昼間から焼き肉を焼いていた。
「シャンフロでフルスペックを出せればあそこまで映えるって知れたのは収穫かもなー……あ、これくれ冷泉」
「それ俺が育てて…………戦争を所望か」
「あながち間違ってないなソレ」
冷え冷えととした視線を受けながら熱々の特選カルビを頬張る男は、冷泉と呼んだもう一人へと箸を突きつける。
「で、ウチの腕担当さんから見た感想は?」
「行儀が悪いぞ妻夫木……そうだな、」
突きつけられた箸を焼けた肉を掴んだトングで弾きながら冷泉と呼ばれた男はしばらく考え込む。そして焼けた牛タンに軽くレモンをかけて口に含み、嚥下して……
「付け入る隙はある」
そう断言した。
「おぉー、頼もしい」
「……素人でも多少はゲームをやっていれば分かる。あんな無茶な動きは「万能」のそれじゃない、尖ったビルドは必ずどこかを削っている」
「噂のUMA君の場合はめちゃくそ分かりやすいけどなー」
「まぁ、そうだな。耐久を削っているんだろう……つまり、当たれば勝てる」
「……あれに?」
二人の脳裏に思い浮かぶのは、昼まで時間を置いてもなお記憶に新しい光景。配信者として「そんなのアリかよ」と言いたくなるような大躍進を見せたとあるチャンネルの動画だ。
アーカイブこそ残らなかったものの、既に大量のミラー動画が出回っているしなんなら二人も独自に保存したその配信動画はシャングリラ・フロンティアというゲームにおけるある種の「極限」が映像化されたものだ。
「……ある程度の目処はある」
「なら俺はとやかくは言わんよ」
「お前の方はどうなんだ、向こうにも軍師プレイヤーがいるって話だろう?」
「んー、なんかスパイとかもいる臭いし向こうさん、「ガチ」なんだよねー……まぁ、それならそれでやりようはあるけどな! って感じかな。あとはギャルゲーの結果次第」
「……説明になってない。妻夫木、ドリンクはどうする?」
「烏龍茶」
「俺は焼酎でも頼むか」
「この後個人配信なのに酒入れるの?」
「……言わなきゃバレない、それに少し入ってた方が調子がいいんだ」
「俺は弱いからなー」
そこからは特に言葉もなく、十数分もすれば二人の昼食も終わる。カードによる支払いを終えて店を出た二人の男は「仕事」の為だけに借りているマンションへと向かうエレベーターの中でさらに会話を交わす。
「この調子だとクリスマス前には決戦って感じだしそんなに時間ないからなー、個人配信しつつシャンフロ一本だね」
「案件関係はどうなった?」
「来年分は受けたけど今年分は一本だけ、もう録画したやつだから冷泉が配信してる間に編集しとく」
「助かる」
「壺カルビも頼んどけば良かったかな」
「…………」
半目で和牛を頼みまくっていた男を睨む冷泉をどこ吹く風でいなしていた妻夫木であったが、ふと思い出したかのようにそらしていた目を合わせる。
「あ、そうだいい加減教えてくれてもいいじゃん。なんで新王側にしたいってあんなに押し通したん? 結果的にいい感じの構図になったけど最初に聞いた時はぐらかしたじゃん? 壺カルビは無しにするから教えてよ」
「……割と個人的な理由だから配信には載せられないぞ」
「え、なんか私怨?」
エレベーターが最上階に到着した事を伝えて扉を開く。なんとも言えない顔をしながらエレベーターを出た冷泉は妻夫木に向けて端的にこう告げた。
「気に食わないツラを見つけた。三分間殴ったくらいじゃ気が済まないくらいのな」
「え、怖っ。何したらそんな恨み買うのそいつ」
お前だけは許さん