4-1 vs 3
「さぁ来いほら来いよっしゃ来い!!」
インファイトは魂のバトルだ、パワーとテクニックと何よりガッツが要求される。
ヘイトを引き付けるためのパワー! "皇金世代"のヘイトをこちらに向けるためにはサイナよりもヘイトを稼ぐ必要がある。だからこその【ウツロウミカガミ】の変則利用、ヘイトを捨てると考えるのではなくヘイトを置くと考える。ヘイトコントロールってのは二種類ある、自分が安全になるためか……あるいは自分を危険に晒して他者を安全にするか。
だが覚えておけ皇帝陛下、その気になれば俺は避けタンクにもなれる。「愚者」が実現するスキルの高速回転による怒涛のヘイト稼ぎから目を離すんじゃねえぜ。
生き残るためのテクニック! ヘイトとは憎しみであり注目、それを高めれば高めるほど奴の攻撃は俺に集中していく。あの「聖剣」と鎌の使用が解禁された剣鋏が、だ。
勢いよく開くだけで打撃になり得る鋏を巧みに使いこなし、僅かにでも気を抜けば天から「聖剣」が死を届けに振ってくる。だが逃げられない、ヘイト集めもあるが今一番使われてまずい技はエルダー以外の全ての個体が使う蠍の必殺……尻尾を伸ばしての360度回転だ。砲撃型の帝晶双蠍ですら使う伝統の技だ、避けれないわけじゃないが準備モーション中のサイナはそうじゃない。即ちインファイトだ、大回転を誘発させない距離は超至近距離の他にはない。
そしてそれらを実現する為の必須パーツこそが度胸! リアリティがあるということは恐怖もリアルって事だ、どんな格闘家にも大型車よりデカい蠍と戦ったことのある奴はいない。ファンタジーなフィクションがリアリティを得る事で新鮮な恐怖を生み出す、割り切って飲み込んで乗り越える事が最高ランクのリザルトに繋がるのだ。
「非人間アバターの経験はっ! こういう時に活きる!!」
犬、カブトムシ、トムソンガゼル、チーター、珍しいところではアイスクリーム。いやアイスクリームはどうなんだろう……役に立った事あるかなぁ? 灼熱の天ぷらアーマーとか過去にも未来にも役立つ事があるのか。まぁいいや、大事なのはモンスターが「どう動くか」の把握に役立つという事だ。
蠍になった経験はないが……いや! ザリガニと蜘蛛は経験があるので補強すればいける!!
ほーら目の前にうざったい獲物があるぜ、「聖剣」を初手から使ったって当たる確率は低い。だったら剣鋏を使うが定石だよな? 剣状態じゃ届かない、折り畳みながら鎌モードで掻き込む動き……はい見切った、空中に逃げたぜ来いよ「聖剣」!!
「ありがとうマクセルさん!!」
多重的円周運動と相対的立体運動の連続使用! 当たるルートにあえて身を晒す事で半オート回避を確定で発生させ、斜めに傾いた半径1メートル未満の極小円を描く事で同じ場所に舞い戻る。よし行けサイナ!ぶちかま……あ、ちょっと待て真後ろ!? その位置取りは不味い、そこは直線のルートで「聖剣」が……!!
「チッ、間に合え!!」
多重的円周運動逆回転! 半径は目算6メートル、サイナの前に出る地面から斜め45度に傾いた大円周……!!
気分はミスター太陽系の補欠、冥王星の気分だ。他のスキルで補強して巨大パイルバンカーを構えたサイナの前に躍り出た俺は眼前に突き刺したそれを引き抜き、逆再生するかのように真上からサイナへと振り下ろされる「聖剣」に左手を掲げる……!!
「契約者!!」
「構うな! 尻尾にぶちかませっっ!!」
副次的防衛挙動、損傷を前提とした変則パリングスキルは確かに「聖剣」を逸らし、俺とサイナに突きつけられた死の宣告を無効とした。
だがマクセル氏も流石に皇帝陛下の剣までは想定していなかったらしい、「聖剣」がいつの間にか備えていた光熱と厳密には弾いたのではなく自ら左腕を断たせる事で軌道変更させたが故に肘の先から消し飛んだ左腕をそのままに無事な右手で「聖剣」を指差す。
つーか蠍の尻尾素材は部位破壊しないとドロップしない、死闘激闘なんのその、チャンスがあるなら卑しく食いつくのがゲーマーよ!
「………了解:射出!!」
キュガッッッ!!!! という轟音に衝撃波をおまけで付けたようなインパクトが鋭利な先端を押しつけて"皇金世代"ご自慢の「聖剣」に炸裂する。地面に突き立っていた黄金の剣が腹にジェットパイルバンカーの一撃を受けた事で刺さっていた地面を大きく抉って掘り起こしながら弾き飛ばされる。
だが無傷じゃない、一撃で破壊こそされなかったが無敵に思えた「聖剣」には確かに───
「亀裂が入った! 次弾行けるか!!」
「謝罪:クラスVIII武装は一度きりの使用を前提としたレンタルです。再び申請する必要がありますが……再申請までに十五分かかります」
「一時間で四発アレが使えるなら上等だ! このまま追い詰めるぞ!!」
「具申:しかしながら契約者は左腕を欠損しています。これ以上の戦闘は危険かと」
「バカ言えサイナぁ! ようやくこれで剣の数がイーブンになっただけじゃねーか、殴れる! 蹴れる! 噛み付ける! 隻腕の剣術ならそこそこ出来るんだぜ俺は!!」
「……了解:この身砕けるま「いいや違うぞサイナ、どっちも無事で立ってなきゃあ勝利じゃない。俺は初見でも最高のリザルトを目指すんだよ!」
装備変更、もう晴天流は使えないし物理的に左腕がトんだから両手使用の武器も封じられた。だがだからどうした、ウチには十五分毎に超火力をぶっ放せるサイナがいるし片手で扱える武器だってある。
アラドヴァルを右手で構え、尻尾にヒビを入れた攻撃を警戒してか一度距離を取った"皇金世代"に視線を向ける。蠍に感情があるのかは知らないがいやに冷静な判断力だ、だが一呼吸入れて体勢を立て直せるのはこちらも同じ……おや? 何やら尻尾をブンブンと振り回して………一往復で光が蓄積されている! 溜め技! あの場所で! 遠隔攻撃!!
「くっ!!!」
アラドヴァルを握る右手を開いて装備条件を解消しつつウィンドウ操作! 女帝城の顕壁盾を展開して飛んできた斬撃を受ける!!
飛ばす斬撃が直撃した巨大盾が真後ろに勢いよく吹き飛ぶ……前にインベントリアに格納! その高熱故に地面を溶かして埋まりつつあったアラドヴァルを拾い上げて前に出る。
「サイナ! 戦術を戻すぞ、射撃に回れ!!」
「提案:当機が前衛を担当すべきでは?」
「その心配はないぞ、今から死ぬほど追いかけまわされるのはお前だから」
「……………」
さてどうしたものか、片手でヘイトを稼ぎ切れるかな?
だって切りたくなったんだもの、などと供述しており……