携帯電話がなかった時代、駅での連絡手段や待ち合わせ場所として機能していた「伝言板」が各地の駅で復活し、話題を呼んでいる。使用方法はかつてと異なるようだが、好評によりJR西日本は一部の駅での常設を検討している。交差する物珍しさと懐かしさ。「1億総スマホ時代」に現れたアナログな存在が、いつの時代も変わらぬ人と人のつながりを映し出す。
「つぶやき」に近い
<黄砂と花粉のW襲来。SOS!><こうべ(神戸)からかえったよ>―。3月末、京都市中京区のJR二条駅の伝言板には、こんな書き込みがあった。内容の大半は個人的な出来事をつづったもので、交流サイト(SNS)での「つぶやき」に近い。
伝言板は駅の改札近くにあり、13行の枠で仕切られている。多くの利用客がチョークを走らせており、土日には半日で黒板が埋まることも。書かれたものは終電後、駅員が消している。
伝言板が設置されたのは昨年6月。山陰線(嵯峨野線)の嵯峨(現・嵯峨嵐山)-園部間の開業125年を記念したイベントに絡み、駅員の小野湧登(ゆうと)さん(24)が発案。「何か懐かしさを感じられるものを」と探していた際、今は姿を消した伝言板のアイデアを思いついたという。
伝言板の存在はSNSでも広く拡散。好評を受けてJR西日本は常設する方向で検討している。
中には学校や仕事に行きたくないといった書き込みもある。しかし、そこからが令和の伝言板の真骨頂。<頑張れ!><どうしたの?>。ほかの利用客が励ましたり、心配したりする掛け合いも見られ「人間味あふれる伝言板」(小野さん)となっているのが特徴だ。
小野さんは「伝言板を通じて人と人がつながり、駅が活気づいている。設置してよかった」と話した。
駅が交流の場に
伝言板は新型コロナウイルス禍でも存在感を発揮した。<自由に出かけたい><両親に孫の顔を見せたい>。JR東神奈川駅(横浜市神奈川区)の改札口では緊急事態宣言下の令和2年春、伝言板が設けられた。利用客がそれぞれの思いや願いを書き込むことで、社会の閉塞(へいそく)感を和らげようとする試みで話題を呼んだ。
現代のテクノロジーと融合し、進化を遂げた伝言板もある。ジェイアール東日本企画(東京)が、4年9月からJR総武線の一部駅で設置したのが伝言板機能のあるデジタル駅メディア「街あわせくん」だ。スマートフォンなどから専用ウェブサイトにアクセスし、駅を選んでメッセージを投稿。その後、それぞれの駅にある街あわせくんにメッセージが表示される仕組みになっている。
利用は無料。利用者は増加傾向にあり、おすすめの飲食店を載せるなど楽しみ方は多様だ。担当者は「駅が通過するための場所ではなく、コミュニケーションの場になってほしい」と話している。(堀口明里)