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手練手管にて我等が宝剣存分に映えよ

ワイズルー様……


オンラインゲームで人を集めるのは、選挙に似ているというのがアーサー・ペンシルゴンの持論だ。

物理的な報酬だけではどう足掻いてもリソースの限界がある。だが「夢」や「理想」……それに「浪漫」は支持する者たちが勝手に用意してくれる。無論それを実行するという確約があってこそだとは思うが、如何に支持者達に「集まってもらうか」という点において今行なっているこれは依頼ではなく選挙に近い。


「すげぇ威力だ……」


「あの怪物が、吹っ飛んでる……」


「なんだあの武器! めっちゃかっこいいんだけど!!」


プレイヤー「サンラク」と言われてもピンと来ないプレイヤーは多いが、「ツチノコさん」と言えばその存在に思い至るプレイヤーは多い。だがそれはあくまでもある程度このゲームに親しく、なおかつ掲示板を頻繁に使うプレイヤーに限る。

だがこの戦い……大公vs国王の一大PvPにおいて、数百数千のマンパワーは一騎当千の個人に勝るとペンシルゴンは睨んでいる。そしてペンシルゴンという出馬者が掲げるマニフェスト(・・・・・・)こそがサンラクなのだ。


「同志、流石のリカバリっすね」


「いやー、まさかこんな街中でおっ始めるとは思わなかったけどねー」


当初の計画ではRPA主導で「敵」を用意するつもりだったが、まさか弟が潜入ミッションを仕掛けるなどという小賢しい手段を取ってくるとは思っていなかったし、さらに言えばサンラク自身が殺戮の魔人というとんでもない怪物を自分で召喚するとも思っていなかった。

だが想定外の状況から理想的な結果を掴み取るのもプレイヤーイベント主催者としての腕の見せ所、既にペンシルゴンの脳内ではこの状況を利用した次善策の構築に成功していた。


すすす、とさりげなく初心者プレイヤー達の近くに寄ったペンシルゴンはさながら漫画やアニメの解説キャラのような口調で説明を始める。


「あれは煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)……甦機装(リ・レガシーウェポン)ってカテゴリの武器でね、彼が持ってるタイプは莫大な反動と武器そのものの耐久力を大きく削ることであんな超火力攻撃が出来るのさ」


「あの人と知り合いなんですか?」


「そりゃあもう! 一応私が運営してるクランのメンバーだからね。ああごめん、身内団だから新規募集する予定はないんだけど、実は今……開戦間近のイベントで私達のクランはサードレマに所属してるんだよね」


「イベント? どんなイベントなんですか!!?」


来た。さながら釣り針に引っかかった魚を見るような目を鋼の理性と表情筋で誤魔化しつつ、ペンシルゴンはさらに話を続ける。


「ペンシルゴンァーっ! 手伝えーーーーーっ!!」


無視。


「ん? ああ、あれは放っておいて大丈夫だよ。彼は口ではああ言ってるけど実際複数人で組むと心の中で「こいつら邪魔だな……」とか考えるタイプだから」


「は、はあ……」


しれっと風評被害を飛ばされるサンラクであったが、本人は殺戮の魔人攻略のためにそれどころではないのでちらりと視線を向ければもうこちらには目もくれずに兎と人形(NPC達)と一転攻勢に出ていた。追い詰められているようなら流石に手助けに出るべきかとも思ったが、まだまだ余裕そうなのでRPAの同志達に「サボってると思われない程度に参加しつつサンラクを目立たせるよう立ち回れ」とアイコンタクトで指示を飛ばす。

此度の戦いにおいてサンラクはサードレマ陣営の旗頭、あるいはサードレマという巨人が持つ「宝剣」になってもらわねば困るのだ。スポーツファンが推すチームの同じユニフォームを着るように、このプレイヤーと同じ陣営にいたいという憧れこそが人の心を掴む為の取っ手となる。


「実はね、今この街サードレマの大公はこの旧大陸全体の頂点である国王と敵対してるんだよね」


「そうなんですか!?」


「それも向こう、つまり私的には敵側の国王がこれまた結構あくどい人物でねぇ……自分の父親と妹を危険地帯に放逐して、あまつさえ暗殺しようとするやつなのさ」


嘘はつかない、ただ真実に有る事無い事吹き込んで風船のように膨らませて伝える。「流石にこれは大げさに言ってるだけだろう」と思わせられれば儲け物だ、少なくともそう考える者は鉛筆が発進した情報を自分なりに噛み砕いて理解しようとしている。

であるならば情報収集手段はシャンフロに関連する掲示板やSNSに自然と絞られる(シャンフロ内でそれらの情報を単独で知ることができる立場の者は既に事情を知っているはずなので)。

そうなればRPA情報部隊の手によって誘導された現王政側の情報を見ることになる………事実、極力(・・)クリーンな方針で動いているサードレマと違い、現王政は報酬と恩赦でPKや元PKを集めているのが実情だ。ならず者混成部隊を作るクーデターの成り上がりと娘の為に戦う父、利益目当てで向こうにつく者は流石にどうしようもないが、心情で人を引き込む事は可能だ。


と、恐る恐ると言った様子で話しかけてくるプレイヤーが一人。ペンシルゴンは身振り手振りや話し方で大体のリアル性別を見抜くことができる。中には本気でどっちか分からない者もいるが、少なくともこの話しかけてきた女性アバターは中身と性別が一致しているようだ。


「あ、あの! そのアバターってもしかしなくても天音 永遠じゃ……」


「あ、気づいた? 本人そっくりないい出来でしょ?」


「え? あ、あー、いや、そうですよね。ハハハ……すいませんいきなり」


嘘はついていない、ただ本人が「本人そっくりな出来栄えだろう?」と言っているだけなのだ。天音 永遠は少女達の夢と憧れを背負う存在であり、如何に「いざって時はサンラクとオイカッツォに爆弾担がせて無限突撃で王城破壊できないかなー、そもそも勝利条件はなんなんだ新王を静かに(・・・)させればいいの?」と考えるような頭でも最低限の誤魔化しくらいは徹底しているのだ。


「あの、そのイベントって初心者でも参加できるんですか?」


「勿論! 生産職なら通常時よりも割増でアイテムを買い取るし、戦闘職でも役割はあるように出来てるらしい(・・・)から!」


満面の笑顔でさも「自分もそう聞いたから、同じように伝えた」と言わんばかりの態度に、背後でRPAの同志達がひそひそ声で言葉を交わす。


「そこらへん整備したの全部同志よね……」


「同志、世紀末でツチノコさん達に不意打ちで狙われた対策であくまでも自分が主催者ではないと言い張るつもりらしい……」


「あーなるほど、サードレマ大公が総指揮とってる事にして狙いをそっちに逸らすのか……」


もう少し音量を下げろ、とペンシルゴンの鉄壁のグッド・愛想・フェイスが怒りにコンマ1秒歪むが、すぐさま表情をリカバリーして改めてサンラクに視線を向ける。


(頼むぜ広告塔(サンラク君)……ビッグネームは人を集める、もう存分に暴れちゃってよね)


そしてここまで一度も戦闘に参加していないRPAに一言。


「ちゃんと撮れてる?」

RPA情報部隊

数多の掲示板やSNSにてその論理、感情論、煽りのスキルを磨いてきた歴戦のレスバトラー達。

誇張率1.2倍で新王政を批判し、反論に対して切り札「どっか間違ってるところある?」を使う事で世論操作を目的としている。

彼らは皆、サンラク達と同等の煽りスキルを保有しており中には世紀末円卓にてかつては鉛筆戦士と敵対していたが軍門に降った過去を持つ者もいる

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― 新着の感想 ―
情報が溢れる昨今において、情報工作は最も有効な手段! CIAか何か?笑
「嘘はついていない、ただ本人が「本人そっくりな出来栄えだろう?」と言っているだけなのだ。」 このフレーズが俺がシャンフロを読み始めたきっかけ
[一言] この作品の何が面白いって、1に設定、2にキャラの個性なんだよね。1は言うまでもないけど、2に関してはキャラ同士の絡み(煽りあいなど)と鉛筆みてぇな腹黒が活き活きしてるのが良いんだよ。ぶっちゃ…
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