ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第105話:雷轟、吹雪、渦巻いて

 ※※※

 

 

 

「皆、出て来てくれ」

 

 

 

 ──その日の晩。

 拠点の外で、メグルは全てのボールを放り投げた。

 ニンフィア。

 アヤシシ。

 バサギリ。

 アブソル。

 シャリタツ。

 ヘイラッシャ。

 6匹が、真剣な面持ちで彼の目を見つめている。

 

「今回の相手はハッキリ言って──今までの比じゃないくらい強い。もしかしたら、死ぬかもしれない。俺も、お前らも」

 

 全員は黙りこくる。

 

「……それでも、命を懸けてでも戦う理由が俺にはある」

 

 目に浮かぶのは背中の傷。

 そして、蹂躙されたシャクドウシティ。

 もう、黙ってはいられなかった。

 

「だから──皆の命を、トレーナーの俺に預けてくれないか! 俺も、お前らにこの命を預けるッ!!」

 

 全員の意思は固まっている。

 皆、メグルを認めて此処まで付いて来たのだ。

 今更引き下がる理由などない。

 

「ブルトゥ!!」

 

 忠臣・アヤシシ。メグルの傍を離れるつもりなど、欠片も無い。最後まで付き従う覚悟だ。

 

「グラッシャーッ!!」

 

 用心棒・バサギリ。戦いに生き、戦いに死すことが彼の生き甲斐。

 

「ふるーる!」

 

 エース・アブソル。運命の人であるメグルを裏切ることなど、彼女に出来る訳もない。

 

「ラッシャーセー!!」

「スシー!!」

 

 偽竜の怪・ヘイラッシャとシャリタツ。二匹ならば無敵。恐れるものなど何があるだろうか。

 

「ふぃるふぃー!」

 

 ニンフィアが「今更水臭いのよ!」と言わんばかりにメグルに飛びついた。

 我らがお姫様は、常軌を逸した強敵を前にしても尚、怯える様子を見せはしない。

 

「……ありがとう。後は、イデア博士が何か策があるみたいだけど──」

 

 

 

「見ッッッつけたーッ!!」

 

 

 

 次の瞬間だった。

 空から何かがすっ飛んでくる。

 シャリタツとヘイラッシャ、そしてバサギリが構えるが、アヤシシとニンフィアが前に出てそれを諫めた。

 2匹にとっては、久しい相手だった。

 その甲高い声を聴いて、メグルは振り返り、飛び退いた。

 黒い影の鳥ポケモンが突っ込んできたからである。

 

「はぁ、はぁ、はぁ──ッ!!」

 

 地面にダイブしたグンカンドリのようなポケモンから、彼女は飛び降り、そしてメグルに駆け寄ってくる。

 金髪をコードのように何本も束ねて後ろに流した少女だ。

 

「ユ、ユイ……!?」

「……良かった」

 

 キャプテン代理・ユイ。

 彼女は、その場に出ているポケモン達がメグルのものだと判断すると──見ない間に彼が急激に成長していたことを実感するのだった。

 無理も無かった。彼女が最後にメグルを見たのは、イーブイとオドシシを連れてベニシティへ旅立つところ。

 その後、通話で会話こそしたが手持ちの変遷は見ていなかったのである。

 そしてメグル本人も、サバイバルの繰り返しで、心なしか頼りなさが消えていた。

 

「……はぁ、はぁ……見ない間に、見違えたじゃない……」

 

 その顔を見てか、ユイの目には涙が浮かんでいた。

 シャクドウの件を知っているメグルは、何と彼女に言えば良いか分からなかったが「良いの気を遣わなくって」と先に彼女が言った。

 

「……行くんでしょ。サイゴク山脈に」

「……ああ。テング団をブッ倒しにな」

「ほんっっっと、肝心な所でバカね。死ぬわよ。分かってるの? リュウグウさんも負けたんだから」

「だけど、あるもの全部、かき集めて挑むしかないだろ」

 

 メグルは拳を握り締める。

 

「分かってるだろ? これ以上、奴らの好き勝手にさせるかよ」

「……奇遇ね。あたしも同じよ。だけど、威勢だけじゃあテング団には勝てない」

「……それも分かってる」

 

 メグルは、ユイがやろうとしていることが分かっていた。

 彼女は今自らが抱えている激情を一度、全力を以てメグルにぶつけようとしている。

 ポケモンバトルと言う形で。

 そしてそれは、メグルも同じだった。

 

「あたしは……サイゴクを離れていたから、何も出来なかった。だけど……だからこそ、絶対にテング団を倒したい」

 

 ぎりっ、と歯を噛み締めると彼女は怒りに任せた様子で叫ぶ。

 

 

 

「ッ……町を滅茶苦茶にされて! おやしろも森も全部消し飛ばされて! リュウグウさんまで死んで──あたしの大事なもの全部奪っていったあいつらが許せないッ!!」

 

 

 

 まくし立て、そしてぶつけるように彼女は叫んだ。

 行き場のない怒りだった。

 それはテング団以上に、無力な彼女自身を責め立てるかのようだった。

 

「だから正直、藁にもすがりたい。だけど、同時に──あたしは君を失いたくない!! 君には、あたしがキャプテンになった後に、試練を受けにきてほしいの!!」

「俺だってそうしたいけど──此処で立たなきゃ、何のために強くなったか分からねえよ!」

「ワガママなのは分かってる! でも、これ以上、あたしの周りから……誰も居なくなってほしくないの。矛盾してるのは分かってる。分かってるけど、割り切れないのが人間でしょ……!」

 

 だから、と彼女は言った。

 引き留めるためではない。

 見定める為に、彼女はボールを構える。

  

「……君の覚悟を、これまでの道筋も見せて欲しい。あたしも、覚悟を見せる」

「絶対なんて無いけど──見せてやるよ。お前が居ない間に、俺が何をしてたかを」

 

 メグルは全員をボールに戻していく。

 ルールは3対3のシングルバトル。

 戦場は、太陽の沈んだ砂地。

 そこで行き場のない感情を抱えた二人のぶつかり合いが始まるのだった。

 すぐさまメグルはバサギリの入ったボールを投げ、そこにぶつけるようにしてユイはハイパーボールを投げる。

 閃光が迸り、互いの先発が現れるのだった。

 

「降れよ霰! これが極寒の地で鍛えた成果だ!」

「ブウオオオオオオンッ!!」

 

 ぴきぴきぴきと、樹氷が割れ、その中から雪男のようなポケモンが姿を現す。

 そして砂嵐は止み、雪が周囲に降っていく。

 気温が一気に下がり、冷え込んだのをメグルも感じ取った。

 

 

 

【ユキノオー じゅひょうポケモン タイプ:氷/草】

 

 

 

御大(ノオー)……ッ! 霰──いや、雪要員か! 電気タイプで雪っつったら、アイツしか有り得ねえだろ!)

 

「あたし自身がゼロから鍛え直す為に育てた面子、君に勝てるかしら!」

「確か雪状態だと、氷タイプの防御力が上がるんだっけか──!?」

 

 雪を身に纏った事で、ユキノオーの身体は更に膨れ上がる。

 防御力1.5倍の恩恵が大きいのは、バンギラスの堅牢さを見れば分かる通り。

 通常ならば耐えられないであろう攻撃も、悠然と耐えられるようになるのである。

 

「バサギリ、”がんせきアックス”で叩き割れ!!」

「ユキノオー”オーロラベール”で防護壁を展開しなさい!!」

 

 すぐさま摺り足で移動し、ユキノオーの脳天目掛けて斧を振り下ろすバサギリ。

 その一撃自体は通ったものの、それでも雪で塗り固められた強固な鎧は貫けない。

 そして直後に、オーロラ色の防壁がユキノオーの周囲に展開されてしまう。

 オーロラベールは、物理技も特殊技も軽減する強力な壁だ。

 

「そして、此処でユキノオーの出番は終わり。戻りなさい!」

「ッ……壁を張るだけ張って戻した──ってことはやっぱりか!」

「せいぜい、啄まれないように注意することね!!」

 

 すぐさま、流れるように彼女は次のポケモンを繰り出す。

 ユキノオーのゆきふらしに加えて、オーロラベールという二重のお膳立ての先にあるのはエースの降臨だ。

 それにユイは、全幅の信頼を置いている。

 

「──パッチルドン!! ショートさせてやりなさい!!」

 

 雷光を放ちながら、それは顕現した。

 氷に包まれた魚のような下半身、そして鼻水を垂らした鳥の如き上半身。

 その二つが歪に繋ぎ合わされたキメラのようなポケモン。

 メグルの世界では”カセキメラ”と呼ばれている凶悪な性能のポケモンであった。

 

(H90 A100 B90 C90 D80 S55!! 両刀鈍足、パッとしない種族値だけど、もしあいつが夢特性なら話は別! つーか、雪をわざわざ降らせた時点で確実に”ゆきかき”!!)

 

 素早さに努力値を振り、そして”ゆきかき”が発動しているとき、パッチルドンはザシアンさえも超える速度を手に入れる。

 

「雪によって重装甲と俊足を手に入れたパッチルドンに、敵うヤツなんて居ないんだから! ”でんげきくちばし”!!」

「バサギリ避けろ!! 当たったらアウトだ!!」

「遅い遅い遅いッ!! 雷光直下、黒焦げになりなさい!!」

 

 パッチルドンの嘴が黄金に輝く。

 そして一瞬でその姿を消し、バサギリの胴体を貫くべく迫り、雷を落とすかのように激しい突きを見舞う。

 ドガン、と落雷の如く轟いたかと思えば、地面は穿たれ、大きなクレーターがそこに現れた。

 その一撃を、バサギリは地面に強く斧を叩きつけて跳躍したことで辛うじて回避するが、曲がる稲妻の如くパッチルドンもまた跳躍し、バサギリを異次元の速度で追撃する。

 

「有り得ねーだろ、どうなってんだソイツ!!」

 

(いや、元の性能を考えれば有り得なくはないんだけど、だとしてもだろ!?)

 

「鍛えたのよ!! ……滅茶苦茶強い人と一緒にね!」

 

 

 

 ──先ずはザシアンの素早さに追いつけるところから始めないとね! 

 

 ──正気?

 

 ──カレーもいっぱい食べたし! 大丈夫だよ!

 

 ──あんたのカレーへの異様な信頼は何処から出て来るの!? カレーを食べても無理なモンは無理なんだから!!

 

 ──逆にカレーを信じられないの!? カレーは最強の万能料理なんだよ!?

 

 ──でも、それくらいやらないと──きっと、他のキャプテンには追い付けない……ッ!

 

 

「──うん。やっぱり今考えてもおかしかったわね」

 

(何やってたのか分かんねーけど、恐ろしい特訓をしていたことだけは分かる……)

 

「おかげさまで、雪が降っている状態なら、パッチルドンの速度は誰にも負けないし、鋼の装甲もブチ抜けるようになったんだから!!」

 

 異次元の速度で移動するパッチルドンに掴みかかるバサギリ。

 しかし、今度は放電を放ったことで弾き飛ばされてしまい、地面に叩きつけられてしまう。

 

(速度、耐久、火力、どれを取っても凶悪過ぎる……ッ!!)

 

 タイプ相性による耐性は劣悪。

 鈍足の上に火力も耐久も中途半端。

 しかし、雪とオーロラベール、ゆきかき、更に──相手よりも先手を取れば威力が倍増する”でんげきくちばし”によって、パッチルドンは一気に最強クラスのポケモンへとのし上がる。

 何より恐ろしいのは、威力が桁違いに高い”でんげきくちばし”だ。

 掠るだけでも致命傷は免れない。

 

「”がんせきアックス”!!」

 

 ばらばらと岩の破片をばら撒きながら、バサギリはパッチルドンを切り付ける。

 しかし、オーロラベールによって増強された装甲を穿つことは叶わない。

 カチン、と音を立てて岩の斧は弾かれてしまうのだった。

 

「これでお終い!! ”でんげきくちばし”!!」

 

 稲光が光り、落雷が轟く。

 再び地面にクレーターが開いた。

 その中央には、バサギリがぐったりと倒れているのだった。

 

【でんげきくちばし タイプ:電気 物理 威力85 相手よりも先に技を出した時、威力が倍になる。】

 

 

 

「何々!? 何事!?」

「とんでもない音がしたッスよ!?」

 

 

 

 その時だった。

 爆音を聞きつけてか、ノオトとアルカが駆け付けて来る。

 そして──パッチルドンの姿を見るや否や、アルカは目を輝かせる。

 

「すっごい!! パッチルドンだ!! サーカス以来だよ!!」

「いや、それよりも何でメグルさんと──ユイさんがバトルしてるんスか!? つーか、ユイさん何で此処に!?」

 

 見知ったキャプテン代理がいきなり押しかけてきたこと、そして彼女がメグルとバトルしていること。

 ノオトは情報量に頭が付いて行かない。

 そればかりか、周囲にはパッチルドンがブチ開けたと思しきクレーターが幾つも穿たれている。

 

(あれってユイさんの手持ちッスよね……!? ガラルに行ってたって聞いてたけど……何なんスかコイツ!? 強すぎっしょ!?)

 

「……ギャラリー来ちゃったんですけどぉ」

「たははは……ノオト、アルカ、手出しは無用だ! これは、ガチの差し合いだからな!」

「そうね。──トレーナーとしての、意地の張り合いなんだから!!」

 

 メグルは倒れたバサギリを引っ込める。

 そして次に繰り出したのは──アブソルだった。

 

「サイゴクのアブソル……ッ!!」

「超強化されたそいつ相手は……やっぱり全力出さなきゃダメみてーだな!」

「……良いわ。来なさい!」

 

 メグルはメガストーンを指でなぞる。

 カンムリ雪原での過酷極まる修行を終えて帰ってきたユイ。

 そして、雪を身に纏い走るパッチルドン。

 メガシンカを使うには惜しくない相手だ。

 

「アブソルッ!! 俺達の全力をパッチルドンにぶつけるぞ!!」

「ふるーる!!」

 

 高濃度のエネルギーがアブソルに収縮していく。

 そして、びきびきと音を立てて、それはタマゴの殻のように弾け飛んだ。

 その尾は更に鋭く、そして強靭に伸び、目からは赤い光が迸る。

 筋肉は膨れ上がって首元の体毛も増え、どっしりとした鎧武者の如き佇まいだ。

 

 

 

【メガアブソル(サイゴクのすがた) ざんれつポケモン タイプ:ゴースト/格闘】

 

 

 

「おにーさんのアブソルも、メガシンカした!!」

「これなら押せるッスかね……!?」

「どれ程の実力か見せて貰うんだから!! ”でんげきくちばし”!!」

 

 地面を蹴ったパッチルドンが腹で滑走しながらアブソルに迫る。

 しかし、動じることなくアブソルは最低限の動きでそれを宙がえりして避けてみせると、自らの真下にパッチルドンが通過した瞬間──自らの影を刃のように変えて、串刺しにしてしまうのだった。

 当然移動中に攻撃を受けたパッチルドンは大きくバランスを崩し、向こうの岩に突っ込み、それをバラバラに砕いてしまうのだった。

 未来が見えていたとしか思えない、だとしてもパッチルドンの恐ろしい速度を上回る不意を突いた攻撃を前に、ユイは唖然としてしまう。

 

「ウ、ウソ、何が起こったの……!?」

「”かげうち”か……! ”かげうち”だよな!? じゃなきゃ説明が付かない……!」

「ふるーる」

 

 落ち着いたたたずまいで、アブソルは再び突っ込んでくるパッチルドンを見据える。

 素早さに特化すれば、一般ポケモン最速クラスのテッカニンすら追い越すゆきかき状態のパッチルドンを前にしても、全く引けを取っていない。

 しかしそれでも、迸る電撃によってダメージは受けてしまっているのか、がくり、とアブソルは膝を折ってしまう。

 

「ふるる……ッ!!」

「サイゴクのアブソルのメガシンカは初めて見たわね……ッ!! だけど、次は無い!!」

 

 突貫してくるパッチルドン。

 しかし、アブソルは動じない。

 そして、その意味をメグルも理解していた。

 そしてくちばしに電撃を纏わせた途端、パッチルドンが痛みで悶えて転がる。

 周囲には岩の破片が転がっていた。

 その意味をユイは瞬時に理解する。

 

「ステルスロック!? ……バサギリの──!!」

「そうだ! 突き刺さった破片は今も、パッチルドンにダメージを与え続けているんだ!」

 

 ”がんせきアックス”の本領は、高い火力だけではなく、周囲に見えない岩をばら撒くステルスロックを展開できるところにある。

 ゲームのように出てきた相手に踏ませてダメージを与える地雷のような使い方だけではなく、相手に直接突き刺して継続的にダメージを与え続ける使い方もできるのである。

 バサギリが序盤に必死でパッチルドンに喰らいついていったのは決してムダではなかったのである。

 そしてアブソルは未来が見えるので、ステルスロックでパッチルドンが悶絶するタイミングをきちんと予測し、一気に距離を詰めた。

 

「雪の身体も溶かす、熱い一撃くれてやれ!!」

「ふるーるッ!!」

 

 アブソルの長い尾に鬼火が纏われる。

 それをパッチルドンに突き刺し、轟!! と燃え広がらせた。

 

「”おにび”!!」

「ッ……しまった、パッチルドン!!」

 

 その身体は、幽霊の炎に焼かれ、火傷を負った。

 それにより物理攻撃力は一気に低下。でんげきくちばしの威力も、常軌を逸したものではなくなってしまう。 

 更に、手をこまねいていたからか、雪も止み、そしてオーロラベールも伴って解除されてしまう。

 魔法の時間は終わった。

 すぐさま起き上がり、今度こそ”でんげきくちばし”を喰らわせるパッチルドン。

 だが、火傷で弱体化してしまっている以上、アブソルの堅牢な毛皮を貫くには至らず──

 

「──これで終わりだ!! ”むねんのつるぎ”!!」

 

 ──青い炎に包まれた長く鋭い尾を脳天に突き刺されてしまうのだった。

 それは、パッチルドンの生命力をぐんぐんと吸い取っていき、アブソルは自らの体力に変えてしまう。

 散々に大暴れしたエース格・パッチルドンは、その場で倒れてしまうのだった。

 

(とはいえ、幾ら火傷していたとはいえアブソルとは思えない耐久力だ、原種とは別物じゃねーかコレ!?)

 

 メグルの推測は正しい。

 幽気を身に纏ったサイゴクのアブソルは、原種とは異なるメガシンカを遂げる。

 防御力は屈強な肉体によって底上げされ、特殊防御力は全身を焼く鬼火によって引き上げられる。

 素早さこそ据え置きだが、それを強力な未来予知で補っているのだ。

 

(このまま後1匹くらいは持っていきたい……!)

 

(と、とんでもない戦いだった……! でも、まだ互いにポケモンが残ってるんだよね!? あの女の子、まだ余裕な顔してるし──嬉しそう?)

 

 アルカはユイの表情を見やる。

 高揚したような笑みを彼女は浮かべていた。

 

(おにーさんも、真剣だけどバトルを楽しんでる……ッ! ちょっとだけ、羨ましいかも──!)

 

「すごい。流石よ、メグル君。だけど……メガシンカを使えるのが君だけって思わないで」

「!」

「──ユキノオー、もう一度出てきなさい!」

 

 ずしん、と音を立てて再び樹氷の化身が姿を現す。

 その身体に、ばら撒かれたステルスロックが刺さるが、それを気にする様子もない。

 周囲には雪が降り積もり、ユキノオーの身体を屈強な物へと変える。

 そして、ユイは己の腕に巻かれたメガリングをなぞる。

 

(しょげてる場合じゃねえ……ユイは本気だ! 情けねえ戦いしてたら、それこそリュウグウさんに合わせる顔がねぇよ!!)

 

(不思議ね。こんな時だってのに、君とのバトルに……あたしは心を躍らせてる。リュウグウさん──見ててね。あたしは、大丈夫だから!!)

 

「……ブオオオオオオン!!」

 

 咆哮したユキノオーの胸元には、ペンダントが見える。

 そこにはメガストーンが埋め込まれている。

 

 

 

「ユキノオー、頼んだんだから!! メガシンカ!!」

 

 

 

 ──その進化が始まった時、砂地は凍えて、スケートリンクへと変わる。

 極寒の世界が、メグルとアブソルを襲った。




【メガアブソル(サイゴクのすがた) ざんれつポケモン タイプ:ゴースト/格闘】

種族値:H65 A147 B138 C60 D100 S55
特性:きれあじ

原種とは真逆の重装甲アタッカー路線。
サイゴクアブソルは”きれあじ”の補正が掛かる上に相手の体力を吸収するむねんのつるぎを習得するため、粘り強い戦いが可能となった。
また、特有の未来予知は健在。おみとおしこそ無くなったものの、メガシンカしたことで発達した角によって数秒先に起こる事象ならば正確に捉えることができる。
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