さっきまで一緒にいたのに…20年前に泣き崩れた男性は刑事に 亡き同級生への“償い” 広島小1女児殺害
「刑事になったよ」。最初に伝える相手は「亡き同級生」と決めていた。 広島県警尾道署の警察官村田将雪さん(26)は念願の刑事課に配属が決まった2021年春、広島市安芸区の矢野西小1年だった木下あいりちゃん=当時(7)=が遺体で見つかった学校近くの現場を一人訪ねると、手を合わせ、そう報告した。 【写真とともに振り返る】木下あいりちゃん事件とは あいりちゃんが千葉県から矢野西小に転校してきたのは05年の夏休み明けだった。村田さんは同じクラスですぐに仲良くなり、一緒に下校もするようになった。ともに過ごしたのは、あの日までのわずか3カ月足らず。それでもその時間を忘れたことはない。刑事を志したのは自分なりの「償い」でもあった。
下校中の凶行 ペルー国籍の男逮捕
事件は05年11月22日午後に発生した。矢野西小近くの空き地で、ガスこんろ用の段ボール箱に入ったあいりちゃんの遺体が見つかった。あいりちゃんは下校途中に襲われ、遺体の遺棄現場から約400メートル離れた場所でランドセルも発見された。県警は殺人、死体遺棄事件として捜査本部を設置した。 翌23日、捜査は一気に動く。現場近くのアパートの一室で捜査員が同型こんろを確認し、この部屋に住むペルー国籍の当時33歳の男が浮上した。数日後、この男が捨てた缶コーヒーを回収し、資料を採取。鑑定した結果、遺体発見時に見つかった犯人のものとみられるDNA型と一致した。 捜査本部は事件から8日後の30日未明、三重県内の親類宅で男の逮捕に踏み切った。男はあいりちゃんにわいせつ行為をした上、首を絞めて殺害し、段ボール箱に入れて遺棄した。
崩れた日常、現実受け入れられず
事件が起きた日の朝、村田さんもあいりちゃんも、いつものように小学校の教室にいた。この日は午前中で授業が終わり、2人は他の友達と学校を出て、途中で別れた。村田さんは夕方からサッカーの習い事があった。 練習していたさなか、母親が尋ねてきた。「あいりちゃん知ってる?」。村田さんは、なんでそんなことを聞くんだろうと思いながらもその時は何も分からず、「友だちだよ」と答えた。 帰宅してその意味が分かった。テレビをつけると、「あいりちゃん殺害事件」のニュースが繰り返し報じられていた。ついさっきまで一緒にいた同級生の命が消えた。どうして…。「死が受け入れられなかった」。部屋でただただ泣き崩れた。 「事件で日常も地域も変わってしまった」。村田さんは当時の記憶が今も鮮明に残る。 授業が再開されても教室で一つ、空いたままのあいりちゃんの席があった。現場周辺では多くの報道陣が取材を続けていた。放課後にみんながよく集まった公園は事件後しばらく、誰も遊ばなくなった。あいりちゃんが好きだったヒマワリ、翌年から命日に合わせて開かれるようになった全校集会‥。どうしたって事件を思い出した。 犯人が逮捕されても、村田さんは現実が受け入れられなかった。同時に、ある思いが胸をよぎる。「あの日、自分が何か行動できていれば、こうはならなかったのではないか」―。 下校途中にいつも通り別れた後、事件が起きた。もちろん何かできたわけではないし、できるわけもない。確かな答えはないが、その思いは小学校を卒業しても拭えなかった。 ただ、村田さんがこの事件でもう一つ、抱いた思いがある。犯人が捕まるまでの1週間余り、とにかく不安で、怖くてたまらなかった。「警察官が逮捕してくれて本当に安心できた。幼心に憧れた」。高校卒業後の進路に迷いはなかった。