結局最後にモノを言うのは汎用カード
フィロジェネテック・ジオグリフ!!
それは一つの世界、一つの環境に見立てたフィールド内で自分だけの生態系を形成、相手の生態系をガラ空きにした上でプレイヤーにダイレクトアタックする事で勝利する、最高にファンキーでエキサイティングなトレーディング・カード・ゲーム!!
プレイヤーはまずフィールドに4マス存在する「オリジン」マスに四体のモンスターを揃える。そして2マスある「スティミュレーター」マスに専用の効果を持つモンスターを置く、「スペル・フェノメノン」を発動する、「エリア」を整えるなどして環境に変化を起こし、オリジンマスに囲まれるようにして存在する「エヴォリューショナー」マスに切り札たる進化種モンスターを召喚………
「成る程ね」
さっぱり分からん、俺は今完全にニュアンスだけでフィロジオを始めようとしている。もうちょっとこう、こう……何とかならなかった!? もうちょっとさぁ……仮に小学生がこれをやるとしてスティミュレーターとか理解できるわけないだろ?
だがまぁいい、こういうのは実際にやってみて学んでいくものだ。「タワー」一階の番人、第一殻層のテクノマギジェルスのような輪郭の曖昧な人型がバッ! とやけに気合の入ったポーズを決めて俺を迎え撃つべくフィロジオのデッキを虚空に展開する!!
「いいぜ、始めようか……」
『あ、始める場合は気合を入れて「ジェネレーション!」と叫んでいただけると……』
「それ必須なの?」
『必須です』
えぇ……? そういうさ、強制して熱血というか少年漫画みたいなテンションを要求するのって如何なものかと『声の大きさで先攻後攻が決まります』
「ジェェッッッネルェェェェーーーーーションッッッ!!!」
よっしゃあ!! 先攻は俺が貰うぜ!!!!
「俺のターン!!」
このゲームではコストというものが存在せず、さらに最初の1巡は互いに攻撃することができない。なのでプレイヤーはこの不可侵の時間で己の環境を発芽させなければならない!!
ククク、見せてやろう……レア度逆転、蹂躙蠍ビートの恐怖をなァ!!
「俺は手札から水晶群蠍を誕生、オリジンに一体目のモンスターが置かれたことで「繁殖」のカードが手札に加えられる……そしてっ! 俺は手札の「規定条件領域・水晶」をエリアにセット!! これで条件は整ったぜ!!」
水晶群蠍はそれ単体しかいない状態でターンを終了させると自動的にエクスティンクション、即ち絶滅してしまう。だがこの規定条件領域・水晶は水晶群蠍のデメリットを消す! さらに発動時処理でデッキから「水晶群蠍」がカード名、もしくはテキストに含まれるカードをランダムに四枚までサーチする効果を持つ!!
「怒涛の展開を眺めて死ねっ! 俺は水晶群蠍の効果発動!このカードを破壊する事で手札の「水晶群蠍」をカード名、テキストに含むモンスターを可能な限りオリジンに召喚する!!」
フハハハハ! 壮観! 壮観であるぞぉ!!
「そしてここからが絶望だ、手札にある「水晶群老蠍」のスティミュレーター能力を発動! 場の水晶群蠍の合計攻撃力を相手のオリジンマスのモンスターの数で割った数値以下のモンスターが相手のエヴォリューショナーマスに召喚された場合! そのモンスターを破壊する!!」
場に四体の水晶群蠍、環境は万全、そして水晶群老蠍がスティミュレーターマスに存在する事で、すべての条件は達成された!!
「開け生命の樹形図! 月光抱きし孤高の輝き、今ここに光誕せよ!!」
このセリフ考えたの俺じゃないからな、フレーバーテキストがこれなんだよ。だから俺のセンスではない、俺の意思ではあるけど。
「スペル・フェノメノン「偏食性変異」!!場に四体の水晶群蠍、そして墓地の「水晶群蠍」を一体デッキに戻す事でこのモンスターはエヴォリューショナーマスに誕生する!! 出でよ「金晶独蠍」!!」
完璧な盤面だ……「勇魚」め、呆然とした顔で俺のタクティクスを見ておるわ。
「俺はこれで、ターンエンド……」
『あー……』
「え、なんだよ」
『いや、まぁ……これも経験ですね』
んん? この盤面のどこに文句があるんだ?金晶独蠍は相手ターンに行動可能なエヴォリューショナーモンスター、相手の展開を阻害できる上に妥協したエヴォリューショナーであれば水晶群老蠍の効果で焼ける……負けるビジョンが思い浮かばないが。
と、相手NPCが動き出した。くくく、流石の盤面になす術なしか……
「私ノ、ターン。私ハ、手札ノスペル・フェノメノン「環境崩壊」デ、オ前ノ「規定条件領域・水晶」ヲ破壊スル。スペル・フェノメノン、ノ発動ヲ、金晶独蠍ハ無効ニハ、出来ナイ」
「えっ」
「私ハ、「ゴブリン」ヲ誕生。エリア「食物連鎖・下位」ヲ、セット。コレニヨリ、手札ノ「レイジング・オーク」ヲ、コストニ、デッキノ「ゴブリン」ヲ任意ノ数、誕生サセル」
「いや待った! エリア発動に対して金晶独蠍の効果発動! 破壊させてもらうぜ!!」
「デハ二枚目」
「ほぁ!!?」
何か嫌な予感がする、とてもとても嫌な予感がする。たった一枚こちらのエリアが破壊されただけなのに……いや、そのエリア破壊こそが……
「金晶独蠍ノ効果ハ、一度シカ使エナイ。私ハ、スティミュレーターマスニ、「ワイズ・ゴブリン」ヲ、置イテ……ターンエンド」
「……ハッ、効果を警戒してエヴォリューショナーは無しか。ならばこのままトドメを……」
「コノ瞬間、「水晶群蠍」ト「金晶独蠍」ノ、効果発動」
「はぁ!? いやそれ俺の……」
「効果優先権ハ、モンスターノ数デ変動スル。故ニ、水晶群蠍ノ、デメリット効果ガ先ニ処理サレル。エリア、ガ無イノデ全テ、エクスティンクション!!」
「ほぁあ!!?」
「更ニ! 金晶独蠍ハ、相手ターン終了時ニ水晶群蠍一体ヲ、コストニシナケレバ、エクスティンクション!!」
「…………」
「オ前ノ、ターンデス……何カ、アリマスカ?」
「サレンダーで」
……
…………
………………
「おうサンラク、何か収穫はあったかよ? こっちは結構な収穫があるぜ」
「あのカードゲームはダメだ、関わらない方がいい」
「はぁ?」
五十階より上から番人は手札をシャカパチし始める。リアルでやるとカードを痛めるし単純に相手が不愉快になるからやめようね!!
威嚇なの? それガラガラヘビが尻尾鳴らすのと同じ感じなの?(硬梨菜はシャカパチ好きじゃない)