表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
670/948

立ち塞がるに不足なし

詳細はインベントリアの方を見てください(露骨な誘導)

これはサンラクが水晶巣崖にサイナを引き摺って行く少し前のこと。







『時に、さ。クラン名何になるの?』


『明日までに名案がなかったら改崎さん考案の「アレックス君応援団」になります』


『う、うーん………』




軽快な音楽と共に流れてきた声を聞きつつ、知りたい事は知れたと動画を閉じて女は一人思案する。


「…………厄介な」


さぁ寝ようとベッドに潜り込んだ矢先にURLと短い文章が載せられたメールが届いたのは数分前。明らかに推しを紹介するとかそういう手合いではない焦燥が込められていた文章を見たからこそ、女………天音(あまね) 永遠(とわ)は動画を開いたわけだが、成る程想像の五倍ほど厄介な情報であった。


「配信者連合ねぇ…………」


厄介だ、実に厄介だ。配信者というのは要するにネームバリューのある有名人である、有名人には当然ファンがつくことはモデルとして第一線を走る永遠にとってはあまりに身近な事実だ。

ではこの配信者連合が新王側に就くと明言したことで何が起きるのか…………答えは単純、人的資源(マンパワー)の大量流出だ。


シャンフロにおけるクランシステムには上限人数が存在しない。厳密にはNPC相手に手続きをすることで上限人数を無尽蔵に引き上げられる、というのが正しいがそれはつまり配信者達のファンを受け止めるクランのキャパシティが無限ということだ。

ゲーマーのファンはほぼ高確率でゲーマーだ、そしてモデルや俳優と違ってこのカテゴリにおけるファンが憧れの対象と同じステージに立つ難易度は恐ろしく低い。なにせ同じゲームソフトを購入してオンラインに接続するだけで「ワンチャン」が発生する、そして今回はその憧れの対象が直々に人を集めている………


「初心者、これから始めるプレイヤー……いや、もしかしたらこっち陣営の高レベルプレイヤーが流れる可能性も高い」


思考を巡らせながらも端末を操作して動画の中に出てきていた三組の配信者達を検索する。


GUN! GUN! 傭兵団。チャンネル登録者数約94万人……裏方含め九人グループの配信者集団であり、主な活動範囲はオンラインFPS。時々CoopプレイでPvEなんかもやっているようだが、どんな状況でも宴会のような馬鹿騒ぎと冷静な連携で戦う姿が評価されているらしい。


「隠密行動って感じではなさそうだね、運用するとしたら銃兵で固めてまんまFPSかな? 市街地に投入されるだけでも相当ウザいなぁ………」


FPSというゲームカテゴリの定石(セオリー)として選ばれるフィールドは大抵は戦場や市街地(・・・)だ。評判、損害その全てを度外視してサードレマに彼らが潜り込めば甚大な被害を受ける事は間違いない。


「………次」


カイ速特急チャンネル。チャンネル登録者数約187万人……プロゲーマー改崎 速手、その名前には覚えがある。オイカッツォ……魚臣 慧にも黒星をつけたことのある実力者でありインタビューを受けている時などの印象からは想像もつかない「超速攻2ラウンド先取理論」に忠実なアタッカーゲーマーだ。

単体としての性能もそうだがやはりプロゲーマーという肩書きが何よりも強力な武器であると言えるだろう。永遠も……恐らくサンラクも忘れがちだが、魚臣 慧はあんなの(・・・・)ではあるが日本国内に限れば最強にして最高峰のプロゲーマーだ。数年間無敗神話を作っているシルヴィアが異常なだけで、本来公式戦績で勝率八割を下回らないなんて並大抵の事ではない。


そこに匹敵するとは言えないがそれでも200万近い登録者(ファン)を抱える男が敵に回るというのは看過できない。こちらのプロゲーマーがあくまでもプライベートとして遊んでいる以上……そして永遠もプライベートであり続けるが故に敵のネームバリューに対抗する方法がない。


「……んー、頭痛くなってきたなぁ」


徹夜騎士ちゃんねる。チャンネル登録者数約45万人……前述の二組と比べると少々知名度が低いように思えるが………ゲーム的脅威度と知名度、チャンネル登録者数は無関係だ。むしろ45万人もリスナーがいるということが問題なのだ。

このカリントウなる女、リアルとゲームの天秤でゲーム側に全体重を傾けられるタイプの人間だ。実生活を追求するのは無粋だということくらいは永遠も理解できるので「この生活でよくこの顔を保てるなぁ……」とだけ呟いておく。


徹夜騎士カリントウ最大の脅威はやはり彼女自身が何時間でもシャンフロにログインできるという点、そして同様のイン率を可能とするリスナーが千人規模で存在するだろうという事。勢力全体で見た場合の「夜勤」が存在するアドバンテージは言うまでもない、対してサードレマは政治中枢に永遠……ペンシルゴンを筆頭とするRPAが潜り込むことに成功しているとは言え、サードレマ陣営全てのプレイヤーを掌握しているわけではない。というかペンシルゴンが宰相的立ち位置にいることを知らない者すらいるだろう。

つまり千人規模の同じ目的で動くプレイヤーを用意する事ができない、彼女一人が存在するだけで準備期間という「戦争」に駆り出す獣の内臓を充実させる行為が容易になっていくわけだ。







だが、本当に危険なのはこの三組ではない(・・・・)



ぱやガルチャンネル。チャンネル登録者数約450万人………配信者「ぱやぶさ」と「ガル之瀬」がチャンネルを統合した事で現在日本最大のゲーム実況配信チャンネルとなった文句なしの最大手(・・・)。これが世界規模になると彼らの登録者数にダブルスコアの大差をつけるシルヴィア・ゴールドバーグのチャンネルがあったりするのだがそれは割愛。

10代からの圧倒的支持率を誇るぱやぶさ、そして渋すぎるゲームチョイスからニッチな層からの支持を得るガル之瀬の二人の影響力はコラボする三組とは比較にならない。彼ら二人が「神ゲー」と言えば凡作もヒットする、とまで言われるがそれがあながち嘘でもないのが恐ろしい。


トップモデル「天音 永遠」だからこそ分かる、この二人は生粋の感染させる側(インフルエンサー)であり………コラボなどする必要もない、この二人が新王側に就くと表明しただけで戦力比は大きく傾く。

新王が新大陸の亜人種を弾圧するつもりなのも恐らく承知の上なのだろう、永遠の予想が正しければ新王を説得する企画でも立ち上げるつもりなのだろう………永遠がそっち側だとしたら(・・・・・・・・・)絶対にそうするからだ。

シャングリラ・フロンティアは政治ではない、確実性のないマニフェストでも人を引っ張ってくる事はできる。新王アレックスの性質が周知されている上で「説得」という旗を降ればそれにつられて人が集まる。


「運営がこいつらに依頼した……? いや、そんなしょうもない直接干渉する運営じゃない、やるとしても新王側のリソースをサイレントで増やすくらいでしょ………だとすればこいつら自身の判断? 既に私が掌握しているサードレマ側では目立てないから?」


永遠の警戒の大部分はこのぱやガルチャンネルへと向けられている。


否、厳密にはそうではない。天音 永遠の警戒はぱやガルチャンネルの片割れであるぱやぶさ(・・・・)に向けられている。なぜなら彼女はこの男を知っているから。


かつて起きた三度の大炎上を全て自力で鎮火し、大規模な視聴者との企画を幾度となく成功させ、そしてガル之瀬とのチャンネル統合に踏み切る事で更なる知名度を得る世渡りの動き…………天然で出来る芸当ではない。己も「そのタイプ」だからこそ分かる。


「ぱやぶさ、こいつは……」


天音 永遠と同じで人を率いる事、人を操る事を得手とする生粋の軍師タイプだ。この男が敵として立ちふさがる限り、烏合の衆であるはずの配信者連合のクランはRPA最大の脅威として立ち塞がるだろう。


「ふっ…………いいじゃん、このままワンサイドゲームだとちょっと退屈してたところだし?」


理想を言えば苦労は少ないに越した事は無いと、そう思っていたのだが。強大な敵が現れたというのならば思考を切り替えるしか無いだろう。己とて手札がないわけでは無いのだ、大局的盤面を見る者として相対する敵が現れたというのならば真正面からぶつかるのもまた一興。少なくともNPCをいじめるよりかはずっとずっと楽しいだろう。


「上等だよ配信者連合、登録者数三割削るくらいのダメージ食らわせてやるから覚悟しとけってね」


笑う永遠の言葉が彼らに届く事はない。互いの認識が共有されたこともないのだから当然だ。だが…………彼らの衝突はそう遠くない。

Q.登録者数多すぎでは?

A.某メガネの人のゲームチャンネルが450万人なのでむしろ少なめに見積もってる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
しれっと新王側のリソースサイレント増加を読み切ってるの流石すぎる
[一言] 鉛筆の場合は派手に自爆テロ仕掛けるパターンもあるからなー てか、この配信者達が動いてるのって設定キチな創世さん的にはブチ切れ案件な気が……
[良い点] 王族の生理的に受け付けない顔のせいで、450万人越えの動画配信者が敵になって焦ってる鉛筆の図で笑う
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ