鏡面に響け、摩天より吼えろ 其の五
………
……
会議開始。
「えーと、ですね………結局のところ、オルケストラ戦を録画する方法は一つしかないっぽいんですよね」
会議終了。
「結論が出てしまったな」
「で、俺は何をすればいいんだよ」
「生配信」
えぇ……?
シャンフロが生配信に対応した、ってのはいつだったかに見た気がするが………生配信……?
「ツチノコさんはあんまり気乗りしなさそうだから対策も考えてますよー。プライベート配信でやりましょう、これならチャンネル登録者しか視聴できないですから不特定多数が見るってことはないでしょう」
「いや……諸々の登録のためにログアウトし直すのが………あと配信用アイテム持ってないんだけど」
「別天律の隕鉄鏡なら実装日に全員のインベントリに配布されてますよ。録画アイテムとかと違ってアクセサリーなんですよねーアレ」
「それアクセサリー枠1個潰すってことじゃねーか」
「そこはまぁ、ほら………その分アイテムとかで支援するから許して? としか」
「いやお前俺のアクセサリースロット、今二つ潰れてるんだぞ………」
あー来ましたよ後悔の波が。なんで無限インベントリ二つ装備なんてアホな事をしてしまったんだ………あー畜生、あー畜生。よし吹っ切れた。
とりあえずインベントリア二つだろ? 封雷の撃鉄・災だろ? 兇嵐帝痕・極だろ…………いや、まぁそこそこ枠はなんとかなるか。星外套とかの衣服系は動く時に邪魔になるパターンもあるから状況に応じて付け外しするし。
そうなると強制枠二つと必須枠二つ、ここに配信アクセサリー入れて五枠……残り三枠か、やっぱりそこそこイケるわ。
「ゲーム内で撮影するスクショアイテムや録画アイテムはオルケストラを撮影することができませんが、別天律の隕鉄鏡に関しては設定的にもゲーム的にも撮影可能だと考えられますねー」
「その心は」
「運営にメールで問い合わせました。あとそのアイテムは思考操作と完全オートの二つがあるのでお好きな方でお願いします」
そりゃ確実だわ。思考操作……は流石にしてる余裕が無さそうだしオートでいいかな。
と、いうわけで話をまとめるとこうなる。
【ライブラリ】は正典に挑む俺の全面バックアップを行う。大量の回復アイテムや強化アイテムを仕入れてあるので好きに持っていっていいとのことだ。
代わりに俺は動画サイトにアカウントを作ってプライベート配信でオルケストラ戦をリアルタイムでゲーム外に配信することで【ライブラリ】に情報を提示する、と。
「じゃあ登録してくるわ」
とりあえずログアウトしてっと…………
どこに登録すりゃいいんだこれ、とりあえず一番有名なところでいいか。えーと、このサイトならアカウントあるしこれをこうして………あー、これ紐付けはゲーム側でやるのか。面倒臭いななんで深夜にこんなリアルとVRを反復横跳びしなきゃならんのだ。あーはいおはようございます、とりあえずこれをこれして登録して……はい紐付け。
「これでいいのかな? 配信開始」
…………いや、これログインしてるプレイヤーはちゃんと映ってるのかどうか分からないのでは?
「リアル待機班がいるのですぐ分かりますよー、今メールきましたね。無事生配信できてるようです」
「そっか………じゃあ、早速オルケストラに突撃してくる」
「朗報と取れ高を期待してますよー」
さぁーて、ちっとばかし時間を食ったがその分遺書を書く時間はあっただろうオルケストラ。
この前までの俺とは違う、【ライブラリ】からアイテムも沢山もらったし対策もある。長期戦上等、根こそぎお前を解明して攻略してやるよ。
◇
「さて………我々もログアウトして配信を視聴するとするかね」
「そうですねキョージュ」
「………あ」
「どうしたミレィ君」
「いや、あの………その、これに関しては私じゃなくてですね、リアル待機班が気づかなかったのが原因というか………」
「ミレィ君、要件をだね」
「…………パブリック配信になってるそうです」
「!?」
「いや違いますよ本当、私が話すのを渋ったわけじゃなくてですね!? 今! 今メールがきたんですよ本当ですよーう!?」
「日頃の行いだねぇ」
「貴方に言われると無性に悔しいですね磐斎さん!!」
◇◇
「妻夫木、妻夫木」
『んー? 何?』
「妙な配信が挙がってるぞ」
『ん? 誰の配信?』
「知らんやつだ、登録者数千人以下………の割に、視聴者数が2000人を超えてる」
『何それ、複垢でも使ってんの?』
「いや……………いや待て、確かこの名前………」
『知ってんの? 冷泉』
「……確か、シャンフロでやたらユニークモンスターに関わってるプレイヤーの名前……「サンラク」だったよな?」
『いや、「ツチノコ」じゃなかったっけ?』
「そっちはアダ名だったはずだ。で、件の生配信だが………チャンネル名が「Sun Luck Channel」………で、トドメに配信してるのはシャンフロでキャラは半裸の覆面野郎だ」
『おっと…………まさか本人?』
「配信タイトルが「オル検証」とかいう適当なタイトル………これ、もしかしなくても公開設定ミスってるんだろう」
『それはそれは……………どちらにせよチャンネル登録すれば見れるわけだし、我々がその初心者さんを応援する意味を込めてチャンネル登録しても問題ないわけではぁ?』
「流石にそれは勘弁してやれ………どう考えてもこっちで食っていく気のなさそうな奴に俺達みたいなのが注目してもロクなことにならん」
『冷泉はそういうとこ律儀だねぇ昔から………まぁいいや、ツチノコって確か「向こう」の急先鋒でしょ? 折角配信してくれてるなら大人しく視聴しようか。敵情視察ってな!!!!』
「相手のミスにつけ入るようで若干罪悪感があるが…………まぁ、チャンスは逃さず掴むものだ」
サンラク氏、配信に興味がないため痛恨のガバをしたことに気づかない……!!!
ちょっとだけ怖い話しますか。
サンラクが開設したチャンネルを登録した第一号のユーザーネームは「GagBall_DeTh」さん。何故かサンラクがチャンネルを開設した直後、配信を開始する前にチャンネル登録が済まされていた。偶然かな?
おやライブラリのとあるプレイヤーさん、今誰にメール送りました? え? 信用できる人だからこっそり教えた? なら安心ですね!!!!!
本当かなぁ