9階建てと12階建てのビル2棟の建設計画があったカザフスタンのプロジェクト用地に建物はなかった(情報提供者が撮影)

経済成長著しい中央アジアの都市で、高級住宅を建設―。

海外成長国への不動産投資をうたい、日本の個人投資家らから10億円以上を集めた「不動産クラウドファンディング」のプロジェクトをめぐり、不可解な事実が明らかになった。

建設予定とされていた住宅などの建設工事が行われないまま、投資家への配当と元本償還が行われていたのだ。

インターネット上で小口投資を募る「不動産クラウドファンディング」(以下、不動産クラファン)。

不動産会社などの参入が相次ぐ中、近年急速に成長しているサービスの1つ、「テクラウド」が募集したカザフスタンでの不動産開発プロジェクトだ。

楽待新聞の取材に対し、運営会社のテクラ社(横浜市)は、当初計画した建物が建っていない事実を認めた。

テクラ社は、プロジェクト自体を更地のまま売却したと説明しているが、建設が行われておらず更地のままであることについては、投資家への説明が行われていなかった。

日本の投資家の目が行き届かない海外の投資案件で、一体何が起きたのか。10%を超える想定の利回りで投資家への配当と元本償還が完了しているとは言え、売却する建物が存在しない中でそのお金はどこから来たのかという疑問が残る。

完成しているはずの建物「存在せず」

「テクラウド」では2022年から2023年にかけて、カザフスタンでの住宅建設などを目的に複数のプロジェクトを立ち上げ、日本の投資家から総額約80億円を募集。このうち、最も大きいプロジェクトでは募集総額が38億円超にのぼる。

いずれも順調にプロジェクトが進んで売却が完了したとして、投資家へ想定通りの配当と元本の償還を今年2月までに終了していた。

ところが、今年3月、カザフスタン内の複数の現場に足を運んだという人物(A氏)から「完成しているはずの建物が建っていない」との情報が楽待新聞編集部に寄せられた。

現地で撮影された映像などを確認したところ、計画予定とされていた建物の存在を確認できなかった。

Heiwa Residenceの完成イメージ(出典:テクラウド公式サイト)

Aさんが撮影したHeiwa Residence開発予定地周辺の様子。写真中央に見える壁画が公式サイトの完成イメージ写真の壁画と似ている。本来なら写真右手に建物が完成しているはずだが、それらしき建物は見当たらない(A氏提供)

テクラ社「問題のない計画変更」

これらの情報をもとに、楽待新聞編集部は、運営元のテクラ社に対し質問状を送った。

テクラ社は、カザフスタンの2つのプロジェクトについて、当初計画した建物が建っていない事実を認めた。

ただ、更地のままでプロジェクト自体を現地のデベロッパーに当初の想定価格で売却したと説明。配当や元本償還の原資については、その代金を充てたという。

投資家に適切な説明を行わずに、当初の計画から大幅な変更を行ったことについては「投資家の利益を損なわないことを第一に考えて決定したものであり、問題の無い計画変更」との認識を示した。

テクラ社が主張するように、テクラウドがこれまで募集したファンドではカザフスタンの案件を含めていずれも、償還遅延や元本割れなど投資家への不利益は発生していないことは事実だ。

ただ、当初建設予定だった建物が建設されていないにもかかわらず、更地のままで当初の想定価格で売却したなどの説明は、日本における通常の不動産取引の実情に照らすと理解しがたい。

既存ファンドに出資した投資家のみならず、今後テクラウドに投資する可能性のある人たちの投資判断に影響を与える情報の公開が適切に行われたのか、という疑問も浮かび上がる。

ファンドの運営会社が発行した投資家向けの運用レポートでは、1つのプロジェクトの進捗について「建築工事がすべて完了した」と記載があったことが判明。

不動産クラファンなどの運営ルールを定めた不動産特定共同事業法では、投資判断に影響を与える事柄について事実と異なる内容を伝えるなどの「不実の告知」を禁止しており、同法に違反した場合、行政処分の対象となる可能性もある。

楽待新聞編集部では、入手した現地映像やテクラ社からの回答をもとに、謎に包まれたカザフスタンプロジェクトの真相を探った。

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(楽待新聞編集部)