永久に枯れぬ星の花、育むは感情の「N」
『似姿、影法師、されど現存し存在するシュテルンブルームそのもの……それこそが三号計画、それこそが征服人形本来の使命なのだ』
「お、おう……」
なんというかこう、見覚えのないタイプのキャラクターだ。
例えばそう、人類の悪意に絶望して人類を滅ぼすとか破壊される自然を嘆いて人類を滅ぼすとかそういう極端な二元論だったりシンプルな支配欲とか……やる事なす事極端なキャラクターっぽくもあり、しかし過去をガン見しつつ遥か遠い未来を話すってのは結構珍しいというか……うーん。
「疑問:征服人形の基礎プロトコルは「再征服」「蒐集」の二種で進行しています。そして三号計画に関する情報はデータとして蓄積されていません。説明を」
『まぁ……三号計画は凍結されたからな』
「理由を聞いても?」
『仮にも三種目の人類種と定義するなら「機種」パターンが100以下というのはおかしいと指摘され、当時はそれを否定しきるだけの理論を構築できなかった。おのれジーク・リンドヴルムめ……』
「英断」という言葉は胸の内にしまっておく、好感度が下がりそうな気配がしたからな。というかだったら増やせばいいとはならなかったんだな……二次創作は認めないタイプのファンかな??
『とはいえシュテルンブルームを永劫とするためなら多少の妥協は受け入れる。そうして凍結した三号計画を多少改良して認めさせたものが「再征服計画」……それこそが人に寄り添う征服人形の始まりだ』
「具体的に何をどう変えたんだ?」
『何も?』
「えっ」
『元からあった「未完成」をさも改善点のようにピックアップして報告書を見目良く書き換えた』
「えぇ……」
『要するに「人間」と表記したのが気に食わなかったんだろう、ならばと当時の私はこう考えた……「もはやシュテルンブルームは人間という枠組みすら超越した存在なのだ」と!!』
「過度な神格化はいつの時代もろくな事にならねーぞ」
何故何事においても「ファン」と「アンチ」と「信者」で区別されるのかって話だな、大きな分類として同じところにあってもやはり三つ巴なんだよなぁこれ。
「質問:征服人形に元からある「未完成」とは?」
おっと、俺は軽く流していたがサイナにとっては聞き逃せない単語であったらしい。アンドリューが口走った「未完成」という言葉にサイナが一歩詰め寄って創造主へと問いかける。
『もちろん教えるとも、その「未完成」はシュテルンブルームのファンたる私ではなく「征服人形の父」として設けたものだ……そして、それはこのラボに辿り着いた征服人形に与えられて君達は「完成」する』
新たなる人がバハムートに辿り着くことが神代の天才達によって定められたと言うのならば、誰がなんと言おうが「人」である征服人形にも同様の条件を。
故にこそ征服人形に欠けているピースがここにあるのだとアンドリュー・ジッタードールは問いに答える。
『おめでとうエルマ=317、君は征服人形が紡いできた歴史の中で初めて到達した「完全なる人形」だ』
───「N」パッチ、インストール
…………。
…………。
「…………」
「…………」
『…………』
「……で!?」
何かこう、イベントエフェクトはないんですか!? 構えた俺がちょっと間抜けな感じになってるじゃん!!
『既にインストールは完了している、このパッチが導入された事で君の感情にかけられていた上限リミッターが解除された……』
「感情……上限?」
『そう、君達は常に聡明で理性的な判断ができるよう一定以上の知覚情報の写真に対しての反応にリミッターがかけられていた。だが「N」パッチを適用した事でその枷が外された』
慈しむように、だがどこか突き放すように最後の一欠片をサイナに渡したアンドリューはおのれの創造物へと話しかける。
『君は主観的な感情に知性を忘れる事になるだろう、愚かな選択をして後悔する事になるだろう、あるいは……そう、より強く浮き彫りとなった死の恐怖に怯えるかもしれない』
喜怒哀楽、感情の4パターンにおいて半分は負の感情だ。世の中喜んで楽しむだけじゃ進まない時だってある。そう……困難に怒り、絶望に哀しむ事だってある。ゲーマーはいつだって口を開けた雛鳥だ、親鳥が餌をくれなきゃ何も出来ない。
『だが君は主観的な感情による喜びを得るだろう、非合理の先に新たな境地を見るかもしれない、あるいは……そう、より強く浮き彫りとなった生の実感を楽しむことができる』
「…………」
『征服人形は設計段階から「賢く」生きていけるよう………万が一にも全滅しないよう合理的な判断を下せるよう設計した。他にも二号計画との合流、「蒐集」計画における規定、戦術………ある程度の幅がある二号計画と異なり征服人形は生産されたその瞬間から一流の戦士として活動することができるようにできている。だが「N」パッチは非合理を許容する』
「………ん?」
いやちょっと待て、あるいは違うのかもしれない。今何かとても嫌な仮説を思いついてしまった。
アンドリューの口ぶりから察するに…………本当はこれ、もっと長い期間征服人形が人類とコンタクトした後にやるべきイベントなんじゃ? いやだって………まだ半年経ってないんですよアンドリューさん。ええ、征服人形と二号人類が交流を開始してまだ半年経ってないんですよ。
多分なんですけどねアンドリューさん、恐らく妥協としての「再征服」計画ならともかくアンドリューが本来想定していたアイドルとしての活動は殆どしてない気がするんですよね。
だが始まってしまったイベントはもう止まらない、フラグは成立すると無敵オブジェクトになるのでもう折れなくなるのだ。これまで「アイドル」としての役目を背負い続けてきた被造物の船出を見送っているアンドリュー氏に言うべきだろうか。そこのサイナさんはアイドル活動どころか初遭遇の時からサバイバルしてたしなんなら契約後も戦いの荒野を駆け抜けるような生活だった、と………
「………感情:非合理な選択」
『だがその「非合理」こそが人生だ』
んー。
なんかうまく進行してるっぽいしこれでいいか!!
「サンラクサン、なんか今しょーもないこと考えてる頭の揺れでしたわ」
「うっそだぁ」
「サンラクサンがしょーもないことを考えてる時は大抵ちょっと上向いた後に大きく頷くですわ」
うっそだぁ…………うわっ!! マジだ、いつもこんな感じの動きしてる気がする!!
・ジーク・リンドヴルムとアンドリュー・ジッタードール
ベヒーモスに残った者とベヒーモスから亡命した者。リヴァイアサンからの知識で己の技術を完成させた者達。自ら人生に幕を引いた者と最後まで戦った末に死んだ者。遺した物を最期まで思い続けた者達。
対照的なようで共通点の多い二人だが本人同士は………「別に嫌ってるわけじゃないが徹底的にソリが合わない」という奇妙な関係性。
Q.人類扱いしたいようだけど征服人形に生殖能力は?
A.そういう下品な概念ばかり気にするのは良くない
ジーク「えぇ………?」
Q.なんでジークヴルムと同系統の生体兵器を量産しないの?
A.そういう効率ばかり気にするのはナンセンスだろ
アンドリュー「??????」