仇討ちの二つ刃
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「さぁ今回の目玉はこちらっ! 魚人族達が捕まえたフェロシタス・デレクタメンタム!! 見てくれはまぁ……うん、カッパとピラニアとエイリアンを雑に混ぜたみたいなキモい生物だけどその味は保証するぜっ!! あ、知らない人に言っておくと称号【美食舌】必須なのでそこのところよろしく。ではまずは10万マーニから……」
「即金2000万マーニ」
「は?」
「即金2000万マーニ、ええと……ああプレイヤーか。ハンジョー君、はいこれ即金2000万マーニ」
「え、ええと……他に、落札する方は……」
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………………
「クソがぁ! 幻のアルクトゥス・レガレクスまであまりに遠い……っ!!」
「目的完全に忘れてんじゃねーかオイ、フェロシタス・デレクタメンタム競り落としたぞ」
「マジか! つーかやっぱ無理だわ、人種じゃ呼吸が続かねぇ」
「浅瀬ぱしゃぱしゃかぁ〜〜〜? あとこれその幻? のアルクトゥス・レガレクスの素材から作った装備な」
「言うじゃねぇかこの野郎……っ!」
「つーかさ」
「おう」
「なんでスク水?」
「ティーアスたんがスク水を着ればスク水を着てる俺もティーアスたんということにならねぇか?」
「ログアウトして精神の検査してもらった方が……」
「自慢じゃねぇが、生まれてこの方病気になったことはねぇ」
「自覚しろ、頭の病気にフィジカルは関与しねぇ」
◆
いくら女アバターだからといって、街中をスク水で闊歩する変態とどうして噛んでしまったのかと壮絶に後悔しつつも、丁度時間経過で服が弾け飛んだ女体化状態で蛇の林檎へと戻った俺を出迎えたのは気味が悪いくらい静かに俺はとすり寄ってきた元PK現仇討人、もしくは仇討人を目指すプレイヤー達だった。
「うわっ、ちょ、なんだなんだ」
「…………」
すっ(無言で差し出される20万マーニ)
すっ(無言で差し出される100万マーニ)
すっ(無言で差し出される2000万マーニ)
すっ(無言で差し出される1億マーニ)
「いや待て怖い怖い怖い!!」
いきなり現金渡してくるのも意味が分からないし何故現金を渡してくるのか意味が分からないし何より怖い! なんかこの金汚そうなんだが!? 本当にクリーンな金か!!?
「サンラク氏……なんつー、なんつーもんを招いてくださったんじゃ……」
「嵐じゃ、嵐がやってきた……」
「あまりに、あまりに……!!」
神の祟りを目の当たりにした迷信に惑わされる村民とかそういうアレか何か? だがしかし何故金を渡されるんだ……と、視線を変態達のさらにその向こうへと向けてみれば、そこにはびくびくと震えながら幼女先生にオードブルを出すウィンプの姿。
既に幼女先生の座るカウンターには大量の皿が積み上げられているので、おそらくあのくだりを何度も繰り返しているのだろう。
「アルビノツインテ虚仮威しイキリ美少女とは……っ!」
「あまりに、あまりに属性の詰め合わせが過ぎるっ!」
「萌えという名のスパイスでカレーでも作ったのかよ!」
「とりあえずウィンプたそに似合う服のデザインを考えたんですけど……」
無言で変態達の親玉に視線を向ける。視線を向けられたサバイバアルはといえば、やたらキャラ造形に力の入った長身の女アバター(スク水)のまま俺の肩に手をぽんとおくと一言。
「もうちょっと見た目が若ければな……いや十分圏内なんだけどな?」
「お前マジでトゥールにあることないこと吹き込んで意味深な視線向けさせるぞ」
「嫌がらせで致命傷狙ってくるんじゃねーよ鬼か!!」
全く、鯖癌時代はもうちょっと硬派というか(大前提としてネジが飛んでるとはいえ)比較的マトモな性格してた気がしたんだが、鯖癌終了後からこいつに何があったんだ。
「おーいウィンプ、新鮮なフェロシタス・デレクタメンタム持ってきたぞ」
「ふぇおしらす・れれくたぇんたむ!」
後ろの方から「あーっ! いけませんっ! 滑舌悪い属性は僕に効く! 推しにしちゃうぅぅ!!」と聞こえた気がするがこの地にこびりついた悪霊の類だと思うので後で塩撒いて……いや、ここは岩塩で殴った方が効き目がありそうだ。
「俺はこいつの料理法を全く知らないが……まぁ、頑張れ」
「が、がんばる……」
なんというか、でっかいマグロに河童の腕を生やして蟹の脚みたいな動きをする口をつけたみたいな奇怪なナマモノにしか見えないのだが、幼女先生一押しの高級海鮮食材らしいのでちゃんと調理できればここで受け入れられる可能性はグッと高まる。
しれっと1メートル以上はあるフェロシタス・デレクタメンタムを担いで厨房に消えていったウィンプを見送りつつ、とりあえず待つことにする。
「あー……幼女先生、何故ここに?」
「……転送魔法が改良された、本部からならここに行けるようになった」
バッ! とサバイバアルの方へと向けば、奴もまた初耳であったらしい。いそいそとこちらにやってきて何故か床に正座したサバイバアルが十秒ほど吃った上で幼女先生に話しかける。
「て、ティーアスたんっ! それはつまり、仇討人は大陸間を自由に行き来できる……ってことですかい?」
「……ちがう、あくまでもここから本部に飛べるだけ」
「ん? ならなんで幼女先生はここに来れたんです?」
…………。数秒程沈黙していた幼女先生だったが、仕事服とはいえ寝起きの状態なのかフラフラと店にやってきたルティアが何もないところですっ転んだのを一瞥した後に一言。
「私はすごい、なのでここにいる」
「成る程、一切矛盾のない完璧な論理によって実証された真理というわけだ……」
「いや純度100%の力技じゃん……」
気にしたら負けってことか、とりあえず新大陸支部のマスター(旧大陸の同じ顔シリーズのマスターと違って造形は似てるが若い)に何か飲み物を頼みつつウィンプが料理を完成させるのを待つ。
「…………」
「ん? どうかしましたか幼女先せ」
「……まだまだ」
何が……はっ! 俺が頼んだ筈のフルーツジュースがいつの間にか幼女先生の手の中に!?
「相変わらずイかれた速度だぜティーアスたん……」
「今日来た理由のひとつはこれ……サンラク、あとついでにサバイバアル」
「ティーアスたんに名前を呼ばれた……!? 俺は総理大臣になって今日という日を記念日にしようと思うんだがどう思う?」
「毎日祝日みたいな脳みそしてんだから大差ないだろ」
「……話を聞く」
「「押忍!」」
幼女先生はごそごそと鞄の中から何やら便箋を取り出すと、俺とサバイバアルに差し出した。気になるのは俺の便箋は真っ黒で、サバイバアルの便箋は真っ赤であることか。
「これは?」
俺が注文したフルーツジュースをじゅぞぞぞぞ、と一瞬で飲み干した幼女先生は手の甲で口を拭いつつこう言った。
「仇討人サンラク、それは死者の剣になるための…… 仇討人サバイバアル、それは復讐の剣になるための試験内容」
・改変報告
以前どこかで「仇討人から派生するもう一つの隠し最上位職業への転職条件は一定数以上「死者」が絡むクエストのクリア」と言いましたがこれを「一定数以上「死者」が絡むクエストのクリアなどで蓄積するパラメータが規定量に達する」に変更しました