皇は既に君臨せり
ここに入った時点で十五人。
爆泳魚に三人仕留められ、ドミネイト・グリズリーに一人串刺しにされたので残り十一人。自発的に特定の層に永住したプレイヤーを差し引いても中々にハードな損耗だ、これがスラッシャーホラーならまだまだ死にそうだが。まぁ問題があるとすれば、
「ツチノコさんスキル構成見せてくださいよ!」
「見せれるもんなの?」
「武器何種類使ってるんです? 傭兵系列にしては武器種多彩過ぎますよね、まさかスキル無し運用?」
「スキル無し運用だよ、レベル急激に上がり過ぎて攻撃スキルがあんまりないんだよね」
「いやそれより自前のバフ何種類あるか聞きたいんだけど! それユニークモンスターの「呪い」っスよね? バフ飛ばしたらなんか弾かれたし」
「胴体と足に及ぶバフは全部弾かれるけどあれ「体内」からのバフは問題ないっていう抜け道がある、バフの性能より「どういう仕組みでバフが発生するか」で選んだ方がいい」
「あのデカい剣要求ステータスいくつなんですか? ツチノコさんのステだと明らかに持てない気がするんですけど」
「ステータス入れ替えるアイテムで一時的にSTRを上げてる。ただあれ使いこなしてるように見えたかもしれないけど実際はただ振り回してるだけだからロクにクリティカル出せてないよ、本来は別の防具とセット運用……あ、旧大陸産で頑張れば誰でも取れる武器」
「マジで!?」
人数は減ったのに質問の数は倍増したってことですかね、解せぬ。ただ、ドン引きから復帰したプレイヤー達の奮闘によって筍狩りは達成、なんとなく流れでキョージュが黒光りするカンムリタケノコを抱えることになり、「象牙」へと提出しているところだ。
「え? そういうの話しちゃっていいんですか?」
「……ここから先の話は乱数が絡む」
「あっ………」
「黒死の天霊ってモンスター知ってる? あいつ関連でユニークがあるんだよ」
「あのクソモンスに!?」
「ていうかあれ倒せないモンスターだと思ってたんだけど」
「回復ポーションを手榴弾代わりにするんだよアレ、多分回復魔法でも通る」
「はー……」
黒死の天霊は慣れると楽……でもないか、HPを削るのが楽なだけで攻撃行動は大体クソだし。でもまぁ慣れだよね、奴の影と状態異常付与にだけ気を付ければいけるいける。
そんな感じで適当に受け流していたのだが、ふとレイジ氏(ライブラリがいなかったために三人犠牲者を出した五人組の生き残り、凄い)が呟いた言葉は流石の俺も看過できないものだった。
「あ、そういえばサンラク…さんってもうアレ倒したのか?」
「アレ?」
「ほら、水晶巣崖のエクゾーディナリー」
「………………………なんて?」
水晶巣崖にエクゾーディナリー? いやいるだろうなとは思ってたけどもう確認されてんの?
「え、何その話詳しく」
「え? ああいや、俺もそんな詳しいわけじゃ」
「別離なく死を憶ふ関連のユニークの完全チャートなら出す用意がある」
「マジで?」
「大真面目」
「あ、その話私も知ってるんで一口噛ませてください!」
うーむ、兎とばかり関わってないでもう少し人と関わった方がいいのかもしれんな。いつの間にかしれっと頭に戻ってきて「乗りやすい頭に戻せ」とぺしぺし頭を叩く毛玉は無視してその噂とやらの情報を集める。
曰く、水晶巣崖は誰かさんが定期的に素材を集めに行っているのでワンチャン狙いで踏み込むプレイヤーが後を絶たないとか。
曰く、ツチノコさんマジでどう攻略してんの? 踏み込んだ瞬間から即死ギミックなんだけど。いやそれは知らん、飛べ。いや地面に触れていなくても最近は捕捉してくる事が何度かあったけど。
曰く、あるプレイヤーが崖から登る事で水晶巣崖の中腹あたりに侵入したらしい。ああそれもう対策されてるんだよね、崖エスケープはヘイト切りと一緒に使わないと上から水晶落とされて死ぬ。
曰く、その時に「黄金に輝く水晶群蠍」を見たのだという………いやそれ金晶独蠍じゃね? いやどうやら違うらしい。
曰く、その黄金の蠍は明らかに他の蠍達を従えており、スクショを撮ろうとしたプレイヤーを包囲して逃げ場を完全に塞いだ上でフルボッコにしたとか……
「……他個体を従える蠍か」
「遭遇した時点でアナウンスが出るから名前だけは分かってるらしい」
───不世出の金晶独蠍"皇金世代"
それがそいつの名前であるらしい。
「ツチノコさんは何か思い当たる節はないの?」
「基本的に水晶巣崖に出現する蠍は三種類。通常個体、偏食個体、老生個体だ。で、この内水晶の通常個体と黄金の偏食個体は敵対関係にある。でもその金色の蠍は偏食個体ではない……いや、ゴールデンエイジ? 君主的存在だとしたらあるいは食料を献上される立ち位置? だとするとエルダーも……うわ面倒臭そう……」
「生態に詳しい……」
「え? あーほら、水晶群蠍はマブだから」
「マブダチの武器とか作ってるの大概サイコパスでは?」
向こうも俺「で」球技大会するのでおあいこでしょ。
とりあえず情報の対価として黒死の天霊と喪失骸将、あとアメフト姫のユニークについての情報を話しながら次の階層へ向かう一同。【ライブラリ】の面子が思いっきり聞き耳を立てていたが別にいいだろう、俺も時々思い出すくらいには朧げな記憶だがなんか情報提供する契約みたいなのしてた筈だし。
「とりあえずユニーク発生に必要なものが三つある、まず一つは喪失骸将からレアドロップする武器を強化? した焔軍将の斬首剣、それと黒死の天霊から低確率でドロップする黒天無塵鎌、そして最後に「名匠」ジョブ持ちの知り合い」
「待って、前提条件からクソハードなんだけど」
「鎌と剣の二つを揃えると「名匠」ジョブのやつがフラグを建ててユニークが発生する。それを受注したら奥古来魂の渓谷で喪失骸将と黒死の天霊をエンカウントさせる」
「……マジ?」
「一番簡単なのは渓谷のモンスター根絶やしにして黒死の天霊を発生させつつ、喪失骸将が出現するのを祈る」
「お祈りゲーじゃん!!」
「いやしれっと言ってるけど前提条件がその二体からレアドロップ引くまで倒せって言ってる気が」
「お気づきになりましたか……さて俺は黒死の天霊を何体倒したっけか……」
狂気の乱数作業、R.I.P.がダブった時はまぁまぁ辛かったぜ。
とはいえ思い返せばユニーク発生までの条件が鬼なだけでユニーク自体は割と簡単なんだよな。アメフト姫をとっ捕まえて首を取り返すだけだし。
「で、二体のモンスターを合流させると殺し合いが発生するので喪失骸将がボコられる前に同時出現する……」
「サンラク君、サンラク君。非常に興味深い話を折るようで悪いがね……次はアレを倒すらしい」
アレ?
ほうほうなるほど……女の死神みたいなやつで、禍々しい鎌を持ってて、クソみたいな特殊技を使ってきそうな……いや黒死の天霊やないかい!!
『あれは死の蓄積によって現れる人智の死神、我が子達よ……人より出でたモノを人の手で越えられますか?』
「やったじゃん皆さん、運が良ければここで条件を一つ達成できるぜ」
回復ポーションよーい! 全員がかりで奴を癒し倒す!!
速攻倒された