天地一線葬送に鎮め
コセンジョッ(鳴き声)
◆
Q.出力100%で超排撃を直上に撃つとどうなる?
A.笑えるくらい足に来る
だがそれも過去の話! 生まれたての小鹿よりも震えていた足の痺れは既に無くなっている!!
「ファイナルラウンドだ! 経験値が欲しいなら一発殴って損は無いんじゃないか!?」
あくまでもあの外側限定無敵モードは形態の一つであったらしく、超排撃の直撃という実質レイドモンスター色竜ですら大ダメージを受ける攻撃の前では次の形態に移らざるを得ないらしい。
とはいえ出力100%で条件を達成するだけのダメージを稼ぎ切ったとは思えないのでやはり無敵というわけではなく、超性能スーパーアーマーだったということだろう。いやそれでも捕食タイミングしか攻撃できないってクソ過ぎないか……あーでもリヴァイアサン製の大型銃火器とかあったら後退しながらでもブチかませるのか。
わぁ、と殺到するプレイヤーの大軍。流石にサードレマまで来ることができるようなプレイヤーならレベル差くらいは理解しているだろう(理解してるか怪しいなんちゃって魔法剣士がいたが、あいつは多分幕末適正がある)。
つまりレベル200オーバーというエンドコンテンツクソ野郎たる殺戮の魔人相手に突撃する蛮勇を発揮するプレイヤーはそんなにいなかったわけだ。
だが奴は既に(推定)最終形態、オルスロット君を捕食して獲得した騎士の外殻を捨てて完全に異形の巨人と成り果てている。先程までの触手と「爪」が身体に巻きついて腕と一体化し、肥大化した凶器となった全身像は……あれだあれ、寺とかの門にある力士像を筋肉剥き出しにしたようなおどろおどろしい姿だ。
だがおどろおどろしさと同じくらいの消耗を感じさせる様子、つまり大多数のプレイヤーが「ワンチャンあるのでは?」という気分になっている。
「押せ押せーっ! 死んでも文句言うなよーっ! 被弾する奴が悪い!!」
死なないように、しかし一発は攻撃を入れておきたいと突っ込んでいく近接職達に発破をかけつつ超排撃で一割を切ったHPを回復させるべく回復ガチャを続ける。
チッ、今日はクソ乱数の日か。八連敗ってどう言う事だ……頼むぞ体力全回復アイテム!
………。
「オラーっ! 体力がなんだ、最後に生き残ってりゃ死に体も無傷も大差ねーだろうがーっ!!!」
弓使い達に混ざってスナイパーライフルでバスバス殺戮の魔人を射撃しつつ回復ガチャを続ける。十四連敗ィ!?
「あのっ! 銃ってどこで手に入るんですか!!?」
「これ? 新大陸でリヴァイアサン出たってのは知ってる? あそこの一層で手に入るよ! もっと強いのが欲しいなら五層まで辿り着かないといけないけど!!」
後々知ったが、リヴァイアサン四層で購入できる銃火器は四層ボスを倒さないと船外で使用する許可が出ない。アンバージャックパスがそのまんま免許になるらしく、もしあそこで苦戦していたらルストやヤシロバードの面白い顔が見れたかもしれなかったわけだ。
「でももしかしたらこっちでも手に入るかもな!!」
「あのっ! 俺も質問いいですかっ! 生産職志望なんですけど、さっきのやべー火力のグローブみたいなのって作れるんですかね?!」
あれこれなんか質問コーナーなの? まぁいいや、テンション上がってるから口が軽くなってるのが自覚できるしそこそこなネタバレはモチベーションに変わるからな。
「あれは生産武器! でも使ってる素材がまぁまぁレアだから頑張れ! あと専用ジョブが必須だから考古学者も取っといた方が吉!!」
まぁまぁ地獄を潜り抜けられれば煌蠍の籠手は作れるだろうよ、あれ別にオンリーワンってわけじゃないからな……あーでもビィラック印だからオンリーワンではあるのか。
しかし素材がね……また何か学習したのか最近のあいつらは崖に張り付いて隠れても尻尾から毒液を噴射して壁狩りしてくるので油断ならない……
そろそろインベントリアエスケープも対策されそうだから新しいアプローチを考えるべきか。逆に水晶巣崖全体の蠍を起動して大渋滞を起こすとかどうだろう、いやそうするとエルダーも起動するな多分……あいつだけはマジで単体じゃどうにもならない、最低でも空を飛べてマニューバできる戦術機でスクワッドだな。
「やっと回復成功……」
十七回連続失敗はあまりにも乱数が腐っている……
ていうか逆に凄くないかこれ、最近なんかすぐ連続で回復したり延々と失敗したり出目が極端なんだよなぁ……偶然か?
「いやいや何やりきった顔してんのさ! 倒すまでがいち戦闘でしょ、お爺ちゃん服の着方と一緒に戦い方も忘れたの!?」
「おい婆さんまだ懲役残ってんだろ牢獄にお戻り! その場に足止め三秒!!」
「はぁあ!? このPerfect Body(ネイティブ発音)とは無縁の単語が聞こえたんですけどぉ!? 無理! 二秒!!」
一秒で動く。
スキルを起動しつつ右拳で胸を叩き、左手でインベントリアを操作しながら跳躍。スキルとアクセサリーの判定は同時でもいいのがシャンフロのいいところだ、今でもこれが重複するとキャンセルするクソゲーは多いからな……
そのまま殺戮の魔人の直上に到達するまでに頭を下に向けた状態で……んー、大体5メートルくらい上に滞空、よしオッケー。
「ギロチン代わりだ、首を出さないと脳天に刺さるぜ……!!」
別離なく死を憶ふを展開、地面から数えて魔人、大剣、俺の縦一線の直列になった瞬間に……!!
「空なら反動を推進として誤魔化せる」
行くぜ覇角兜【怒烈弩】の目玉機能……! 魔力装填、ガン飛ばし弩臼砲!!
「Slaaaaaaaaaaaauughteeeeeeeeeeeeer!!!!」
「ファイヤーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
兜の突起から放たれた衝撃波が特大剣を押し出し、天から地へと叩き落とす。
そしてその切っ先は俺を見上げて吠えた魔人の口にそのまま吸い込まれるように落ちて……!!
『殺戮の魔人が討滅されました』
『殺戮の魔剣は元の状態に戻ります』
『現在、殺戮の魔剣は所有者不在状態です』
『称号【殺意調伏】を獲得しました』
『戦闘に参加したプレイヤーのカルマ値が減少します』
ぞぶ、とどんな気分なのかあんまり想像したくない感じで串刺しにされた魔人が消えていく。
そして地面に落ちる墓標の剣と殺戮の剣……物言わぬ二振りの刃は、この殺戮の狂騒に終止符が打たれた事を示していた。
この日、この場にいた開拓者達は殺意の権化と向き合うことで己自身の殺意と向き合った。そして俺達はそれをを乗り越えたという事なのだろう……きっとそれは、どんな強敵を倒すことよりも難しいのかもしれない。
と、反動で吹っ飛んで壁に激突、ずるずる落ちながらいい話風に納得しようとしても俺にとっては想定外の道草を食わされただけなんだがな、ボウル一杯の雑草サラダ特盛り………代金はペンシルゴンに請求しろバーカ!!
オルスロット君、人知れず成仏……!!
レザレット君と斬龍焔月君は秘密裏に背中を押されて魔人にキルされました。不幸な事故だったね……