заткнись!
我慢できなかったよ
・多重的円周運動
リキャストが異様に長い代わりにスキルの解除が任意という中々にカッ飛んだスキルだが、円周運動しかできないという妙なスキル。
解除条件は一歩でも円周運動ではない方向に踏み出す事……こと俺が使う場合に限り、凄まじく悪い事に使えそうな気配がするが、あえてそれをせずに使った感想としては徹底的に攻める時か、徹底的に避ける時にしか使えないって感じか。
敵を中心に据えて周囲を回りながら攻撃を加えるとかがコンセプトなのかと思ったが、ドッジボールが根幹にあるなら多分これ敵チームの内野と外野によるボール回しに対応するための動きだな。
・螺旋的確保挙動
読んで字の如く、ボールをキャッチするように攻撃をガードするのかと思ったが実際はパリィと掴み技のハイブリッドみたいなスキルだった。
実戦での検証による一例としては人形の放った蹴りを両手で包むように逸らして掴む、といった動きが出来た。そこから先はお好きなようにってところだろうが問題は両手で抱えられない大きさの物体やそもそも触れられないものに対しては無力って事だろうか……と、思ったら掌に限りある程度のダメージ軽減効果だそうで。要検証だがグローブ系の装備を付けていても使えるなら評価を三段階くらい上げていい。
・副次的防衛挙動
手や足であえて攻撃を叩く事で威力を減衰するガードスキルだ、俺が使うと即死する上にパーティメンバーを守る前提なのでそもそもプレイスタイルと噛み合わせが悪すぎる。
というか何故これだけ素手限定のスキルなんだ、多少は自身へのダメージカットがあるようだが使い道あるのか? いや無いだろこれ、体力調整にしたって封雷の撃鉄・災で事足りる辺り、本格的に使い道がない。
・相対的立体運動
今回の「これ性能大丈夫?」枠、敵の攻撃に対応して半オートで回避挙動を取るスキル。
何がヤバイってこれ空中で発動するとしれっと空中ジャンプする事、半オートってのは使用者が攻撃を認識してる必要があるってだけで実質オートで回避挙動をしてくれるってのは中々にヤバいのではなかろうか。
しかもこれ多重的円周運動の効果を持続させたまま同時使用できるので緊急の回避にも使えるし、あえて攻撃に当たりに行くことで円周の軌道を変更出来る。
結論から言えば、マクセル・ドッジアーツはとても有能。なんなら近接軽戦士のテンプレに入るまであるんじゃないかこれ、副次的防衛挙動ですら多少は使えるタンク技と考えれば選択肢として残す意味はある。
「ニンジャ・アーツにしなくてよかった……」
フラッシュメモリー枠は既に晴天流も習得しているから二枠使っていることになる、これ以上増やすと他のスキルに影響が出るというならここが限界だろう。マクセル・ドッジアーツの性能次第じゃどうにかして忘れる方法を模索するところだった。
ではそんな有能スキルを習得した結果どうなったか、それはこの全方位から滅多斬りにされて崩れ落ちた戦闘用人形が全てを物語っている……スキル縛り(あとアクセサリー縛り)した上でこれなのだから、フル稼働させた状態でこれを使いこなせたら………いや待て、これオルケストラ戦がますます面倒臭くならないか? 向こうもこれをやってくるんだよな?
やはりシナリオ方面からオルケストラの謎を暴くのは急務だ、そして何よりあのクソガードによって妨害されたとはいえ、あと一歩まで追い詰めたこととサイナは無関係ではない。
「攻撃スキルなんざ元々殆ど持ってなかったとはいえ、結構時間かかったな……」
『素晴らしい戦いでしたよサンラク。そして……おめでとうございます、貴方は九層に行く資格と同時に、かつてこのベヒーモスを率いた男、アンドリュー・ジッタードールのラボに立ち入る資格を得た』
「で、そのラボはどこだよ?」
ちら、と視線を向ければ、そこにはもはや今にも泣き出しそうな顔を俯かせた征服人形が一人。
『エルマ=317、再征服計画に基づき契約を結んだのであるならば、契約者の望みを果たすのは当然の義務ではありませんか?』
「……肯定:」
『では迅速な行動をするべきです。アンドリューはどうしようもない夢想主義者でしたからね、征服人形が己のラボに来ることを彼は初期の段階から予見して───』
「なぁ「象牙」、ちょっといいか」
『なんですかサンラク、如何な質問にも答えましょうとも』
「ベヒーモスで一番メジャーだった言語は英語か?」
『……? 質問の意図が理解できませんが……そうですね、最終的には英語が大多数を占めましたが建造した時点から計測した場合はロシア語が一番でしょうか』
成る程成る程、ロシア語ね。
「だったらお前の母国語みたいなもんだろ? 言葉を合わせてやる、大事な事だからな……いいか「象牙」、あんたはまず空気を読む事をラーニングしろ」
善意悪意はこの際どうでもいい、空気読まずにウチのポンコツを曇らせまくりやがって。後で好感度上げるのに苦労するのは俺なんだぞ。
だから………
「ザトゥクニスィ」
『───。』
グローバルなマルチ環境にいるとお手軽に異文化交流できるのがフルダイブの良いところであり悪いところだ、こういう罵倒系の言葉ばかり堪能になるもんだから救いようがない。
だがシャンフロ世界のかつて存在したロシアも同じ言語を使っていたようで、俺の吐いた言葉は「象牙」に正しく伝わったらしい。これまで母親面、あるいは教師面していた「象牙」の顔が文字通り固まる。
あんたは何もかもざっくらばんに言い過ぎなんだ、秘密主義故に上っ面の愛嬌とおべっかは上手かった「勇魚」に空気の読み方を聞いてきたらどうだ。
「全く……やいサイナ、真実を見るのがそんなに怖いか」
「それは……いいえ、肯定します。私は今、恐怖している、と自己判断できます」
それが全ての答えだと思うんだがな……納得できないなら荒療治しかない。
要するにユニークシナリオ! とシステム的に特別扱いされてないだけで今の状況はロボ娘に対するギャルゲーと言っていいだろう。しかも中盤ちょっとあと辺りのルート分岐するまさにその瞬間に俺は立っている。
このまま行っていいのか、何か重要なフラグを拾い損ねていないか? そもそも征服人形にそんな好感度調整が必要とか思ってなかったから何も考えちゃいなかったツケを今支払わされている事に対して「じゃあ事前になんか言えよ」と思わなくもないが………あーダメダメ、言い訳ばかり考えても妙案は浮かばない。
要するに「サイナに自信をつけて」「もし不都合な真実が明らかになったとしても乗り越えるだけのメンタリティ」を持たせればいいんだよな? できれば短時間で………………いや無理では? 情報は全然集まっていないのに状況だけは進み切った感じがする、ここから新しくフラグを建てられるのか? CGの回収は可能なのか? シャンフロはセーブデータが一つしかないんだ、過去に戻ることはできない。
「………ええい、面倒臭い!!」
「どうしたですわ!?」
「おい「象牙」! 俺とエムルとサイナを外に出せ!!」
「!?」
何事かとレイ氏がこちらを見ているが、もう俺にはどうすればいいのかわからないのだ。だったらもう、サイナ自身が強く「己」を認識できるようにすりゃいいんだろ!? 面倒臭い承認欲求こじらせやがって、百の言葉で説得できない? だったら百の敵意で思う存分に注目させてやる!!!
「疑問:何処へ?」
「決まってるだろう………」
この俺のある種ルーティーン、金策でも素材困窮でも困った時は親友に相談するんだよ!!!!
話の流れをぶった斬り、いざや挑めや蠍狩り……!!