大怪獣ハンラトリアタマvs妖怪イシコロナメナメ
ガラル旅行は終わらない(孵化厳選、マックスレイド厳選、メタモン厳選)
「……ッスゥー……あの、サンラクさん……っスよね?」
「え? まぁ、上に表示されてるし……」
「あー、いや、その……ツチノコさん……っていうか、ドラ姫ちゃんと一緒のクランの」
「そっすね」
「あー……お会いできて光栄っス、っつーか……あーうん、まさしくツチノコに遭遇できた的な」
「いや誰が未確認生命体だ」
人をレアエネミー扱いするんじゃないよ全く……ニンニンニク? 知らない名前だ、秋津茜の言葉通り野良で組んだだけのプレイヤーなんだろう。
「わ、サンラクさんそれ刀ですか!?」
「ん? おお、ちょっと刀を極めたくてなー」
「あの、えと、差し支えなければ見せてもらっても……」
にゅっ、と首を突っ込んできたのは秋津茜が組んでいた野良三人の内のその2、今目の前にあるものよりも大体1/4スケールの似たようなデザインを見た事があるような……うん、まぁぶっちゃけビィラックの着てる装備と似てるのでイムロンとかと同じ職業鍛冶師のプレイヤーなんだろう。プレイヤー名は超合コン、やはり知らぬ名前だ。
「は? まぁいいやはいどうぞ」
「ひぇえ……濡れそぼつような黒い刀身……美少女かな? 美少女だよねぇ………」
「………あの?」
「舐めても………」
「ダメです!!」
たとえデータでもなんか怖いわ!妄念付きの刀とかなんか振ってるうちに精神汚染される懸念がある、隔離措置を取らないとヤバイ気がする。
「せめてひと舐め! 成分を味覚で感じるために美食舌をゲットしたのに!!」
「用途が捻れすぎとるわ! アムルシディアンクォーツだ、素材でも舐めてろ!」
「え、アイドルの原石……こ、これで手打ちを……」
材料費0円の石ころが100万マーニになったぞ、端金だな。
流石シャンフロというかなんというか、変態のニーズにもちゃんと応える気概は見せなくていいというか、アムルシディアン・クォーツを口に含んで舐め始めた超合コン……さん、を他の面々も一歩引いた目で溶けない飴を舐め始めた超合コンさんを眺めている。
なんつーか、ディープスローターよりもジョゼットとかAnimaliaに近いものを感じる……つまり、
「…………」
「なんだよ」
「なんかシンパシーとか感じたりしてない?」
「同枠か!? 俺はこいつと同枠か!!?」
ピヨピヨピヨ……
同枠だよビキニアーマー提案幼女ガチ貢ぎネカマヤロー。
秋津茜、野良で組むにせよもう少しメンバーは考えた方がいいぞ……残る一人もオモシロ性能なのか?
「………何か?」
「いや何も、垂れてるぞ」
「む、失礼……」
ピヨピヨピヨピヨ……
ヴィジランス……ナリはまともだが油断できないようだな。口の端から垂れた赤い液体を勿体無いとばかりに指で殴って口の中に戻す顔色の悪い男を警戒リストに入れつつさてどうするかと思案する。
最初は2パーティ混合でボスで挑むことも考えたが、この面々と上手くボス戦を回せる自信がない……
「お前凄いな秋津茜……」
ピヨピヨピヨピヨピヨ……
「?? よく分からないけどありがとうございます!」
「別に褒めてな」ピヨピヨピヨ「いやうるせぇな!!」
いやさっきから環境音だと思ってたけど違うな!? ヒヨコか!? スズメか!!? ハヤブサじゃねーか!!!!
「何、手紙? 放し飼いしてんの?」
『いえ、それは持ち込まれたものですね』
「持ち込まれ……ん?」
なんだ、何か既視感を覚えたぞ今。鳥を大量に飛ばす……メール……方角………そしてハヤブサというコスト度外視の効率重視。これらのワードが導き出す答え、それはこの五羽以上はいるハヤブサ達が運んできた手紙の差出人:サイガ-0───!!
次の瞬間、その巨体とガワが生々しいとはいえ重厚さは保持している鎧からは想像もできない速度で走ってきたのだろうレイ氏がザリザリと草原に抉るような直線のブレーキ痕を残して俺達の前で急停止。
秋津茜が組んだ野良パの内、溶けない飴玉を舐めながらホクホクしているヤバい人は例外として残った面々は突如現れた異形の騎士に気圧されて……いや、秋津茜はドン引きしてない側だから割合的にはフィフティフィフティじゃないか。
「……やっと、追いつきました」
「……流石はレイ氏と言うべきか」
兵は拙速を尊ぶとは言うが、一流は巧く速く動けるということだ。身体から散っていくエフェクトには見覚えがある、恐らくは速度強化系のスキル……じゃないな、魔法系のバフを使って走り抜けてきたのか?
「てっきり日が昇ってる内は無理なのかと」
「ええと、そこは……ロジカルに、フィジカルな感じで」
論理的に力技な感じ……よく分からないがリアル事情は解決したということなのだろう。
「サバイバアル、助っ人廃人のサイガ-0さんだ」
「助っ人外人みたいに言うなよ……なぁこれ俺が霞まねぇか?」
「頑丈な火力職と高DPSのタンクじゃ需要は被っても立ち回りは違うだろ、足捌きに個性を出していけ」
「タップダンスとか?」
「盆踊りで」
「テンポ遅ぇなオイ!!」
いや龍宮院富嶽の動きとかそんな素早くないぞ、俺は上っ面の真似でしかないがあの完全再現されたトレースAIは立ち回り自体はそんなに際立って素早いわけじゃなかった。恐ろしく速かったのは振り下ろされる竹刀の鋭さだけだ、補正無しの限りなくリアルに近いガード不可ってどういうことなんだ。
「とりあえず三人パーティでいいか?」
「俺は構わねぇよ、そっちが構わねぇならな」
「………?」
あー、そういや一応この二人「元阿修羅会」と「阿修羅会にトドメを刺した人物」って関係性になるのか……まぁいいや、ゲームライフでは確執は無視できないが強行攻略に求められるのはセンチメンタルを捻り潰すマシンのようなプレイヤー性能だけだ。そもそもPKがPKKされてなんの文句が言えようか、割り切っていかなきゃな。
「センチメンタルなのはお前だけっぽいぞ」
「ケッ、若いなサンラク……こういう機微に聡い男がモテんだよ」
「でもお前ロリコンじゃん」
「愛に年齢は関係ねぇ!!」
「法に年齢は関係あるがな」
「法はいつだって俺の邪魔をする……っ!!」
度々邪魔されるような人間から守ってくれる法ってサイコーですね、法治国家万歳。さて、あとは……
「秋津茜ジャンケンしようぜハイじゃーんけーん!」
「えっ、はっ、あっ!!?」
俺、グー。秋津茜、チョキ。
よし勝った、幸運補正が追い付く前にAGI対抗にすれば俺にも勝ちの目はあるってことだな。
「悪いな秋津茜、ボスドロップとかスコアの分配的に四人以上でパーティ組みたくないから先に行かせてもらうぜ」
「え、あ、そのためのジャンケン! 分かりました!」
苦汁みたいな味のする勝利の美酒だ……青汁でも入ってんのか?
手っ取り早くレイ氏をパーティ内に迎えた俺、サバイバアル、レイ氏の三人パーティは「勇魚」の導くままにボスエリアへと進んでいく……
「あの、差し出がましい事は百も承知なんですが最後に一つだけお聞きしたいことが……」
「うおお、グイグイくるなオイ」
にゅっ、と伸ばされた手が去る間際の俺の肩を掴む。誰かと思えば未だに口の中に入れているのか、頬が変な形に膨らんだ超合コン氏であった。
「ここで聞かないと次いつ遭遇できるか……ツチノコさんです、から」
もう何も言うまい、これ以降の何処かで遭遇して詰め寄られるよりもここで禍根を断ったほうがいいだろう。初対面の人相手に禍根扱いも大概だがこっちも爬虫類扱いされてるんだしおあいこだ。
「その……水晶巣崖の攻略法を、差し支えなければ……こう、アドバイスとか?」
「えー……?」
気合、はダメだよなぁ……えーと、自分流でいつも突撃してるから汎用的な攻略法と言われるとパッと思いつかないが……ああそうだ。
「水晶群蠍の射程」
「え?」
「実際は仲間を踏んで高さを稼いだり水晶飛ばしとかやってくるから想定の三倍はあるけど大事なのはどこまで届いて、どこまで届かないのか……はいアドバイス」
水晶群蠍の素材を狙うならヘイトを断つ手段もないとダメなのだがそこまで説明する義理はないだろう。見た感じ鉱石系アイテムが好き過ぎて舐めちゃうタイプのヤバい人っぽいし、採掘するまでの情報で満足いただける筈さ。
「あ、そうだ秋津茜」
「はいっ」
「大体十日後くらい、ファステイアに行くといい……デカい祭りがある」
「お祭り……ですか?」
「そりゃもうデカいお祭りさ」
まさしく驚天動地と呼ぶにふさわしいものだろう……祭りが、な。
サバイバアルの言う「いつだって」は大体三回くらい