チェイス・クッキング・インパクト!!
有志の方々から次々と集計結果が送られてきており、感謝の念を込めて更新しました。今週中には活動報告かインベントリアで人気投票の結果発表をしつつ宣言通り番外編に着手したいと思います
つまり本編の更新は……もしかしたら、その、はい
〜とあるプレイヤーとNPCの会話から抜粋〜
「おーい店主、速度強化系の使い捨て魔術媒体ある〜?」
「ああ開拓者さん、悪いがさっき全部売り切れたよ」
「売り切れた? 新しく入荷したって言ってたじゃん」
「それがねぇ、なにか急いでる様子の……物凄い格好した騎士様が買い占めていってねぇ」
「騎士? 物凄いって……兜以外脱いでたとか?」
「そんな変態がいたら怖いねぇ、その人はなんというか、そういうモンスターだと言われたら信じそうなくらい生々しい鎧を着てたよ」
「鎧に生々しいって表現使うやつ初めて見たわ、AIバグった?」
◆
とりあえずこのじゃじゃ馬アクセサリーも大概長期戦向けではないということが分かっただけ収穫はあったと思うべきか。
動き慣れた過剰伝達状態で逃げ切りにはいっていたサバイバアルに追いついた俺はそれでもなお広大な草原の一角にある空白で、空腹度回復も兼ねて食事を行なっていた。
「箱に肉突っ込んでしばらく待ったらステーキ肉の完成、って控えめに言ってディストピアじゃね?」
『結果だけを享受すればユートピアですから』
その台詞、ユートピアに属する存在が言っちゃいけない台詞トップ3に入ると思うぞ……主人公に過程を暴かれてユートピア崩壊するけど「人間は自分達の力でユートピアを作れる……そう、きっと!」とかそんな感じで未来に展開をぶん投げるエンドで終わるやつな、物語の中盤でそこまでやってあとはひたすら街づくりさせ続けるゲームとかあったなぁ……一時期武田氏に倣ってインディーゲーを漁りまくってた時期があったが、その時発見した一つだ。
ゲームとしてどうなのかと思わなくはないけど前半のRPGと後半のSLGどっちも出来がいいという……なんか最近似たようなゲームをやった気がする。ちなみにこのインディーゲーの作者はRPGとSLG別々の新作を作って無事成功者のルートに進んでいった……クソゲーは少ない方が喜ばしいんだが、なんだか寂しい。
『味は保証しますよ!』
「んー、普通にうめぇわ。マスタードとかねぇの?」
「サバイバアルお前ステーキにマスタードって……」
「いや普通だろ、じゃあオメーはステーキに何使うんだよ」
「米」
「そりゃ合うわな! いやレギュレーション違反じゃねーか!!」
米の上に肉を乗せるのなら、肉の上に米を乗せたっていいじゃないか。一味違う人間は発想の立て方からして違うのだ、コロンブスみたいにな。
「この層のボスってなんだっけ、霜降り?」
『スぺリオルオマージュ・フロストボディですね』
「最上級模倣・霜降り身体……と」
クソしょーもないダジャレネームとは裏腹にやたら賢いAIとデバフも兼ねた氷結攻撃が厄介なボスだ。そして何より……やたらにデカい。
「肉質柔らけぇのが救いっちゃ救いだが、どう攻略する?」
「霜降りだからそりゃ柔らかいわな……そうだな、お前なんか超高火力技とかないの? 自爆とかさ」
「あるけど誰がやるか」
「いや火力ケチんなよ」
「自爆の方だっつーの」
いや自爆の方かよ、いやあるのかよ!!
とはいえ俺も俺で高火力のスキルは大体自爆みたいなもんだしなぁ……
「まぁ殴ってれば死ぬだろ」
「ま、そうなるわな。貪牛よか楽だろ」
「鯖癌最強の体力お化けと比べんなよアレ横槍無しで倒せるやついるか?」
「いやぁ……アレはヤバかった、生まれた時点で他のモンスター共が一斉に戦闘状態になるからな……」
月一くらいの頻度でスポーンして孤島内を更地にして餓死する、鯖癌におけるキングオブクソモンス候補の一体だ。奴から逃げる為に移民が他のサーバーに行き、そこの風土やしきたりを無視するので戦いが起きる。本当生まれて死ぬまで何もかもが大災害だった……
「さぁて、腹も膨れたしボス戦と行こうや」
「だな、もうそろそろなんだろ?」
『ええ、そうです……ええ、そうですね。もうそろそろかと』
ん……?
〜とあるAI的NPCのログ〜
『申し訳ありません、特定人物の座標通知はアンバージャックパス3以降となっております』
「……そう、ですか」
ピヨピヨピヨピヨピヨ……
『そちらの原生生物は……』
「……道案内、です」
◆
「サンラクさん!? 助太刀は必要ですか!!」
「うおっ、秋津茜!? 馬鹿言え、この程度の肉塊に負けるかよ……っ!!」
ビーフカスタム・ビッグボディ……要するに「サイズをデカくすればその分多く食べられますよね?」というアホみたいに単純な理論をクソみたいに発展した科学で実行した巨大お肉との交戦中、こちらへと駆けてきたのはなんと秋津茜であった。
その後ろからついてきてる三人のプレイヤーは見ない顔だ、野良パでも組んだのかな。やけに三人から視線を向けられている気がするが………なおサバイバアルは蹴っ飛ばされて遠くまで転がっている。戻ってくるまで時間がかかるな、それに秋津茜達に悪感情があるわけではないが、ここまで来て戦功山分けってのもなんだか癪だ。
蹴り込んだ別離なく死を想ふが深く突き刺さらずに巨大牛肉の身動ぎで地面に落ちたのもそこそこに、下手な膂力では刺突が有効打たり得ないと結論づけた俺は打撃戦にシフトする。
「まぁ見てな……!!」
巨大牛肉の身動ぎするだけで人間を吹き飛ばすような巨体に肉薄、身体を奴の真下までねじ込んで素手を拳へと固める。下手な火力をぶつけたって焼け石に水、あくまでも俺は火力技も持っている軽量級でしかない……ならばやるべきはメイン火力が発揮するまでこいつに余計なことをさせない!!
力を貸しな"戦災孤児"! 今ここに日の目を浴びろ不世出の奥義………
「戦砕琥示!!」
強打ならばダメージを高め、弱打ならば……吹き飛ばせインパクト!!
だがテキストを読んで内容を理解するのと、実際に体感するのではその実態は全くと言っていいほどに別物であるらしい。
パシッ、という軽いジャブとは真逆のちゅごぉぉん!!! と拳のヒットと砲撃音のSE取り違えた? と運営に問いたくなる程の轟音が鳴り響き、4トンくらいは物を積めるトラック程度に大きな身体を持つ巨大牛肉の身体が誇張なしに浮いた。
「おおう……」
ダメージはないはずだ、「戦砕琥示」のスキルは火力とノックバックの天秤であってそれらが両立される事はない。ここまでの吹き飛ばしであっても火力そのものはたいした事がない……と、思うのだが四足歩行の状態から背中からひっくり返った青天井になろうとしている巨大牛肉を見るともしかして火力も出ているんじゃないかと期待のような不安のような……
「御大層なモン見せてくれやがってよぉ……だったらこっちも負けてらんねェよなぁ!!」
高揚と興奮の双方を混ぜた気合の声を上げたサバイバアルがどこにいるのかと見回せば、なんと巨大牛肉の背中が叩きつけられるであろう地面のど真ん中……即ち押し潰されるであろうその場所に堂々たる仁王立ちで立っているではないか。
咄嗟に「大丈夫か!」とか「危ない!」ではなく「南無三!!」と浮かんでしまったが、どうやら奴も自殺願望が急に湧いていたわけではないらしい。
その手に握るは先程までの方天戟ではなく赤黒く凶悪な雰囲気を漂わせるスレッジハンマー、そして全身に漲らせる彩光は奴の戦意を可視化したようなスキルエフェクトの数々だ。
「くの字にへし折れな! テラトン……ッ! コラプサァァァァァァ!!」
「す、すごいっ!」
秋津茜の驚きも納得だ、何せ宣言通り背骨が曲がっちゃいけない方向に曲がった「く」の字の巨体がラリーか何かのようにこちらへと打ち返されたのだから……って
「あ、すまん」
「先に言えアホーっ!!!」
潰れて死ぬのは嫌すぎる!!!
サバイバアルはサンラクの三倍くらいスキルを持ってたけどややこしすぎて一武器種につき一、二個くらいまでスキル数を統合している
ので多数のバリエーションは少ないけど一発一発の凶悪度が高い