ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

120 / 225
第110話:恐慌

 ※※※

 

 

 

【アーマーガア<ギガオーライズ> わるがらすポケモン タイプ:鋼/ゴースト】

 

 

 

(……先ずは作戦其壱!! ヤツの鏡を封じ込めるでござるッ!!)

 

 

 

 バンギラスが巻き起こした砂嵐が、次第に強烈になっていく。

 アーマーガアの展開された鏡に、砂が纏わりついていき、次第にびっしりと敷き詰められていく。

 あっと言う間に鏡は砂塗れになり、何も映らなくなってしまうのだった。

 

(──すながくれ忍法・砂隠しの術!!)

 

「おっと? 鏡が──」

 

(マガツフウゲキは、鏡にエネルギーを跳ね返して増幅させることで放つオオワザ……ッ!! あの合わせ鏡の技も同様!! ならば先ず、鏡を封じれば良い!!)

 

「ルカリオッ!! はどうだんッス!!」

 

 動きを止めたところに、ルカリオが波動弾を何発も鏡目掛けて放つ。

 しかしそれを、軽く羽ばたいただけでアーマーガアは掻き消してみせた。

 

「んなっ……!?」

「霊体の身体に、その技は効かねえよ!!」

「ゴーストタイプッスか……! クソッ、相性最悪じゃねーッスか!!」

「なら炎技だ!! アブソル、むねんのつるぎ!!」

 

 アブソルの刀の如き尾が伸び、アーマーガアの胸は刺し貫かれた。

 普通のポケモンならば、それで倒せてしまうだろう。

 しかし、ぐらりと揺れたアーマーガアは、嘲笑するように口元を歪ませるとすぐさま再び羽ばたいて態勢を立て直してしまうのだった。

 すぐさま貫かれた箇所も再生してしまう。

 そして、その風圧だけで鏡に敷き詰められた砂は全て吹き飛ばされ、更にバンギラスの放つ砂嵐の風向きさえも変えられてしまう。

 弱点を突いたにも拘わらず、全くと言って良い程ダメージを受けた様子が無いのである。

 

「──おーん? メガシンカポケモンがどんなもんかって気になってたけどよ──こんなもんか」

「俺達……弱点、突いたんだよな……!?」

「あ、ああ、あの身体、間違いなく鋼でござるが……ッ!!」

「オイ、下らねえ戦いしてっと、とっとと潰しちまうぜ!!」

 

 弱点を突かれた程度で、タマズサのアーマーガアが倒れるはずも無かった。

 ダイマックスポケモン並みに巨大化した肉体には、そもそも攻撃が通じていない。

 

「オオワザ──”マガツフウゲキ”!!」

 

 嵐が逆巻く。

 そして、鏡から放たれた電撃が嵐に巻き込まれていき、更に威力を増していく。

 風圧でメグル達は動くことすらままならない。

 間もなく高圧縮された渦が、大筒のようにメグル達目掛けて放たれるのだった。

 それを真正面から受け止めるのは──バンギラスだ。

 

「ッ……バンギラス!! 何とか持ちこたえるでござるよッ!!」

 

 押されていたバンギラスだったが、何とか真正面からオオワザ・マガツフウゲキを抑え込み、自らの放つ砂嵐で相殺せしめたのだった。

 

「おーおー、やるねェ。俺様、マガツフウゲキを受け止められるのはこれで2度目なんだよなァ。1度目は──あのジジイだったが……あのジジイのラグラージはすごかったぜェ」

「ッ……それ以上汚い口で、リュウグウ殿を語るなッ!!」

 

 バンギラスが突貫する。

 それに合わせてルカリオも護衛するように付き添い、アーマーガアに共に攻撃を叩きこむ。

 

(キリさん、いつになくキレてるッス……! 無理もねーッスけど……!)

 

「貴様の所為で! ポケモン達は”おや”を喪い、シャワーズは身心衰弱……あれから、部屋から出て来られない!」

「おっと──さっきよりも速度が上がってんな、そのデカブツ。すげーな、ダンスとか習ってた?」

「ましてや、リュウグウ殿のポケモンを──イルカマンを! あのように無理矢理戦わせるなど! どれほど彼を侮辱すれば気が済む!!」

「侮辱してねぇよ? むしろ、称えてやってんだぜ。俺様に使われて、死ぬまで戦える権利をくれてやった。光栄に思えや」

 

 アーマーガアのドリル嘴がバンギラスの身体を捉える。

 そして、飛び掛かって来たルカリオを迎撃するのは、鏡から現れたアーマーガアの分身だ。

 

「増やしていくぜ。徐々に徐々にだッ!! さあ、何体分まで耐えられる?」

「ッ……増えたッス……!!」

 

 ぐん、とアーマーガアの大きさが少しだけ縮み、更にもう1匹分身が増えた。これで合計3匹。

 しかしそれでもパワーは変わっていない。

 アイアンヘッドの一撃でバンギラスをぐらつかせ、ドリル嘴でルカリオを啄み、叩き落とす。

 更に影からアーマーガアを引きずり込むアブソルも、増えた3匹目の分身が”くらいつく”で無理矢理アブソルを引きずり出したことで、無力化されてしまうのだった。

 

「今度は3発分だ!! ”マガツフウゲキ”!!」

 

 3匹のアーマーガアから大竜巻が放たれる。

 それを正面からバンギラスが受け止めようとするが──残る2つも同時に襲い掛かり、押し留めることが出来ない。

 

「全員伏せるでござるよッ!! バンギラスの影に!!」

 

 轟轟と竜巻が巻き上がり、雷鳴が鎧を抉る。

 その間、メグル達はずっと、吹き飛ばされないようにするので精一杯だった。

 

「──ストーンエッジ!」

 

 キリの叫びと共に、岩の剣がアーマーガア──ではなく、その背後にある鏡目掛けて飛ぶ。

 すぐさまアーマーガアは自らの身体をずらし、それを受け止めてみせた。

 

「ッチ──それでまだ攻撃する余力があんのかよ!! だがなぁ、竜巻はそのくらいじゃあ止まらねえぜ!!」

 

 再び竜巻が巻き起こされ、バンギラスに叩きつけられる。

 が、それも全て正面から受けきってみせるのだった。

 しばらくすると、あれほど荒れ狂っていた竜巻の束は、掻き消える。

 

「す、すげぇ……!! オオワザ3発分を受け止めた……!!」

「……いや……!」

 

 ぐらり、と巨体が揺れる。

 そのまま地面にバンギラスは倒れてしまい、メガシンカも解除されてしまった。

 

「バ、バンギラスがやられた……ッ!!」

「……流石に耐えなかったか……ご苦労でござるよ」

「これからどんどん、あのマガツフウゲキは増えていくんスよね……!? どうやって対処すれば──」

「……やはり、鏡でござる」

 

 ぽつり、とキリは言った。

 

「あの鏡を狙った時、アーマーガアの1匹は身を挺して鏡を庇ったでござる。オオワザを中断しなければいけない程に重要なのでござろう。やはり、奴がオオワザを放つ最中、それこそが最も無防備になるタイミング……!」

「でも、風圧で近付けない……一歩前進と言えば一歩前進だけど」

「分かったところで、できるかどうかは別問題ッスよ!!」

「そうだぜェ? 確かにマガツカガミの弱点は、他でもねえこの鏡だ。だけど、簡単に叩かせると思ってんのかァん!?」

 

 鏡が光り、そこから電撃が放たれる。

 技ですらない、鏡の持つ自衛機能だ。

 更に、それを追い立てるようにして3匹のアーマーガアがルカリオを、そしてアブソルを狙い撃つ。

 

(け、桁違いだ、相手はまだ本気を出してないのに……ッ!! 鏡を砂で封じる作戦もダメ、アブソルで影から縛り付ける作戦もダメ、ルカリオで鏡を叩き割るのもダメ、何ならコイツを倒せるんだ!?)

 

「ふるーる!!」

 

 ぐるり、とアブソルが振り向く。

 未来が見えるはずの彼女が、逃げずにこちらを見ている。

 弱気になっていたメグルだったが、何となく彼女が言わんとしていることが分かった気がした。

 

 

 

 

「ふるーる♪」

 

 ──大丈夫だよー♪ 運命の人、私に任せてー♪

 

 

 

 ふにゃり、とアブソルはメグルに微笑みかける。

 それだけで大丈夫だ、とメグルは自らに言い聞かせる。

 

「……まだいける。まだやれる。手が、無くなったわけじゃない」

「ッ……メグル殿」

「バンギラスがやられた時は、役割をスイッチするって言ってましたよね、キリさん」

「ああ。……だが、未知の領域だ。大丈夫なのか?」

「コイツがやる気なんです。俺も応えてやらねえと」

 

(俺は、こいつの未来予知を信じる。俺が信じてやらないで、他の誰が信じるんだ?)

 

「バンギラスもやられたんス。くれぐれも要注意ッスよ」

「……此処からは拙者とノオト殿でヤツの鏡を狙う。メテノ! 狙撃を頼む!」

 

 キリがメテノを繰り出す。

 

(……流石のアーマーガアも疲弊してる……! 只舐めプしてるわけじゃない、使えないから連発出来ないんだ!)

 

「その隙を突く!!」

「ふるーる!」

 

 メグルは錆びた刀を握り、宙高く放る。

 そして、オージュエルを指でなぞった。

 

「……これしか、思いつかなかった!! 先ずは、タイプを変える!!」

 

【さびたかたなと オージュエルが反応した!!】

 

「何だ? 何をするつもりだ? ワクワクしてきたぜェェェーッ!!」

「カ、カァ……!?」

 

 アーマーガアさえも怯む覇気がアブソルから放たれていた。

 鎧がアブソルの身体に纏わりつき、翼が生えていく。

 そして、咥えた錆びた刀がオーラとなって分解され、彼女の身体に纏わりついていく。

 

 

 

「──ギガオーライズ。”アケノヤイバ”!!」

 

 

 

 頭には霊魂の炎が浮かび上がり、最後にアケノヤイバの姿がオーバーラップして消え失せると、瞳には赤い炎が宿る。

 

【メガアブソル<ギガオーライズ> ざんれつポケモン タイプ:悪/ゴースト】

 

【特性:あけのみょうじょう】

 

「せ、成功ッス!! マジに、メガシンカの上にオーライズが重なったッス……!!」

「へぇ、それで? 強いのソレ」

 

 事も無げに言ってのけたタマズサは十手のオージュエルをなぞる。

 再びオオワザの構えだ。

 鏡が飛び回り、稲光を反射させて威力を増幅させ、大竜巻を起こそうとする。

 しかし、次の瞬間アーマーガア達の身体が一気に地面に引きつけられる。

 一瞬でメグルの目の前から消えたアブソルが、アーマーガアの下へ潜り込んだのである。

 そして自らの影を伸ばすと、そのままむんずと3匹共地面へ引きずり込んでしまった。

 

【アブソルの シャドークロー!!】

 

 すぐさま影の爪が3匹のアーマーガアを刺し貫く。

 さらにそこにルカリオが追撃を叩きこむ。

 

「そのまま動くなッス!! ”あくのはどう”!!」

 

 ルカリオが飛び掛かり、アーマーガア達目掛けて漆黒のエネルギー弾を叩きこんだ。 

 更に3体が怯んだ隙に、メテノが浮かんでいる鏡目掛けて──

 

「──叩き割るでござるッ!! ”からをやぶる”からの、”パワージェム”!!」

 

 ──瞬時に甲殻を自ら破り、火力と素早さを跳ね上げた上で”パワージェム”を撃ちこむのだった。

 ピキッ、と音が鳴り、鏡に罅が入る。しかし。

 

「──テメェらちょっと調子に乗り過ぎだ」

 

 アーマーガア達がすぐさま起き上がり、ルカリオとアブソルを風圧だけで吹き飛ばした。

 

「ッ……も、もう起き上がったんスか!? ”あくのはどう”で怯んだら、動けないんスよ!?」

「バァカ、その程度で俺様のアーマーガアをどうこうできると思ったら大間違いだ! 鏡だってヒビは入ったが割れちゃあいねえ!」

「全く以て、火力が足りてないでござる……!」

「ウソだろ!? 効果抜群技、叩き込んだんだぞ!?」

「──ギガオーライズに、メガシンカとやらを重ねるなんざビックリだぜ。だからこそ、本気で潰させてもらう」

 

 ちらり、とタマズサは赤い月の方を見やる。

 その拍動は先ほどよりも速く、そして力強い。

 

「もうじき、赤い月も目覚めそうだしな。残念だが此処でお遊びはお終いだぜ」

 

 天井付近まで飛び上がったアーマーガア達の後ろに、2枚の鏡が合わせ鏡のように開かれる。

 

「いけない!! メテノ、狙い撃て!!」

「ルカリオ、”あくのはどう”ッス!!」

「アブソル、オオワザだ!! 今なら──」

「アーマーガア、”いやなおと”で攪乱しろォ。オオワザを撃たせるな」

 

 アーマーガア達の羽根から甲高い金属音がかき鳴らされた。

 それにより、メテノも、ルカリオも、そしてアブソルも音圧に押されて技を撃てなくなってしまう。

 集中しなければ技は撃てない。アーマーガアや鏡を破壊するだけの威力の技ならば猶更だ。

 そして、この間の隙は間違いなく命取りであった。

 圧倒的物量による蹂躙の時間である。

 

 

 

「──遊びはシメエだ、潰せ(むげんあわせかがみ)

 

 

 ぶわぁっ、と音もなく小さく分裂したアーマーガア達が洞窟の天井を埋め尽くす。

 自らの存在を担保する2枚の鏡を守るように取り囲んでいる。

 小さくなってはいるものの、彼らの強さは全く変わっておらず、実質的な分身同然だ。

 そして、この数では何処に本体が居るかも全く分からない。

 

「無限に増えた……!!」

「カッカッカ!! テメェらも、あのジジイみてーにバラバラにしてやろうか?」

「ッ……発動させてしまった……!!」

「こ、この数は無理ッスよ……!」

 

 メグルはアブソルの方を見やる。

 彼女は未だに逃げるそぶりを見せない。

 

「無理、か──ポケモン勝負って何が面白いか知ってるか? タマズサ」

「あん? 知るわけねーだろ。蹂躙こそ、最高のエンターテインメントだ」

「例えば──技外し。自分がクソ外しに苦しめられることもあれば、逆に相手のクソ外しに助けられることもある。相手がこっちの特性やタイプを失念してる可能性もあったりするよな」

「……メグル殿?」

「メグルさん……?」

「俺は……こいつの見ている未来が何なのかは分からない。だけど、そもそもポケモン勝負ってのは何が起こるか最後まで分かんねーモンだ」

「ふるる!」

 

(美しくても負けは負け、無様でも勝ちは勝ち……って言葉、俺好きなんだよね。アブソル、お前には何が見えているんだ?)

 

「結末は決まってる。テメェらも、あのジジイと同じ運命を辿るんだッ!」

「メテノ!! 全力全開、メテオビームでござる!!」

「ルカリオ、てっていこうせんで押し切るッスよ!!」

「アブソル、”あかつきのごけん”で抑え込め!!」

 

 せめて一太刀。

 全員は全力を以て今出せる最大火力を放つ。

 だがそれでも、相手は数十匹にも分裂したアーマーガア。

 それが全て”マガツフウゲキ”を同時に放とうとしているのだ。

 

 

 

「マガツフウゲキッ!!」

 

 

 

 タマズサが号令を上げたその時だった。

 アーマーガア達の隊列が一気に乱れ、飛び散った。

 

「……は?」

 

 恐慌状態、とでもいうべきだろうか。

 何かを恐れたかのように、彼らは一気にバラバラに飛び始めたのである。

 そして互いにぶつかり、余計に隊列が崩れ──そこに隙間が生まれたのだ。ほんの、僅かな一瞬ではあった。

 しかしそこに、針の孔を通すようにして、何かがすっ飛んだのである。

 それは正確無比に、アーマーガア達が守っていた鏡を2枚共貫き──破壊したのだった。

 

「なっ……何やってんだアーマーガア!! そんな岩の塊、テメェの鎧なら受け止められて──」

 

 そう言い終わらないうちに、分裂したアーマーガア達は次々に消えていく。

 そして終いには、元の巨大な一匹へと戻ってしまうのだった。

 鏡は鏡面がバラバラに割れて砕けており、とてもではないが、何も映し出せたものではなかった。

 確かにタマズサのアーマーガアならば、岩の塊くらいは正面から受け止める事が出来た。ギガオーライズでタイプが変わっているので猶更である。仮に岩が直撃しようが、致命傷にはなり得なかった。しかし、彼らの隊列が乱れたのは、潜在的にこの種族が抱えている恐怖によるものである。つまり、それを見た瞬間に彼らはパニックに陥らずにはいられなかったのである。

 メグル達の視線は、アーマーガアの鏡を割った何かに向いた。

 巨大な岩の塊──ではない。それに腕と脚が生えている。目を回してはいたが、それが何なのかメグルにはすぐわかった。

 

「ゴ、ゴローニャ……!?」

「──お待たせしました!! 皆さん!!」

 

 全員は後ろを振り向いた。

 そこに居たのは──アルカ、そして一回り逞しくなったデカヌチャンであった。

 

 

 

【デカヌチャン ハンマーポケモン タイプ:フェアリー/鋼】

 

【アーマーガアを岩で撃ち落とし、ハンマーの素材にする。その狙いは正確無比。】

 

 

 

 アーマーガアの身体の鎧は鋼で生成されている。

 鋼タイプを失っているはずのヒャッキ地方の姿の個体も同様であり、特性に反映されている。

 アーマーガアという種族は、世界が変わってもこの種族からは逃げられないのだ。




パルデア式・アーマーガア殺し、炸裂──
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。